残響の足りない部屋:HP百合機械別館

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Krik/Krak「Nursery Rhymes」

http://krik-krak.net/img/sample2.jpg

 

公式ページ

Krik/Krak Official Web Site | 同人音楽サークルKrik/Krak

 

※過去にKrik/Krakについて書いた記事はこちらの記事まとめページを参照してください

 

 

Krik/Krak--もともと第一期サンホラ(Sound Horizon)を崇拝していたサークルメンバー二人。

その後「第二期サンホラ」になっちまって「何かが変わってしまった」という嘆きから、活動を--自分たちが愛しに愛しぬいた第一期サンホラなるものを、自分たちなりに再現/創造しよう、という信念から活動を開始した「物語音楽、幻想系」音楽サークルであります。

わたしもかつて、このユニットをサンホラフォロワーという観点から語ったのですが(上記過去記事参照)、しかし……活動第二作である、この「Nursery Rhymes」において、「サンホラのコピーをカラオケ的にやってればいいや」なんて甘い領域を越え、どこか閉息的な、ダークな音/物語世界を追求していくことになっていきます。

 

 

サンホラフォロワーとはなにか、というと、まあ
「バンドサウンド」+「シンフォニック成分」+「物語性、キャラ性」+「演劇性(語り)」とでも表しましょうか。
そのエレメントからいうと、確かにサンホラが切り開いた領域の中にKrik/Krakはある、といえます。

しかし、それはあくまで、ジャンルがそうだということ。
彼女らの個性は、以前にも書きましたが、「どこまでも広大に世界や空間が広がっていく」世界観ではなく、「ひとつの救いようのない物語を、暗く、落ち込んでいくかのように展開していく」という……長編じゃなく、中~短編小説のような、じっくり読み込む価値のあるものなのです。

この物語のコンセプト、ビジュアルを設定しているのは繭木瑛氏、楽曲を制作するのは鳥島千佳里氏。
姉妹ゆえの、緊密な相互作用……インタープレイと表すべき、丹念な世界観づくりをしています。

 

 

Krik/Krakは歌詞がいい。どこか「ファンタジックで病んでいればそれでいいだろ」的な幻想系じゃなく、ひとの闇というものを、逃げることなく、闇を闇のまま、暗がりを暗がりのまま、アレゴリカルに描く手腕は、まさに現代のおとぎ話にして、「本当は怖いグリム童話」的な点をも出していきます。
また、この作詞家は、童話にも精通していて、数々の童話にモチーフを得て、それを「魔改造」して、幻惑する……ブリティッシュ・プログレめいた(ジェネシスのような)怪奇幻想的な世界を現出します。
それはアートワーク(これも繭木氏のもの)にも現れていて、とくにこの盤のジャケにも現れているのですが、徹底的に緊迫感のある色使い、構成が、こちらにビシビシと戦慄を与えてきます。

 

 

さて、肝心の楽曲ですが、前からさんざっぱら言っているように、このコンポーザー、鳥島氏は、非常に黄金のメロディーセンス、アレンジセンスに恵まれているのです。
とりわけtr1とtr2の畳みかけはすごい。
Tr1ですが、まずイントロの繊細なクラヴィコードめいた旋律、アコーディオンが入って、どこか民謡/童謡的なメロがしばらく展開します。
サンホラにない特色として、このユニットはどこか民謡を通り越して、童謡のメロセンスを非常に取り入れています。
コーラスワークが、そのメロを歌いあげる……倍音たっぷりに歌いあげるのは、まさしくKrik/Krakのシグネチャー。
「幸せ」よりも「どこまでも闇、薄暗がりに入りこんでいく」みたいな、マイナーキーのメロ。しかし……それでありながら、メロに甘さがあるのですね。黄金のうたごころ。

とくに、語りに入る際の、バックで鳴らされる緊迫感あふれるストリングスの絶品よ!
一瞬のたるみなしに、音世界が展開していきます。


それは二曲めでもそうで、トリル奏法で戦慄をかますヴァイオリンに導かれ、優雅ですが幻惑・魔術的なメロが展開していきます。
ただの歌謡ではない。いや、歌謡に近いのですが、それを気品と緊迫をたたえた歌唱、そして印象的な歌詞でもって、こちらも一瞬のダレなく続く!

Krik/Krakは、どこまでも広がって広がって、な音楽ではありません。
サンホラが交響曲だとしたら、Krik/Krakは室内楽、しいて広げるならディヴェルティメント。
バンドサウンドもズドドドドド!みたいな感じではないですが、しかし要を得たアレンジが、疾走感、説得力を、民謡/童謡メロを活かしてやみません。

この繭木、鳥島両氏の姉妹によるコーラスワークもまた絶品。物語のキャラ性を全面に押し出しつつ、とくに声を張り上げるファルセット、ソプラノ歌唱における「弱さ/繊細さを持ちつつも、一歩も後に引かない」この誇り高さよ。

 

ベタ誉めですが、難点があるとしたら、この音楽は「取るか取らないか」なのです。
個性が完全に確立している……音楽的にも、物語的にも。

いわばこの室内楽的なサウンドは、どこかに解放感を与えるものではないのです。
それは芳醇といえますが、このノリが受け入れられなかったら、すごく「息苦しい」ものです。

わたしは好きですよ、Krik/Krak。でも……誤解をおそれずに言えば、メロの黄金性を重々承知したうえで、あえていえば、「普遍的なサウンドじゃない」と、冷酷にいっちゃうこともできるのです。

が、それは、そもそも……サンホラのディープな部分こそをもっとも愛していた、このKrik/Krakお二人が、ポピュラリティに媚びを売る必要があるのなら、そもそもKrik/Krakをする必要はないわけです。

だから、取るか取らないか。
そして……室内楽とは、密室的な音楽とは、そのような「聞き手を選ぶ」音楽ではないでしょうか。

 

 

まあそうはいうものの。
このユニットが罪作りなのは、そのような性質を保ちながら、やはり「高品質」なんですなw
歌詞世界も、曲づくりも。

とくにtr4のバラード……清涼感あふれる、心洗われるような、美しい曲。
光が差し込むような……まさにバロックチェンバロなんかも鳴ってますしね。
これは……さすがに、普遍性がある。それくらいの清らかなオーラがある。

 

 

うーん、言ってること、自己矛盾をきたしてきたぞw
ただ、「大仰しさがないサンホラ」ととらえてほしくないんですよ、これからKrik/Krak聞くひとには。
サンホラとの類似性はさんざっぱら言われてきたのが、これまでの同人界隈におけるKrik/Krakですが、そもそも、「音の広がりかた」が違うのですから。「世界の広がりかた」が違うのですから。

緊迫感
ネタに走らない、構築感あふれる物語音楽。
好みはあるでしょう。しかし……この緊張感の高まりは、アートと呼んで一向にかまわんっ!