このアレンジ・コンピアルバム(二枚組)がどのようなものかについては、公式ページ、並びにわたしが冬コミ前に書いた宣伝記事をご覧ください。
昨日、いつものようにtwitterで、この盤の全曲レビューをしてました。そのログを張ってみます。
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01.「 for_alive」 arranged by ヘキ
極めてシャープなスクラッチ音!DJ!どこかDEKUシグネチャーのシンセ音を、どこかかすれさせるチューニングがワビサビ。中盤から、非常にハードなキックが入ってきます。ラウド&ルーズなベースと「とっとこ」系シンセが離れてるような、それでいて同期してるかのような不思議な感覚。と書いたらノりにくい、と思われるかもしれませんが、この曲独自のグル―ヴと、シンセの音づくりがなんだか心地よいデス #DEKU
レイヤーをだんだんと重ねていく感じが、堅実ですね。でも音が磨かれているので、かっこいい! #DEKU
02. 「Gray hued 8bit mix」arranged by 白河飛翔
その名の通り!しかし、この戦慄感よ!イントロの高域中域低域全部が8bitの音で襲いかかってくる……チップチューン的なチープさよりも、ガツン!とやられる感のほうが遥かに遥かに! #DEKU
ベースラインが非常に小刻みでダララララ!そこにメロが載る…ああ、腰にくる、ヘドバンを誘発する、体にくる、音楽! 原曲の孤独感が、また別の角度から孤独感を再認識させますね #DEKU
03. 「みどりのもりの たんけんへ 」arranged by heric
ワールドミュージックアレンジ、ということなのですが、原曲の牧歌的なイメージをさらにその方面に倍化させるかのよう。アコギから入り、民族の神器たるバグパイプが中域サウンドで「はじまり」を。さらに笛! #DEKU
とはいうものの、ケルトっぽい感じはあんまなく。むしろヨーロッパ辺境…そうさな、エヴィア(スペインのmidiバグパイプのひと)でこの手のサウンドに近い感じを受けたことがあります。構築された自然感、シンセを「自然感」の文脈で。打ち込み世代のワールド系って感じです。 #DEKU
04. 「ice moon arranged」 by Hiroshi Nakajima
ロバーーーーット、マイルーーズ!チルドレーン!
な感じを抱いてやまないイントロ!この音磨きの孤独感よ!そこからステップっぽい感じに移っていくプログレトランス。抑制の美! #DEKU
一定のリズムなりシーケンスフレーズを保ちながら、エコーかかった原曲シンセ(「ふおおおお」感)をフィーチャーして、そこから音響はスケールを増します。余裕のあるグル―ヴ、ビート。 #DEKU
……で、ラスト1分で、ランデブーの単音メロが!しかしここでも抑制!叩きつけるようなフレージングは皆無で……クール……。そしてベースのアウトロ。クール…… #DEKU
05. 「Ascent is below freezing point」 arranged by windsplite
タイトな打ち込みドラムが導入煽り、そこからぶっといベースのグル―ヴ。ハードです。そこに、極めて怜悧なピアノが差し込む!我々が愛した往時の王道トランス! #DEKU
Rank 1的シンフォニック!ああ懐かしいair wave!ブレイクしたあとはそりゃあ、ムテキなのがこの手の音楽の方程式ですわな!鳴り響けドラムロール!そこからトランスシンセ・リフが煽りながらピアノのエモーション。 #DEKU
06. 「We are SUGURI players 」arranged by ZEN-UVS. DEKU
問題曲(笑) いやクラブ系のあれこれがヒップホップに接近するのは普通やねん。第一プロディジーのリアムハウレットも大のオールドスクール・ヒップホップファンだし #DEKU
だがこれはネタ以前に、「スグリリスペクト」が熱く熱く……伝わる!というのも、「スグリシリーズ」ゲームネタでラップしてるからです。そうだよ…カエで撃沈なんだよ…(涙)トラップも使いこなせませんでした(涙)しかし音楽自体は、すごくディープな…ランタンパレードとかのようなサウンドの…しかしどこかで救いがあるかのような、静かな喜びとディープさが混同しているような、不思議なアトモスフィアです。静かに、温泉につかるかのような愛が、伝わってきます。なんだかんだで好きになりました。珍しく自分、ヒップホップ好きになりました! #DEKU
07. 「"Not" Silent Rhythm 」arranged by heric
ギャース、ハードコア!好きです!わたし、たまりません!こーの響きの少ない(あるいはデジタル感)タテノリ!(褒め言葉デス) もはやジュリテクの領域に足を踏み入れ、聞き方によってはダサさすれすれなんですが、しかし超強烈なキックと、不退転のメロ…もう何も怖くない的な強引さ、ああ、ハードコアテクノ!ぶちかませーっ!爆発することに意味のある音楽です!しかし……原曲の「感じ」から相当離れてますね、だがそれも良しッ! #DEKU
08.「 Icarus - Lonely Soldier Mix (LSDJ ver.)」 arranged by robokabuto
チップチューンのイカルスが飛んでいく……こうやってチップチューンに置き換えると、あの爆発音って結構音域占めるものだったんですね…。 #DEKU
でもチップチューンとはいえ、チープさは皆無。ひとつに、強靭なビート。それと、めくるめく編曲(DJ的繋ぎ)のセンス!メロをぶちかましたら、とぅるとぅる回るフレーズで繋ぎ、そこでもノらせる!その間もサブフレーズを響かせて… #DEKU
また、チップチューンとはいえ、音自体が「強く」「スキがない」ので、疾走に説得力があります。#DEKU
09. 「Grand Blue - prop mix」 arranged by DEKU
シンプルながらぶっといリズムからはじまります。ゆったりビート&アトモスフェリック。そして、voが入りますが、壮大…。しかしまだまだこれから。ゆったりしたビート、そしてvo再び。 #DEKU
これはベースラインが確固たるもので、かつ絶妙に数瞬間だけ定型リズムの型を外しながらの堅実さなので、全然飽きないのです。また、「青」を感じさせる音の磨きも。ああ、抑制の美。5:00を過ぎてから、わくわくするような展開になってきます そこからのvoが「秘められた感情を少しだけ解き放つ、溶けていく」みたいな展開になるので、じんときますね。テンポが一定だからこそ出来る芸当です。 #DEKU
なんという……ジュリテク的アレンジフレーズ/リフが、シンフォと合成されて、唯一無二のフレージングになっている!意外にもその処理のおかげで東洋メロっぽい感じにすらなっていて。 #DEKU
そして唐突に消音、そこからブレイクに向けて少しずつ。メインフレーズとカウンターフレーズの交差が、対位法で非常に面白い!メロディアス!一瞬のアイソレーターの後、本格的にブレイク!一抹の寂しさと共に、ありとあらゆるオカズを持ち出してきて走る! #DEKU
しかしこのマッシュアップは……三曲を合成してるのですが、フレーズ単位で合成してるという超クレバー。どことなくプロダクツに分離感・分裂感があるのですが、これは「そういう曲」なので、非常にプログレッシヴ。変拍子トランス!でも不思議と泣ける! #DEKU
※ここから二枚目です。
01. 「Beginners」 arranged by 透木 明。
バグパイプじみた音が最初のタイトなバッキング…そして、これは……ッ、SYSTEM F、フェリー・コーステンのアトモスフィアがっ!王道ダッチ!そこから曲は小刻みなフレーズに。そしてヴィブラートきいたシンセ #DEKU
ゆったりしたピアノが、原曲をうまく崩して、どくとくのスタイルを醸し出していますね。あっさりと終わる曲ですが、原曲が原曲(装備選択曲)ですし、むしろここはこの短さにこれだけの音楽情報量を入れたことがいいですね #DEKU
02. 「アコースティックギターで Green Bird」 arranged by 白川飛翔
なんと……生演奏!アコースティック、オーガニック!染みるね!恐らく数トラックしか使っていないか、もしくは一発録りのような、余白のたっぷりしたフォーキーな感じ。だが……(続 #DEKU
例えば、これは…ブリティッシュ・フォークの安らぎ、ブルーグラスやカナダあたりのフォークの安らぎ/自然感、そのような感じをこっちが勝手に想像・連想してしまうほど。うーむ、原曲、絶対アコースティックアレンジいけると思ってましたが、それを上回る出来!染みるねぇ! #DEKU
03. 「First Encount (under the starlit sky mix)」 arranged by ZEN-U and Project.K
壮大な音響から入ります。抑えめなシンセとビートが、どきどきしてきます。そこからシンセ(saw wave系?)を、か細い感じから、何通りにも音の形を変え、綴れ織りのように旋律が紡がれます。繊細なるシンセ・プログレッシヴ!全体のプロダクツが統一されてますね… #DEKU
じわじわと、原曲フレーズを時に崩し、時にそのまま取り入れ、あたかもループ系の感じすらフィーチャーして、音形と音階を絶妙に行き来し…この抑制(しかし留まることない)はぞくぞくしますね。さあ、そして原曲のシンフォパートが入って…まったく、どの音も「孤独」な音だ…! #DEKU
そしてやはりアコギをトランスに持ち出してくるのは、確かに最初原曲者としてやったのはDEKU氏だけど、やっぱ卑怯(笑)(褒め言葉) #DEKU
04. 「YES ロケット NO パンチ」 arranged by DhiArk
問題曲その2(笑) あのスタイリッシュでディープな曲が、なんとなんとオールドスクール・アニソンアレンジ!(東方の「ヒソウテンソク」で黄フロがやったようなアレ)。 #DEKU
しかし、オルガン、サックス、それからどこか金属めいたシンセ、リード音……どれも音がかっけー感じで磨かれていて、実際、曲の中心パートになったら音をしっかり「聞かせる」王道のテクノサウンドになってます。自信たっぷりに進んでいく感じ こうなるとアニソン風も飛び道具じゃなく #DEKU
05. 「signal arranged 」by Hiroshi Nakajima
単一の太いゆっくりドラムビートからはじまり、アトモスフェリックな洞窟音のような感じから。そこから立ち上るかのように、パッド系のシンセがふわり、ふわり。ビートは子供が静かに跳ねるように #DEKU
そしてすごく透明な高音シンセ(エレピ?)が入ります。そこから、原曲のトランスリフが入りますが、それもごり押しなわけでもなく、すごく繊細に各パートを合わせている、氷細工みたいな曲です。メインフレーズの展開が終始抑制、チルアウト系にしてはビートがしっかり、だがそれがいい#DEKU
なんだかこれもループ/アンビエント系の感じにすごく似ていますね……いや、発想がそもそも「レイヤー重ね」なのですから、当然といえば当然ですか。大きなグル―ヴ。 #DEKU
06.「 Lunascape」 arranged by windsplite
ハード・ロッキンにギターをフィーチャーして、ラウドにいきなり攻めてきおった!ヨージ・ビオメハニカ界隈のテック感!偉くエッジの聞いたリフ、衝撃的にぐいぐいいく研ぎ澄まされたピアノ!前半部は疾走! #DEKU
そしてランデブー聞きどころ(いやこの曲山のようにあるけど)のブレイクパートは原曲のシンフォに、ノイズと2種のサンプリング(クワイア系と、エレクトロめいた童女のような)。そこに、原曲のフィメールvoを、ハードキックに乗せて。さらに爆走だ、原曲の調子をさらにハードにする! #DEKU
バックで鳴らされるピアノが、ただのハードテックには収まらない、しかもそこにギターが暴れますぞ!超早弾きだ! どこまでもハードに決めてきおったシリアス曲!素晴らしい! #DEKU
07. 「Rendezvous - Disco citizen mix 」arranged by DEKU
不思議なへなへな感のシンセから、フィルターかけたビートに乗せて、DEKU氏おなじみの単音エレピが載ります。キックがビシッと、特に裏打ちの。そこからのエレピは(続 #DEKU
なんだかビートにのせてアドリブってるような感じすらうけます。音数で埋め尽くすわけではないのがクールネスですなあ。そこから1stビートダウンにかけての音の繋ぎがすっごくシームレス、かつエモーショナル!2ndビートダウンでの原曲フレーズをピアノで弾くところなんか! #DEKU
ブレイクは、すごく静かに。シンセの原曲のリフから(か細く)、裏打ちスネア。カタカタとビートが動き、ぶっといランデブー・フレーズがディスコ調の四つ打ちで!腰にきますなぁ。で、鐘とパッド音を合わせたようなシンセがカウンターリフをあわせてきます。ディスコなのにアトモスフィア!#DEKU
原曲の「天井知らず感」は今回のDEKU氏ご自身のアレンジにはないものの、それとはまた違った形でのRendezvous。むしろここではビートを固定することにより、DEKU氏のエモーショナルな詩情が現れていると見たいです。原曲の強度ですなぁ。 #DEKU
08. 「Light Of The EARTH -Liquid DnB mix-」 arranged by wonder
小刻みなハウス・ビート。Jazztronikめいたスタイリッシュなピアノとサンプリング。「前」と「定位」をともに表現するとこなんかとくに。 #DEKU
そこからチープめいたエレピ(これは原曲もだけど)。クールネスなタッチで弾ききります(打ち込みなんだけど、jazztronikみたいに「弾いてる感」がどことなくするのです)。ビート処理がすごい小刻みで繊細だけど、それは分析してわかることであって、与える印象はクールネス! #DEKU
というかブッゲ・ヴェッセルトフトみたいな北欧クラブジャズとしての感じもすごくありますね、この編集されたビートと、冷たくもどこかコケティッシュなエレピは。 #DEKU
09.「 Light Of ...」arranged by 白河飛翔
これも2.に引き続きアコースティック生演奏アレンジ。原曲をルーズに弾く感じが、アウトロ的に余韻ですねぇ。一瞬で(一分足らず)終わりましたが、アコギフィーチャートランスがシグネチャーであるDEKUトランスを象徴してる、といったら言い過ぎかしら。否、このコンピに集まったアレンジャーは例外なくDEKU氏/橙汁をリスペクトしてるので、このアウトロはむしろ必然! エモーショナルに終わってこそですよ! #DEKU
●総論
もともとこのコンピは、前の紹介記事でも書いたように、DEKU氏の主導・主宰によってメンバーを集め、手作り感溢れる感じで作られていったものです。
それゆえに、どこかでわたし「捨て曲」があるのでは? と危惧したのも事実。
ところめが!
ツイートを見てもらえればわかるとおり、どの曲もレベルが高い!
それは、理由がふたつあって、
(1)もともとの曲がいい
(2)DEKU氏への、アレンジャー全員のリスペクト
ふつうクラブ系のコンピは、売れ線狙ったようなチューンが入るのですが、ここに取りそろえられたのは、スグリ/DEKU氏への愛という共通項。
よってこの盤は、「トリビュート」と評すべきでしょう。
そう……捨て曲のなさ。
それはアレンジャーが「自分の解釈」に自信を持っていること。というか……妄想してたんですなあ(笑)
DEKU氏へのリスペクトと、己のミュージシャンシップをフュージョンさせる喜び。
で、この盤の機能性を語るとしたら、ゼロ年代以降のクラブ系の総括、みたいに聞けます。
意外だったのが、ジュリテク系の音をためらいなくぶち込んでいるセンスと、アトモスフェリックに磨かれた音を両立させ――つまり、過去のジャンルのヘイトバトルを乗り越えたとこにある、クラブ系新世代のシーンを概観できるのです、この盤は。
それを可能にしたのが、そもそも的なDEKU氏のメロディ、クールネス。
空を駆け、成層圏まで飛翔する、そのDEKUサウンドは。
その姿勢は、我々の襟を正させます。
イカルスにせよ、ダイダロスにせよ、「空を飛ぶこと」と強く、印象付けます。
だからこそーーその硬質な精神を愛するアレンジャーが、その詩的精神を大切にしないわけがないですよね。
結果、ゼロ年代以降のクラブ/EDM/エレクトロの同人総括盤に、計らずともなってる機能性なのですが、もちろん原曲のよさがそれを担保してるのもありますが。
愛ーーDEKUmusicに対する愛が、それぞれのアレンジャーの本質を、ぐいっと表に出させたのです。
ここにきて気づきました。下品な曲がひとつもない。
それは、DEKU氏の詩的精神に対する、アレンジャーのリスペクト。
そしてーースグリたちの孤独な戦いに、対するものとして。
夢をみるような音の数々ですがーー己の省察をする。
クラブ総括は結果であり、この盤が伝えてくるのは、スグリの、DEKU氏の世界の解釈なのです。
孤独に大空を駆ける、その思いを共有するという。