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「レビューアップします!」とよく口にするものの、本当にアップするのは数ヶ月遅れで、ぬけぬけとアップして「アップした」ということにしている系男子の残響です。ほんと死なねえかな自分……。(各位さま、ごめんなさい)
この書評(感想文)ブログの最初の本として取り上げたのが、フミツキマサヒト氏の双子もの同人ジュブナイルポルノだったのですが、今回もフミツキ氏の同人エロラノベを御紹介&感想したいと思います。
なんで自分がこの本を買ったかについては、前回フミツキ氏レビュー記事をご覧ください。
●どこまでも一発ネタ
フミツキ氏のブログで、この小説――ページ数63pの短編――の執筆状況を読んだのは、9月あたりの以下の記事。
……突貫工事じゃねえか!!(暴言がありました、お許しください)
で、ティアのあと、前回のように通販利用させていただいて、この本買ったわけですが(僻地住まいなんで……)、読んだわけなんですが、
「……あれ? ふつうに完成度高い……!」
と、非常に失礼な感想を思ったものでした(今回失礼すぎやしないかこの感想文)
あらすじは、
- 仁科美耶子は校内でも名の知れた優等生。だがその実態は、兄の仁科祐樹へのいけない恋心を誤魔化すため、日々変態な自慰に耽る淫乱少女だった! ふとしたことで妹の真実を知ってしまった祐樹は、そんな彼女を……。
――文月堂。通販ページより(同人誌通販チャレマ)
うーん、ド直球。
あ、はじめに書きますが、これ凌辱ものではないです。おもっきしネタバレってますが。イチャラブものです。
そんな彼女を……まあ、にゃんにゃんするわけですな。
ただ、フミツキ氏……というか、この手のJP(ジュブナイルポルノ)の定石なのでしょうか(おそらく前者の「個性」だと思う)、主人公が途中から豹変するというか、性欲に非常に忠実になるのですね。
いま「定石」と書きましたけど、そりゃそうか、と書いて15秒後に思いなおしました。そうしなきゃ官能小説、話が進みませんわ。というか官能小説の意味がありませんわ。
このメソッドはヘタレ系主人公の場合でも同じと思います。前回も書きましたが、エロラノベ読んだことがないのでわからないのです、正直。いつもえらそーに上から目線でレビューしているわたし(残響)ですが、こういった未知の分野に関しては、皆さんと一緒に学んだり、教えを請いながら読んでいきたいなー、と思っています。よろしくおねがします<m(__)m>
(ちなみに、自分のなかで現在そんな対象の本となってるのが、アリストテレスの実践倫理哲学方面の著作&「詩学」。どんな組み合わせやねん……あ、いや、本気です。近々記事アップします)
(それから、「皆でエロラノベ、学びながら輪読しよう!」って、どんな穴兄弟やねん。ひどい。それから、輪読って、この文脈でいったら輪姦に空目しそう……って黙れよ)
大いに話がずれました。
本の流れとしては、だいたいそんな「隠された妹の秘密を……!」から「妹と爛れた生活(性活)」の二段構え、に尽きます。
じゃあ軽いのか、読み応えないのか、というと、それがそうでもないのが、フミツキ氏の才能なんでしょうなぁ……。
読んだあと、一発ネタにもかかわらず、「しっかり読んだな」って感触が残っているのです。
善き本は、例えジャンルがなんであろうと、この「しっかり読んだな」って感触がないと、あかんのです。村上春樹はそれを「ぎゅっと、力をこめて握られたおにぎりを食べたときは、腹もちがする。滋養がある」と表現しますが、まさにこの比喩はそのとおりで。
その理由を分析してみたのですが……ですが、陳腐な評語になってしまいますが、やはり「しっかり作られているから」という、ほとんど循環論法的な感想しか出てこないというか。わたし書評家の才能ないんじゃないか……(涙)
その「しっかり感」というのは、非常にアトモスフィア的な部分での「しっかり感」なので、文章にしづらいのです。
例えば妹が保健室でセルフバーニングにはげむところとか、そこから兄がそれを見てしまって以下略な物語のダイナミクスとか。
このあたり、非常に情景の「焦燥感」が出ているのですね。髪や汗を振りみだして、みたいな感じ。
それを担保するのが、フミツキ氏のイチャラブ志向にしては、意外なほどハードな性描写。隠語と「んほぉぉお」系の嬌声を駆使した、ハードタッチ。
もひとつ言えば、後編のミスコンのところ。例によって、アダルトおもちゃ的な仕込みが入ったこの手のエロのお約束として「途中退席」してしまって以下略な話の流れなんですが(お察しください)、ここからラストに向けてのドライヴ感というか、筆致の勢いはすごいものがあります。全速力で駆けていく、みたいな。もちろんエロのハードタッチも。
そう、どこまでも一発ネタながら、心がこめられていて、力がはいっている。単純な理由にして、単純な分析結果で恐縮ですが、しかし「良書」とはそういうものではないですか。ムズい哲学書でも「残らない」本というのはいっぱいあって、そういう本とこの本とでは、「腹もち」が違うのです(ああよかった、アリストテレスがちゃんと伏線になってオチた)
●お嬢様的金髪キャラデザ
で、もうひとつこの本の善き点をあげます。それはキャラデザ
もいっかい、本の表紙をはってみますね
どうですか!
この! ゆずソフト「のーぶる☆わーくす」の灯里ちゃん――絶対最強金髪お嬢様として、キャラ造形をエロゲ界でも屈指と認められているキャラ、に似たアトモスフィアをまとった、王道のストレート金髪のお嬢様デザインは!
まさにこれはなんJネタでいうところの大正義というところですよ!
ところで、この「清楚な~」を読んで、ふと、ノクターンノベルス(web小説サイト)に掲載されているフミツキ氏のお嬢様もの
を思い出したのですが、「表面上は平静を装うけれども、中身はもーめっちゃくちゃに主人公に執着している」はフミツキ氏のパターンともいってよろしいのかしら。いや、わたしの好物だから、もっとやって的な意味合いなんですが。
……そう、そのダイナミクス……「結局は主人公好き好き」におさまるのですが、このあたりの「勢い」と「執着度」が、フミツキ氏の場合、筆致が、高い。
最近のエロゲ……とりわけイチャラブものでは、この分野がメジャーになったことの弊害なのか「イチャラブ? 適当にそれっぽい甘いシーン書いとけばいいんだろ」みたいな書き方するライターが増えました。
これはまさにジャッジメントですの! と言わざるをえません! フミツキ氏はもうプロになって、この状況に喝を入れてもらわねばなりません! 本気で!
というか、本気でフミツキ氏、JPのプロになればいいのに……と、昔から思っているのですが。これだけ書けるんだったら。安定した執筆速度とクオリティを両立させておられるのですから。JPに対する教養もほんもの(いや、現役JP作家よりも上なんじゃないの?)ですから。
ただ、この本について、ひとつだけ苦言を述べさせてください。
なんで挿絵がないんじゃー!
……御本人にお伺いしたところ、コスト的な問題だということですが、しかし! しかしだなっ!
後半ミスコンテストで、金髪妹が、黒のドレスをきて舞台に望むところ。ここは絵を用意すべき、非常にビジュアルな喚起力にして歓喜力を誇るシーンでしょう!
金色と黒のコントラスト、妹の清楚なカリスマ性と観客の群衆性、そして、エロス!
このさまざまなエレメントが混ざって、非常にビジュアル的に燃えるシーンは、やはりキャラデザを用意し、ビジュアルで見せていただきたかった! 設定と描写がよかっただけによけいに!
まあ、これは当事者でない、好き勝手な感想文ですので、失礼しました……コストは、大事ですよね……。
それくらい、熱いれて読ませていただいた作品でした。
いま、在庫すくなくなってるそうですから、pixivにサンプル文ありますから、良質なエロスハードイチャを楽しみたいひとはぜひ!