残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

野ざらし秋雨日記(1。和歌と文章)

●1日め

小夜時雨 月も見ぬまに とぷるりと
 沈みし夜の 舟漕ぎ歌かな

 眠れない、あるいは眠れなくても良い、という歌です。鬱屈は人を殺しますね。どこへも行けない、という考えが底にはあるような気がします。そんな夜間でも、なんだか楽しんでいるようなユーモアは感じませんか。今はどこへも行けない。ただ、今旅だつ必要はない。まるで酒を飲むかのように、暗黒を吞むのです。

 この日記は敬語でいきます。たいしたことはしゃべりませんが、オカシな炎上とかをしないように、きちんと冷静な頭で、推敲をきちっとしてからでしゃべります。
 わたしの話を聞いてくれ! ってな意識はそんなにはありません。ですが、人なき神の虚空にのみ放つ「朝倉音取」(宮廷雅楽)のような祈りの音響を、この日記で志すのは、さすがに厳しいでしょうが。


古都しのび 廃都なりしか?あおによし
 繋ぐよろづの ことのはめぐり

 きっといづれは楼蘭王国の廃都のように、人の体も意識も朽ちていくのでしょう。思いも、文章も。その砂塵的忘却に抗うとすれども、しかし「あえて抗う」という行動自体がちょっとストレンジ風味。
 廃都の美?朽ちゆくとは、禅の美? わからないな。 
「絶望と仲良くしようよ」とは、ただいまアニメ化中の少女終末旅行の言ですが。


伝えたひ 言葉もすでに ぼやけゆく
 頭かすむは 蜘蛛の糸なり

 鮮烈に伝えたかった日々もありました。例えば、そう、小説という大河なる言葉の流れでもってね。鯨のような大きな水塊がごとき文章でもってね。物語……ああ、物語。でも、それもなんだか疲れてしまって。
 それでも、伝えたいと欲しているのでしょうか。それとも、まずは作ってみたいと、表現してみたいと、欲しているのだと信じたい。

 トテチトテ 玩具の兵隊 歩むしか

下の句がない場合は、俳句ととって頂けたら幸いです。