残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

日記12/09 年の瀬新刊ラッシュにおもふ

怖ぇ~ッ。ミリキ(魅力)的な新刊ラッシュが怖ぇ~ッ。きみは識っているか、年の瀬は年末なので(当たり前)、出版業界では新刊をガガッと出すことを。山名沢湖レモネードBOOKS」で書いてあった。これを見越して、多少は本代を貯金してはあるけど、怖ぇ~ッ。

それでも、年明けの毎年恒例、一年に一回のお楽しみ「ハクメイとミコチ」単行本コミック新刊(10巻)まではしねんのだ。そう、しねんのだ。わかってくれるかこの心意気、道程(みちのり)を。

わたくし(この記事の筆者)は計算が凄い苦手なので、今年買った本(電書含)の総数はわかりません。こないだ某所で、「数か月の間に買った本がどうやら70冊くらいいったらしい」と記しましたが、まぁ1年で100冊いっていないこたァないよなぁ、という感じです。こっちもこっちで合計金額が怖ぇ~ッ(汗)。

さらには最近は、地元に新しい良い古本屋を見つけたもんだからさぁ大変。この古本屋、中古も新刊も取り扱っていて、新刊はいわゆるインディペンデント(インディー)系の品ぞろえや、個人製本のZINEもあります。自分でも今年は漫画の小雑誌を作りましたからね。こっちの方面も大変興味深いです。アーッ(お金が消えていく叫び)

本は「情報源として必要だから買う」っていうスタンスなのですが。ただ、ちょっと今年は買いすぎた感が否めない。とくにもう絵の資料(描き方本、デッサン本、ドット絵本、筆ペン画本、デジ絵本……)はこれ以上買わなくても良いんじゃマイカ。外国語の本や教科書も、本を買うより、語を「覚えた」ほうが良いんジャマイカ(道理)。

アーッ、それなのにそれなのに。お前はどうしてヤフオクでカセットテープの出物を探しているんだ。70's、80's洋楽テープなんて買ってどうするんだ。癒されるのか。癒されるんだよなぁ……。

 

鬱ですが、まぁ最近は仕事がデスマーチですね。自分がくたばったら死因は過労死になるレベル。なので逆に、ネットでのトラブルやプレッシャーは皆無ですのでご安心ください。

第一、ネットを見ないようにしていますし……。このリアル・デスマでネットを見る時間の余裕がない、っていうのもありますし、最近の殺伐&嫉妬に満ち満ちたネットを見て、精神の余裕をおのずから削ってもしょうがないっていう話でもあります。

それでも、鬱の底に一度辿りついて、なんとかそこから今浮上していってるかなーという感じではあります。ゆっくりですが、ぷか~っ、とね。

これで漫画を描ければ最高なんですが、今はまだ、一日一枚、新作漫画のイメージイラストを描くくらいです。ネーム作成まではまだたどり着けなくて。ネーム切るのって体力要るんですよ。その余力を、漫画のために取っておけないくらいの忙しさですネー。

それでも、ちょっと絵が上手くなったような錯覚をおぼゆのは、良い感じです。精神安定によい。

 

先日のミュートピアvol.5にいらしてくださった方々、ありがとうございました。

 

・追記1

鬱が入ってから今日でちょうど1ヵ月じゃないですか~ッ

・追記2

やったぞ、こないだ同人誌web即売会で買った旅行記漫画が発送されたぞ~っ。……あれっ?(買ってるやん)

日記11/25 初冬の雨の日

●鬱その後

申し訳ない話ですが、まだ残っていますね。鬱の体調不良が。自分自身に対し、カッと火花散るようなバーストがかけられない。

もっとも、そういうバーストは、しょせん花火のようなものであって、もっとぢっくりと熱を蓄える「継続」の焔(ほのほ)を燃やし続けることの方が大切……というのはまさにその通り。

●初冬

今年の秋は短かったような(シマーネ農業王国感)。例年、秋は黄金色に輝きつつも、寂寞たる切なさを感じさせる好ましい季節でありました。コロナ禍の前は、秋M3リアルイベントの季節でもあり、ひそやかに胸がわくわくする季節でもあり。弾丸イベント参戦旅行もしたなぁ、と。夜行バスに乗ってね。

最近、気候の乱れと共に、気圧の乱高下があるようになり、体調が悪くなりがちです。気圧が三半規管にガツンときたら、車酔いみたいな状態になり、グロッキー極まりなく。

ただでさえ、冷え込みで身体の動きが悪くなるというのに。その上、車酔い状態や頭痛・吐き気・神経痛と重なると、よろしくありませんね。

今年はラニーニャ現象(太平洋赤道~南米あたりの海の水温が低くなる)により、寒くなるとかいう話があります。数年前のような寒波・豪雪がガツンと来るのかなぁと戦々恐々。

 

●雨しとしと

雨と言えば自分の中では、今年の夏から秋にかけて描いた漫画ですが。

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そろそろ今頃になって、「よく漫画を描こうと思い立ち、実際に描いたな」と思うようになりました。それまでの「絵を描くのが怖い、恥ずかしい=コンプレックス」から、清水の舞台ジャンプのように思い切って。

もっとも、当時は鬱が入っていなかったから、出来たという話ですが。

……しかし。今、無理に漫画や、模型ジオラマで「創作」をやってしまっても、それは間違いなんですよね。自然にポッと出てくるのが一番だと思います。

この数年、創作が自分の生活を生き生きとさせてくれたのは間違いないです。その一方、自分には「義務感」で追い込んで作品を作る癖めいたものがあって。その義務感が自分を暗い焔で焼くことがありました(焦燥感)。

ああいう義務の焦燥は、もう二度とやってはいけないのだと思います。二度と、です。今後、二度と義務焦燥創作をやってはいけない。アレはドーピングであって、自分自身や他人を、大きな手のひらで掬いあげるような救済ではないのだと。

●コロナ禍

ステイホームとかの時期に、コツコツ作品を作り続けていた方々は、ほんと偉いなと、最近しみじみ思います。自分はそこまで偉くはなれなかった。作り続けられなかった、自分の生活を恙なくするだけでした。

自分にやれることを粛々と行う方々。感染を避け、自主的に防衛と衛生に努めた方々。生き残った方々、疲れた方々、感染された方々、逝ってしまった方々。

皆、頑張ったと思いますよ。まずそう思いましょう(断定)。

そんで、わたくし自分は……反省して、ちょっとは格好良いことを出来たらなぁ、って思います。作品作りもですが、人間としてまっとうでありたい。余裕があり、優しい人間になりたいのです。本当に。

 

●fav(最近のお気に入り)

この漫画作品は素晴らしかったです。↓

 

●過去の焦燥の例

これも冬の日でしたね。↓

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深夜に延々と癒し系音楽映像の垂れ流しを見て静かに涙を落つる心情を君は経験したことがあるか(フィラー映像入門)

フィラー映像が、涙が出るほど好きです。

涙が出るほど、というのは誇張じゃなく、深夜放送のフィラー映像の垂れ流しを延々と見ていると、いつしか自然と涙が目を潤ませているのです。

フィラー映像(番組)とは、テレビ放送で「放送中断」を避けるために、深夜などに垂れ流しておくための、特に意味やエンターテイメント性を持たない、音声付きの映像のことです。なんのことだかよくわかりませんね。

ようは、NHK(などのTV放送)の深夜に、一連の番組が終わったあと、癒し系のBGMとともに各地の風景の動画が2時間(以上)ばかり延々と垂れ流されているアレのことです。

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代表は「映像散歩」……内容はサブタイを列挙すると「世界・大自然紀行」「美しき自然・日本」「イギリス鉄道の旅」「ローカル鉄道の旅」「プラネットアース 絶景・天空の旅」「ヨーロッパ トラムの旅」「空からクルージング」……

……こうやって書いてみると、鉄道ネタ多いですね。まぁ鉄道の車窓から延々と見える情景、というのがフィラー映像のコンセプトと実にマッチしているんですね。なお、番組「世界の車窓から」はフィラー映像とは関係のない、ちゃんとした番組です。あれもあれで良いのですがフィラーではない。

こないだ10年以上使っているデジタルテレビレコーダーを整理していて、やっぱりこういうフィラー映像番組がたんまり保存されていました。眠れない深夜、こういうフィラー映像を垂れ流していると、実に癒されるんです。涙が出てくる。そう、疲れているんでしょうね。

 

「妙に自分はこういう番組が好きだな……(自分は変なんじゃないか?)」と気づいたのは、大学生の時期です。ふと夜中に寝付けずに(その頃から鬱や神経症でした)、NHKのテレビを回してみると、こういうフィラー映像が垂れ流されています。なんの意味性もない、メッセージも何もない。音楽も刺激的なものでない。……それに癒されていました。

こんなに内容のない番組、というかただの映像。でも、そこには人間の厭らしさはありませんでした。社会のギスギス感もない、綺麗な世界があったのです。もちろん、「意味や社会メッセージ性を持たないように作られた」のがフィラー映像ですから、人間ドラマの物語がないのは当然なのです。「綺麗な」とは「調律・編集された」ものです。所詮は人工的な調整です。

でも……大学当時から薄々気づいていました。こんな安っぽい癒しを求めるほど、自分は嫌らしい人間性、社会コミュニケーション性が、とことん嫌になっていたのだと。精神が疲れ切っていたのだと。時代や社会に自分を合わせるのも辛く、かといって自分の内奥を見つめ切るのも疲れる。

深夜、フィラー映像を淡々と流していると、心が癒されました。なんの解決にもなっていない? いや、今でこそ思うのですが、フィラー映像の垂れ流しを延々と見つめるのは、それは自分にとってはとても意味のあることだったと思います。涙さえたたえて、癒し系BGMと綺麗な映像を見る。その瞬間は傷つかずに済んでいたのです。時間を稼いでいました。それ以上病まずに、傷つかずに済んでいました。心理的にも物理的にも……。

 

ところで、フィラー映像で癒されていると同時に、妙に静かに「創作意欲が刺激されるな」とも思いました。大学時代からです。今もフィラー映像を見ていると、自分の中で「世界観とキャラ」が動き出します。

自分は学生時代からぽつぽつと創作をしていますが、一番自然に「創作のネタもと」になるのは、ひょっとしたらフィラー映像なのかもしれません。

フィラー映像で、街並みや、市井の人々の行き交う姿が映ります。そういうのを見ていると「ああ、ここに人々が映っているなぁ」とぼんやり頭の中で思います。音楽のリズムと、行き交う人々のリズムを同期させる感じで眺めています。

すると、自然に自分の中で「物語」が生まれてきます。正確には「物語のタネ(種子)」程度のものですが。

欧州のレンガの街並みを右行ったり、左行ったり。日本の空を見れば細い架線があったり。南米の波打ちぎわで人が水に足先を触れさせていたり。光の乱反射がきらきらしていたり。そんな映像に、BGMが穏やかに流れていて、なんだか自分もその空間と調和してるんじゃないか、っていう風に思えてしまう。

そうすると、自然に自分の中で創作のキャラたちや、脇役たちが物語として「立ち上がってくる」のです。派手なアクションはありません。キャラ達は益体もない話をします。時折くすっとするジョークが生まれたら最高です。その時もまた、「ああ、自分は今、癒されているんだ」と思えます。

 

 

最近、Lo-Fi HipHopチップチューン、Synthwaveにお熱だという音楽話題を、この日記ブログでは何回も出しています。このLo-Fi HipHopチップチューン、Synthwaveのmix動画を延々と夜中見続けて時間を溶かすのも、たまらなく癒されます。

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音楽だけでなく、ビジュアル(絵、イラスト、ドット絵)も付随しているというのが自分にとっては大事で。イマジネーションが静かに刺激されるんです。上記フィラー映像の「風景と行き交う人々に、自分のイマジネーションが静かに刺激され、物語が立ち上がる」癒しと全く同じものがあります。

 

 

以上のことは、あまりに個人的な体験なので、36歳の今まで、ほとんど言語化もしてきませんでした。言語化出来ない微妙な心情だっていうのもありますが、言語化する意味もなかった。ただ癒されているという事実のみで満足だったので。他人に理解されることも望んでいなく、他人とフィラー映像で語り合う気持ちもありませんでした。そんなことをする暇があったら、とにかく少しでも長くフィラー映像を眺めていたい。

自分が今これを書いているのは、自分の愉悦をちょっと言語化してみようかな?という単なる気まぐれです。言葉にして纏めておけば、あとあと便利かな、っていうだけ。

あと、「NHKの深夜に流れているアレは、フィラー映像(番組)って言うんだよ」ということを、フィラー映像という名称は知らないけれど、意味を知っていて愛している人(同志)のちょっとした助けになれば良いかも、という気持ちだけです。

 

フィラー映像(映像散歩)参考リンク

ja.wikipedia.org

 

seesaawiki.jp

 

 

(日記)鬱がやってきて、晩秋に居座っています

日常

しばらく来ていなかったあいつが、やって来ました。久しぶりだな……会いたくはなかったぜ……。

そう、「鬱」です。プチ鬱でなく、しっかり何日も居座る鬱。漬物石のようだぜ。

これくらいの重みの鬱は、前の冬=今年の2月にあったきりでした。この一年、なんだかんだで健康だったのですね。

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さりとて、こちらも青春のほとんど10年以上を、強迫神経症統合失調症と鬱に食い潰された人間です。素人ではございません。こういう時はジタバタしてはいかんのです。いかんのですよ。落ち着いた行動こそが求められます。クールになれ!

……とはいいつつ、鬱がやってきたはじめの時は、「これは鬱なのだ」と認識も出来ていなく、普通に友人とメールやチャットをしておりました。疲れるのが異様に早いな?と、変な兆候はありましたが。そしてそこから体が動けなく……(後述)。
即ち今回、初動の対処が若干遅れ気味でございました。友人諸氏に対してメンタル暴走はしていなかった……と思いたいですが、ともかくご迷惑をおかけしていたら、失礼しました(平伏)。

 

ときに最近、なにげに本の購入冊数が多くなっていました。これもこれで、ひょっとしたら無意識でのストレス解消……すなわち「鬱の前兆」だったのかしら……?と、今となっては思います。
まぁそれはともかく、引きこもって本や音楽を聴くことに専念ですね。

創作漫画同人誌第二作を描きたい思いもありますし、来年の春M3に向けて音源制作をしたい気持ちもあります。でも、今それをやってしまうとロクなことにならないのは明白です。

 

●プレッシャー

創作のプレッシャーというか、「生産的なことをせねばならぬ」と思い込んでのストレスがあったのかな?と疑念。

きっとあったのでしょうね。自分は常日頃からナチュラルに「そう追い込む」人間です。自分自身を。間違いなく。

だから、ここのところは、なるべくそう追い込まないように「フッフ~ン創作、創作ねぇ、まあナチュラルにやれば良いのよ」という態度をとろうとしていたのですが……手前の根幹に染み付いた自分自身の心性ってやつぁ。こういうタイプの真面目さは誰も幸せにしない真面目さだぞ、っと。

少なくともそういうプレッシャーなり糞真面目心性は、鬱の時は完全に良くないので、強制シャットダウンせねば。

 

●体が動かないタイプの鬱

今回、とくにこれです。精神のトラウマ暗黒の沼には、そこまで囚われてはいないのですが、とにかく体の動きが悪い。サイドブレーキかけたまま車のアクセルを踏んで動かそうとしているようなこの心身の重さ

鬱の時は、あまり真面目に思考をせず、モノをいじるなどの小さな「手慰み」をやっているのが一番です。そうして時間を稼ぎ、回復してきたら、ぼちぼち動いてみる……というのがいつものパターン。

ところが今回、この「手慰み」に至るまでのささやかなパワーがなかなか出てこない。手慰み自体も、あんまずっと続けていられない。

まるで殻にこもった愚鈍な貝のように、フートン(布団)にくるまって寝る。寝る。寝る。たまに食物を摂取して、寝る。……このままでは良くない、と思いつつも、それ以外の方策が出てこない。

そんな状況ですね。

 

●もうちょっとしたら

音楽を上手く取り入れたり、動けるときに体を軽くストレッチして柔らかくしたり、とか。

あるいは魔法瓶でいつも暖かい飲み物を用意し、漢方薬で身体を整えるとか。

寝床も清潔にしておいた方が良いです。でも寝床の横に本をあまり多く積みすぎてもいけないので、厳選して、厳選。

毎日の薬服薬は、現在かなり厳格に行っています。どのタイミングで薬を何錠飲み、どういう効果があったかを、逐一メモってあります。今度の病院診察で、そのメモを主治医に見せます。

とにかく今は、回復に努めるために、「何もしないことを選択する」ことを選びます。時間を稼ぎます。精神の防空壕の中で。それは大事なことだと思うのです。

そんなわけで、しばらく安静に引きこもっています。

 

 

屋根裏部屋のある生活--At the Garret全作品感想

※11/01:秋M3新譜「The Guest of Honor」ネタバレ感想追記

 

同人音楽サークル・At the Garretは、

作詞・作曲・編曲 霧夜 純 氏(サークル・三ツ星☆リストランテでも作曲)

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歌唱 鹿伽 あかり 氏(サークル・Ideadollでも活躍)

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歌唱 桃羽 こと 氏(サークル・Ideadollでも活躍)

twitter.com

の3人で、「物語音楽」を展開しているグループです。

公式サイト ↓

atthegarret.web.fc2.com

M3秋2021 おしながき ↓

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物語音楽とは、複数の楽曲を用いてストーリーを展開する連作作品です。ひとつの盤の中で、「語り(ナレーション)」も有りの楽曲、考察を誘発する歌詞といったように、「物語」をリスナーに強く訴えかける音楽性です。Sound Horizon的、とも言えますし、ミュージカル的、とも言えます。事実、サークルの御三方はサンホラにもミュージカルにも強い影響を受け、愛好しています。

同人音楽シーンでは、サンホラ以降のこの10年あまり、ひとつの潮流となっているジャンル・スタイルです。At the Garretはこの形式に拘る……というより、「物語音楽をやることが自分たちにとっての当たり前だし、やりたいこと」という、音楽サークルとしての自然な確信を感じさせます。

ミュージカル的、と先ほど申しました。では華麗で絢爛豪華な音楽性……?とこの文章だけだと、そう解釈できます。しかし、「屋根裏部屋(the Garret)」は暗いのです。あるいは、灯りがともったとして、そこには何らかの意図があり、童話的狂気の香りがうっすら漂ってくるのです。

そう、At the Garretの世界は、屋根裏の密室感をどこまでも想起させる「閉じた世界」。自分は過去の感想でそれを「霧夜純の密室芸」と何度も書いてきました。そういう感じが凄いするのです。自分には。

そんな屋根裏部屋が、わたし(筆者)の生活に有るようになって、数年経ちました。これまでの作品全部聞いてきたっていうだけのことですが。……で、その屋根裏のある生活が、自分のここ数年の音楽生活で、ひとつの大事な音楽体験となっているので、ここで改めて纏めてみることにします。

なお、この記事は前々から書き溜めていたものでありますが、発表がM3秋2021の前日っていう、あとぎゃれ(愛称)賑やかしにしてはギリギリもいいところなので、同人でよくある極道入稿とはこのことですね(違)

 

1stアルバム「Assemblage」

2012年作品

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屋根裏にあるガラクタたちの音(SE)から始まるこの盤は、ユーロ歌謡あり、バラードあり、ピアノ曲ありと、ジャンル的には「いろいろ」。
しかし共通しているムードは、新鮮なヨーロッパの息吹、というよりも、屋根裏の埃っぽさというか、光のあまり当たらない密室感。
そのくせ、夢は空想の中をどこまでも駆けていく、という趣の密室さ。狭い空間から彼方を見続けるという夢想。

サウンド的に爆裂もしていなければ、後年のように音が磨き上げられてもいない。
だのに、屋根裏部屋の孤独さが、サウンドの行間から満ち満ちている、滴り落ちている。
そのかすれたセピア色の色彩、過去を常に追憶する姿勢。
静かに燃えているこころの炎。この場合、初期衝動という言葉が似つかわしいかよくわかりませんが……(そういうパンク性の音楽ではない)、この盤には独特の魅力があるのです。
それはジャケットからして。このジャケット、凄く内容と合っていると思うのです。


メロディの哀感は「Eternite」で極点に至り、霧夜氏の曲を鹿伽あかり氏(当時はAkari名義)が痛切に歌いあげます。トラック「屋根裏にて」でとつとつと語られる内容とサウンドは、At the Garretの「決意表明」というか。

屋根裏部屋が変わらない以上、音楽性も変わらない……ということを考えてしまいます。実際、後年あとぎゃれは、この処女作をリアレンジする形で「パピエ・コレ」を発表しています。それだけ、この盤で「屋根裏部屋の世界」はすでにしっかりと提示されているのです。

霧夜氏が特設ページで「中の人の趣味全開です!」と書いているように、密室の趣味性で展開される世界は、最初からブレがないのです。というかブレようがないとすら言えるのかもしれません。

 

1stシングル「記憶のレーア」

2012年作品

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あくまでこのシングルは、次のアルバム「白鳥の城」に至る前日譚なわけでありますが、しかし非常に魅力的な小品となっている盤です。ジャケットからして、トータルで好きな盤です。


基本的にこの盤、暗いのです。
何か「城」感のあるユーロ歌謡から始まります。曲調に、世界観に、常に影があります。何かよろしくないことが起こっているのだろうという不穏さが常にあります。ほら、愉快なミュージカルな感じじゃないでしょう……。

霧夜氏のピアノ曲は、鋭く刺す情感があります。雨のSEと相まって、罪や後悔から逃げないピアニズムのシリアスさ。悲痛な心情を美しく刺していくタッチです。

なのに、聞き終わって、次が楽しみになると同時に、なんか「聞いてよかった」と思わせる盤であります。
At the Garretのシングルは、そんな味わいがあります。次につなげながらも、その盤でひとつの世界観情景スケッチをバシッと叩きつけていく感じ。


2ndアルバム「白鳥の城」

2013年作品

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美しいオルゴールの旋律にのせて語りが入ります。もうこの時点で勝利への予感がしますが、次のオルゴール&ピアノ、ギターとストリングスの疾走曲「白鳥の城の物語」でぐっと掴みにかかります。勝ったな。


バンドサウンドはヘヴィではないですが、ここまでの勇壮で誇り高いメロディを、乱舞するピアノとコーラスを入れながら、女性voで疾走してシンフォニックロックとしては勝利ですよ。というか2番にあるバンドサウンドをガガッとキメるアレンジは燃えます。さらに小刻みに切りつけまくるストリングスとチェンバロとピアノが、若干バロックさも演出しながらもうシンフォニックロック、そしてコーラスと絡み合いながらのvoですよ。勝ちまくり。

物語の「語り」にも実に説得力が出てきています。そこから展開する歌メロの美しさ。At the Garretはメロディが初期から完成された完成度なのです。
ストリングスの美しさもですが、先にも述べたようなピアノの「刺す」感じが、楽曲のアクセントになっています。

「煌めく舞台を蝶は舞う」のユーロスウィング歌謡、もうこの時点で歌謡美メロとスウィングアレンジ、完成されていますね。アコーディオンを前面に出しながらリズムをぐっと後ろの方で打つ感じ、良いと思います。近年流行のエレクトロスウィングなるジャンルがありますが、彼女らのアプローチはその潮流とは全く別のところで、ユーロ歌謡ジャズテイストを確固と追求しております。

 

シンフォ曲は「白鳥の城の物語」と「飛翔」の二つだけで、実は曲の量だけで言うとロックチューンは2つだけなのですが、
しかしこの盤がシンフォロックの感があるのは、この2曲が特に強い!というのが理由でしょう。
複雑な乱舞をするサビのメロディ、壮麗なストリングスのコード感、東方project並みに連打するピアノ、そして打ち込みギターソロをダメ押しのようにぶち込んで、曲は疾走、否「飛翔」! まいりました。 物語のラストへ向けて盛り上がりまくって、そしてラストの語りと曲でしっかり締めます。そんな、ノイシュバンシュタイン城をモデルにしての、ヨーロッパ感溢れる城の物語です。

 

3rdアルバム「屋根裏美術館 -East Wing-」
4thアルバム「屋根裏美術館 -West Wing-」

東翼……2015年作品

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西翼……2016年作品

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なんとアルバムを2作続けてのコンセプトアルバム作品とは恐れ入ります。
イラストを公募し、その絵とのコラボ曲を作りまくる霧夜氏です。凄まじい。作風は、童話・民話感のあるというか、曲調も様々で、まるでビートルズのホワイト・アルバムのようなバラエティの豊かさを感じさせます。ただし、ホワイト・アルバムのような散漫さはないです。むしろ、このバラエティは「美術館の展覧会」の感が圧倒的に強い。そりゃそうです。各イラストに合わせている曲なんですから。

 

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思うに霧夜氏は、三ツ星☆リストランテでの活動で、野宮塔子氏の原作テキスト・詩を常に求めているように感じます。
このAt the Garretの活動でもその「テキストを求める」スタイルは変わっていないように思えます。屋根裏の美術館に持ち込むイラストという「原作」を公募したように。
後に言及するサークル・欠陥オルゴールとのコラボ作品でも、欠陥オルゴール・兎角Arle氏の物語と絵……「世界観」を霧夜氏は求めています。

arlequin.chimanako.net

以前、村上春樹が音楽エッセイ「意味がなければスイングはない」で、フランスの音楽家フランシス・プーランクの音楽を語ったとき、プーランクが詩……テキストを常に欲し、そのテキストを活かす曲を作っていたことに触れていました。

ですがもちろん霧夜氏は「原作テキストをただ音楽に移し替える」だけの音楽作業をしているわけではないと思います。
霧夜氏=At the Garretの音楽性はユーロ歌謡、シンフォニックロック、バラード、というようにヨーロピアンなミュージカル調のものです。原作や音楽シーンの流行に合わせて音楽性を次々変える、というものではありません。EDMテクノやデスメタルが入る隙間はないのです(当たり前だ)。
重要なのはテキストを霧夜氏が「私はこう解釈しました」というスタンスが、常に見えることです。その視点から、メロディや和音が生まれてくる。
原作をもちろん霧夜氏は大切にしています。しかし同じくらい大事なのは、彼女の解釈(そして楽曲としての再構成作業)にもあるのです。
別に原作テキストを魔改造している、というわけではありません。
原典テキストを「霧夜純はこう解釈したのだな」という知性のきらめきが、リスナーのこちらにも判る。

たびたび、野宮塔子氏や兎角Arle氏が「霧夜さんは凄い」と仰るのは、原作者のテキストを深く愛し、その上で「そう見るか!」という解釈をし、さらに楽曲として再構成してしまう。その現場を間近で見続けられることにもあるのかなぁ、と勝手に思うわけでした。

 

3rdシングル「石の花」

2017年作品

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イントロの語りから、剛速球のトラック2で幕を開ける本シングル。鉱山と森での、石工の少年と幼馴染の少女が繰り広げる、ロシア民話に影響を受けた作品。

ただ、もとの民話「石の花」をそのままなぞるのではなく、物語の一部がどんどん原作から「ズレ」ていく……って言い方は適当ではないですね。
--原作の再解釈。イマジネーションがどんどん飛翔していく。それだけの物語の読み込み。その読み込みが、曲の世界を複雑で味わいの豊かなものにしていきます。

この盤もまた、シリアス度の高いものです。ある意味、北国的なハードで沈鬱なところがあります。しかしそれだけに、その世界の静謐な硬質さが印象に残ります。なお、音(ミックス)も実に磨かれています。世界観に繋がっている音の磨かれ具合です。

At the Garretのシングルは、こうして世界観をバシっと叩きつけてきます。記憶のレーアのとこでも書いたなこれ。いや、大事なことだから2回言うのです。


5thアルバム「Papier collé」

2019年作品

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1st「Assemblage」のリアレンジ……というかAssemblageの再解釈、とでも言う作品でしょうか。また、現在のAt the Garretのサークル活動の活発さが、この作品から始まっているようにも思っております。作品の内容がどんどん良くなるまま、サークル活動が旺盛になるって、最高じゃないすか。

 

2019年当時、自分はこの作品をtwitter個人アカウント(現在、そのアカウントは削除しております)で感想をつぶやきました。連ツイで。こんな感じです。

 

M3リスニンタイム、1枚目、At the Garret 「Papier colle」、Go! #パピエコレ 

2(歌曲)「パピエ・コレ」、
この言葉は「紙素材、印刷物コラージュ」の芸術スタイルだが、楽曲自体がヨーロッパ歌謡ジャズをベースに、弦やツイン女性vo、小刻みなクラップリズムを重ね合わせてる。しかも齟齬はなく「ひとかたまりのユーロ歌謡の妖しき緊張感」としてぶつける! #パピエコレ

トラック2→3、
ジャズ者としては常々「スウィング感(横揺れリズム、グルーヴ)」に耳と体がいってしまうのですが、旋律もバッキングも、果てはオルゴールとベースだけになっても、屋根裏密室の中で緊張感高くグルングルン歌謡スウィングしてるな…… #パピエコレ

トラック4(インスト) 
電子音+ピアノ、弦楽のインスト。どこかポストロックを思わせる(それこそ例えばtoeとか65daysofstaticから歪んだギターを抜かした感じ)、機械的で流れるアルペジオ、しかし緊張感は途切れることはない。ポスロク勢としては極めて好みであるし過去曲「夜汽車」の系譜 #パピエコレ
あと、凄い音が良いですね。その良い音で「古い手触り」を表現している、ブレのなさね #パピエコレ

トラック5「死の島」、
この曲が極点であるが、この作品、全曲通して「届かなかった手紙」感が強い。アートワークに乱舞する切手からも、それは的外れな印象ではないと思うのですがいかがでしょう #パピエコレ

At the Garret 「Papier colle」
vo二人が正式メンバーとなって新作の気合いが凄い。従来の「屋根裏甘美な密室芸」はそのままに、ツインvoや全体のサウンドプロダクションをぐいぐい上げた挙句、妖しく流麗な歌謡ジャズ曲とバラードの良さで正面から霧夜純が貴様を殴り付ける!(すいません #パピエコレ 

たまらん!リピートだ!(※CD再生) #パピエコレ

細かくいうと「パピエ・コレ」のサビ前、桃羽こと氏がスタッカート的に切る感じでメインメロディーを歌い、間髪いれず鹿伽紅梨氏がコーラスを入れ、そこからガツンとツインvoとアコギ刻みとホーンでサビが展開するアレンジ。しかも2番ではvoの配置が逆転する仕掛け、吐く程良いな…! #パピエコレ

この金管ホーンの歌謡的な、「かわいさ」と「路上で妖しく舞う扇状性」の、やらしさ一歩前でどこか哀愁を感じさせるとこ、まさに歌謡ジャズだなあ!!戦前、魔都上海では、ヨーロッパジャズと東洋キャバレー歌謡曲が混ざり、ジャズが妖しく煌めいておったのじゃ!(年寄りの戯言) #パピエコレ

結局聞き始めて3回リピートしてしまった #パピエコレ #あとぎゃれ

 

それから後日、「屋根裏への道」と題して、以下のように連ツイしておりました。

(あとぎゃれツイキャス放送まで)あと40分なので仕事を超スピードで片付けて全裸待機也。待ってる間、At the Garretについてつらつら連載ツイートします。

 「屋根裏への道」 At the Garretを聞き始めたのは2016年で、先に三ツ星☆リストランテを聞いていて、その作曲者がソロプロジェクトをやってる、と知って。 #パピエコレ

「屋根裏への道(2」 #パピエコレ
また、今もお世話になってる同人音楽ファンの相互フォロワーさんから「At the Garretいいよいいよ。ていうか残響さんまだ聞いてなかったんですか逆にびっくりだ」とお勧めくださっていて。いざ実際に試聴音源聞いて、当時から「メロディで殴っている」感が凄かった

「屋根裏への道(3」#パピエコレ
その後実際にM3でスペース言って三ツ星の作品と共に「あとぎゃれ全部下さい」作戦を実行し、全作品を聞く。1stから全く一貫しているのが、霧夜純(エッセイ形式なので呼び捨て失礼)による「密室芸」なのだな、と強く思った。なるほどソロプロジェクトだ、と

「屋根裏への道(4」#パピエコレ
三ツ星も三ツ星で大変「閉じた」表現なのだけど、三ツ星が野宮塔子(作詞)の文学哲学精神の「圧」によってパワーがどんどん深くなっていく閉じ方だとしたら、あとぎゃれは霧夜純の箱庭世界として、屋根裏(Garret)内で閉じ切ったちいさな密室芸、という違いがある

「屋根裏への道(5」#パピエコレ
そういうわけなので、あとぎゃれ最初期からvoとして参加している鹿伽紅梨と桃羽ことが正式メンバーとして、あとぎゃれを「プロジェクト」として活動形式を定め、「外に開く」形で同人的プロモーションをしていくことになったのに驚いた。自分はこれに好感を持ってて→

「屋根裏への道(6」#パピエコレ
別にどこまでも「霧夜の屋根裏密室芸」で完結したって良いあとぎゃれなのだけど、嫌味なくまっすぐに「屋根裏を聞いておくれ!」のプロモーションには「気合を感じる」としか言いようがない。その心意気に打たれている。このあたりで結構霧夜としては意識の変化が→

「屋根裏への道(7」#パピエコレ
→あったのかと思われる。自分も同人サークルしてて、今回自分以外のvoを迎えるという作品を作ったから、そのあたりは僭越ながら気持ちはわかる。「裏切れない」って感。でも背中を正しくキックされる感。 何よりあとぎゃれの場合やっぱり新作でも「屋根裏密室」なのだ

「屋根裏への道(8」#パピエコレ
新作パピエコレは、音のレベルを上げながらもやっぱりやってることは「屋根裏密室芸」なのである。今日一番最初に出した「Assemblage」を、パピエコレが非常に意識しまくっている時点で、ブレも迷走もなく、高まったのは本気度だけなのだ。主題回帰は後ろ向きでない

「屋根裏への道(9」#パピエコレ
何より、プロモーションにしても、楽曲にしても、「たのしげ」なのだ。無理なく同人サークルをたのしんでいる。そこの好印象と、楽曲が殴ってくることで、15時からのラジオを楽しみにしているわけですね。以上です(終

 

6thアルバム「子供部屋の共犯者」

2020年作品

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コクトォの「恐るべき子供たち」を原作テキストとして、作中人物たちの心情をイマジネーション豊かに歌いあげる作品。凄く暗い作品です。だがそれが良いッ!

以前書いた感想です。↓

modernclothes24music.hatenablog.com

 

サークル「欠陥オルゴール」とのコラボシングル
「Invitations to Black Theater」

2020年作品

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物理媒体だと「封筒」が手元に届く作品。内容をこれ以上ないほどに表している装丁にも感服ですが、楽曲も次作「劇場の化物」に続く期待大のいざない。

以前書いた感想 ↓

modernclothes24music.hatenablog.com

 

欠陥オルゴールとのコラボアルバム「劇場の化物」

2021年作品

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欠陥オルゴール・兎角Arle氏の物語世界を舞台に、2020年からのコラボ活動の集大成として、満を持してのアルバムを出しました。さあ、劇場に来たぜ……!(アアッ、コロナウィルスでM3サークルブースリアル会場に行けなかったよ畜生ッ!)

何しろ音楽性と世界観の充実が凄い。まさにミュージカル的めくるめく世界の展開、劇場の進行。

欠陥オルゴールが紡いだ世界・キャラ・言葉の上で、At the Garretが劇を回す回す! どちらがリードしているということもなく、欠陥オルゴールの原作ありてあとぎゃれの音楽が飛翔する、あとぎゃれの音楽がますます兎角Arle氏の筆を飛翔させる!これが同人コラボと言わずして何という、と言いたいね!

舞台からして、人物からして、狂気が隠されてない世界。ダーク。シリアス。それなのに「少女が自然に舞い踊っている」感がどこか幻視されるほど、時折凄く微笑ましいのは、欠陥オルゴールの原作の品というか魅力というか。シリアスな世界なのに、キャラに愛情を抱けるという。

そう、これだけ練られた物語ですが、聞いた後の感覚は「良かった」なんです。劇と言う文芸を観た。終劇まで手に汗を握る、作品の表現。ある意味でのカーテンコールまで、緊張感の途切れることなく、この「劇場の化物」世界は幕を下ろします。

音、心情、ナレーション、終劇。これを席で「観劇」した後にぐっと手の汗の感触が、「これぞ文芸よ、劇よ」と、「良かった」と納得します。

しかし、この「劇場」展開感。ミュージカルに影響を受けているってレベルじゃない。盤……音源とイラスト、ブックレットデザイン全て使って「劇場」を表現したその姿は、この作品こそがミュージカル体験、ってくらいのものでした。拍手! 

 

4thシングル「The Guest of Honor」

2021年作品(秋M3新譜)

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昨日の記事(日記)で、この新譜を応援していることを書きました。記事のラストにあります。

modernclothes24music.hatenablog.com

 

※11/01追記 web通販で盤が筆者自宅に届いて、さっそく聞いての感想。ネタバレ注意!

 

 

なるほど。ハロウィン合わせの新作、今回は実に「館もの」という設定。……設定? ていうかもはや主題でありキャラクターではないですか。キャラソン

そもそも館の「増築に次ぐ増築」……完全に無茶苦茶な建築様式の積み重ね。この時点で「建築様式のパピエ・コレ」的な様相とも言えます。言い過ぎじゃない。事実、歌詞カードにしっかり外装&内装の図面が記されております。

で……困ったな。前の応援記事(日記)で語ったように、トラック3「Identity」に思いっきり言及しようとしたら、桃羽氏の歌唱と鹿伽氏の歌唱がスイッチする所、これ、アレンジの構成を語っただけでネタバレじゃないですか! 

 

まぁ、書かないと話が進まない……あくまで筆者の解釈として聞いてください。自分は「館(の精)の成長」を、歌手のスイッチ(交代)で表現していると思いました。つまり、増築に次ぐ増築。それだけどんどん変わっていく「館(の精)」の姿を、声自体のフィジカルな変化(ソプラノ→アルト)で表している。

そして、どちらの歌唱も同じメロディを強調するように唄っている。即ち、昔の館も今の館も、本質は変わっていないんだよ、今も同じ本質でここで待ち続けているんだよ……と必死に言おうとしているように聞こえてくる(深読みでしょうか)。

しかしトラック2「The Guest of Honor」の壮麗なストリングスの音の磨きが凄い。何気にプログレ的な組曲とも言えて、ミュージカル的とも言える。音が実にダークで流麗で、「ドン!」というオーケストラ衝撃音が印象的。ハロウィン曲としての堂々たる迫力。

 

さて、この物語のハロウィン性……ということで考えると、ハロウィンの「お盆」性によるのかなぁ、と考えてみます。一気にガクッとヨーロピアン緊張が消えたな!w

ハロウィンはキリスト教由来の「聖なる祭」ではなく、祖霊信仰の土着的な祭を起源とします。逝ってしまった者に「おかえり」と迎える心情の祭りなのです。つまりお盆。

そう踏まえて考えると、この物語で「館(の精)」は常に待ち続けています。「The Guest of Honor」の歌詞とアレンジで、館の外装・内装を描写。次に「Identity」で館の心情を描写。全て「待ち続ける」心情の精。

---この盤は全部で館の精のキャラソンなんだよ!(な、なんだってー!)

やばい、この路線で書くとシリアス物語音楽ファンにころされそうだ。ちょっとモードを真面目に戻して……。

 

英語で「The Guest of Honor」とは「主賓」のことです。この盤において、ジャケットの少女も、館にとっては「主賓」でしょう。館はずっと主賓を待ち続けています。共に楽しく過ごすために。ここで「私(館)は変わっていない!」と弁明したい気持ちのいじましさが何とも悲痛。

そうなのです。この盤の奥底にあるのは「待っている」「いつか来訪を迎えたい」という暖かな心情なのです。「ようこそ」であり「おかえり」であります。

シリアスな館の物語で、結局救いがあるようで、具体的救済があんまり無いような話ですが、しかし楽曲「Identity」の誇り高く暖かな音楽性が、「ようこそ」と「おかえり」を希求する暖かな心情の存在を何よりも照明しています。

やはりこの曲のメロディは良い……というかやや意地悪な言い方をすれば、「暖かな名曲でなければ成立しないストーリーになっている」という、この物語企画の難易度の高さ……!

しかし何よりも、聞き終わって実に暖かな心地がする盤でした。ハロウィンのあとぎゃれ解釈……確かに受け取りました。それは、この館の精のいじましい心情を受け取ったようなものです。ダークだけで終わらない。追憶もありながら、しかし暖かさもある。曲と、二人の歌唱の説得力です。……ということで、ますます昨日書いた、以下の末尾文章が、いや増してその通りになってくるわけで……

 

(げすとな感想おわり)

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↓ 以下の文章が、10/31時点で書いた記事末尾の文です。↓

 

 

At the Garretの世界……盤作品をこの数年聞いてきて、良かったな、と今しっかり思います。

文芸と絵と音楽の劇場的世界。独特の「屋根裏の暗闇」感、童話・民話的タッチ。あとぎゃれの世界はいろいろな文化を内包していて、作品を聞いた後、いろいろな本を読み返したくなる気持ちが湧いてきます。

ひとえにそれは、彼女たちAt the Garret三人が、屋根裏部屋で、毎回の企画を練り、「この作品世界は良い」「屋根裏美術館に展覧すべきだ」と、彼女たち自身が物語の楽しさを確信しているところから来るのでしょう。時流に惑わされることなく、安易なショートカットもせず、ひたすらに物語音楽を紡ぐ。あの密室で。

そう、彼女たちはいつも居るのです、屋根裏部屋に(At the Garret)。

日記2021/10/29 本を買う、漫画を描いた、最近のお気に入り音楽

●中古ネット書店で本を買う

いつも使っている中古ネット書店で本を24冊買う。これでも10冊ほど減らしての結果でありますから、頑張った方なのではないでしょうか。

町の図書館では現在11冊ほど借りています(貸出制限2週間20冊)。模型キットに比べて、そんなに本は積んではいないので、大丈夫なはず。(オタクのこの手の発言を信用してはいけない)

ただ、最近は速く読む(読破)ことは、あんまり良くないなぁ、と考えています。むしろ、外国語勉強や童話・神話・民話読み聞かせの観点から、テキストを「暗唱&翻訳」したい、って気が湧いているんですよ(せねばいかん、とはけして言わない)。いくらラピッド速読出来ても、「じゃあ最初の1pをゆっくり暗唱してみ?」って言われたら、沈黙の艦隊になってしまいますからね。

ひとつでも「暗唱して語れる」物語を持っている人、って、素敵じゃぁないですか。物語って、そういうものでもあったはず。そういう訳で今読んでいるのはこちら。

『“グリムおばさん”とよばれて メルヒェンを語りつづけた日々(改訂版)』
シャルロッテ・ルジュモン 著 , 高野享子 訳  こぐま社 刊

(出版社サイト ↓) 

https://www.kogumasha.co.jp/product/829/

それからこのいつも使っている中古ネット通販サイトに、ものは試しで「洋書」って検索ワードボックスに打鍵して入れてみる。そうしたら、びっくりするほどの「穴」だったでやんの。出るわ出るわ、エンターティメント小説や、映画のノベライズ、鉄道関連、海外模型カタログ、本場西洋ファンタジー……「穴」でした。洋書の穴。皆、他で買い取ってもらえないだろうから、ここに二束三文で持ち込むんでしょうなぁ。というわけで1時間ばかり、ぢーっと検索して眺めていましたとさ。

しかしふと「ハッ、これいつまで経っても終わんないやつだァッ」と気づき、とりあえずこの発見を忘るることなく、このブログ日記にしたしめて記録するわけでございます。D&D(ダンジョンズアンドドラゴンズ)の洋書ルルブ(ルールブック)を超捨て値で買いました。フフフ今アマゾーンで価格見たら、タイムセールでも5500円だぜ……。

似た話でゲームブックの話なんですが、ファイティングファンタジーのBOX、これも今アマゾーンでプレミア15000円ですからね。BOXの発売半年前から買おうか迷いましたが、当時お財布が寂しかったのですね。じゃー洋書ペーパーバックでいいかーと思い、「火吹き山」と「ソーサリー!1シャムタンティの丘」個人輸入したわけです。前にも書いたような気がしますなこの話。コロナ禍でちょい時間かかりましたが、届きまして、毎晩楽しく読んで(攻略して)おります。

村上春樹が中高生時代に神戸で過ごしていた時、「港町だから英語のペーパーバックが超安かった」ので洋書を読んでいた、ってことをエッセイやインタビューで読んだのですが。自分がそれを読んだ15年くらいまえは「そんなんあり?!」と思ったものですが、いつの間にか同じようなことをしているでござった。

 

●まんがを描きました。

こないだ36歳になりました。それで、この晩夏8月から10月半ばにかけて、ずーっと漫画を描いて、同人誌(小冊子)をコピ本製本していたのですね。14pの短編ゆかいまんがです。内容はいつもの通りのレッズ・エララ神話体系・中世篇。

(本館ホームページ掲載分)

redselrla.com

 

(同じものがnoteでも読めます)

note.com

生まれて初めて漫画を1作描きました。これまで「自分のこの人生では、漫画を描くのなんて無理だな。夢のまた夢だな……」って思っていたのですが、うーん。今は夢のただ中でしょうか。

頑張って描いたので、絵はまだまだの低力量すぎます。でも、「絵を描く生活」をずっとしてみたかったので、そのスタートラインには立てたかな?と思うのです。よろしかったらどうぞ本館ホームページなどで読んでやってみてください。

 

●最近の音楽

土曜日と人鳥とコーヒー スタジオライヴ

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オルタナティヴ・シューゲイザーバンド・土曜日と人鳥(ペンギン)とコーヒーが、彼らがいつも音源レコーディングをしているスタジオ「LAN MUSIC STUDIO」(大阪)でのスタジオライヴ。

この日、LAN MUSIC STUDIOはリアルタイムweb配信ライヴ企画を行い、どよぺんも参加した形です。土曜日と人鳥とコーヒーのサポートドラマー・イサノ氏は、このLAN MUSIC STUDIOのスタッフ、レコーディングエンジニアでもあったりします。

彼らがいつもレコーディングしているスタジオだけあって、実に「空間を隅々まで把握している」&「親密にリラックスしている」好演です。シューゲイザーノイズの暴虐性と、夢見る幻想の耽美音がこちらに届いてきます。

 

At the Garret 秋M3新譜「The Guest of Honor」クロスフェードデモ

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同人音楽サークル・At the Garretの新作はハロウィンです。秋も深まるこのタイムリーな時期に、確信をもってこのテーマの音源=盤をガツン、これですよ。同人音楽の恰好良さ。

 

(特設サイト)

f:id:modern-clothes:20210928213803j:plain

atthegarret.web.fc2.com

 

トラック1&トラック2の壮麗なユーロ歌謡・退廃ミュージカル・闇夜のゴシックワルツ調な感じの音の良さもさることながら、トラック3の「霧夜純・新展開」な美メロが昇天するほど凄い良さ味。

バラードですが、空に向かって歌唱が伸びやかに羽ばたいていくような。歌手も、歌詞と曲に心を込めて歌っていて説得力が凄い。高音を出す場所・折れそうな儚さを出す場所がサビの中に両方あるにも関わらず、この説得力。

メジャーキーを感じさせる明るさのコード進行ですが、それは内なる力強さ……誇り高き荘厳さに繋がっている明るさ。過ぎ去った何事かや、逝ってしまった誰かに対する、静かで、けして忘れまいとする……そんな荘厳な葬送の感情を妄想してしまう。そういう心象がどこかTK from 凛として時雨の名曲「like there is tomorrow」をすら思わせる。コード進行もですが、どこか同じような心性があるような気がする。この曲「Identity」、素晴らしいメロディです。

そんなわけであとぎゃれ、M3秋新譜、わたくし残響はすでに予約しております。自宅に届くのが楽しみです。

(ううっ、今回もリアルイベントには参加しません……。それからサークル参加もしません……オンライン一般参加です……)