残響の足りない部屋

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同人音楽でプログレッシヴ・ロックを鳴らすCrimdollを知っているか

同人プログレッシヴ・ロックのニューカマーのお話をします。


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(今回の冬コミ音源のジャケです。ヴォーカル・URI氏が描いています)

Crimdoll(クリムドール)は、日本の本格志向・プログレッシヴ・ロックバンドであります。
中核・頭脳であり、コンポーザー、キーボーディストである「KANATA」氏が率います。
昔懐かしい60~70年代の「ユーロ・プログレ」を軸に、同人音楽シーンにおけるひとつの流行「物語音楽」のイディオムを十分に持ち込み、 このシーンにおいては極めて珍しいスタイルの音楽を鳴らす、気骨あるバンドである。

その音世界は、まさに「ユーロプログレ黄金期」のまんま。
メロトロン、変拍子リズム、ウィスパーヴォイス(女性ヴォーカル)という、まさに「古式ゆかしいプログレ」であります。どこからか「ジェネシス!」「ピンクフロイド!」「EL&P」!という掛け声が聞こえてきそうだ……

なぜ、現在大学生(しかも芸大生)のKANATA氏がこのような古い音楽を演るのか……
それは、彼が「古い」と思っていないからである。
そこにこそ、幻想の美、御伽噺の美が存在するからこそ、彼はプログレを愛す!

こちらが、2014年秋の同人音楽即売会・M3においてリリースされた、無料音源(おためし版)である。
「辿りついた空」
 

このドタドタ変拍子! 唐突に入る「あの時代のシンセ」! そしてアドリブ・インタープレイ
まさにプログレであります。ネタや酔狂でやっているのではない。かつてのあの時代のイディオムを見事に自分のものとし、愛でもって鳴らすプログレ

かてて加えて、この作品は、あるひとつの作品の中の断片であります。
そう、今年の冬コミで彼らが発表するのは、その大きな物語の中の、さらなる断片!
これが、今年最後、Crimdollが贈る、2014年に別れを告げるプログレだっ!

「妖精の踊り」

 

今回はチェロが入るぞ!
そして、tr.2におけるシンセとチェロのインタープレイの妙はどうだ! 
tr.3における変拍子ベースソロ! ああ懐かしい!!
そしてtr.4の女性ヴォーカルの……これは、どこか同人音楽(幻想系)の影響が強い、
小さな思いを、羽ばたかせるように謳いあげるウィスパーヴォイスの美よ!
ヴォーカルも前作より安定度が増しているぞ!むしろ表現力といってもよいです。

彼らが紡ぐのは、妖精の住まう世界の御伽噺。
小さな世界を幻視し、その世界が「あのプログレの音でしか表現できない」からこそ、こうやって本格プログレで、世界を表現するのです。

難点は、未だ多々あると思います。
バンドアンサンブルの不安定さ。もともとプログレは、その音像において「不安定」というのがあるのですが、彼らがその不安定を、「プログレ的不安定のわざまえ」として、常態として、結実させることができるか。これは今後の彼らの課題です。メンバーの移り変わりも不安定なようですし……まあそれもプログレっぽいんですがw(←笑ってはいけない)
また、フルアルバムがほしいところです。やはり、物語音楽は、「フルを通し」で聞いてなんぼです。もうビーチ・ボーイズの「スマイル」騒動はたくさんなんだっ!(笑)
 
しかし、彼らの表現者たる思いが、多くの人に伝わってほしいところです。
それだけ、彼らはプログレを本気でやっている……!


※Crimdollについては、他の音楽サイトの方々も書いております。ご参考までに
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