残響の足りない部屋

「ホームページオブ百合機械」の別館日記ブログ。毎日更新。今日も世界と逆向きに。

ラブラブルプレイ日記(5)

総括

(1)まずは当初のコンセプト「いちゃラブ特化」を完遂したゲーム作りに掛け値なしのスタンディングオベーションを。拍手! わたしは何のてらいもなく『こんぶ』並のバカップル系ゲームの金字塔だと言い放ちます。これがそうでなかったら他の何がそうだと言うのでしょうか。
――と同時に、それだけ特化したゲームである以上、萌えゲーは萌えゲーですが、やはりそれなりに人は選ぶのでしょう。が、それだけに、苦しい道を選ぶ玄人バカップルゲー愛好家(矛盾している言い回しだなぁ。「辛い砂糖」と言ってるに等しい)の求めには、あらゆる面で応じてくれています。
(2)では各論レベルで掘り下げていきましょう。まずは原画について。ひなたもも氏とあめとゆき氏の複数原画家体制でしたが、この差分の物量の面においては、複数原画家は避け得ないものといえます。しかし、絵のバラつき――クオリティ・絵柄――が目立つ、ということはありませんでした。千夏・奈々子・さつきがひなた氏、花穂、つぐみがあめと氏ですが、それでもあえて比較検討しますと、ひなた氏の特性としては、不安定ではあるけれども柔らかで、決まるときは決まる。あめと氏は、安定しているものの、それゆえの硬さもあり、という感じですか。概略としては。
個人的にはもっと突っ込んで書きたいテーマでもあるのですが、紙面(何つーか)の都合上、簡単なものに留めさせてもらいます。ただ一例を挙げるとすれば、花穂のラスト2シーンのCGと、千夏や奈々子のHシーンとを、「構図の整合感」という視点から見ること、とか。やっぱり違いがあります。
(3)で、塗りについて。何と言うか……グラフィッカ―さんたちお疲れさまでした。もちろん原画家さんもお疲れ様なのですが、前作以上の細かい差分、それでありながらクオリティの上昇、夏の爽やかさがそこには描かれていました。
振り返って思ってみればラブラブルは「夏であってこそ」のゲームでした。とすれば塗りの透明感というか、キラキラした空気感というのも見過ごすことが出来ないなぁ、と。
(4)音楽。こちらも前作より向上しております。デレver.については以前書きましたが、それだけでなく、どの曲も清新であり、気持ちがいいです。
……と、ふと思いましたが、安易にサーフ・ミュージック路線にしなくて正解でしたね。一曲も例の「テケテケ」がなかったのですから(この表現今の人に通じるのか?)。まあこんなことは今初期のビーチ・ボーイズを聞いているからなんですが(ファン、ファン、ファン!)。どの曲も、きちんと洗練されたエロゲBGMでした。……ま、キャラとテキストの個性が強いので、そこんとことかち合うようなアクの強いBGMだとトゥー・マッチかなぁ、と結果論ですが。
……あ、書き忘れてた。ボイスに関してですが、ヒロインに関しては何の文句もございません。素晴らしいベストキャストです。それと、確かにモブキャラの演技てきとーだろ、って思うこともありますが、これはこれでB級感があって(笑)
(5)システム。致命的なバグはない……まあ誤字は多いですが、内容がよかったので許してしまう、っていう典型例。ただユーザーさんは「誤字チェックをもっと!」とアンケ葉書に書く権利はあると思う(笑)。あ、字といえば、フォント拡大のエフェクトは大変よかったです。勢いがあって。必要なものはひととおり揃っています。
……前々からなのですが、いちゃラブゲーにはHシーン回想だけでなく「いちゃラブシーン回想」を! と思うことがあります。もっとも、原理的に無理ですけどね。人がどこにいちゃラブを感じるかなんて千差万別ですし、逆にそういうシーン設定をしたら、「押しつけ」にもなってしまいますから。結局、ユーザーが好みのところでこまめにセーブしておく他ないのです……か。
(6)キャラの魅力に尽きる今作。キャラ萌えゲーとしては未曾有の完成度でした。と同時に、そういったキャラを動かす早瀬ゆう氏の手腕(テキスト)も冴えていました。見たところ、やっぱり早瀬氏が大方を書いていますね。サブの雪仁氏が書いたところというのは、例えばメールあたりだと推察します。
テキストのテンションから大雑把に察したところでありますが、やっぱりなんか、メールに比べて、本編のノリってのが、アクが強いというか、勢いがいいというか。そしてあのギャグの連発。人は選ぶでしょう。このコンセプトに徹していて、しかも常時熱に浮かされたようなノリ。ただまあ、そういった「人を選ぶ」くらいが面白いってもんです。煮え切らない中途半端な作品を作るよりは――
(7)で、わたしが過去にプレイした本家HOOK(ああ、現在はHOOKSOFTか)のゲームで、わたしはそういう煮え切らないのに出くわしてしまったわけですよ。どれとは言わんが、絵とキャラは良かったのです。テンプレながら。しかしそれだけという。ぶっちゃけ後日出たアフターストーリーのノベライズの方が遥かに面白かったぜ、という(苦笑)。
しかし、分家たるSMEEには、らぶでれの頃からそうした煮え切らなさはありませんでした。……何か最近、本家よりも分家の方が面白い作品を作るという現象がエロゲ業界に起こってますね。ALcotにおけるハニカム文庫。MOONSTONEにおけるCherry。うーむ……考えたのですが、本家が安定した売り上げを出しているからこそ、分家で野心的な作品が出来る、という見方もとれます。たとい煮え切らなかろうが、安定はしています。碇のように。そう考えれば……と言っても、煮え切らないものはやっぱり面白くないんですよ!(笑)
(8)というわけで、がんばれSMEE! 負けるなSMEE! ディレクター・宅本うと氏とライター・早瀬ゆう氏の、飽くなき執念のこだわりと、ユーザー目線の作品作り。口で言うは容易いが、現実にしてみせるのは難しい。けれど完遂したらこれだけのものが出来る。結局ラブラブルとはそういうことだったのです。
(9)おまけパッチについてですが、あるイベントをヒロイン視点で描いてみよう、というもの。これは面白いです。いちゃラブ的に、痒いところに手が届く、といった白物。まったく、このメーカーはどこまで悶えさせれば気が済むのか。いいぞもっとやれ。というかしてください。
……と、誤解されないように書いておきますと、これは「未完成商法」ではありません。ラブラブルはきちんと完成されたものでありますし、これはあくまでおまけ。されどニクいおまけ。こういう形での作品展開は望ましいものです。やる気さえあれば出来る……どことは言わんが某社はこういうのでも金取るのか?
(10)以上、ラブラブルを支持する人間の目線で書きましたが、(6)で書いたように、人を選ぶものであるのも事実です。「何これ」と思う人もいるでしょう。とりわけ前情報なしに買った人ほど。勢いこそ感じられるかもしれませんが、「勢いだけ」じゃん! みたいな指摘があったところで驚きません。むしろ「そうかもなぁ……」とすら思ってしまいます。これは「特化ゲー」の宿命でしょうか。ただそれだけにハマる時は思いっきりハマる――これもまた特化ゲーの、B級ゲーの愉悦と言えます。

ラブラブルプレイ日記:おしまい

本日のBGM:シューベルト 交響曲第7番「未完成」(シャルル・ミュンシュ指揮・ボストン交響楽団。LP盤っていいですね、心が落ち着く。親密さを持った空気がある。お前には現代人としての進歩性と発展性がないと言われようが(確かに言われる。iPod全盛の時代ですし)、レコード収集&鑑賞を止めることは出来ない。というわけで前回に引き続きホントありがとうございます。おかげで心楽しい時間を過ごさせてもらってます<私信)