残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

新作の詩

○音波のスリップ


永遠の暗黒のように凝固していた氷塊は
事実上の雪解け水となって流れ出した
肺病を患った黄緑色の小鳥が
高い空をひとり飛んでいく


無音の空間に
雪解け水のせせらぎと
小鳥の最期のさえずりが
ハウリングして


グラスファイバーで作られた硬い空は
アクリル絵の具で塗られていて
とても平面的だから
音の深みなど消え失せる


無音の世界に
人はもはや消え失せ
ただ消えゆくだけの世界に
音波の振動がスリップして消えていく


あらかじめ決められた時間に向かって
世界の終わりは近付いていき
そして