TVアニメ「けいおん!」劇中歌ミニアルバム 「放課後ティータイム」
- アーティスト: (アニメーション)
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2009/07/22
- メディア: CD
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(本レビューは、唯、澪、律、ムギ、梓が「演奏している」というふうに仮定して論じます)
●メロディー、歌(声)
なんちゅうか、唯の声は、やる気がなくなる声ですな。HR/HM側の人間にはヘイト対象かもと思った。
しかし、たとえば「カレーのちライス」のサビのところのコーラスワークの倍音たっぷりな響きはどうでしょう。
これは媚びとかいう問題ではなく、個性です。
ヘタウマっぽくでも、人柄を感じさせるvoってありますよね。あれです。
だからどうしようもなく少年ナイフを想起させる。
どうも唯の声というのは、「すっとぼけ」であると同時に、微妙にかすれている……あたかもスピッツの草野マサムネのごとく(マサムネは純粋にうまいけど)。
そのあたりを澪の声と比較してみると、こっちになると、よりHR/HM寄りというか、「それを演っても違和感はない」というふうに聞こえるでしょう。
そう、HTTは、おそらく一番比較するなら、スピッツのパンク的側面と、ポップス的側面。
Spitz - Hourou Kamome wa Doko Made mo (Live 2010) - YouTube
スピッツの「どうしようもない憂い」はここにはないですが、「宝」といえる唯のvoと、「バンド一発やったるぜ!」という感じが、非常に初期のスピッツを想起してやまない……というか、あの時代のバンドブームのよきバンドたち……ブルーハーツとかジュディマリとか……みんな、このあたりを持ってましたよね。
ああ、話がずれた。
ムギの書いた曲の特性を語るとしたら、「ロック・クラシックス(古典的ロック)にかなり忠実」なソングライティングだと思います。
もちろん背後にあるのがthe whoあたりのモッズ的感覚や、「いわゆるロック」的イディオムだったりします。案外パンクはないかも。もちろんパンク的曲作りをしたのが「ふわふわ時間」だとしても、それ以外の曲が「スリーコード一発」よりも、もっとアレンジを磨いているのをみると、HTTはそこまでパンクに寄り切っているわけではない……というのがわたしの感覚です。
それでありながら(ロックを勉強した感があっても)ちゃんとフックをいちいち入れていくところが、ニクいですね。
……にしてもな、ギターチーム。
暴れすぎだろ(笑)
あずにゃんは「オカズ」という感じでフレーズを入れていくのだろうが、たとえばブリッジ部分で、猛烈に「ギュギュイイイイー!」って感じで歪んだのを弾き倒すのはどうよ。フランジャーとか踏んでんじゃないよ。唯に「まじめにやってください!」って説教できる立場かいな。
それから唯! 女子高生がなんでソロでワウ踏んで慟哭のソロをやるねん、クラプトンか!? マイケル・アモットか!?
いや、ほめてます。
●ハーモニー、音色
アンサンブルがまとまっているのが、とても聞きやすい。
しかしだな。令嬢。弾き倒しすぎやねん。
ムギのオルガンが、非常に60sアトモスフィアを醸し出すのだが、このオルガンが全体のハーモニーにルーズな感じと、煙幕が張ったような音の壁を作るのに一役買っているのだが、ジョン・ロードかキース・エマーソンかってくらいブチ切れ弾き倒すので、おまえさんはほんとに令嬢かっつの(ほめてます)
コーラスワークについてはもう書いたね。
バンド編成がシンプルで、メンバーがバカやってオカズを入れる以外は(そこが問題である)、曲もシンプルで、それを丁寧にやる、ってな具合なので……なんちゅうか、変なたとえだけど「うん、しっかり朝ご飯食った! さあ行こう!」みたいな後腐れない元気感がありますね。
●律澪リズム
確かに、りっちゃん隊員のドラムは走っています。
「走ってる」とはどういうことか、というと、曲の中で、休まるとこがあんまない、ということです。
また、変拍子もなければ、「なんかのんびりいこうよ」の感覚もないです。
まっすぐ、とにかく最後まで走る、みたいな。
じゃあそれがこのバンドにとって、何か悪影響を与えてるかというと……これが、ぜんぜん与えてないんですな。
ちょっと考えてみてください。この曲で、ちょっと「バランスよく、余裕をもって」演奏されたら、たぶん、相当、つまらなくなる……とは言い過ぎでも、「シパタ! シパタ! どたどた!」なドラムがあってこそ、このバンドの「GOGOGO!」な感じがあるのだと思います。
シンプルにまとまってるバンド編成だけに、案外BPMの問題は重要で、この「あまり横のグルーヴもなく、ただ走る」なリズムが、このバンドに「性格/個性」を与えているのです。さすが部長!
で、澪のベース。
動きまくり。
この動きがあるからこそ、律のドラムが「単調なリズム」にはならないのです。あと音がぶっといので、律がばっしゃんばっしゃん叩いても、負けない。
そういう意味でも、いいコンビなのですね。
●ライヴ盤
可能な限り、初回盤でもって、「ライヴ盤」を聞いてもらいたいです(初回盤には、「スタジオ盤」と「ライヴ盤」の二枚がついてます)。
スタジオ盤は、どこか「まとまってる」感があるのですが、ライヴ盤は、わたしが以上でいったとこが、非常によくわかる……わかりすぎるほど、極端な「勢い」がありますから。
クリアな音質とは違いますが、いやアンタ、そもそも考えようや、HTTは音質のバンドかっ!?
●おまけ
前に自分、この盤聞いたとき、こんなふうに思ってました。変わるものですね。