オルタナ仙人・J・マスキス(自分はずっとマスシスで覚えていたのですが、最近これなんですよね、界隈)の本体バンドの6作目で、世間的には初期のダイナソー……BUGとかと比べると、90s中期に発表されたこのあたりの盤の評価は、あんまり、なんだか地味であります。
といいうかダイナソーの評価って、2nd、3rd、そしてグランジ・ムーヴメント(メジャー)としてのGreen mindあたりを第一の極点として、次に専門筋で「Hang it over」(すごい好きな一枚です)の戦慄性が語られ……再結成は話題になったけど、大方の評価はこの再結成も「悪くはないけど、初期よりはね……」みたいな。
わかった。んで、このレビューブログでは、そういう世間の「ささくれ轟音じゃなければ価値がない」という方針に抗うことにする。わたしがそうですから。
まず、ジャケを見てみましょう。
暗い!
しょぼくれた変な子供(?)が不安そうに、こっちをオドオド見ています。バック(背景)もすげー適当。黒と緑。
それがどこまでアルバムと同期となるのかはさておき(ダイナソーのアルバムジャケって、だいたいヘンだし)、少なくとも、サウンドは「壮大に広がる」というのではなく。そういう作風なアルバムじゃなく。
あからさまな爆走チューンは少し。
しかし大体において、いつもの「ジャズマス+マフ+マーシャル」のぶっといギターに、なんかてけとーなダルいvo。
「YEAH」という声がこんな、やる気なさそうに、しぼられる感じで出ようとは。ダルさのコンプ(圧縮)がかかっているよう。
しかし……不思議なことに、そのダルさの奥には、エモーションが見えます。
サウンドなのですが、ウォームにしておだやか。イージーリスニングとはいわんが、どこか落ち着いています。
その落ち着きが、轟音とあわさる。バリバリ弾きたおしてるわけではない。編成もすごいすっきり。ギターとベースとドラムとVO。彩りをそえるのは、ときおりのコーラスくらい。
でも、「飽きない」のは、エフェクターの使用というより(いうまでもなく、エフェクター仙人なんですがJは)、ギターの「轟」なるのに加えて、全体の感じが「河」――ゆったりした、大き目の川。そのようなおおきなグル―ヴがあるから。
急ぐわけではない、あくまでゆっくり。ダイナミクスを長いスパンでとって。
そして……メジャーキーで結構曲書いてる感じ(フレーズとかも)にもかかわらず、なんか暗い……「落ち込んでいる」感が。
それは、心のくぼみのようなところに、音楽が落ちていく感覚。Jは、このようなシブ味のある盤を作るのです――否、ひょっとしたら、轟音疾走よりも、「轟音シンガーソングライター」として、このように「シミるな……」という感じな評価のが、より適切にJを表してるのかも。
うーん、ニール・ヤングの正当後継者ですなぁ。