全く関係ない話からすると、いま(本日の午前5時)、締め付け系・重圧系頭痛がひどくて、エクストリームな音楽がきけないのです。ちょうどこの北欧メロデス(メロディック・デスメタル)の至宝である、この盤のような。
さらに、いまネット回線が不調で(本日の午前5時現在)、インターネットに繋がらなく、情報も仕入れることができません。
というわけで、音源の「思い出」だけでこの盤を語る、という、いつものtwitter実況の対極のようなことをします。
が、考えたらそれも、「音の語りかた」かもしれません。己のなかに、蓄えられた音だけで語る、という。
アーク・エネミー(現日本語表記:アーチ・エネミー)を、「ヨハン期(3rdまでの男性デスvo)」と、「アンジェラ・ゴソウ期(この盤からの女性デスvo)」で分ける世論に、とくに異論はございません。
ただ、ヨハン期よりアンジェラ期を下におく、というのは、個人的に「?」と思います。
ええ、わたしはアンジェラ擁護派です。獣のようなデスvo!
確かに、ヨハンの、確固たる「うた」「エモ」を響かせるデスvoとは、アンジェラは違います。ただ、マイケル・「兄貴」アモットが、「よりエクストリームに!」と、このバンドをシフトすることを決めた以上(インタビューでそういってたように記憶してます)、ヨハンとの決別はしかたなかったのでしょう。
単に3rd「バーニング・ブリッジズ」と比較するだけでも--デスvo抜かしても、かまわないのです。vo以外のサウンド・チームの用いる音階は、デスにあらざる明るい音色(メジャーキー)を、積極的に用います。
じゃあ産業ポップ・メタル一直線か
--まさか、ね、です。それはLAメタルで十分。
北欧でもっとも攻撃的な音と、この「明るさ」「エモ」が合わさったら……独特の、それこそ強引な比較ですが、ニルヴァーナにも「サウンド哲学的には」近いくらいの「荒ぶれる黄金のポップネス」が現出します。
ただそれはーーそう、ニルヴァーナやスマパンですら、その方向を長く、長くは続けられなかったように。NINをそこに入れてもいいかもしれませんが。
「攻撃性とポップネス」の同居は、そもそもから無茶な話なゆえ、長くは続きません。ピクシーズ=ブラック・フランシスだって、そうです。
では彼らは、「エクストリーム+ポップ」を突き詰めたらどこへ行くか? 少なくとも、彼らの出自は「エクストリーム」を捨てることを良しとしません。
ですので、「ポップ性」の変質が、訪れるのです。
以上の議論に従って、アンジェラ加入のこの盤をみるとーー各曲に、サウンド的に「この曲はこのリフ!」「この曲はこのフレーズ!」というように、メロデス界隈屈指の叙情派たるアモット兄弟の面目新た、です。
で、そこにアンジェラの荒々しいvoーー確かにそれはアーク・エネミーのエクストリーム度をあげました。
ここで寄せられる批判の多くが「それでアーク・エネミーは一本調子になってしまった」というものです。事実、そのきらいはあります。
ですが、彼らは多少のメロの犠牲を経ても、アンジェラを加入さします。それは、より大きなグルーヴと音域のため。
1)グルーヴ
バンド一丸となって、という表現がぴったりなこの盤のグルーヴ。
それはvoがギターの出番を与えるかのように「準備」「煽り」をするかのようにパフォーマンスします。あるいは逆に、ギターがvoを支える、というように、非常にぴったり。
新voの加入バンドとは思えない。
それは、ひとえに音域がマッチしているからで。
2)音域
ギターチームの片割れは、ベースと同期し、ボトムのきいたリフ、バッキングを展開。
そしてもう一方のギターはそのリフを厚くしたり、ときに逸脱してvoより高域にいきます。
図にするとこーなります。(いつものヘタクソなのでごめんなさい)
で、重要なのは、このどれものパートが、サウンド・ブロダクツ上で分離していながらも、マスとして向かってくると、非常に「密接」な感じの「合わせ音」を聞かせてくるのです。
ひとえにこれはギターとvoの音域の調和。ヨハンの場合、このあたりが「分かれて」しまうのです。よくもわるくも。
それに比してアンジェラのvoは、実にギターとよく合う。低・中・高域のどれもを、エモ的にはともかく、「音域的には」、マイケルのギターにも、クリストファー(弟)のギターにも合ってます。(より「合わせ鏡」「表と影」のように合っているのはアモットの慟哭ギターのほうかしら)
あとはメロだけが足りないのかもしれませんが。しかし並みのメロデスではこのアーク・エネミーのメロにはかないません。充分なメロはすでにありーーようは、理想が高くなるのですよ、ファンは(笑) ツンデレですねぇ。
それにしても、中域あたりの悪魔的なデモーニッシュさと、そこから空へ抜けていくアモット兄弟のギターのソロよ!
彼らのエクストリームには、エモーショナルが常に裏打ちされてますから……何と言うか、変な比喩ですが、必死になにかを語りたがってるけど、ちょっとだけ言葉の使い方が無骨というか、天然的にズレてる人、のことを、なんか思いだします。
……でも、その人の「ことば」は、優雅典麗な言葉の弄し方より、余程響くのですよ……。