残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

過去に作った詩

この詩に関しては7月31日分の更新をご覧下さい。

○森の中の穏やかな光

森の中となってしまった街である。
その巨石には一面に苔が生えている。
その苔のパッケージングにささやかな光が降り注ぐ。
しかしそれは特別なことではない。一週間に3、4回必ず繰り返されていること。
森は一つの生命である。
全体を包括する一つの得体の知れない何かである。
そのなかに樹とたわむれる風と鳥があり、堆積と滋養とを繰り返す土壌がある。
この街もその一つ、パーツの一つ。
でも街はそのことを嫌がってはいない。
ゆったりと時を眺めてみよう。
街は森の中でひなたぼっこをしていた。
幾千もの大樹やつるや影に囲まれ、天井には青空のふたがある。
あと二十年くらいしたら、この巨石も砕けるだろうか。小さなひびが、やや目立つ。
石柱のふもとには一匹の獣がいる。
黒い毛に包まれたそれは、今はただ寝ている。
顔を前足にうずめ、石柱のもとに一匹で居る。
その石柱に寄りかかるように、強い日差しが降り注ぐ。
獣はそれを感じ、光源を一度ちらっと見て、再びうつぶせになる。
ちょうど獣の今の状態の高さまで、草が並んで生えている。
石柱を見上げている。
その草は、やがてつるとなって柱に巻きついていくのだろうか。
それらは連続の一部。
過去から未来へ悪夢のように、
怪物のように連続していく、
流れの一部。