残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

最近わたしの音の暮らしはこう 2024年春 坂本慎太郎ソロとゆらゆら帝国と亀川千代

坂本慎太郎氏の音楽

坂本ソロ4thアルバム「物語のように」インスト版付きの初回盤CD

この半月ばかり、ずっと坂本慎太郎氏の音楽(坂本ソロ、ゆらゆら帝国)を聞いています。ようやく、坂本氏の音の世界にハマりました。


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さて、ゆらゆら帝国のベーシスト・亀川千代氏が先日逝去されました。

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その追悼の意味でゆらゆら帝国・坂本ソロ作の音楽を聞き直してハマった…というわけでは実はないのです。以下、きちんとお話します。

私は以前から中期以降のゆらゆら帝国のCDを買ったり、近年の坂本氏の音楽をチェックしていましたが、正直完全にハマりきることは出来ていなかったのです。音楽作品の深さやバンドの存在感に尊敬はしていたけど、まだ坂本慎太郎世界にはハマれなかった。

しかし今年の3月末から4月頭に、私はリアル仕事で重要度の高いイベントを控えていて準備に結構忙しく、疲れていました。そんな仕事を終えた夜中、なんとなく近年の坂本氏のソロ作をyoutubeで聞いていたら、すごく心にスッと入ってきたのです。坂本氏の声…歌い方が、メロディが、奇妙な世界にいざなう歌詞とサウンドが、スッと入ってきた。それは、単純な表現で申し訳ないですが…とても良かった。このブログで何度も書いているLo-Fiフィルター以降の耳になっていたから坂本氏のサウンド世界がわかるようになったのでしょうし、今の私の心情が坂本氏の奇妙な世界観を心の底というか根の方から欲していたのでしょう。

↓(Lo-fiフィルターについて)

中年音楽マニアとLo-Fi HipHop - 残響の足りない部屋

 

もっとこの坂本慎太郎氏という音楽家の作品世界を知りたい。そうして私はハマりました。ようやくハマりました。そして当然のことながらゆらゆら帝国の作品&ライヴ音源を聞き返すことになるのです。

 

なので私の坂本慎太郎体験(ハマった順番)は、ソロ→ゆらゆら帝国、という遡り方です。今までレコード屋ゆらゆら帝国のCDをリアルタイムで見かけてはいたのですが、その時は「良さそうな感じだけど、まぁ今はいいかな」という具合でした。でもその当時買っても、多分理解出来なかった(ハマれなかった)と思うのです。そして、もしその当時サブカル趣味的に半端に理解してドヤ顔しているくらいなら、今こうしてしみじみ「坂本氏の世界は本当に良い…」と思えている方がずっと良いと思う。


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今、歌詞カードやアートワーク(これらのデザインも坂本氏によって手掛けられています)を見ながら、あるいはYoutubeの動画作品を見ながら(この動画にもかなり坂本氏は関与していますし、「ある日(One Day)」は坂本氏による全編手書き&自身編集のアニメで最高)、坂本氏の音楽を聞く。独りで。それはとてもすばらしい豊かな音楽体験時間です。良い感じで私は音楽と向き合えている。正座してにらめっこしてシリアスに聞くのではなく、ちょっとリラックスして聞く。

だんだん自室の空間が奇妙になっていく。あの歌詞の独特のズレが、鋭利に刺しこんでくる。奇妙なサウンドが、別世界にいざなってくれる。それは自室に居て異国情緒を感じているのに近い。そして、坂本氏のスタンスというか…どこかとぼけているユーモアと、醒めた認識と、世界に対する居心地の悪い心情と、面白いおもちゃみたいな物が、走馬灯のように夢見心地で展開されるあの坂本世界観…そうしていつの間にか部屋の空間は坂本氏の世界になっちゃっているのでした。

 


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そんなわけでソロ作から中期以降のゆらゆら帝国のCDを遡って聞き返しているわけですから、実はまだサイケでビート感ある初期のゆらゆら帝国にまで聴き込めていません。でもタイプの違う最高がすでにある、っていう状況って音楽好きとして最高じゃないですか? まぁそれはさておき、そんな風に遡って聞いてるわけなので、ビート感ある激しいロック云々よりも、坂本氏のいろんな変な世界を探訪する、というスタンスで私は坂本氏の音楽を聞き、愛好しています。

 

ゆらゆら帝国ベース・亀川千代

そんな中、亀川氏の訃報を聞きました。「えっ」と思いました。もちろん、早すぎます。しかし私は…こういう表現をあえて使いますが、ゆらゆら帝国については「にわかファン」です。さぁてこれからゆらゆら帝国のアンサンブルをライヴ音源も含めて聴き込んでいくぞ、と音楽体験の準備を整えている矢先の事でした。なので、「えっ」という当惑。そしてその当惑は今も続いています。

だってゆらゆら帝国のベース凄いんだもの。例えばゴリッゴリに歪んだリフをぶつけてくる時でも、そのぶつけ方そのものが楽曲の世界観・空気感を表していたり。ギターと完全にユニゾンして長いフレーズを奏でる演奏があり、しかし時にギターのフレーズを裏切るように独自の音をサッと入れてきた時の快感たるや。ライヴ音源のグルーヴというかベースラインのうねりっぷりの心地よさ、限界のなさ。


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ベースラインの限界のなさ…それは初期のロックンロール的曲調でももちろんそうなんですが、中期〜後期の、いろんな不思議な世界の表現でも表れています。その亀川氏のベースそのものが、各「世界」の大事な要素なんだと。亀川氏の自由なベースがそこにあることが、ゆらゆら帝国が描く様々な世界(ほんと「世界」のバリエーションが多い)に欠くべからざる存在。

その事に気づいた時、ゆらゆら帝国のあの有名な解散宣言「バンドが出来上がってしまった。これ以上のものは出来ない。あとはルーチンワークになるだけだ」というのが、別の角度からちょこっと理解出来てしまったような気がしたのです。そういう個性的な存在がそこにしっかりと居る、という幸福な不幸、というか。これだけの存在が横にこうして居て、しかも長いバンド生活でいろいろなことを実験し、いろんな「世界」を表現しまくった。そしてあのアルバム「空洞です」…。いろんな世界を表現し続けて、最後に辿り着いてしまった。そんなゆらゆら帝国の三人の「やりきった」という感覚…それは創作者としては恐ろしい境地なんですが…。


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話をもとに戻しますが、そんな風に私はゆらゆら帝国のニワカファンなので、私なんぞが亀川氏の訃報にショックを表明していては、長年のゆらゆら帝国ファン、亀川氏のファンの方々に対してあまりよろしくないのでは?と思いました。申し訳ないというか。だから語れもせず。

それでも日々は続き、私はゆらゆら帝国を聞いていくわけです。そうするごとに、バンドの楽曲が描くいろんな「世界」を見ていくわけです。そうする度に「凄いベースだ」という認識と「そのベーシストはもうこの世に居ないんだ」という感慨を同時に抱きます。そういうちょっとした思いは、やはり浮かびます。

そこで、だから、ゆらゆら帝国を持ち上げて過度にレジェンド化して聞こう&語ろう、っていうつもりもないです。私はやはり、坂本氏&ゆらゆら帝国の描くいろんな「世界」に用があります。追悼でもなく、レジェンド扱いや歴史的リファレンスで聞くのでもなく、懐メロで聞くのでもなく、「今の私に必要な音楽」として、用があるのです。上で書いたように、それは今の私にとってとても大事なものですから。

その上で。逝去された亀川氏のことを思うに…私は亀川氏に「感謝」することしか出来ません。もうその感謝はこの世では届きません。それでも私は亀川氏のベースに、ライヴでのベースプレイに、彼が作った世界に、感謝をしたい。亀川氏がベースを弾いたから、ゆらゆら帝国は在った。そうしてゆらゆら帝国はいろんな曲、アルバムで、いろんな世界を作り出した。その世界が、今の私をゆらゆらと「良い気分」にさせてくれているのだから。

そんなわけで。
これからも、もっとゆらゆら帝国の音楽を聞きます。少なくともまだ初期の音源で聞いていないの結構あるし、ライヴ盤もだし。それからベースを弾いていた不失者(灰野敬二のバンド)もいつか聞くことになるので楽しみにしています。そしたらまた亀川氏の逝去・不在を思ったりするようになるんだろうなぁ。

亀川千代氏、安らかにお眠りください。

 

 

お気に入り音源シリーズ「最近わたしの音の暮らしはこう」

最近わたしの音の暮らしはこう 2023年冬 - 残響の足りない部屋

最近わたしの音の暮らしはこう 〜2023秋に向けて〜 - 残響の足りない部屋

2023年お気に入りベスト

2023年に良く聞いていた音楽(1) - 残響の足りない部屋

2023年に良く聞いていた音楽(3)

だいぶ間が空いてしまいました。申し訳のないことです。

このブログの筆者が2023年に愛好していた音楽の記事です。今回がそのシリーズ最後の回です。

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選考基準は例年と同じく

発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り

ですが、記事に入る前に、ついさっき(2024/03/05)ヨルシカの新曲「晴る」のMVが出まして、これにとても心打たれたので、ちょっとだけ書きます。

 

反戦歌、平和への祈りとしてのヨルシカ「晴る」MVについて


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この曲はアニメ「葬送のフリーレン」第2クールのオープニング曲です。「葬送のフリーレン」はとても静謐で情感のあるファンタジー作品でして、私も原作漫画1巻が出た時から愛読しておりました。ヨルシカがOP曲を書いて、その似つかわしさに良かったと思いました。

そしてこのMVは、アニメとは関係がなく、ヨルシカの「映像作品」としての発表です。ヨルシカはシングルカットされた曲はすべてMVを出していて、いずれも「物凄く」力の入った映像作品です。その意気は確実にn-buna氏の「映像へのこだわり」によります。

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そして本作「晴る」MV。

そうか、n-buna氏、本曲を「反戦歌」としましたか。

少年、今は亡き父親(「幽霊」と書いただけでもうヨルシカ世界の住人ですね)、軍用機、破壊された思い出の町、汚れた服、手紙と喪失、墓と芽吹き……「嘆き」、そして「壁」……ラストのsuis氏のアカペラ、「遠くまで遠くまで」と壁の上を飛びゆく鳥。

朗らかな曲調で、一個も歌詞では戦争について語っていません。MVも隠喩の数々です。でも今列挙しただけでも、この2024年の戦火に、思い当たるところが多すぎます。

私はこのMVに感化され「うおぉぉおお反戦反戦!」て言うつもりはないです。文字にして改めて思いましたがちょっと馬鹿っぽすぎるじゃないですか…ヨルシカファンを名乗れないぞ。「晴る」は素直に良い歌で、n-buna氏もこの曲に政治性を絡ませまくるのを意図しているわけではないはず。

それでも私はn-buna氏がこの曲に「反戦歌」そして「平和」への意志という側面を持たせたことに、じんと胸打たれるものがあります。

音楽と、社会派・政治性が一緒になってがなりたてる事は、時に意味がありますが、時に正直「勘弁してくれ」と思うこともあります。そのあたり、前にも書きました。「私は」、音楽と政治を結びつけることは基本的に良いことだっ!…ってなかなか思えない人間なのです。(私は、ね。他の人のことは知らないのです。ご自由に)

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それでも私は、今回のn-buna氏が「晴る」MVで提示した「反戦歌」という側面を支持します。

ヨルシカファンとして言えば、n-buna氏という作家は「考えすぎてしまう」男です。芸術至上主義のスタンスをとる氏ですが、自身(ヨルシカ)が「どう見えるか」というのを精密に考えることも出来てしまうクレバーさを持っています。だから、n-buna氏は今回のMVを作る際に相当考えたと思うのです。それも、自己批判的に。

「それでも」と。n-buna氏がいろんな思考や自己批判にぐっと堪え、それでも、とこのコンセプトで世に放ったことを、私は支持したいです。

この現実世界には確かに希望が足りない。でもこうやって意志を形にして作ることも出来る。鳥が飛んでいくように。

反戦歌についてはZAZEN BOYSの項でも書きます。

 

人間椅子「色即是空


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本作、サウンドが実に重い…!どのリフもメロディも、重く、そして切れ味鋭い。歌詞も文学的・哲学的で、人間の生き死にを真っ向から見つめます。

人間椅子の歌詞は、ただ狂気と猟奇でデカダンスの愉悦に浸るだけではなく(それはそれで素晴らしい)、もはや「生きた説法」と言うべき刺さり方をします。「三途の川」の時もそうでしたが、人間の生き死にを見つめ、「それでも!」と強い励ましを与える歌を歌います。それが彼らのハードロック、プログレッシブロックです。

ラストの曲「死出の旅路の物語」が特に好き。勇壮なメロディーとリフ。直線的に疾走していく曲ですが、世界観は新約聖書ヨハネ黙示録を引用しつつの「死」を見据えるものです。そのようにハード極まりないですが、曲としての説得力が凄い。

アメリカ民謡研究会「戻れ戻れもどれもどれも」


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トランシーなシンセサイザーサウンドに乗せて、詩の世界が虚空の天球に響く!

私が去年聞いた曲の中で、ベストです。こういう音の世界にずっと居たい、世界にすうーっと吸い込まれたい。手が届かない、とか、もう戻れない、というように感じさせる切望のエモーショナル。

上海アリス幻樂団 東方獣王園BGM「タイニーシャングリラ」


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東方project新作のBGMです。この二十年来、私は東方=上海アリス幻樂団=ZUN氏が世界一好きな作曲家なので、今作も楽しみにしていました。ゲームをプレイし、音楽を聞かない話がないのです。

一番好きだったのがこの曲。胡弓のシンセ音源をZUN氏が導入し、それが世界観的にすごく良い仕事をしています。この音あっての東洋神仙中華幻想ですよ!疾走感あるトラックに、美しく、悠々とたゆたう胡弓シンセ。やはり良い…。ZUN氏が影響を受けている東儀秀樹、そして東洋ニューエイジ音楽を思い出したりもします。

ZUN氏が同時代を生きる作曲家として今も活動を続けていらっしゃることがどれだけありがたく、嬉しいことか。これからも楽しみにしています。

MONO「FENDER SESSIONS」のライヴ演奏


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昨年の年末に聞きました。このシリアスな音響、ノイズ、世界観、ギターノイズシンフォニー……素晴らしいです。私のシューゲイザー観、ポストロック観、シリアス音響観はやはりこういうサウンドだよなぁ、と、原点をビシビシ感じさせてくれました。このギターノイズと空間音響をずっと聞いていたいです。これがオルタナティヴロックです!

 

なみぐる feet.ずんだもん「ずんだパーリナイ」「ずんだシェイキング」


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MONOの次とは思えない選曲ですがw しかし私は聞き逃しません、この作曲者・なみぐる氏、絶対ブラックミュージック好きですよね。曲調に、どうしようもなくファンキーさがあります。それはずんだもん(合成音声、キャラ)のファンキーさだけでなく、音にR&Bが、ディスコが、ファンクが刻印されています。リズムアレンジにJB(ジェームズ・ブラウン)のライヴ演奏の疾走する「血」を感じさせますね。第一歌詞でアート・ブレイキーとか言ってる時点で以下略。

Где Фантом?「Это так архаично」


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2019年より活動している、ロシアのポストパンクバンド。最初、例によってSovietWave的に聞いていましたが、だんだん「もうこれ現代ロシアン・ドゥーム・ポップだな」と思うようになりました。

なんてったって、バックトラック(オケ、演奏)がポストパンク的に軽快なのに、ヴォーカルが暗すぎる。イアン・カーティスジョイ・ディヴィジョン)の数割増しで暗い。最初聞いた時「なんでこんな暗いんだ」と思いましたし、実は今聞いても「なんでこんな暗いんだ」って思います。

しかし音楽って面白いもので、その暗さ、ミスマッチさがクセになるんですねぇ〜。この演奏とvoの調和が、このバンド独自の個性と考えるようになってきました。独特の世界観があります。そしてなんといっても、「異国」の感じが、味がします。ロシア、ユーラシア大陸の味というか。これはこの地域の音楽にしか出せない味です。

 

ZAZEN BOYS「永遠少女」


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ヨルシカのところで予告しましたが、これも反戦歌です。人間に歴史あり、って良く言われるけれど…時に、人は歴史の中に呑まれちまっている。どうしようもなく、歴史がもたらすブルースを、引き継いでしまっている。でも、苦悩をどこまでも引きずっていくだけが永遠じゃないはずだ、とこの曲は歌います。

向井秀徳は、この曲が収録されている新作アルバム「らんど」で、歴史を継承している「人」を見据えるようになったのだな、と思いました。これまで少女や冷凍都市の中に、憧憬や皮肉や、一瞬のキラメキや狂気を見出そうとしていた向井でした。顔のない、無記名の匿名の「彼ら・彼女ら」を描いていました。

それが本作「らんど」では、町の中で生きている、顔のある「人」たちを、彼らの歴史込みでしっかりと見据えて、深いところから大きな心で掬いあげるかのような、やさしさ、愛おしさ、強さを感じさせました。その人間的深みを私は支持します。

ベース・MIYAが本作から加入しました。素晴らしい。不穏でゴリっとした大蛇のようなのたうち回り方。ドラム・松下との相性もとても良い。ギャリっとした向井のギター・コード・カッティングに、カシオメンの紡ぐ悠久さすらあるフレーズが絡むと、なんだかそのサウンドは、「歴史を見つめる眼差し」ってやつすら思ってしまいます。

この曲「永遠少女」も、そんなわけでとても好き。あとすごく気に入ってるのが「YAKIIMO」という曲。「いしや〜きいも〜」という焼き芋屋のサウンドをそのまま歌っている曲ですが、なんだかどうしようもなくブルースを感じます。焼き芋屋の人生、市井の人々のブルースを…。

そうです。反戦、そして平和への祈りは、この「市井の人々の見る景色」を絶対に失ってはいけません。それがなかったら空理空論でしょう。というか「市井の人々の見る景色」を守りたいからこその反戦なのです。争ってる場合じゃない。内ゲバってる場合じゃない。冷凍都市であるけれども、そこに生きている人々はたしかに熱い血が通っているのだと。もしかしたら人々のエゴが都市を冷凍させてしまうかもしれないけど、それでも人の暖かさは…純朴さは…。

私は向井が日和ったとか、ヌルくなったとか、ただチルくなったとかって絶対に思わない。これが向井の音楽家として、詩人として、人間としての成長、深化なのだと強く思う。「らんど」、大好きなアルバムだ。

 

おわりに

そんなわけで、2023年に良く聞いていた音楽でした。

今年も、いろんな世界やいろんな時代の音楽を聞いていきたいと思います。

2023年に良く聞いていた音楽(2)

前回の続きです。選考基準は

発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り

です。書いてて結局長くなったので、すいませんがまた次回に続きます。

それではよろしくどうぞ。

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スピッツ「ひみつスタジオ」


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ずっと推し続けてきたロックバンドが、ずっと健全なバンド生活を何十年も送り続けている。そして新譜・新曲がとても良い。「レジェンドだから〜」の下駄履かせじゃなく、本当に新譜が良い。こんな嬉しいことってなかなかないです。

私も歳をとったのかな。でも、私個人が実際に歳をとってわかったのですが、バンド(音楽家)生活を「10年も、20年もそれ以上も」ずっと送り続けた例っていうのが数少ないわけです。まして「健全なバンド生活」ってなると余計に。「良い曲を作り続ける」というとさらに(所謂、若い頃の曲の方が勢いがあったね現象)。歳月を重ね続ける、っていうのは、なかなかなものです。若い頃、私はもっと居るかと思いましたよそういうバンドが。でも、何十年もそれを実現出来たバンドは、ほとんどいなかったわけでした。そういうことが、自分も歳を重ねてリアルにわかった。だから、スピッツが今も変わらずスピッツの幻想世界を、ロックバンドとして四人で作り続けていることが本当に嬉しい。あなた達を愛して良かった、と思う。スピッツはとてもマイペースなバンドです。そのマイペースさと幻想世界が、無理なくひとつのものとなっている。そんなロックバンドなのです。激しく燃え尽きるようなのだけがロックじゃない。むしろ私はスピッツの、土に根付いて小さな花を咲かせるような、誠実なマイペースさこそを、真にロック…というかパンクとすら言えるのかもと思う。

UNISON SQUARE GARDEN「Ninth Peel」


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「ロックバンドは、楽しい。(1stアルバムの帯のコピー)」ということを自らのバンド生活で証明し続け、今年で20年。続けることで見えてくるロックバンドの素晴らしさ…今、スピッツのとこでも書きましたが、そうなんですよ。何十年やって、アルバムを何枚も出して、初めて見えるものがある。

ただ、これもスピッツのとこで書きましたが無理のない「マイペース」っていうのも難しいものです。こう言っちゃなんですが、ユニゾン(特に田淵)も「マイペースであろう」とバンド自身に言い聞かせているようなとこが見受けられます。そうでなきゃ揺れてしまうのが、落とし穴の多い音楽業界なんでしょうね…。

だから私は、この9枚目のアルバム「Ninth Peel」が、マイペースな活動の結果として出たアルバムだってことを好ましく思っています。

ぎゅうぎゅうに情報量を詰め込んだり(CIDER ROADの時期)、ガチガチに完成度を上げたり(MODE MOOD MODEの時期)、っていうのもバンドの歴史の中では大事なことですが、それをずーっと続ける、っていうのもこれはこれでまたバンド活動の健全さからは離れるわけです。

音楽業界の彼らへの期待度もあります。バンドメンバー自身がロックバンド「UNISON SQUARE GARDEN」に期待する物語もあります。どっちも必要なものなのでしょうが、USGは三人とも、今はつとめてバランスを取ろうとしているように感じることもあります。斎藤さんのXIIXでの活動、田淵のアニソン作家業とThe Kebabs、貴雄のyoutubeでのドラム解説講座…。(この貴雄のドラム講座、僭越ながら自分も作曲をする人間として、凄く良かったです)


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なかなかマイペースを貫き、バランスを取りながらバンド生活を続ける、っていうのも大変だよなぁ、と思います。それでもUSGは「ロックバンドは、楽しい。」を証明する。頑張っていって欲しいと思います。私はUSGのバンド生活の物語を追い続けたい。

と、いろいろ書きましたが、アルバム1曲めの「スペースシャトル・ララバイ」が私は好きすぎてですねw 成層圏を抜けてどこまでも突き抜けてしまえっ!的な爽やかなロックナンバーです。このアルバム、コンセプトアルバム感はなく、アルバムトータルでの完成度をギリギリに高めているわけではないです。でも、良い曲はとても良い曲だし、アルバムタイトル曲の「City Peel」だってなかなかの穏やかな都会派ポップスですし。良い曲はいっぱいある。そして彼らは「長くロックバンドを、楽しく続けていく努力」をしている。それで良い、と私は思いました。

 

Mammal Hands「Gift from the Trees」

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イギリスのジャズレーベル「Gondwana Records」から2023年に出た、トリオ編成のジャズバンドの新作です。私はこのレーベルを推しているのですが、去年はこの作品がとても良かった。

サックス、ピアノ、ドラム/パーカッションのトリオ編成で、ベースレスです。音楽性というか音像は、静謐、叙情的で、透明感ある音作りをしています。ビートはもちろんありますが、どこかアンビエント感のある音響でもあります。聞いていて、目を閉じたら、遠くの風景がふわっと幻視してしまうような音の世界観です。なので、それはもしかしたら「ニューエイジ的に綺麗」と癒えてしまうところもあります。でも私はニューエイジ音楽の愛好家です。私はこの幻想的で静謐な「ジャズ」を支持します。上海アリス幻樂団が好きならば当然の帰結ですね(東方原曲=ジャズ+ニューエイジ)。ていうか、ひょっとしたらGondwana Recordsの諸作、東方ファンに結構訴えかけるところがあるのではないか?とふと思うのですがどうでしょうか。

休日、趣味人同士で。「ベノム」


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作曲者・かいりきベア氏に対してとても悪い表現かもしれませんが、このカバーを聞いて「この曲ってこんなに良かったんだ」と思ってしまいました。こりゃ確かに悪い表現ですねすいません。この曲のメロディラインそのものの良さに気づくのがこんなに遅れてしまった。

この曲は「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(以下プロセカ)という、ボーカロイド(楽曲)を全面的に用いたゲームから生まれたカバー曲です。ゲーム上ではちょっとイレギュラーな立ち位置に居るユニットの4人による歌唱です。

このユニット4人による個性と可愛さのあるvoにメロリンであります。歌唱力も萌えも充分以上。率直に、耳が幸せです。これが「アイドル推し」ってやつですかッ!?なんということだ…私は…ついにアイドルの魅力というものを…

さてプロセカ。このゲームを通じて、いろんな人たちがボカロ曲の魅力を再発見、というサイクルに入っているようです。それは良いことだと思います。過去の名曲は、再発見されなければならない(断言)。それは音楽レビューの大事な仕事ですし、そもそも渋谷系だってレア・グルーヴだってそうだったでしょう?

MORE MORE JUMP!「モア!ジャンプ!モア!」


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(ナユタン星人による初音ミク原曲ver)


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2023年の紅白歌合戦を私は見なかったのですが(理由:自分の音楽digや創作に忙しい)、家族が紅白を見ていて、私が自室に戻る時にV(バーチャル)なアイドルグループ「すとぷり」が出ていました。イントロが流れて即座に「これナユタン星人の曲じゃない?」と思い、作曲者クレジットを見たらやっぱり!ナユタン星人氏作曲「スキスキ星人」でした。おー、ナユタン星人氏、紅白で流れるくらいの作曲家になったのかー、と感慨がありました。

さて、そんなナユタン星人氏がプロセカに書き下ろした曲「モア!ジャンプ!モア!」ですが、さすがナユタン氏です。作曲家業が順調で良かったです。そりゃ私個人は「ナユタン星人」本隊としての新作フルアルバムを待ち続けていますが、まぁそれはファンの欲だ。「物体N」からそろそろ4年経とうとしていますが。アルバムでないと「ストラトステラ」や「カノープス」的な切ないエモ名曲入れられないからなぁ(しつこい)

しかし本曲良いですね。原曲もMORE MORE JUMP!verもどちらも良い。MORE MORE JUMP!の方、それぞれのキャラ性豊かな歌唱&コーラスが良いです。とくに桃井愛莉の、不安定でも荒っぽくても「私は歌う!ここに居る!」という意志が感じられるボーカルが、「あなたのハートをずっと離さないから」でセンターになった時の高まりがこの曲のハイライトです。

・ヨルシカ「幻燈」


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CDでもレコードでもなく、「音楽画集」。絵をARコードとして読み取り、絵と歌詞を見ながらスマートフォンタブレットで再生して聞く「音楽体験」をしてくれ!という作品です。

実際私は体験して、なんか「久しぶりにレコードを聞いたな」という気持ちになりました。カセットテープを愛好しているとはいえ、日頃、MP3プレイヤーやYoutubeでインスタントに音楽を聞いてしまっている私です。Youtubeなんてコメント見ながら音楽聞いちゃってさぁ。SNSなんてどうでもいいでしょうに。

そういう私が本作を聞いて「久しぶりに音楽を静かにしっかり聞いているなぁ」と思ったのは情けないやら何やら。日頃、忙しすぎるのかなぁ。何のために働いてるんだ。趣味のためでしょうが。ともかく私は音楽作品(盤)としっかり向き合うことの大切さを改めて思いました。

作品の内容もまた、静かに心沈み込むような静謐さと情感があります。n-buna氏は本作では、キリキリに神経を研ぎ澄ます世界ではない、ふわっとふっくらした人間の暖かさがあります(今までも暖かさがなかったわけではないですよ。ただ卑屈な神経っていうのもあったじゃないですか)。
幻想世界は「第2章 踊る動物」からどんどん深みに入っていきます。幻想の色が、濃くなっていく。変なものも出てくる。

それはつまり、n-buna氏とsuis氏が、幻想としっかり向き合っているということです。彼らヨルシカは、幻想を抱えながら現実で生きていくことで、時に壊されそうになるなんてことは、もはや織り込み済みで、それでも幻想と向き合っていこうと、物語を音で紡いでいこうとしている。ヨルシカは、夏草の彼方消え去るようなバンド生活を選ぶのではなく、しっかり幻想と向き合って音楽活動をしていこうという気概。

もしかして、こういう暖かみの境地すらも含めて、音楽画集という形式にしたのだ、としたら…それは深読みし過ぎかな。それでもともかく、この音楽画集での視聴体験は、良い体験でありました。この作品を聞いたあの春の宵の質感を今も手に取れるかのように覚えている。

 

また長くなったので切ります。次回(3)で終わらせにします。ラインナップはちょっと追加して、

人間椅子「色即是空

アメリカ民謡研究会「戻れ戻れもどれもどれも」

・東方獣王園BGM「タイニーシャングリラ」

・MONO「FENDER SESSIONS」のライヴ演奏

・なみぐる feet.ずんだもん「ずんだパーリナイ」「ずんだシェイキング」

・Где Фантом?「Это так архаично」

ZAZEN BOYS「永遠少女」

 

です。それではまた次回〜。

(つづく…)

2023年に良く聞いていた音楽(1)

こんにちは。この日記ブログ「残響の足りない部屋」は、私・残響が模型やおもちゃや書物、外国語でいろいろ遊んだりする日々と、お気に入りの音楽を記録している日記です。

「残響の足りない部屋」では例年、年が明けたら「去年良く聞いていた音楽」を列記しています。
今年も選考基準は例年の通りで、

発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り

です。

 

2022年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

2021年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

2020年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

 

改めまして、上記の選考基準を設けた理由を書きます。私は個人的に「その年に発表された作品」だけでベストを組むのが苦手なのです。去年(2023年)私が聞いていた音楽は、2023年のものもあれば、1930年代のものもありますし(その間ほぼ100年あるのだな)、ジャンルも滅茶苦茶です。「今」と「昔」と「世界」「ジャンル」がぐちゃぐちゃになっている。

そういう音の聞き方しか出来ないし、そういう音のカオスを愛している。だから「2023年に発表された作品」という切り取り方が、自分に凄く馴染まないのです。どうにも「今」だけを切り取るのが苦手だ。

なので「2023年に発売された作品」を列記することで、現在進行系の音楽シーンを語る、というのを、「私は」あまりやる気にならないのです(他の方がなさっているのを見るのは楽しい)。それよりも私が去年何を聞いて何を思ったのか(心象風景)、というものに自分で興味があります。自分が聞いたさまざまな音楽がカオティックに在ることと、音から見えた心象風景にのみ興味がある。ひとり語り極まれリですね。でもこれはしょうがない。

※この日記ブログで定期的にやっているお気に入り音源シリーズ「最近わたしの音の暮らしはこう」も、「最近のシーン」は語っていなく、結局「今自分が気に入っている音源の列挙」なだけですし。

 

ランキング順位を決めるのも苦手なので、順位もつけていないです。数学は好ましく思っていますが、計算は得意でないのです。

さてそれでは。

 

稲葉曇「電気予報」


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去年2023年は私にとって「稲葉曇氏を発見し沼った」一年でした。惚れました。

リフやベースラインやドラムアレンジなど、柔軟にリズムセクションを練り上げる音楽性。電子音や、フェイザー系、ロータリー系のエフェクトがかかった電気ギターなど、特徴的なサウンド

そういう音から、ぢりぢりと体温が下がっていくかのような「諦念」ある独特の世界観を紡ぎ出します。どこか寂しい。余白の空間がある。なんだかどうしようもなく虚無を内包している世界を、軽快なサウンドで展開します。聞き心地は良いのに、なんだか考えさせられる。曲の登場人物が抱える虚無を、私達リスナーも感じ取ることが出来る。

そんな作曲家・稲葉曇氏に沼って、まず2ndアルバムを買い、当たり前のように1stアルバムを買いました。今、一番新作アルバムを楽しみにしている作曲家です。アートワークを担当している、ぬくぬくにぎりめし氏の絵&デザインも素晴らしい。独特の虚無・諦念のあるミニマルな世界観は、ループ演出を多用した動画(MV)でも表現されていて、この動画も稲葉氏とぬくにぎ氏が編集しています。世界観を二人三脚でしっかり作っている。その誠実さもうれしい。

この稲葉曇氏という作曲家の作品は、「この人ならでは」というシグネチャーの個性があります。ここで貼った「電気予報」はゲーム「ポケットモンスターポケモン)」とのコラボ曲ですが、ポケモンネタのみならず、ゲーム作中でのBGMや効果音、を盛り込みまくった職人的な一作です。そんなギミックたっぷりな曲なのに、聞き通すと「実に良い曲だッ」と、まるでしっかりした食事を食べたような心の満足感があります。赤と緑とカードゲームとおもちゃと金しかポケモンやっていない私でもそのように思えるのですから、ポケモンファンも音楽ファンも皆納得するレベルの曲です。そして稲葉曇という作曲家が現時点で残している名曲は他にも数多く、さらには稲葉氏はまだ若い。これからがあまりに楽しみすぎます。

 

もちうつね「おくすり飲んで寝よう」「風呂入るプロファイル」


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もうすでに「こころが病んでます」という世界観をふわふわkawaiiサウンドで送る作曲家(ボカロP)です。それも、今心が病んで辛い、というより、もう前から心が病んで疲れて、そんな日々も当たり前になって麻痺して…というものです。言葉にしたらひどいな。でもそんな日々の気持ちに対し、私は「共感」というだけでは足りない…私はまさに「静かな共鳴」とすらいえるものを感じます。

別に今、誰をも攻撃していない。自分自身に嫌になっているのは確実だけど、そういう自己否定となんとか付き合っていこうとしている(うまくいけば)。そういうユーモアはギリギリのユーモアだけど、それでもなんとか世界と戦っていこうとしているんだと。

ただ、もちうつね氏のふわふわkawaiiサウンドボーカロイドのウィスパーボイス調教には、「皮肉っぽさ」はないんですよね。むしろ音自体は凄く純朴な電子音ポップスといえるかもしれない。だから、聞いていて「うへぇ…」という疲れる感情は持たないのです。そこは凄く良いですね。

King Gizzard and the Lizard Wizard


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オーストラリアの多人数ロックバンド。延々とリフでガーッと長時間どこまでもいっちまう系の音楽を演ります。ジャム・バンドっぽさというよりも、とにかく「リフで延々と爆走する」という感じ。そこに変なギターアドリブや改造ギターのピーピー音を入れたり。なんかアラビック・中近東っぽいフレーズも入ったりする。とにかくそんな感じで突き抜けていくバンドです。

そこが良い。私は全然退屈しなかったです。バンド演奏のイキも良いですし、リフやメロディ自体はキャッチーですし。

 

【NEEDY GIRL OVERDOSE×東方風アレンジ】「東方雨超天 ~ After Happy End World」「依存性幻想ヌクモリティ ~ Internet Yamero」


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力作! 病んだ令和のVtuber配信の世相の闇をテーマにしたゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」を東方projectパロディというか、東方世界=幻想郷の中に無理やり入れ込んじゃうクロスオーバー二次創作作品です。

「NEEDY GIRL OVERDOSE」のメロディを東方風にアレンジし、MVも東方原作のシューティングゲーム画面を再現。ネタ・遊び心、そして双方のゲームに対する愛たっぷりの二次創作です。ドット絵のシューティング画面ひとつとっても、「ほんとにどっちも好きなんだなぁ」と思わされます。ネタとして思いついても、ここまでの莫大な作業量を現実のものにするといったら。

何より、アレンジ曲自体が、曲として良いんです。たしかに「ここはZUN氏だったらしないメロ展開だな」というのはありますが、そもそもニディガの曲=Aiobahn氏のメロディですからそこは当然。むしろここは「双方の良い所が溶け合っている」と言いましょう。BOSS曲のメインフレーズ(INTERNET OVERDOSEのアレンジ)の展開なんて燃えますし。

 

 

長くなったので一回切ります。次回以降の音源ラインナップですが、

スピッツ「ひみつスタジオ」

・Mammal Hands「Gift from the Trees」

・休日、趣味人同士で。「ベノム」

・MORE MORE JUMP!「モア!ジャンプ!モア!」

・ヨルシカ「幻燈」

人間椅子「色即是空

アメリカ民謡研究会「戻れ戻れもどれもどれも」

・東方獣王園BGM「タイニーシャングリラ」

・MONO「FENDER SESSIONS」のライヴ演奏

UNISON SQUARE GARDEN「Ninth Peel」

・Где Фантом?「Это так архаично」

ZAZEN BOYS「永遠少女」(これは2023年というより、今年2024年発売のアルバム「らんど」に向けて)

 

といった感じです。よろしくお願いします。

(つづく…)

 

最近わたしの音の暮らしはこう 2023年冬

前回のお気に入り音源記事

最近わたしの音の暮らしはこう 〜2023秋に向けて〜 - 残響の足りない部屋

前々回

最近わたしの音の暮らしはこう 0824夏 - 残響の足りない部屋

●近況(病状)

寒いですね。冷え込み厳しくなってきて、先日風邪をひきました。

年の瀬・師走で仕事に穴を空けられないなぁ、新作漫画も描きたいしなぁ、と、このタイミングでの風邪はまずい! なので頑張って早めに治しました。

ところが風邪が治ったら今度は腰痛が差し込んできました。常時ピリピリ痛。一番ひどい時は、足元に置いた小さいゴミ箱をひょいと持ち上げる時「グワァッ」と重い痛みがきますから。これもマズい。

そういうわけで現在は腰痛の自己治療です。なるべく休養に徹したおかげで、なんとか腰は治りつつあります。屈伸などの静的ストレッチが効いています。こうした「攻め」の自己治療が出来ることがうれしいですね。

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さぁて、そんな風に腰を治しつつあった矢先に、これを書いている本日の日中は仕事用のPCがヤバめの状態にッ!何とか仕事伝票を出したはいいものの、仕事メールの復旧がッ!どうする?こうする? そんな時の一曲はこちらッ!

 

よわいさかな「はたらきたくない!」


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ピコピコできゅーとなサウンド、かわいいヴォーカルは音楽的同位体「可不」(バーチャルシンガー「花譜」の声の歌唱ソフト)、歌詞は社会の闇、倦怠感、疲労感です。

前にご紹介したもちうつね氏の曲もですが、私この1年結構こういうサウンド聞きましたね。毒や虚無の世界観の上で(あるいは内包して)いわゆる「Kawaii」系のほわほわピコピコ疾走サウンドを展開する曲。年が明けたら今年も恒例の「2023年に良く聞いていた音楽」をやります。


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2022年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

2021年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

 

●最近わたしの音の暮らしはこう 2023年冬

アメリカ民謡研究会「戻れ戻れもどれもどれも。」


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その年間記事でも書くつもりですが、今年の年間ベスト曲はこれかなぁ、と。まだ今年2023年に出る曲はありますが(更新されたらそれはそれで最高)。

全天球の虚空に響いていくシンセサイザーのリフ&メロディの荘厳さ。見果てぬ夢か。あるいはもう戻らない切望の悲しみか。

リズムは一定に軽快に進み、合成音声にしか出来ないおどけた喋りが、どうしようもなく「手の届かなさ」や「戻らなさ」といった諦念(あきらめ)を感じさせます。

それでも、それでも…!ともがくように何かを希求する姿。そういう虚空の荘厳さにやられました。

アメリカ民謡研究会の曲の中でもメロディアスな一曲ですが、単なる「キャッチー寄り」なわけではないです。むしろアメリカ民謡研究会・Haniwa氏の新境地と言ってもいいとすら思います。それはかつてのスタイルをさらに練りこんだ先の進化系として。

 

アメリカ民謡研究会の研究 - 残響の足りない部屋

↑ 過去(2020年)に書いた記事

 

和ぬか「絶頂賛歌」


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いや~、令和に入ってからの昭和レトロ再評価とか、シティポップ再評価。そんな風に昭和~平成初期の歌謡ポップスを完全に咀嚼しての「令和の歌謡ポップス」を、こうして力強く自信を持ってドンとお出しされたら。

とにかくキャッチーです。調子こいた夏のせっくすソングと言う側面ももちろんあるんですが、それよりもナイーヴな歌唱、キャッチーなフレーズ、盛りの夏の妖しさ、歌謡性、それらを高度なラテン味アレンジメントでビシっとまとめてくれると「良しッ!」となります。これが令和のポップスです。

令和のポップス(ポップ・ミュージック)は本当凄い。基本路線としてレトロ再解釈とか、ニューウェイヴ歌謡曲とかっていう方向なんでしょうが、何せシーンのレベルが高い。それでいてコアなロックやテクノも元気だというのだから。メジャーとアングラ(って今も言うのかなぁ)、新人とベテランが、それぞれ相互に健全に影響しあっているように見えます。それは良いことだと思います。洋楽コンプレックスも、かつてほどには無くなってきていると思う。そしてそれで良いと思う。

そりゃ、「またレトロでエモい路線?」っていう風に感じる方の気持ちも、ちょっとわかるんですが。しかし私の立場としては、「レトロでエモい路線」は嫌いじゃなく、そして現在のようにレベルが高いので、特に文句がない、です。我ながら安穏とした立場やのぅ、とは思いますが。これもLo-fiの美学にハマっちまった残響さんだからなぁ。

 

100s「世界のフラワーロード


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中村一義のバンド作(100s名義)。

なんか最近、このアルバムをよく聞き返してるんですよ。Lo-fiの流れというよりは…多分それはないわけではないけど、Lo-fi直系じゃない。

2009年に発売された時ももちろん買って聞いてるんですが、その時ハマりきれなかったんです。凄いってことはわかるんですが、その時の自分とちょっと距離があった。自分のリアリティと…いや、自分の人生と、かな。距離があったのは。

中村一義が見ているのが、「幼少期の自分(が育った原風景)」というのは2009年当時からわかっていました。。しかし私(残響)自身は、その当時、まだ自身の「幼少期の自分」に向き合いきれていなかったのです。当時は当時で余裕がなかった。持病とか大学院中退とか。その日を生きるだけで精一杯でした。幼少期の事がとても大切なんだとわかっていたにも関わらず、向き合えるだけの余裕がない。

なんだかんだ私が実際に「幼少期に育った町」へ再訪できたのが、それから5年経ってのことでした。それまで日々ドタバタで、また持病を治すのも時間がかかりました。でも、なんとか再訪が出来て、世話になった人とも再会できて。そこから、「幼少期の自分」を、ある程度自分の中で位置づけられるようになってきたのです。

そんな風にして、ようやっと私は自分の幼少期と向かい合い、ある程度相対化し、冷静に見れるとこは見て、その上で過去を慈しめるようになりました。この過程を踏まなければ、アルバム「世界のフラワーロード」は、私の中でちゃんと位置を占めることが出来なかった。それくらいこのアルバムは自分の中で「判断保留」にしていたアルバムでした。

今なら、中村一義がこのアルバム全体で言いたかったことが何なのか、っていうのがわかるような気がする。というか、私も自分の原風景なるものを、ちゃんと見れるようになったからこそ、中村一義の原風景も「なるほど」とか「そうだね」って感じで見れるようになったと思うのです。

確かこのCDのジャケットの帯に、「あなたの中で生き続けるアルバムでありますように。」と書かれていました。本当にそうなっていたアルバムなんだなぁ、と深く思います。

 

 

SF小説その後

SF小説ですが、「赤いオーロラの街で」を楽しく読みました。そして伊藤計劃「ハーモニー」を買いました。サミュエル・ディレイニーの「ノヴァ」もKindle洋書で(安かった)。

また、前の記事でご紹介したfeeさんのブログ「止まり木に羽根を休めて」にて、とても有難いお勧め記事を書いて頂けました。現在、この記事に従って少しずつSFを読んでいっています。改めましてありがとうございます。

次回あたり、そろそろ現在のSF読書状況をちょっと書こうかな?と考えています。

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最近わたしの音の暮らしはこう 〜2023秋に向けて〜

追記更新

2023/10/06 youtube音源を2つ追加で貼りました。

体重計に乗ってみた

最近お腹に手を当てると、どうも前より「ぷにょん」としているような気がする。かわいらしいオノマトペを使いおって。それはまごうかたなき脂肪の塊であり、いづれ死と苦しみをもたらすものだ。

とりあえず計測であります。体重計に乗る…。

 

太ったァァァア!

アァァ

ァァ……

 

…さて、日記を書きましょう(急に正気に戻るな)。
しっかし、こんな短期間でこんなに太るかね。

作業の予定

最近私がやろうとしていることは主に、

・4コマ漫画作成

・これまで作成して各地に散らばらせたままの作品群や文章を、索引(ポータル)的なページを作ってまとめ

のふたつです。

4コマはネームが完成しました。7pの作品と4pの作品のふたつで、それをまとめて同人誌にします。例によってホームページに全文掲載です。

 

それからまとめページの事ですが。
これまで私は、その場の勢いと好奇心でいろんなwebサービスに手を出し、文章を書き散らかしてきました。あんまり各所で書くものですから、どの文章、どの作品(音と絵と写真)がどこにあるか、もうわけわからなさが滅茶苦茶なわけです。この私であっても、その散逸具合が「ひどいな」と思うくらいですので、他の方からしたらそりゃあ「サイト(コンテンツ)が迷路状態」って話です。これは何人もの方に言われています。
なんとかします。ページを作って、各コンテンツへのURLリンクに、簡易説明とタグカテゴリを貼る。そんな感じに作ります。

 

最近わたしの音の暮らしはこう 〜2023秋に向けて〜

稲葉曇氏の新曲が近々公開だそうです。タイトルは「電気予報」で、ポケモンを題材にしたコラボ曲とのこと。

稲葉氏の活動がどんどん躍進していくことは嬉しいですね。新曲を楽しみにしています。新しく作曲家に沼り、その新曲が楽しみというのは、とても良いことですね。

(公開されたら試聴音源貼ります)

→公開されました。詞にも曲にもSE(サウンドエフェクト)にもガッツリポケモンネタを盛り込みまくりですね!


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人間椅子の新譜「色即是空」ただ今聞き込み中でございます。

往年のアニメ・特撮の主題歌で有名な作曲家、故・渡辺宙明氏の影響はなはだしい「宇宙電撃隊」のヒーローソングの勢い(デ・ン・ゲ・キ!)。

和嶋慎治さんに染みこんでいる渡辺宙明のスキャット 「人造人間キカイダー」「マジンガーZ」にシビれた|好書好日

人間椅子のアルバムのラストトラックはプログレ大曲にして名曲、というのがこれまでの様式美でしたが、今回も凄いですね「死出の旅路の物語」。勇壮なフレーズにヴォーカルメロディ。ハードで神話的で、人間の生を後悔なきよう問いかける歌詞。

今回のアルバムも充実がすごい。もちろん音楽性はハードロック/プログレでこの30年全然変わっていないわけですが(素晴らしい)、今回の「色即是空」、作品としての佇まいが、ずっしり重心低く感じられます。「どこからでもかかってこい」みたいな揺るぎなさも感じます。「デ・ン・ゲ・キ!」というキャッチー極まりない衝撃的なコーラスも、アルバム全体のしっかりした「勢い」の流れで聞くと、「これもバリエーションのひとつだね!」と感じさせられるのだからたいしたものです。

(それにしてもまだかなぁyoutubeでの新譜曲からのMV、あるいは視聴用クロスフェード音源のup…)

→アルバム第1曲目「さらば世界」のMVがupされました。なんとCG背景を大々的に使用!


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ところでブルアカ(ゲーム「ブルーアーカイブ」)の曲で一番有名なのっていったらやっぱ「Unwelcome School」になるのかしら。


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とにかくキャッチーなリフです。キャラ性に合ったおまぬけさ。「緊急事態!」なスットコ感があって、それでいて結構攻撃的な色彩もあり、リズミカルで、何より一度聞いたら離れない「耳につく」リフです。これはほんと発明的なリフだなぁと思います。東方でいったら例えばU.N.オーエンみたいな。

なにせ、いろんなリミキサーがそれぞれのスタイル・ジャンルでどんな風に強力にアレンジしても、リフの力が弱くなることは一切ないという。むしろアレンジ先のジャンルに意外なほどぴったり合って良い曲にしてしまう、というのですから。名リフってそんなものかもしれませんね。醤油みたいなもんですね。え、違う?


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今月末にあるM3-2023秋ですが、サークル・8TR戦線行進曲はオンラインイベントのみに参加します。詳しくはサークル8TRのページにて。

同人サークル「8TR戦線行進曲」 – レッズ・エララ神話体系

新譜は今回はありません。

ところで私残響ですが、M3当日はなんと所用があり、常にPC前に張り付くことは無理になってしまいました。無念です。帰宅したらちゃんとチェックします。オンラインイベントの開催はM3当日(10/29日曜)だけでないので、私は他の日でじっくりサークルチェックを行いたいと思います。今回も楽しみにしています。