残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

2009-07-31から1日間の記事一覧

各種業務連絡

●コンテンツが増えました。いきなりどばっと増えました。これには理由があるのです。話を聞いて、石をなげないでぇっ!(大丈夫か?)えーと、小説(ショートショートと短編)と詩をアップしました。理由は、登録サイトにこのブログを登録したからです。それ…

彼は焦土の大気になる

●この小説に関しては7月31日の更新をご覧ください。○彼は焦土の大気になる「無様ね」彼女はカクテルをテーブルに置きながらそう言った。「あなたは本当に無様」彼は部屋の片隅のミニ・バーで片付けを済ませながら言う。「あるいは」「あるいは、という留…

修道院は眠らない

木々の枝々に至るまで闇がまとわりつくような夜であった。修道士と修道女は神に祈りを捧げていた。二人を照らす明かりはほのかで、淡いものであった。すぐに消えてしまいそうな光であった。反対に夜の闇は、絵の具のように、簡単には消えそうにないものであ…

修道院は眠らない

回廊の中に居る。我々は今もなお歩き続けている。足取りはおぼつかなくて、弱弱しい物かもしれないが、歩むのを止めてはいない。ただうずくまって、何もしていないように見えるかもしれないけれど。遠くを見ても何も見えない。闇が広がるばかりで、吸い込ま…

修道院は眠らない

闇の中に始終いれば、その闇の深浅に敏感になる。水の熱さ冷たさのように。二人は闇の移り変わりを見て、祈りを始め、祈りを終える。夜更けがある。獣が寝そべるように、空と大地の狭間に。窓の外は、様々な黒色でいっぱいだった。森は闇と一つになり、木々…

修道院は眠らない

闇の中で呼吸し、闇の中で手を伸ばす。そういうことが、もはや当たり前になってしまった。前よりもずっと夜目がきく。闇のほうが、我々よりもずっと体積が大きい。闇に包まれている。我々は救われるに値するであろうか。そう、何度この闇に問われたであろう…

修道院は眠らない

遠くで、精霊と人間との間で争いがあったらしい。それなりに大きいものであって、様々な被害が出たと聞く。しかし修道院は、今日も祈り続ける。月神アセパスに祈る二人は、変わることなく、日々の勤めを果たしている。時間の感覚もなく、ただ祈り続けている…

修道院は眠らない

再び祈りの時間となる。日が沈み、空の赤さに淡い灰色が混ざっていく。二人は祈りへとおもむく。静々と廊下を歩いていく。窓の外は薄暗く、森の中にはすでにいくつもの闇があった。残り香のような夕焼けを見る。ひんやりとした空気を感じる。礼拝堂の前で、…

修道院は眠らない

待ち続ける。いつか来る福音を信じて、その時まで祈り続ける。闇の中を歩いている。終わることなく待ち続けている。考えたら、始まりはいかなるものだったか。いつからこのように歩き出したか。輝ける明日とはどのようなものであったか。我々はずいぶんと忘…

修道院は眠らない

二人は祈り続けている。時の流れも忘れ、一心に、神に祈りを捧げている。荒地に立ちそびえる木のように、親鳥のえさを待つ小鳥のように。夜は青白くなり、タールのようにどんよりとした暗さが晴れ、闇が消えていく。光は、ろうそくのものだけでなく、部屋中…

修道院は眠らない

回廊の中を歩いている。闇が棲みついた回廊は重力が増したかのように重い。歩き続けるしかない。歩くか否か以外の選択肢を全然持っていない。そして、何かを求めるのならば、歩くしかない。ずいぶんと光を見ていない。もはや闇は空気であり、何度も何度も肌…

修道院は眠らない

二人は福音を待ち続ける。回廊の中で、その先にある何かを。進み続ける時の連続の中、二人は祈り続ける。ぼんやりとした光は、祭壇の周りしか照らすことはなく、それより先はただの夜の暗い闇であった。時に明かりに照らされ、時に影に飲み込まれ、あるいは…

修道院は眠らない

祭壇にある四神をかたどった木像を、ろうそくの明かりは照らしている。小さな太陽の光のように、闇の中、神々の姿を照らしている。黒衣を身にまとった修道士と修道女の二人は、目を閉じ、胸の前で両手を組み、かすかにうつむき、祈りを捧げていた。そうして…

修道院は眠らない

●この小説に関しては7月31日の更新をご覧ください。○修道院は眠らないまといつくような闇の夜、深い森の外れにその修道院はある。建物の後ろには、色々な暗い色を塗りたくられた木々が、油絵のようにうっそうと重く茂っていた。木々のすきまから見える闇…

龍の話――半身――

●この小説に関しては7月31日の更新をご覧ください。○龍の話――半身――あるとき、龍の上半身が市場に売りに出された。頭部の角をはじめとして、眼球、髭、鱗、肉、かぎ爪、手、骨以外のありとあらゆるものが引っぺがされていった。骨が残ったのは、この町で…