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the Clash「動乱(獣を野に放て)」

 

動乱(獣を野に放て)

動乱(獣を野に放て)

 

 


The Clash - Safe European Home - YouTube

 

パンク・レジェンド、the Clashの2nd。世論の評価はわりと地味。

 

●メロディー

 

開幕早々、イキのいいジョー・ストラマーの声が飛び込んでくる。そこに絡む、gtミック・ジョーンズの爽やかなコーラスも聞きものである。

……って、これだけ書くと、ポップなバンドみたいに聞こえるけど、実際、クラッシュはポップなのだからしょうがない。

それは、ミックとストラマーの紡ぐ、黄金のメロディーだ。数々のソングライティング・コンビーーたとえばレノン・マッカートニーーーと比較しても劣るところは何もない、このメロディメイカーぶりよ。

そう、クラッシュは、曲がいい。

「ロンドン・コーリング」に至るまでの初期二作(間に入るシングルも含め)は、複雑なコードチェンジもなく、いわゆるパンクというものだが、しかしそれにしたって、胸を高鳴らせるメロ!

それがストラマーのがなり声で歌われるとき、これ以上ない説得力でもって「ああ、このひとたちは自分を味方してくれるんだ!」って、独特の親密さが生まれる。こんなヤンチャしてるような曲なのに。パンクなのに。でも、クラッシュは……これがピストルズと違うとこなんだけど、表面上はかっこよくても、ひとつつきあってみれば、結構ぼろっちいところをさらけ出してくれる存在なのである。

「白い暴動」と比べて、本作は、ある程度の開放感が目立つ。それは、練られたソングライティングによるものだ。パンクは、得てして「激情があればいいんだろ」みたいに、曲を磨くことを忘れてしまいがちになるが、クラッシュは……あの四人のギャングは、とにかく、とにーかく、音楽が好きな奴らだった。それは、クラッシュがどうしようもない解散をしようとも、最後の最後まで変わることはなかった。

 

●リズム

 

とにかくdrトッパー・ヒードンの加入が大きい。

それまでのドラムが、スクエアなリズムしか叩けなかったのに対し(それが1stのチープ感を演出している要因の大きなところだろう。もっとも、1stにトッパーがいたら……と考えると、これもまた面白い問題である)、この「突貫小僧」、ロンドン1のドラマーは、タイトなリズムをたたくたたく!

とくにいいのが「シパタタタン!」とイキのいいスネアのスプラッシュ……「トミー・ガン」はトッパーのドラムなしには語れない。マシンガンとすら呼ばれたトッパーのドラム!


The Clash - Tommy Gun - YouTube

で、クラッシュについて、語られることが「イケメン」以外に少ないbaポール・シムノンだが、実はこのイケメンは、2つの特性を持っている。

 

プレベによるゴリッとした音色

・それをメインフレーズに対し、異様に動かすベースラインで演る

 

それは、シムノンが傾倒してやまないレゲエによるものだ。

このあたりのおもしろさは、3rdになって、いよいよ開花していく。ざっくり言ってしまえば、そもそもクラッシュがワールドミュージック指向になるのは、シムノンのレゲエ・ベースがそもそものはじまりとすらいえるのだ。シムノン、歌下手だけど(爆

 

●ハーモニー(雰囲気)/アレンジ、あと当時の風潮

 

で、本作で、もっとも「アンチ」意見がとられているのがこれだろう。

 

「クラッシュがハードロックになっちまった!」

 

というそれだ。

パンクスにとって、ハードロックやプログレをやるというのは、「裏切りやがったな!」というのが通念だった。

いまでたとえると、9mmや凛として時雨がアイドルポップスをやるようなものである。

そういう時代だったのだ。

 

イキのいい、ダイナミックなアレンジ……パンクの粗野で、荒々しい、そしてチープな感じこそが「リアル」だという派(原理主義的パンクス)には、この「反動」は受け入れられなかったらしい。

 

ところが、時を経てこれを聞いてみると、

「なんだ、ふつうにいい曲じゃん」

と、我々は気づくと思う。

つまり、そんだけかたっくるしい時代だったんですね……

 

確かに、アレンジやサウンドプロダクツは、ある意味「まとも」になった。

だがそれは、「商業くささ」を感じるものではない。むしろ、ちゃんとしたアレンジャーつけば、これくらいにはなるよ、って感じ。それをもたらしたのが、サンディ・パールマンのプロデュースだ。

 

逆にいえば、ここでミックが「正当派アレンジメント」を学んだことにより、3rd以降の圧倒的音楽的広がりが生まれることになる。

 

それをふまえた上で、「やはりクラッシュは1stだ!」とするひとと、わたしのような「クラッシュはワールド傾倒がすばらしいのだ!」とするひととは、やっぱ違ってくるのかね。

 

どっちにせよ、とにかくこの盤は、曲がいい。そして、バンドの志気も高い。

シンプルにロックンロールしている。ギターとベースとドラムでほとんどやっている……って、それ初期のU2の歌い文句やん……

単純に、メロディメイカーぶりを楽しむ、という聞かれ方は、もっとされてもいいと思うんですよこの盤。