残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

「私は洋楽が好き!」という主張の意味のわからなさ

どちらかというとヘイト……喧嘩売り系のエントリタイトルですが、急に書きたくなって書いたネット剣闘士(って、なに?)の残響です。

今回のおはなしは、「洋楽」の定義です。

 

●序 洋楽ってなに?

 

「邦」というのは、基本的には「自国」を指します。

「洋」というのは、基本的には「他国」を指します。

 

これは右翼系の論者が、もっとよく説明してくれるんでしょうが、そも日本という国は、

「国体樹立1000年以上」

かつ

「四方八方が海」

という、変な国です。

オレは政治とかナショナリズムとか詳しくないので、そのことを言祝ぐことも貶すこともしませんが、少なくとも、日本っちゅうのは「内」と「外」をやたらと区別する国っちゅう「事実」はわかります。

「自国」とは、海ん中の島国たる日本列島。

「他国」とは、海を挟んだ外の国たる、日本以外。

地理的事実、ぷらすそれが延々とン百年、千年も続いた事実。それが「日本人」の精神形成に、影響与えないほうが嘘でしょう。

それ言えば、「海外」っちゅう言葉も、相当なもんですがな。「日本以外」を、即「海の外」と表現しちゃうセンス。

 

で、洋楽なんですが、上の語義論からいうと、「日本以外の音楽」。

これはいいんだ。ここまでは。

しかし即「アメリカやイギリスのポップス」と直結してしまうのはなぜか。

 

 

●破 マーケット

 

そりゃあ、アメリカとイギリスのポップスが、やたらめったら売れてるから、っちゅうことですが。

もちろん理由はあります。理由ならありまくります。その理由を学問にまでしたっちゅうのがバークリー大学の音楽教育。

 

単純にポップス……ビートルズ以降の三分間ポップスのメソッドの【すべて】。

それを思い浮かべてください。

ドラムとベースによる軽快なリズム。ディストーションギターによる刺激的なサウンド、アコースティックギターによる繊細な表現、野蛮気味なボーカルによる美メロ。

それを、三分パック。

構成も単純。イントロ→ヴァース→コーラス→二回くらい繰り返し→アウトロ

 

おいお前プログレとか、キーボードの存在とか、ブラスロック、シンフォロックガン無視かよとか、ラテンリズムとか、民俗音楽との融合とか、ベースをディープにしたことがダブを生みだしたことを知らんなとか、単調なリズムがクラフトワークを再解釈してテクノが生まれ遂には現代のマスロックがとか、音楽通は、このような単純な図式化に対して、さんざっぱら反論を繰り出してくるでしょううるせー!!!

 

ホント今日のちきりん氏のエントリのいってた通りだよ!

んなもん分かってるんだよ! それからビートルズ3分間ポップスに至るまでの歴史もわかってるんだよ!

あんたらも遡るんならプレスリー程度じゃなくて、ニューオーリンズでジャズが発祥したときのクレオールリズムセクション……ドラムセットの開発まで遡れよ! ドラムの8ビートの重要性はそこまで遡らなきゃ見えてこねえんだよ! 

(でもアフリカまで遡らなくていいよ、彼の地で4ビート、8ビートが生まれたわけじゃねえから。新大陸でのクレオール的文化融合から、はじめてその手のビート/ドラムは生まれたから)

 

 

あー、話がずれた。

ひとことでいえば、このような単純な構成……を、さらに「様式美」まで高めたもの。

 

 

売りやすいわなぁ。

 

ロックの世界覇権っていうのはそういうことで。

東浩紀が「動物化するポストモダン」で、現代のコンテンツ消費は単純な構造の各要素による、データベース消費だっていってたけど(硬い説明はこんな感じ、ゆるい説明としては……わかりにくい説明しかネットにはねえなぁ……えと、音楽に例えれば、「要素主義」っちゅうと、「ギター」+「ロック」+「アフロ」+「天才」=ジミヘン、みたいに、萌えキャラっぽく扱うこと)、

その状況って、用意自体は、もっともっと昔からあったのかもしれない、って、ふと思いました。

コンテンツビジネスとして売りやすいわなぁ。それを極限までビジネスモデル化さしたのがAKBか。

(オレの予想としては、AKBの極点は、この「要素分解/展開モデル」の極点である以上、「次」はないだろうし、事実上の、20世紀型の音楽ビジネスの幕引きのように思えてならねえ。AKBが、「キャラ」でなく、新たな「音楽ジャンル」を生みだしでもしない限り……)

 

 

●急 オレらの「邦楽」は、海外の人の「超ドマイナー洋楽」

 

 

ビートルズ、が、革命じゃねえんだ(いや革命なんだけど)。

ビートルズスタイル」が革命なんだ(いやジョンもポールも革命なんだけど、この歳になったらジョージの渋みとひそかな革新性が染みる)、

ちうことが、ここまでの記事の論旨です。

 

えとね、話長くなってきたから、さっさとまとめるけど、

・「ビートルズスタイル」は、世界各国に伝播した

・各国の民俗性に応じて、「ビートルズスタイル」は魔改造していった

・そんなんが50年、結構今の音楽ってたのしいなぁ、カオスで

 

……が、今の音楽シーンにおいて、オレが思っていることね。全然悲観してないっす。

 

で、今日の中心議題だ。忘れてたよ。

邦楽邦楽っていってるけど、このビートルズメソッド……音楽構造にしても、ビジネス構造にしても、基本構造は変わらない以上、「違い」っつったら、「その上に成り立っている個性」「それを徹底的に裏切って魔改造した個性」でしかないわけで。

ビートルズスタイル、は、捨てられないのか? 不可能じゃないけど、わりに難しすぎる。まずドラムとギターとベースと西欧楽器と、一般的DTMソフトと……それから、一番の問題として、「コード」と「五線譜」、「8ビート」「Aメロとかサビとかいう概念」を、きれいさっぱりまるっとエブリシング捨てないと、無理。

そんな「ないもの探し」してもつまらんべ? だったらビートルズスタイルを「さっさと通過」して、好きなことやったほうが楽しいべ?

 

そういう「自由な楽しみ」においては、やれ邦楽だの、洋楽だの、くっそツマランカテゴリに汲々としてるようじゃ、話にならねえ。

好きなモンを聞けばよろしい。メロディアスでやたら速くてうるせー音楽聞きたければ、ヨーロッパの辺境いってメタル聞くとか、M3とかD-STAGEとかあきばおーいって片っ端から同人音楽買い漁るとか。

静かな音楽聞きたけりゃ、インディーズのアンビエントとか聞きまくるとか。アンビエントにモロ出しな「邦楽」だの「洋楽」だのあるかいな。あとはグールドのゴルドベルクとか、Cuffs「さくらむすび」の好きなシーンを延々再生とか。シューベルトの静かなやつとか。

第一、こんだけ日本で盛り上がってる盛り上がってるな、AKBだの、ロキノン系だの、海外においては、完全に「ワールド系」のカテゴリだからなぁ。

向こう(海外)でのAKBとかに当たるもんを、オレらワールド系は「勉強」タッチで聞く癖があるのは、認めるよ。認めるからこそ、オレらワールド系リスナーは、AKBも同じように見なきゃいけないだろう。

ロキノン系が「海外公演したぜ! さすが俺たちの○○!世界標準!」とか、記事にされるけど、それ、見方を逆にしたら、日本に来ている海外のマイナーミュージシャンを、ロキノン系リスナーや、アイドルポップスオタは、見にいってねえべ? 仮に見にいっても、「イロモノ」的に見るべ? 状況はそれと全く同じなんだよ。

(そういう意味では、北欧あたりのメタル……例えば10年前のデビューしたてのソナタ・アークティカを、日本の若いメタラーが熱く来日公演を迎えた、というのは、ホント素晴らしいことだと思う)

 

音楽がつまらんつまらんとかいうのは、洋楽とか邦楽とか、年代とかメジャーとか、狭いことしか考えてないからだ。

その論点からいうと、今日のエントリタイトルなのだが「どのミュージシャンが好き?」と聞くよりも、ざっくり「お前さんはどんな洋楽好き?」と聞いてみたほうが、そいつのバケの皮剥がれるだろうなぁ……その手の類は、存外ミュージシャン伝記知識知ってるから。

いまはウィキペディアあるから。

それよりも「どんな」……スタイルの問題だな。それを問うのが、音楽愛好の正しい道かと思う。

 

JKが「私! デクスター・ゴードン好きなんです!」なんていうのを、オッサンはデレデレした眼差しで見るんじゃねえっつの。お前のその心性はマジでオッサンのそれだよ。そんな心根だから、お前は「ロング・トール」デクスターのダンディズムには一生かかっても辿りつけねえんだよ。

 

ハラたってると、エントリ書くのガリガリ進むが、これってイチャモンというか、説教というか、愚痴というか……まあ、美しい記事じゃねえわな……

 

 

●「洋楽の定義」おしまい