残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

修道院は眠らない

祭壇にある四神をかたどった木像を、ろうそくの明かりは照らしている。小さな太陽の光のように、闇の中、神々の姿を照らしている。
黒衣を身にまとった修道士と修道女の二人は、目を閉じ、胸の前で両手を組み、かすかにうつむき、祈りを捧げていた。
そうして沈黙が続いていく。二人はその場から一歩も動くことなく、街路樹のように立っていた。手も、蛇のように動かすことなく、岩のように硬く組んでいる。そして瞳は、深い洞窟の中で胎動する風のように、そっと、しかし確固とした意思をもって閉じられていた。二人は動かなかった。顔も、体も、微動だにせず、祈り続けていた。
やがて、二人は全身の力を抜き、傍らに置いてある厚い聖典を手に持ち、機械のように所定のページをめくり、詠唱を始める。月の神よ、あまねく寒き光のさらに果て、と続いていく。その声は礼拝堂のとても高い天井に反響しながら上っていく。言葉は闇の中へ消えていくが、しかし次から次へと、聖なる言葉は、高く深い闇へと上っていく。鳥のように。詠唱を続ける二人は、無言で祈っていたときと同じように、体を一つの形に固定し、そして言葉を紡いでいく。何度も同じ言葉を唱えてきたのだから、どのようなリズムで唱えればよいのかわかっている。同じ道をまた今日も辿るのだ。
少々、この二人の修道士が人形のように見える。揺らめく明かりに照らされる、暖かく輝く光と深い闇の中に居る二人は、時々、人形ではないのか、と軽い錯覚を起こさせる。しかし、それは錯覚である。

(続く)