残響の足りない部屋

同人DTMとか模型庭園とかエロゲとかの日記

Crimdoll「妖精の踊り」レビュー(feet.けいおん)

公式HP

crimdoll.tumblr.com

 

登場人物

琴吹紬(ムギ):(たぶん)まじめなお嬢様
中野梓あずにゃん):(苦労しがちな)まじめな後輩
残響:このブログのふまじめな管理人・筆者

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●はじめに

ムギ「こんにちわ、琴吹紬です。今回は、同人音楽の、シングルについて、私と梓ちゃんで語ります」

梓「こんにちわ、中野梓です。……でも、この盤……Crimdoll『妖精の踊り』のことなんですけど……あの、このサークル、管理人のひとがいつもお世話になってる人達で……その……」

ムギ「梓ちゃんが言いたいのは、一言で言えば【お太鼓持ち身内レビュー】になっちゃうんじゃないか、ってことね?」

梓「はい……」

ムギ「そのあたりは……無視しましょう、そうしましょう!」

梓「ええっ!」

ムギ「どの道、筆者のひとが、Crimdoll……とくに中心人物のKANATAさんにお世話になってるのは変わりないことだし。今度の同人音楽即売会・M3でもCrimdollのスペースで、筆者のひと、売り子させていただくんだし。それに、手心加えたレビューなんて、KANATAさん大激怒するでしょうね、かの人のアーティストシップからいったら」

梓「ですよねー……それに、このブログの主旨はただ一つ」

ムギ&梓「「語りたいから語るっ!!」」

ムギ「ということで、M3を前にして、前の冬コミでの作品を語り、そして身内の作品を語りながら、精神とメソッドはいつもの独断と偏見が変わらない、いわば場外乱闘戦レビュー、開始します! ふんすっ!」

梓(ムギ先輩にしては気合が入っているのは頼もしいんだけど……意味わかって言ってるのかなぁ……唯先輩っぽくなったらイヤだなぁ……)


●このテン年代もいよいよ後半になろうって時に、70~80年代プログレを演るということ

 

梓「それで、このサークル、Crimdollなんですけど、プログレ……なんですよね」

ムギ「ええ、そうよ。プログレについて簡単な解説をすると、【プログレッシヴ・ロックの通称。ロック・アンサンブルのダイナミクスに、ジャズのアドリブ要素、クラシックのメロディー感覚や構成美を付与した、芸術的ロック形態】……かしら? というか、このサークルからプログレ抜きにしたら、何になるのって勢いで」

梓「しかも、90sドリームシアター式な【プログレメタル】じゃなくて、プログレ発祥~黄金期の音たる、70年代~80年代の音直球という」

ムギ「音源聞けば一発でわかるわよね。例えばこれは、去年のM3で無料配布された音源なのだけど」

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梓「古い……ですよね」

ムギ「筆者なんか、この音作りにはむしろ物凄い好感を抱いているみたいよ」

梓「全然ハイファイな音じゃないですよこれ!」

ムギ「そこが、昔のレトロ音源っぽさを表していて、70s、80sプログレなんて大抵こういう音だったから、その時代っぽさが懐かしくてしょうがない、というマニア視点らしくて」

梓「どうしようもないーーー!!!」

ムギ「あと、筆者は、ジャズとか民族音楽とかの音質悪すぎな録音に親しみまくっている、というのもひとつ、ね」

梓「もっと耳を鍛えましょうよぉ、この管理人……」

ムギ「まあそういった意匠……フレーバー(雰囲気)的なところでは、まさしくこれはプログレよね」

梓「じゃあ音楽の本質的なところではどうなんですか?」

ムギ「打てば響くような梓ちゃんだから私たちは皆かわいがるのであって。それはともかく、この一策目では、部分部分では良さを出しているのだけど、それを全体的に統合するにおいて、それなりに不備がある、というのが、筆者さんの評価だったみたい」

梓「自分の統合性のなさを棚にあげて……」

ムギ「そんなこと言ってはだめ、それを追求していったら、このブログ、もう全部が瓦解するのよ」

梓「ムギ先輩のほうがひどいこと言ってる……じゃあ、筆者さんの意見は、これはどうにも、な作品だったと……?」

ムギ「実際、KANATAさんに送ったメールで、そのあたりのことをクドクド書いたらしいわ、この管理人さん」

梓「ひどすぎる……」

ムギ「でも、その後この冬コミ新作を聞いて、で、不思議なことに、ずいぶんと考えが変わったみたい。一作目に関しても。曰く、【耳タコになった】って」

梓「へ?」

ムギ「例えば、【辿りついた空】ではイントロの【ダッ、タラララララ、たーったったたーたらら】のところとか、歌いだしの女性VOとか。今作では、様々な語りや、メロディー……とくに最後のシンセとチェロが絡み合って、空を目指していくような螺旋、のところなんか、脳内にバッチリ刻みこまれて、いつしか脳内で自然とリピートするように」

梓「なんででしょうね?」

ムギ「それを解明するのが、この対談式レビューの目的よ、梓ちゃん」

梓「そうですねっ」

ムギ「……ところで、管理人さんからひとつ言われたお題があって、【このテン年代でこういうプログレ演るって、率直な話、どう思う?】なのだけれど、梓ちゃん、どう?」

梓「えっ! ……い、いきなり振られてもっ。……あのー、正直に言ってしまっていいんでしょうか」

ムギ「モチのロンよ」

梓「(古い……)……えと、あの、正直、【なんで今更こういう音演るの?】と思わないといったら嘘になる、ってところです」

ムギ「うーん、梓ちゃんも言うようになったわねー」

梓「ム、ムギ先輩が言えって言ったんじゃないですかー! あーもう、言い尽くします! ゼロ年代中期から、カオティックコアや新世代ジャズ、ダブステップが台頭して、新たにシーンを定義してもうそろそろ10年。シーンはこういったものをもう【古典】として、さらに新しい領域に行こうとしてるのに、わざわざこんな70s~80sプログレなんて昔のものを発掘してこなくても……」

ムギ「あれ? 梓ちゃん、いつもといってること違うわ、普通、レビュアーは音楽家に対して【温故知新】……【昔を訪ねることを忘れてはいけない】っていうようなモノじゃない」

梓「そ、それはそうですけど……でも、プログレって、もう【汲み尽くされるところは汲み尽くされた】ジャンルなんじゃ……」

ムギ「それが一般的な評価なのかしら、ね。でも……私は思うのだけど、本当にそうだったら、Crimdoll表現っていうのは、成り立っていないと思うのよ。そのことを語っていきたいのだけど……まずは、楽曲の個別レビュー、ね」

梓「はい」

 

●「妖精の踊り」曲目分解レビュー

a)冷めぬ夜に

ムギ「女性VOによる、どこかたどたどしい歌いだしからはじまるわね」

梓「ちょっと弱すぎるって感じもします。でもそこからベースと絡まって、語りパートに行くんですけど、今回、この語りをかなりフィーチャーしたことによって、幻想音楽、物語音楽っぽさがぐっと増しましたね! で、この語りがまた上手いんですよ! 物凄くぶっちゃけ話をすると、歌よりも語りが(現時点では)上手いんじゃないか、ってくらい、雰囲気がある。トーンを落として、語りかける……まさに”語り”です」

ムギ「この音源の、前作に対する特性として、新機軸なのは二つかしら。

1)”語り”の強度
2)チェロのフィーチャー


前者は同人音楽ではごく普通の手法だけど、ネタでなく本気なトーンだから、聞かせるの。それから、チェロを大々的にフィーチャーするのも、同人じゃ……というより、邦楽全体でみても珍しいんじゃないかしら」

梓「どーしてヴァイオリンじゃないんでしょうね?」

ムギ「メンバーの都合もあるでしょうけど……それがプログレ感覚なのじゃない? 憂いというか、低音の沈み込むような哀愁。ところで、さっきから梓ちゃん、”語り”のところで、いいたそうな雰囲気だけど?」

梓「えと……率直にいって、初期サンホラ……というか、もっと直接的にいえば、語りのトーン落としとか、シリアス度合いが、まさにKrik/Krakな感じがするんですけど」

ムギ「そこはKANATAさんの好みというか。そもそも筆者さんがKANATAさんと知り合うようになったのが、Krik/Krak関連のお話だったし。そういう観点からしたら、このKrik/Krak的”語り”を導入するのも、ごく自然だといえるわ」

梓「ですよね。ほっ……(とくに間違いじゃなかったんだ)。でも……全体的にいって、まずこの第一パートですけど、不安定ですよね」

ムギ「やっぱりそう思う?」

梓「だって、不協和音とか、変調とかが激しいですし、変拍子。全体的に、メジャーコードで明るくアニソン! って感じがゼロコンマもしませんよこの音源」

ムギ「ちょっとよくわからないのが、KANATAさん、アニソンをフレーバーとして取り入れる、とかっておっしゃっているわりに、アニソンモロなフレージングにはならないのよね。でも、梓ちゃんがいまいった【不安定】……これが、この作品、ひいてはCrimdollがなぜプログレを指向するのか、の理由になってると思うわ」

梓「えっ……? それはどういう……」

ムギ「ほとんどそのままの意味なのだけど、でも、まずは楽曲レビューが先ね。次の章いきましょう」

 

b)ステップ

 

梓「インタープレイ、アドリブパート。インストです。軽快なリズムに、チェロがリフを刻みます。メロディもまた軽快で、シンセとチェロが掛け合います」

ムギ「軽快な中にも、【謎】って感じがあるわね。これなんか聞いてると、まさに【ゲーム音楽】!って感じ。というかゲーム音楽こそがプログレだった、というか。ノビヨ博士、桜庭、光田……」

梓「もうかなり言われてますよね、ゲーム音楽プログレ説。でもこれはゲーム音楽の側からの処理、というよりは、あくまでプログレ畑からの提示、といえると思います」

ムギ「もっとも、いまの若いひとは、その二者を区別して聞くことはないでしょうけど……これはプログレがある意味で世間、とくに日本の音楽文化に浸透した、ということでもあるし。けど、またプログレが【どこに行ったかわからなくなった】ということでもあるの」

梓「私がギター弾く人間だから、というのもありますけど、やっぱりこの編成、こういう曲だと、ギターほしくなりますね」

ムギ「絶賛募集中だそうよ、Crimdoll」

 

c)夢から覚めて

 

梓「すごく……静かです……アンビエント?」

ムギ「小さな音での、低音を主体とした不安そうなサウンドスケープね。このあたり、KANATAさんの現代音楽の素養かしら。ちなみに、筆者さんが、KANATAさんの芸大でこの手の音楽を学ばれているのを知って、作品見せてもらって、したためた感想がこちら」

modernclothes24music.hatenablog.com

梓「最初、この音だけがずっと続くのだったらキツいかなー、と思いましたが、やがて超シリアスな語りが入っていって、それと同期する形でバックのバンドが盛り立てます!」

ムギ「まさにプログレインタープレイの真骨頂ね。叩きまくるドラム、哀愁のシンセ、チェロ、暴れるベース……鬼気迫るときのイエスやクリムゾンの【あの感じ】は、短いながらもでていると思います」

梓「でも、基本【歌もの】で、Crimdollはまとめるのですね。「え? これで歌もの?!」と言われるかもですが、プログレってこれくらいインタープレイが入ってても歌ものなんです……」

 

4)誘われるがままに(妖精の踊り)

 

ムギ「インタープレイの小さなブレイクの後、さあ、ラストなのだけど、梓ちゃん、どうかしら?」

梓「もう、ここが気に入らなかったら、たぶんこの作品があわない、ってことだと思います。それだけの集大成です」

ムギ「ハイトーン女性vo、がんばってるわね。ここは歌いあげなくちゃ、ってとこ。確かに歌唱はまだまだなのだけど、歌のシリアスさの真実性に嘘はついてない……というか、基本ウィスパー系な女性voなので、このようなハイトーン歌いあげというのもキツいというのもわかるけど。このあたりは、コーラス入れたり、ダブルトラックにするなりの解決法が求められるかしら」

梓「でも、この【何を考えているかわからない】系のヴォーカルさんは、得難いと思いますよ。こういってしまってはなんですが、今流行の歌い手さんって、【結構何を考えているかわかっちゃう】系、っていえると思いますし。アストラッド・ジルベルトがハキハキ歌っていたら違うでしょうし。そういう意味でも、プログレ感覚なvoだと思います」

ムギ「そして最後のインスト……アドリブパート。えと、思いをそのままいうから、好きに受け取ってね」

梓「……?」

ムギ「躍動感ある太いベースにのって、螺旋を描くかのように、シンセとチェロが、空を目指す、って感じがしました。それも、青空を目指すんじゃなくて、幻想的に月が隠れた曇空をただ行く、みたいな。音の連なりはやがて天上に手をかけ、そして見えてくるは赤い月……」

梓「それってユーロプログレというよりは、プログレの世界観じゃないですかー!!」

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ムギ「そう思っちゃったんだもの、仕方ないじゃないっ。でも、この箇所は、和製ニューエイジ好きにもヒットする。初期姫神が、そういえばプログレだったのよね、と思い返して、ああ……と浸るように」

梓「(わけのわからないことを言ってる……)でもこの頂点への高まり、というところですけど、【未果てぬ夢】って感じがします。天上に手をかけたけれど、それでじゃあゴールか、っていうと、違う」

ムギ「ずっと不安定の中で生き続ける妖精、の現れなのかも」

梓「ところで、さっき私が言った【不安定】のところとプログレと、なんですけど……どういうことなんでしょう?」

ムギ「この音楽を、世界観を体現するには、プログレという音しかない、っていうことよ、梓ちゃん」

梓「……そうかっ! どんなに音をハイファイに磨いても、このおとぎ話な世界観とは違うし、曇空の天上を描き、迷いなどを描くのにも、あまりにわかりやすい音色じゃダメなんだ……不安定で、不協和音で、変調でないと……(あるいは、筆者さんが耳タコになったのも、その不安定さと、逆説的なキャッチーさゆえの魅力……?)そして、そう、その要素は……」

ムギ「まさしくプログレッシヴ・ロックの音、ということなの。Crimdollがプログレをやるのは、酔狂じゃない。プログレじゃないと表現できない音世界、物語世界があるからこそ、なの」

梓「でも、それは今の人には……」

ムギ「論点がずれてるわ。【レトロだから今のひとには理解できまい】じゃなくて、【この音だからこその魅力を今のひとにも伝えるよう、さらに各パートの強度と、いい意味でのキャッチーさを詰めていく】クオリティアップ、こそが、Crimdollのやるべきこと。方向性が根幹においてブレているわけじゃないのだから」

梓「はい……そうですよね。失礼しました」

ムギ「梓ちゃんのいうこともわかるのだけど。結局、プログレゲーム音楽とかで生き残ったのは事実だけど、それでも音楽シーンのメインストリームから退場したのも事実なのよね。だからこそ、プログレは修羅の道で。……思うのだけど、プログレの衰退っていうのは、技術偏重に走ったから、という通説じゃなく、【この音色でもって表現したい幻想世界そのものが、ミュージシャンたちの中から枯渇した】ってほうが正しいのかも。言い換えればインスピレーションの枯渇」

梓「む、ムギ先輩キッツいこという……」

ムギ「だからこそ、【この音色で描きたい幻想世界を持ってる】Crimdollが、この先何を描くか、期待している、というのが、筆者さんのいいたいことなの。……というか、やっぱりプログレはフルアルバム出してナンボだろう、と。ちなみに、このバンド、VOのひとがアートワークやってるのだけど、ぜひフル出すときには、サンホラやユーロロック並の凝りに凝りまくったアートワークを希望しますっ!」

梓「さすがお嬢様、無茶を通してこそのお嬢様だよぉ」