残響の足りない部屋

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岸田教団&THE明星ロケッツ「hack/SLASH」レビュー(feet.けいおん)

登場人物

  • 平沢唯:某音楽漫画の主人公。知識がない意味での音楽バカ
  • 中野梓:某音楽漫画の後輩。知識がある意味での音楽バカ
  • 残響:このブログの管理人。レコード買いまくりな意味での音楽バカ

 

 


●今の世代にとって岸田教団ってどーなの?

唯「こんにちわ! 平沢唯です!」

梓「こんにちわ。中野梓です。……前回に引き続き、私たち軽音部が呼ばれたわけですが……今回は唯先輩と私っていうのは何ででしょう」

唯「適当じゃない? あの管理人(残響のこと)、神経質な割に大ざっぱだからね」

梓「矛盾! そして唯先輩なんかキャラ違う!」

唯「それはそれだよ、ほら、筆者の筆力のなさ。……えと、それから、たぶんあれじゃないかな。ほら、私とあずにゃんって、ギターチームでしょ」

梓「はい、そうですね。HTTでは、唯先輩がリードで、私がリズムギター

唯「今回取り上げる岸田教団&THE明星ロケッツは、とにもかくにも、ギターを大々的にフィーチャーしたバンドだから、私たちが呼ばれたんじゃないかな」

梓「すごい……なんて整然とした理由……そして全然唯先輩らしくない……ひょっとして唯先輩の皮をかぶったニセモノなんじゃ……」

唯「あずにゃんがいつも私のことをどう見ているかよくわかったよ。それで、まずは管理人から渡されたお題なんだけど、【岸田教団、どう思う?】だって」

梓「もう若いひとの間では、新世代のロック系ミュージシャンとして、同人出身とか関係なく認知されましたよね」

唯「私たち高校生なんだから、若いひとの間っていうのはどうかと思うなぁ。でも、私は好きだけど、岸田教団」

梓「私もです。ギターやってるひとで、このバンドが気にならないってひとは嘘ですよね。なんかこのブログの管理人は過去に岸田教団ディスってたような気がしますけど」

modernclothes24music.hatenablog.com

残響「はい、ここで説明します」

唯「わっ、いきなり現れた!」

残響「アレはアレで撤回しません。当時ずいぶん思ってた【これだけ才能ありながら、どうしていつも単純な3分間ポップス構成の曲ばっかりやるのだろう】っていうの」

梓「ずいぶん辛辣ですね。でもそれいったら、世のロックバンドって、たいていそうじゃないですか?」

残響「そう。【そう】だからこそ、この点で批判するのをやめたのです。ロックはブルースの昔からこういう形式だから、今更この領域をとやかく言うのはフェアじゃないかも、って。プログレじゃないんだから。それに、今の世代にこの点をとやかくいったって、賛同を得ることはあるまい。もっと建設的に考えなきゃ。新譜でもそういってたし」

唯「前回いってたよね。パンクなロックはフォーマットだ、って」

残響「そういうことです。では、また管理人は潜ります。お二人で会話してください」

唯「かってだなぁ」

梓「でも、よくtwitterとかのプロフィールで、【岸田教団スキ!】っていうひと増えましたよね」

唯「あずにゃんtwitterやってるんだ」

梓「あっ! 隠してたのに!」

唯「そんなところがかわいいなぁ」

梓「い、いいんです!別に! それで、岸田教団、昔は同人音楽で頭ひとつ抜けた存在だ、っていう認識はあったけど、今は【アニソン領域】を抜けて、【オルタナロック領域】で、頭ひとつ抜けた存在だ、って認識だと思います」

唯「順調にステップアップしていってる、って感じかな。で、私たちのように、海外デビューはまだなのかね?」

梓「調子のってません?」

唯「ごめんなすん」

梓「なんですか、なすん、って」


●新譜「hack/SLASH」

 

hack/SLASH

hack/SLASH

 

 

唯「管理人は、珍しくダウンロードで買ったそうだよ。だから、歌詞をよく読めなくて困ってるらしいよ」

梓「なんてバカな……。でも、あの盤派の管理人にしては珍しいですね」

唯「メルトンさんっていう、twitterの相互フォロワーさんと以前すごい音楽話が盛り上がって、それで【あ、岸田教団新譜買ってねーや! 偉そうに岸田教団のこと語れないよ!】って突然思って、焦ってDLで買ったんだって」

梓「なんという適当な……」

唯「それで、あずにゃん、今回の新譜聞いて、どう思った?」

梓「大きく分けて3つ特徴がありますね。

  • 1)ほとんどの曲がBPM早めのファストチューン
  • 2)デジタルな電子音の導入
  • 3)四つ打ちリズムの多用

……といったところでしょうか」

唯「うーん、わかりやすくいってくれたから、私のでる幕がないよ」

梓「あ、すいません」

唯「でも、私には意味がわからない!(どやぁ) なので解説よろしくね」

梓「(このひと本当に軽音部なんだろうか……今更だよね)わかりました。(1)BPM早め、ですが、これは聞けばわかりますね。とにかく、アップテンポの曲ばっかり。もっとも、岸田教団の曲っていうのはたいていそうですが、今回とくにそう思うのは、全体的にアグレッションが強い仕上がりになっていて、「攻めている」ってカンジがします。レーベル変わったからかもしれませんけど、より大きなレーベル行って、より攻撃的になるのって、個人的にはいいカンジだと思います」

唯「ろっくだね!ぱんくだね!」

梓「(2)電子音、ですが、アルバムのはじめからピコピコなゲームボーイみたいな音がでてきます。これがアルバムの全体で、いつもよりかなり多い。純然たるギターロックを追求してきた岸田教団にとっては、新機軸といえるでしょう」

唯「ふむふむ」

梓「それで、(3)四つ打ち、ですが、これはここのところの若手ロックバンドのフォーマットとなりましたね。凛として時雨以降、最近ではKANA-BOONがもうこれやりまくって、【邦楽ロックの基本リズム】と化した面があります。それに、アイドルポップも基本このリズムですね」

唯「ふーむ。……思ったこといってもいいかな?」

梓「どうぞ」

唯「それって、単に岸田教団が、ダンスミュージック……EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)に接近しただけ、って片づけられないかな?

梓「…………!!!(さ、さすが唯先輩、直感が鋭い!)」

唯「うーん、でも、それって言葉にすればそうなんであって、聞いた感覚では、今まで通りにロックなんだよね」

梓「そうですね。私の言い方がまずかったかもしれません。まず電子音ですが、これはシンセの導入というよりは、むしろ彼らの場合だったら、ほとんどエフェクターで作っている、といえるかもしれません。それまでもバカでガイキチな音ばっかりエフェクターで作っていた彼らですから、その延長線上だと」

唯「ブンブンサテライツavengers in sci-fiみたいに、電子音をリフやメロディにまで及ばせて【ダンスロック】にはしてないってわけだね」

梓「そうですね。また、四つ打ちリズムといっても、岸田総帥とみっちゃん(ドラム)のリズムが、ロック的ダイナミズムを損なうわけがないですね。むしろみっちゃん、叩きまくりといっていいです。基本四つ打ちなんですけど、まあ「また四つ打ち?」と思う部分があることも事実なんですけど、でもオカズをいれまくっていますから。「ストライク・ザ・ブラッド」での「シパタタタン!」ってフィルの入れ方なんて絶妙ですよ」


20131030_岸田教団&THE明星ロケッツ_ストライク・ザ・ブラッド MUSIC VIDEO_試聴 ...

唯「BPM高め……については、【いつもの】ってカンジかな」

梓「ぶっちゃけますと、【そうです】」

唯「それじゃ、これまでのいってきたことを結論すると、どうなるだろう。私は、これまでのichigoさんのハスキーな歌と、はやぴ~さんのガイキチギターを活かしながら、とっても攻撃的なカンジにしあがった【気骨のあるロックアルバム】だと思っていて、この攻撃性……攻撃性だけでいったら、同人時代の東方アレンジ【ROLLING☆STAR】にも似たふいんきがあると思うんだけど」

梓「ふいんきじゃなくて、雰囲気です、唯先輩。私は、エフェクティヴなプレイはそのままに、しかしそれに頼りきるばかりでなく、ギターロックとしてゴリゴリに攻めてきたな、と。ここまでは唯先輩と同意見です。……でも」

唯「ん? いってごらん?」

梓「これまで……とくに【星空ロジック】【リテラルワールド】にあった透明な叙情性よりも、孤独なる心情とか、凍てついた、って感覚。ハードで堅い、って感覚がかなりするんです」

唯「それは音って意味? 歌詞って意味?」

梓「両方、です」

唯「大人になったね、あずにゃん

梓「…………///(照)」

唯「たぶんそれは、岸田教団の進化、というよりは、深化ってことだと思う。……彼らが変にオトナになった、って意味じゃないよ。世間ズレしたってことでもない。攻撃性をぜんぜんそのまま、むしろ新機軸を入れて、よりアップデートしていく、っていう、今のロックミュージシャンに【ひょっとしたら一番足りないもの】を、もしかしたら岸田教団は持ち続けている珍しい例かもしれないね。だって、今回全然「マンネリ」ってカンジがしなかったんだ。それは電子音とかでハッとさせられることにもよるけど、やっぱり第一に曲がいいよ。キャッチーだし。だんすだんすだんす!って叫ぶような曲いままで岸田総帥の曲であったかいな」

梓「「ケモノノダンス」ですね。それに……ラストナンバー「Hack&Slash」の歌詞もすごくいいですね。これだけキャリアを重ねながらも、攻撃的……というか、今の岸田教団のテーマソングなんじゃないでしょうか。

「夢や希望や幻想だけじゃ覚悟がひとつも足りやしない」
「リスクを愛さない奴に微笑む神はいない、あいつらたぶんかなり性格悪いぜ」
「殺傷力さえあればだいたいはうまくいく」
「君の正義を証明してくれるひとは現れない」

……かなり、「星空ロジック」とは面もち違いますね」

唯「……でもさ、これって、今までの叙情性とも通じているんじゃないかな。大切なものを守りたい「星空ロジック」の叙情性と、それを守るための意志、力、方法論という「hack/SLASH」の攻撃性。どちらも、夢を抱いたオトコノコだったら持ち合わせてるものなんじゃない、かと思うよ」

梓「私たち、女の子ですけど、ね(くすっ)。でも、わかります」


Kishida Kyoudan & The Akeboshi Rockets - Hack ...