残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

夢は夜の人のために(詩)

夢は夜の人のために

夢を見ましょう、夜空に光るは金色の月
夢を見ましょう、煉瓦屋根の町並みは目を閉じて
漂うアイリスの香りは遠い記憶を呼び起こします
まっすぐに走る狼の儚さを

けれど「哲学の鍛冶屋」は眠りません
彼は夢に出てくるあれこれを鍛え上げます
甲高いハンマーの音と燃え盛る炎
夜に包まれた鍛冶屋の熱は静か

だから夢の中には化物が出てくるのです
夢の中でも私たちは現実と立ち向かわなくてはなりません
……何とむごいことでしょう!
私たちは馬車に乗ってもどこにも行けないのです

フクロウはそれをじっと見ています
月と同じ黄金の輝きの瞳で
夜の闇が漸近するは死の深淵
愚かだ、とフクロウは嘆きます

ならば私たちは黒い騎士にならなければなりません
安らぎがどこにもないのであれば
滴り落ちる化け物の血を浴びるか
その牙に喰い殺されるしかないのです

いよいよ金色の月はあざ笑うかのように光輝きます
夜霧が街を覆い始めます
叫び声を聞きたくないのでしたら……
だが私たちは幼子にはなれません、あの無批判な眠りには!