affable noise
先日、広島のソロ・アンビエント・プロジェクト「affable noise」氏のサウンドクラウド音源に、堪能しておりました。
まだ全部は聞いていませんが、しかしその「雨のヴェール」を思わせるサウンドスケープと、空間の広がり感、音の柔らかくも「抜け」てくる、一級品の音配列、音空間の芸術を聞きました。
ですがそれはとてもオーガニック。実験の冷やかさではなく、生活や、情景にそっと寄り添うBGM……否、「バック」いらんわ。グラウンド・ミュージックとでも呼びましょうか。これはバックに押しやるには、あまりに詩情豊かでありますから。
とはいいつつも、BGM(とくにカフェ的な)での機能性も失っていない、いやむしろそういうところでもセンスを聞かせるところなんか、音楽的偏差値の高さを表しているじゃないですか。
数日まえに、twitterでそのあたりを書いていた残響なので、引用します。
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アンビエント・ギター・ソロプロジェクト「affable noise」(界隈では個人名なのでどうお呼びすればよろしいのかしら)の「fluctuation」を聞いています。http://t.co/C9r873EEZi天上の如きたおやかな音響なのに時折のノイズ。しかしそれは耳触りでなく
ふわふわ、ふわふわ。ヴァイオリンのようなパンフルートのような。これがギターとか嘘でしょみたいな(笑)すばらしい……でもどこか「ヴェールがかかってる」って感じがあります。意味は二通りで「雨っぽいヴェールに覆われた風景」と「そのヴェールに自分が触れている感覚」という二通り。
ロック・フォーマットに全然組みしていない……そう、まさにポストロックでアンビエントなのですが、じゃあ実験的で冷たいかというと、その真逆。まさにaffable noise=「優しいノイズ」
affableは今web辞書で調べたら1.〈人が〉話しやすい,親しみのもてる,気のおけない,愛想のよい; 〔目下の人にも〕愛想がよくて,優しくて 2.〈言葉・態度など〉優しい,もの柔らかな 【語源】ラテン語「話しかけやすい」の意 だそうです。全て当たってますね。
で、同じくaffable noise氏の「20130910」を聞いてます。……おお、全然タッチが違うけど、これもすばらしい!音響をあえて主張しすぎずハーモニー的なのがにくい!そして…この音たちのかわいらしさ、優しさよ!メロディーもよい!…だけどこれ即興なのかしら。だとしたら(続
(続)だとしたら非常なメロディーセンスであります……。どこかボサノヴァとかジャズっぽい感じもありながら非常にポップ。じゃあ喫茶店で聞き流される類の音楽かというと、いやこれは…「ウェイトレスさん、この曲のひと誰?」って食いつく類のでしょう。ゴンチチや押尾コータローの最良のイディオム
さらにその流れで「20130909」を聞いています。うーん……この人はアコースティック・ギターの「響き」の意味を知っておられる。どこかへ走り出すことのない音楽。それをまどろみと呼ぶか安らぎと呼ぶか。でも退屈だけは絶対しない音楽。
さらに「20130702」を。うーん…静かな音楽です。アコギじゃなくて、アンビエント。ただ非常に音数が少ないような……それでいて、音域はヴェールのごとくやわらかに広がって。例えるなら、ガムラン。それも大量の雨が静かに降り注ぐインドネシアで、どこからかガムランの音が聞こえてくる的
どうもaffable noise氏の音楽を聞いてると、風景というか情景をセッティングしたくなって仕方がないです。ここまで聞いてきた全部の曲に、固有の色と情景があります(残響の頭んなかで)
affable_noise 「cumulate」http://t.co/C9r873EEZi 冬空の空気のような静謐な音響から入ります。その夜空に煌めく星と天球の深さよ。やさしくギターがはいります。高音と低音。子と母のような安心感。「攻撃」という言葉から最も遠い音響
「sad」を聞いています。この方のディレイとかリバーブの使いかたは「雨の煙幕を張る」的感じなのかしら。やわらかでトゲのない音像。でも、シンプルなギターカッティングとピコ音は飛びこんでくる…「sad」として飛びこんでくる。悲しさの中の静けさとおかしみのような感情も伝えながら
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いや、非常に豊かな時間(質の高い、ライフタイムにおいてリッチな時間)を過ごさせていただきました。
これから、生活の中で、戦慄度が高くなってきたり、まわりを包むアトモスフィア的な空気が悪くなってきたり、あるいは心身のホメオスタシスが悪くなってきたら、まるで温泉につかるかのように、「実際に」使わさしていただきたい音楽、って感じです
それだけの……「実行力」がある、スポンティニアスな音楽です。身体をノらせる、というより、体に染みわたっていく音楽。
これだけエフェクター使っておきながら、これだけエクスペリメンタルなことしておきながら、しかし「謎とき」みたいなこと、「哲学思考」みたいなこと、そういうのにいざなわず、ひとつの心地よい空間にこそいざなってくれる。
まるで、導き手のように。
このaffable noise氏という方は、広島バンドメン界隈では有名人であられるらしく、わたしも瑠璃色の森のびわこ氏から経由で知ったのですが、ひとことでいうと「twitter廃人、略してツイ廃」らしいのです。たしかに旺盛なtwitter欲!
しかし、愛されておられる御仁です。うん、納得。だって、こういう音楽作る/演るひとが、愛されないわけないですよね。
で、その方をこうやって分析するわたしが愛されない所以でもありますがwwwwwww
↑↑……笑ってる場合じゃない↑↑
●すきまレコーズ
わたしもまだ詳しくは知らないのですが、affable noise氏は、お仲間と一緒に、インターネット音源レーベル「すきまレコーズ」を立ちあげておられて。
そのこともわたしツイートしたのですが、
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「cumulate」がすごいいいので、なんかコンピらしいアルバムに収録されてるのかしら? と思って調べたら、すきまレコーズhttp://t.co/QAy4qVy7BSに辿りつきました。おいくらくらいかしら……と思ったら、無料!?
ちょっとすきまレコーズのいくつかの音源をダウンロードしてみますね。それをリプレイしながら今日を終えたいと思います。最近……最近いろいろありまして。このレーベル、affable noise氏のような音楽が筆頭なら、信じられるレーベルかもしれない予感がするので。
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まずこのアルバムジャケをみてくださいよ
キュート! 冬!
このレーベルは、デジタルデータDLコンテンツ(フリー)でありながら、「盤」を強烈に意識するアーティストシップをみせます。
で、これ聞いて見ました。
soda pop ep
夏とソーダ水!
非常にさわやかな、アンビエントであったり、ギターポップであったり、シューゲイザーサウンドであったり!
でもいい、これはいいです! あなたの生活に寄り添うエクスペリメンタルサウンド!
すごいこと書いてますね。実験が生活に寄り添う。
でも……音楽は、ひとの営みですからね。生活によりそうこと、それは吟遊詩人の誉れでしょう。
たとえばこの第一曲目なんか(1.soda / nekomusume)爽やかなシューゲサウンド、という、なんだか語義矛盾してるような、しかし聞けば「ああ、爽やか!」と涙する美しくも空気感のある、心和む音の壁が鳴り響きます。
そこにやくしまるえつこ直系のvoがのる、これもまた、人懐っこさと危うさとの間で、素敵な笑顔を見せてくれるかのようなあどけなさ!
全曲レビューしたいですねー! ただ、しかし今日は時間がなくて失礼しますが……tr.2の初期スピッツの最良のイディオム継承ぶりと、余白を活かしつつの、ボトムがっしりきいたポップスもよければ、tr.3のゼロ年代ジャパニーズ・オルタナの「憂い」をぎゅっと凝縮した感じも素敵ですし、tr.4のaffable noise氏のどこかチップチューン+クリーンギターの「静かなぼうけん」感も最高。
そんな素敵な盤……コンピ盤。
健やかな精神、健全に「仲間とリスペクトしあいながら表現したい」という精神。
そして「仲間と、まちと、季節とともにありたい」という意志。
それが、このレーベルから伝わってきます。
広島って面白い土地だなぁ……と思ったのでした、まる。