残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

当代の批評について

ブログのデザイン

また変えました(配色を赤に)。ほんとにもう、コロコロ変わりますね。

いいかげん落ち着きたいものですが。

批評について

思うところあって、批評について日ごろ感じていることをつれづれなるままに書いてみようと思います。

「大きな物語」が失墜した……というより事実上無化したことは、人々の精神安定/衛生上悪かろう、としみじみ思います。
というかキツいよなあ……と。
我々はみな風に吹かれる葦のごとき存在です。
パスカルの例の言葉も裏を返せば、「けれど現実的にはそよぐしかない葦である」をという留保を含んでいます。 
人間、何かに対して出来ることなんてほんと「ない」です。
すべては運と成り行きでしかない、とつくづく思います。
フランス現代思想ジャック・デリダとか)は人間同士が「繋がりあえる」ことなど、絶望的以上に絶望的であるということを白日のもとに看破しました。
21世紀の我々はそのような焦土的状況のもとの葦なのです。

「俺は絶対的権威なんていらんもんねー! 独立独歩だもんねー!」
なんて空うそぶくひとはいつもいます。
もちろんわたしはそういう人に向かって、「中二病!」というツッコミをしたくなる立場の人です。
けれどつっぱらずには意識を保つことすら困難なのがこの現代なのかもしれません。
そう考えれば肝要にもなれるもの……?
それはともかく、我々は弱い存在です。絶対的なるものを求めます。共同幻想を求めます。
複雑な世の中を上手く読み解ける手段を求めます。
「大きな物語」は安全弁だともいえます……それによって圧殺されてきた人たちがいたとしても。
……最大多数の最大幸福? ああ嫌だ。いつもわたしが「敵」と目しているものを弁護しなくてはならないとは。

それでも生きていかねばならないというのが人間の運命です。
いやおうなしに適正進化を遂げていかねばならないのが人間です。あーあ。
そんな社会において批評が果たす役割のうちの一つに、適正進化へと導く道しるべを指し示すことがあると思います。
世界の腑分けをして、我々がどこに進むべきかの矢印を提示すること。
最終的には、全人的な幸福のために。学問の最終目的は常にそこですね。

そこで現在の論壇を振り返ってみます……もっとも不学のため、全体を見渡すとまではいきません。
というわけで、印象批評で失礼しますが、
……議論は大いに結構。ただし、品のない揚げ足取りに終始してしまうのはどーにかならんものか。
質の悪い批評は質の悪い小説よりももっとタチが悪い代物です。
明確に透けて見える悪しき自意識が文章を通してダイレクトに伝わってくるからです。
「批評」という形式はそのような「悪しきもの」を介在させやすい要素を含んでいます。
批評家は何よりも倫理を持たねばなりません。おそらくは主張よりも……千々に乱れ、流転する主張よりも。
論旨の一貫性というものも、倫理から生まれ出てくるものと思います。「善き意見」というものは。
なのになんですか、非モテ論壇? ニート論壇? オタク論壇? 
その内実はよくは知りませんが、話を聞く限り、正直、言説が無意味に過激すぎる気がします。
オピニオンというものは、アジテートでもシュプレヒコールでもないはずです。ましてデマゴーグのコピー・アンド・ペーストに堕しているものなど、「言論」の名を冠するに値しません。
別に論壇プロレスを否定しているわけではないのですが。
言いたいのは「建設的であれ」ということです。最終目的を見失ってはいけない、ということ。
そしていかにすれば建設的な議論の道筋を見失わないかというと、再三言いますが、やはり「倫理」がそこには必要になってきます。

……書いていて思いましたが、わたしって潔癖すぎますかねー?
人間そんなに「滅私」が成り立つわけないよ、自意識が出るよ、と。
それは確かにその通り。
けど、議論をするなら、言説を世に問うなら、最終的にはみんなが「善きもの」に包まれるような結果に落ち着きたいじゃないですか。
わたしは夢見がちなのかなあ? きっとそうでしょうね。でもこの理想を捨てるつもりはありません。それがわたしの「批評的倫理」だからです。
わたしが敬愛する批評家は皆各々のきちんとした倫理を持っています。Nagaleさんにせよ、東浩紀氏にせよ、吉田秀和氏にせよ。

長い時間の中で身に着けてきた「批評的倫理/その道に生きる者はどのようにあるべきか」を。だからわたしは彼らの文章を愛好し、そのあり方を尊敬するのです。

語ってみました。

長くなっちゃいました。ごめんよI君(乗り物好き)、および閲覧者のみなさん。
でもまだ語りきれてない(笑)
批評における同時代性とか、サブカルを対象とすることについてとか。
まあまたおいおいと……。

水面下でいろいろと企画が進行しています。
わたしの知人は「ああ、あれか」と検討ついたりつかなかったり?
うん、胸に秘めておいてください。
何にせよ、形になってから披露したいと思いますので。
ドント・ビカミング・オーカミショーネン。

小説はぼちぼち進んでいます。
次回はそれの報告と、久々に詩をアップしてみようかなー、と。
じゃ、また〜。

本日のBGM:小曽根真The Trio『新世界』(日本のコンテンポラリー・ジャズです。リリカルなピアニズムが素敵。ストリングスも入って、シックな出来です。)