残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

発掘:過去に書いた詩(詩)

○あの娘の前世はごみ箱だった

あの娘はとっても完璧で
あの娘はとっても聡明で
あの娘はとっても健やかで
あの娘はとっても美しく
しかしあの娘の前世はごみ箱だった

あの娘はいっぱい泣きながら
あの娘はいっぱい泣きながら
母に激しく尋ねる
どうして私の前世は物なのか
どうしてよりにもよってごみ箱なのか
しかし母は優しく微笑んで
泣きなさい、と言うばかり
あの娘は何だか不信感
あの娘は何だか母がとっても怖い
お母さん、私が欲しいのはそんな言葉じゃない
お母さん、何でそう微笑むの
お母さん、何だかあなたが私を見ていないような気がする
あの娘は何だか不信感
あの娘の心にさっと開いた
冷たく小さな嫌悪と不安

あの娘がある日気づいたときには
あの娘は半ばごみ箱になりかけていた
それでもあの娘は健やかだった、健やかに見えた
それからあの娘はがんばった
そしてあの娘はもっときらきら輝いた
この世の中を輝きながら飛んでいくあの娘
そしてあの娘がある日気づいたときには
あの娘は本当にごみ箱になりかけていた

だからあの娘は前世と刺し違えようと思った
未来というものはその瞬間にしか無いのだと思った
そしてあの娘は行った
そしてあの娘は成功した
何かが音をたてて壊れた
確かに何かが壊れていった
ところでその刺し違えは派手だったから
周りの人間はそれを見た
そのとき彼らが浮かべた
ほのかに楽しそうな微妙な笑みを
あの娘は一生忘れない
エンタテインメント?
エンタテインメント!

ああもうどうしようもないのかな
あの娘はそう思って
自ら大きな大きなごみ箱になって
飛び上がって逆さまになって
そのまま地面に落ちてあの人間たちをすっぽり覆った
ごみ箱の中に入ったものはみんなごみ
飛んでいけ飛んでいけ
ごみ箱の底に
私の底に向かって飛んでいけ
あの娘は乾いた泣き笑い
ぱっと見は力強くて
本当は薄ら寒い泣き笑い

のんびり屋の神様は
あの娘の前世がごみ箱だってことを
のんびりと忘れていた
そしてあの娘が苦しんだことも
たいして気にかけない

あの娘は思った
あの娘はこの壮絶なる混乱の中で思った
来世は花になりたいな
でもそれはきっと
頭から左右に引き裂かれる日向の花