残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

発掘:過去に書いた詩(詩)

○雪か雨か花びらか

そろそろ冬を見送らねばならない
どうしたってこの暖気の進行は止められない
緩やかに冬の冷たさが消えていく
良くも悪くも

私は草花が芽吹くのを否定するほど狭量ではない
私は特に何かを物申したいわけではない
けれど、草花が芽吹いたとき何かが消えてしまうのだ
私はそれをかすかに悲しく思う
そう思うのは人間として駄目なことなのだろうか
この世で生きていると何だかそう思ってしまう

そして冬の終わりと春の始まりがちょうど交わって
一面に吹く暖かい風に
冷たい風が刺繍のようにからむ
これが最後だ
これが限界なのだ
何かが降っているのが見える
それは冬の名残の雪なのか
冬にも春にも関係の無い雨なのか
冬を葬り去る花びらなのか
私にはわからない
私は思った
そのどれもであってほしいと
あるいは
もしこれが花びらだったとしたら
冬を見送るために風に舞う
冬を愛する花びらであってほしいと
私は思った