残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

修道院は眠らない

闇の中に始終いれば、その闇の深浅に敏感になる。水の熱さ冷たさのように。二人は闇の移り変わりを見て、祈りを始め、祈りを終える。
夜更けがある。獣が寝そべるように、空と大地の狭間に。窓の外は、様々な黒色でいっぱいだった。森は闇と一つになり、木々の混沌はそのまま闇の混沌だった。一つの暖かささえなく、どす黒い闇が窓の外にあった。光は、祭壇と二人を照らすのみ。部屋全体から見たらその明かりは小さく、ひっそりとしたものであった。
祈り続ける。二人は動かず、ただ祈り続ける。何も語らず、目を閉じ、待ち続ける。
月の光は鈍く届く。そのせいで、夜は一層暗い。天井から、背後から、闇がまとわりついてくる。粘度の高い暗さが忍び寄ってくる。死神の手のように。かすかな光は二人を包む。しかし、闇から逃れきることはできない。深さを増していく夜の闇。一つ一つの音が消えてゆき、生命の気配が消えてゆき、静かで荒れ狂う黒色に飲み込まれ、押し潰され、一色になってゆく。闇の中に二人はいた。ただ二人、暴風の中の木のように立ち尽くしていた。祈り続ける。神に向かって、二人は、一心に祈り続ける。ただそれだけをしていた。闇に流されるのではなく、自らの意思を投げ捨て機械のようになるでもなく、二人は、静かに祈っていた。

(続く)