昨日の記事の続き。
何のためにブログを書くか、2014年上半期、音楽編 - 残響の足りない部屋
あ、そうそう、きのう、「メソッドを中心にして書く」って書きましたけど、振り返ってみたら、ブログのオリジナリティ論になってしまいました。
それはそれで、自分にとっては、振り返り的に価値あったのですが、でも、これまでのメソッドに、問題点がないわけでもなく。
それは
「論理展開のプロットを大して考えないまま、ジャズのアドリブ(インプロヴィゼーション)のごとく、即興で長文を書いていく」
という、前回書いた、このブログのそもそも的な問題点と同一で。
いえ、感激だったり、感想だったりを率直に書き表すんだったら、これでもいいのですが、「価値ある記事」だとねぇ……
別にいまは「客観的な価値判断(レビュー・批評)」に拘っていないので、思うことを思うように書いていったらいいのですが、
しかし1000枚以上(レコード(ドーナツ盤)も含めると、さらに100~200枚は倍率ドン!)のCDを「はけさせる」ためには、ある程度のテンプレも作ったほうがいいかなー、と最近思うように。
おそらく、このあたりが「レビューサイトの運営方針」と、絶妙にリンクするとこなんでしょう。つまり、そのレビュアーが、どこに「価値」を見い出しているか。
「クサメロ、美メロ」に価値を置く悶絶メタルさんとか、
「一度各要素に分割して、総合的にまとめ直す」的Nagaleさんとか、
「徹底して「物語の中」の視点(内在視点)でもって考察する」べるんさんとか、
「世界や物語のマクロとミクロの相克」の物語三昧さんとか、
いわば「萌えシステム論、キャラやしぐさの動作論」みたいな独自の、情念に基づいた解析のマルセルさんとか。
マルセルさんのサマリー ErogameScape-エロゲー批評空間-
もっともっと紹介したいのですが、まずはここまで。
彼ら先達に比べて、わたしのはよくもわるくも「出たとこ勝負」なので、フォーマットというものが出来てない。
いや、むしろ、フォーマットを探すために、アドリブで書いてるフシがありますわたし。
題材に添うフォーマット(論述形式)を、アドリブで、その題材を事祝ぎながら(基本的に、加点方式&よかった探しをするので、あんまり最初からヘイト系の記事はかかんのです)、その題材にとって、一番いい「叙述の仕方」はなにか、ってことを探るのです。
大体、半分くらいして、自分の結論とか、論述形式が定まってきます。わたしはそれを「ベクトルが定まってきた」と表現します。
かつて、上記のマルセルさんとtwitterでお話させていただいたときに、自分のこういったメソッドが「極めてジャズ的」だという発見をさせていただきました。
そこでわたし、こういうふうに返答したのですね。
「レビュー書いてて、極端な話、自分の考えや結論が変わることすら至高」
「アドリブだから、先が読めない。統合とか論理的発展に憧れながらも、できないので、あなた(マルセルさん)のようなクラシックメソッドで書いておられる方が羨ましい」
みたいな。
ぶっちゃけ、先が読めないことを楽しんでいるというか……「読みたくない」。
もしわからなくても、そこから引き返したくない。「そこに何かが詰まっているに決まってる」と考えますから。わたしは。宝探しの犬みたいなもんですね(笑)
……しかし、しかし。
こんな「いちいちフォーマットを探りながらやってく」なんて、極めて不効率。
いえ、ジャズアドリブに効率性を持ち出すのは、ジャズ者として、わたしがもっとも嫌うことですが、しかし、1000枚。数がさばけない!
ということで、話が戻りますが、
「自分にとって、納得できるフォーマット」を策定することの重要性を、ブログやって、5年目ではじめて気付くという!(おせーーーーーーーーー!)
じゃあ何か? 自分が音楽で重要視していることは?
そこで、わたしの「守備範囲」の広さと深さが邪魔をします。
全ジャンル全時代全世界……
しまった。カチ合う価値体系(ダジャレじゃなく)が多すぎる……
たとえば、パンクやオルタナの、ノイズ系ギターと、メタル系のレガート奏法的な「流麗」「早弾き」ギターは、価値体系として、カチあいます。
ましてや、ロックの「歪んだギター音」と、クラシックの「柔らかで綺麗な音」も、カチあいます。
さらには、クラシックの「綺麗なフレーズ」と、民族音楽の「野卑たエネルギッシュな旋律」もカチあいます!
さあどうする!?
……でもですね、わたしは、すべての「善き音楽」に共通するものがある、と思っているのです。
・メロディー
・ハーモニー
・リズム
……はい、御存じのように、西欧音楽の三要素、です。
もちろん、西洋音楽的な「至上」の感じ、を最高とはしません。
リズムが西洋的におかしくても、「その音楽スタイルの中で、最良のリズムを刻み、果てはジャンル外の人間をも踊らせる」のだったら、それは「サイコーのリズム」です。
メロディーはひとつだけではありません。西洋的なクラシカルメロディだけではなく、例えばアラブ的なエキゾ・メロは、もちろん西洋にとっては異物ですが、だからといって、「いいものはいい!」の原則からいったら、異物だろうがなんだろうが!それと同じように、日本の「歌謡メロディー」も同じように扱えます。いや、むしろ、世界には、世界の数だけ、「歌謡メロディー」があるのですから! なんという楽しさ!
ハーモニーについてですが、……これは難しいな。ただ、「西洋的な、音楽理論に基づかない音楽」の美も、あるのです。
例えば、フリー・ジャズ。例えば、雅楽。これについては、項を改めて。またいつか。
ひとことでいえば「西欧的にはノイズでも、他の文脈ではそうではない」
というわけで、これからは、とりあえず、この三つを、参考のリファレンスとして、レビューで「とりあえず、この三つで分析してみたよ!」ってな感じで、おさめていきたいと思います。
はい、音楽編終わり!
長かったですが、実はこれは、エロゲ編の補助線でもあり。
●エロゲは総合芸術であるがゆえに、語りはじめる切り口の重要性
恐らく、エロゲ(ノベルゲー、ビジュアルノベル)は、すべてを語りえます。
テキスト、音楽、声、
キャラの(簡単な)動き=立ち絵、キャラの内面の表象=一枚絵、
そもそも「キャラ」の存在、物語の存在、物語を通して「人生」を描けること、
絵、絵の美的効果、絵のエロティック効果、
演出、演出のモーメント効果、
無論のこと、作品のテーマ……
ざっとあげる(表層的)だけでも、もう10コ以上になっちまいました。
つまり、エロゲ一本語るにおいて、実は……「音楽ジャンル一個」語るくらい、やろうと思えば出来るのです。実際、名レビュアーの方々は、そうしています。その作品を語りながら、内在している「ジャンルにおける立ち位置」「ジャンルの可能性」を語っているのです。
ひいては、エロゲとはなにか……それは、各レビューを総合的に重ね合わせる必要が、書き手にも、読み手にも求められますが、とにかく。
しかしそれだけの「エロゲ」を、読み解くためには、「数をさばかねば」ならない、というのも、事実。
このあたり、上の「音楽」を、「エロゲ」に置換していただければ、お分かりになられるかと思います。
さて、自分はエロゲにおいては、音楽ほど守備範囲が広くはありません。
ガチのシナリオ系というよりは、B級ギャグ&イチャラブを楽しむタイプです。
3年前に書いたスタンスですが、いまも大して変わってません
じゃあ、イチャラブの甘さやギャグの切れを堪能できればいいんだな?
……そこで話が終われば、よかったのですが。
上記のように、エロゲには様々なエレメントがあります。
あるからこそ、そのなかから、どの切り口でもって語るか、が重要です。
しかし、でありながら、「総合表現」たるエロゲを、断片でもって語ることも無粋ーー!
このパラドックスが、難しいところです。
よって、エロゲレビュアーは、ある「エゴ」でもって、動かざるを得ません。
「ラブラブ和姦エロゲレビュー」の殿堂、なでしこやまと。
現在、管理人氏は「エロゲ離れ」をされておられる様子ですが、まあ、このレビューサイトは、わたし、非常によく読んでました。
しばしば、なでしこやまとさんは、「見方が偏狭すぎる!」という批判を受けてこられたように思えます。
ですが、いまになったら思えます……そうでなかったら、恐らくなにも語れないのだ、と。
このあたりのことをよくオピニオンされているのが、ちきりん氏ですね。
ひとつの意見に対し……ひとつの「エゴ丸出しの意見」に対し、
「お前の意見には、○○の部分が欠けている」というのは、すっげえ楽なんですよ。なぜなら、「批判している、当該文章」を読み解いて、その上で議論しようとしているわけですから。
つまり、レビュアーが血潮を吹きながら造りあげてきた、フォーマット……思考のフォーマットを、「簒奪」してるのですね。奪ってる。盗んでる。その上で、レビュアーにイチャモンつけている。
これ、わたしもよくやりがちなので、自戒して書くわけなんですが。
ざっくり言えば「反論、批判は楽」
オピニオンを立ち上げるのは、大変。
創作……イノベーションに、逆説的に価値があるのは、この「逆張り」を積極的にする勇気に、価値があるからなんです。それとめんどくささと。すべてのレビュアーは、なんでか、この勇気とめんどくささを、ただの大衆/消費者にかわって、難儀なことに、引き受けます。
ああ、話がずれた。それに、あんま楽しくないしこの話。
少なくとも、わたしは「なでしこやまと」さんに影響を受けています。氏のおかげで、バカップル系(イチャラブ系)ゲームにおける知見をさらに進めることができましたから。
それは、ひとえに、なでしこやまとさんのエゴによるものなんです。
よくレビュアーは「お前の意見を押し付けるな」と非難されますが(わたしもされた)、でも、オピニオンを世に出すことなしに、なんの「シーン」「業界」「世界」が生まれましょうか!
はじめに言葉ありき、と聖書に書かれていますが、誰かが言いださなくては、なんにもこの世にはなかったのです。その勇気こそ、「彼」が「神(クリエイター)」である証なのです。
つまり……例えば、アレな例ですが、2chのスレでは、どんなに幼稚な言説をのたまっていようと、「スレ主」が、一番、人間のために役にたっているのです。ほかのひとがどんなに「うまい発言」しようが、「その勇気ひとつ」の輝きは……!!
●話ずれてない? お前さんは、何のためにエロゲ記事書くのよ?
ごめんなさい! そう仰ってくれるあなたが好き!
えとね、まずわたしは、音楽のメソッドを、流用したいと思ってます。
つまり
・メロディー=ストーリーのテーマ、キャラ、絵
・ハーモニー=ストーリーやキャラや絵の「雰囲気」
・リズム=キャラのかけあいの面白さ、テキストのキレ
総合芸術たるゆえに、全体でもって語りたい。
で、切り口は、できるだけシンプルに。
上のものも、さらに大雑把にいえば
・エロゲのメインに据えられてる、最初に目につくもの
・雰囲気
・言葉のリズム
こういうふうに言い換えましょうか。
例えば桜井スチパンだったら、
・今作のテーマ、今作のビジュアル評価
・今回の都市に流れている雰囲気
・キャラのかけあいに流れているユーモア、心情
これをさらにわかりやすく、黄雷のガクトゥーンでいうと、
・雷電王の決死の覚悟、そしてキャラたちの哲学、スチパンデザイン
・マルセイユ洋上学園都市の雰囲気、デザイン、「ここに住むということ」
・いつもの桜井節の、ガクトゥーンにおける切れ味
こんなふうに分割できますね。
音楽とか演出とかは、おそらくまんなかの項になると思います。
それが、エゴ丸出しの、欠陥に満ちた評定(レビュー)方法であることは、重々承知です。
ですが、わたしはこれを選びます。最近エロゲレビュー出来てませんが!(すいません!でも必ずします!生あるかぎり)
レビュアーは、エゴ丸出しでいいんです。
あなたが大衆の批判を恐れず、世界に投下した、勇気ひとつの輝き、それがレビューサイトの意味であり、輝きなのですからーー!!
(よし、ガクトゥーンネタに結び付けられたぞ、っと)
・じゃあ、そこまでしてエロゲを読み解く意味は、というのは、また次回。というか、ぶっちゃけ、この連載の一番最初に書いてますが……