※前回の続きです。
放課後ティータイム・妄想ライヴレビュー - 残響の足りない部屋
※前回と同じ体(テイ)です
※今回の音源
「UTAUYO!MIRACLE」
●ぴゅあぴゅあはーと
CD版 けいおん! ぴゅあぴゅあはーと 歌詞有 - YouTube
さて、ここで秋山澪のMCが入る。珍しい。だいたい平沢唯が率先してMCをとって笑わせ……いやいや、ユーモアをまき散らしてくれるのだが。(このMCが時折爆弾発言をさらっとこぼすので、ライヴとは逆の意味で一度たりとて気が抜けない(笑))
なんでも、次は「ぴゅあぴゅあはーと」をやるらしい。
秋山がいうには、この曲は、高校時代、世話になった先輩に向けて作った曲であるらしい。
曰く、その先輩には大変世話になったと。
生徒会長だった先輩は、本来ならとくに接点もない弱小軽音部を、公私に渡ってサポートしてくれて、ファンクラブまで作ってくれた。
いい話ではなかろうか。
……の割には、ファンクラブのくだりで、秋山の顔に珍しい動揺の面もちが見えたが。なぜか。まあ、高校生でファンクラブ、というのも、いろいろ難しいものがあったのかしら。それはそれで、秋山らのカリスマ性と我々ファンはとらえるしかないのだが。
で、その先輩が、HTTがいま通っている大学を、今年卒業して、これから就職だという。
曰く。
自分たちは大学でも世話になったと。どうやってその恩義を返せばいいのかわからないけど、やっぱり自分たちは、音楽をやる、と。それが一番かも、と。
澪「いきます! ぴゅあぴゅあはーと!」
ターンタータ、タタータ、と、あの爽やかな琴吹のピアノが先導し、ギターの小刻みなコードストロークが駆けていく。
ふたつのギターがそれぞれのフレーズを刻んで、秋山をサポート。
ぐいぐい動くベースを弾きながら、秋山のまっすぐなボーカルが伝わってくる。そこに平沢のコーラスが、吹きゆく春風のようにマッチする。
裏拍で叩きつける田井中のスネアの、これまた爽やかさ!
ハイハットを、邪魔にならないくらいの絶妙さでりっちゃんが叩くのがアクセントになって、サビに入る。それに合わせて紬がシンプルにピアノ!
そこに乗る秋山澪の、どこまでも伸びていくvoはどうだ! このどこまでも、どこまでも感、ライヴハウスのハコを越え、時間も空間も越え、スコーンと抜けていくエバーグリーンな歌だ! たとえるならマイ・リトル・ラバーのそれに非常に親近性である。
そこからツインギターソロ……まず琴吹のピアノが先導しながら、中野梓のギター、エフェクターを多用した、カッティングを猛烈に、ガガガガガ!と駆け抜け感である。このリズム感が、HTTにもたらす影響たるや大である。リズムが停滞するHTTなどなんなのか!
そこから平沢の強烈な感情直結ギター! 天まで抜けよといわんばかりの!
ラストのコーラスが終わり、再びギターチームが駆け抜ける。
なんと爽快な曲だろう!
会場は割れんばかりの歓声、盛り上がりである。
先輩というひとには届いただろうか? それは……いうまでもないなっ。
●桜が丘女子高等学校校歌【Rock.Ver.】
けいおん!! 桜が丘女子高等学校校歌_[Rock_Ver.] 歌詞字幕付き.MP4 ...
さて、平沢のMCが入る。
その間、スタッフはバンドメンバーのマイクを調整する。voを担当していないメンバーのも、である。
唯「校歌、うたいます!」
客(……はぁ?)
はぁ? である。我々一同ぽかーん、である。
律「おい唯ー、いきなりそれだと、お客さんたち、わけわかんないだろ」
いつものように、唯の背後から、りっちゃん部長のツッコミが入る。客席は笑いに包まれる。
唯曰く。
お世話になったのは先輩だけではなく、高校時代の恩師もだという。
その恩師が、今年から、クラスの担任を持つことになるという。二回目だそうだ。
教育学部に席をおく平沢としては、今になって、音楽教育をしながら、担任をするーークラス数十人をまとめ、面倒をみる、ということの大変さがよくわかった、ということだ。
唯「さわちゃん……ううん、先生は……」
そういいながら、自分たちが、この先生にも世話になったこと。自分たちが音楽をやれているのは、この先生の教育あってのことだと。
そんなことを、語る。
そんなノリを、身内のノリと笑えるだろうか。
HTTの音楽は、基本的にも絶対的にも「感謝」「喜び」の音楽である。音で人を殺そうとする、メタルや轟音ポストロック、シューゲイザーのそれではない。(そういえばHTTのライヴで耳栓って配られない)
だから、「ああ、なるほど」と、我々ファンは思うのだ。
ひとつひとつの曲が、誰かへの感謝の曲だと。ある瞬間の幸せ……輝きを封じ込めた曲なのだと。
それが、「放課後ティータイム」なのだと。
平沢の、ギターのストロークのあと、
律「HTTみんなで歌うぜ! わん、つー!」
非常にポップなギターメロディーが聞こえてくる。しかしラストにいくにしたがって、一抹の憂いが聞こえてくるのがセンスである。
弾むようなカッティングがその後の展開をあおり、そこから田井中が歌い始める! なんと!ドラマーが! 元気のいい響き、さすがにりっちゃんである。
2コーラスで終わり、次は紬がそれを引き継ぐ。清心な歌い方である。いけるじゃん、ほかのメンバーも!
間に、ギターのまっすぐなフレーズが聞こえ、そこから梓が引き継ぐ。
わかばガールズでは「癖のある」といわれている中野のvo。事実、わかばガールズというバンドは、どちらかといえば、中野と、平沢憂のギターの絡みを聞くバンドであろう。ある意味でthe Band apartとか、プログレメタル系みたいな、プログレ/マスロック的インストがメインというか。
少女っぽさが溢れる、舌ったらずなどこか童女めいた感じである。これはこれで味がある。しかしそれを、秋山の手慣れたコーラスが支える。
そこから秋山の気骨のあるvoに移行する。このまっすぐさが、先ほどまでのダークさを表すのだが、情けなさというものを、微塵も見せない……。
ギターソロがそこから入る。HTT全員のコーラスがそこに絡むとき、非常にハーモニーが心地いい。なんだ、HTTってこういう側面も持つのか!
最後、唯の「誠心誠意」のvoが引きつぎ、それからバンドメンバー全員で、ラストのコーラスである!
一気に駆け抜ける! そんな「校歌」であった。
しかし……マジモンで「校歌」だった。メロディーも歌詞も。そのあたりには、ぜんぜん手を加えてない、放歌高吟、という感じの「校歌」である。
が、HTTはその類希なるアレンジセンスでもって、この曲を調理する……単なる「卒業ソング」みたいな、青春パンクにはしない。
その端的な例が、小刻みなギターのフレーズだろう。煽るようなフレーズが、前へ前へ、と進ませるのだ。
●UTAUYO! MIRACLE
【けいおん!!】Utauyo!!MIRACLE 歌詞付き - YouTube
唯「次が最後の曲だよー!」
楽しかった時間も、あっという間である。最後の曲……何でくるのか? ライヴの定番、「U&I」か? 泣けるぞあれは。
いやいや、HTT最強のキラー「ふわふわ時間」か? あれ出されても泣くぞ。
ところが始まったのは。
地を這うような秋山のベース。とぅるん、というレスポール(ギー太)の音。
こ、これはっ……!
平沢が歌う……みんながだいすき、と……「UTAUYO!MIRACLE」!
バンド一丸となって、なにも後ろを振り返らない、といわんばかりに、ぶっ飛ばしていく!
シンセがスペーシーな音で暴れる!
ギターがベースが爆走する! ドラムは四方八方に暴れまくる!
そこから間奏、速弾きギターだ! フロントの平沢唯の独壇場である!
ステップを踊るような(ダンスチューンでないのに)平沢のvo、それを支えるのが、バカテクの秋山のベースである。
Bメロでのベースが目立つところで、オカズを入れてくるとこは、全ベーシストがよだれを垂らすところだろう。
とにかく爆走、爆走である。タツマキグルーヴである。この爆走のタツマキはHTTでしか味わえない!
さらにギター「バトル」……唯と梓のフレーズごとの絡み合いは、もはやバトルである。
そもそもサビの段階で中野は暴れているが(さりげなくブラックメタル顔負けの16分を刻みまくっている)
最初、とぅるん、という音で「落ち着いたか?」と思わせておいて……二人の「ブルースロック」であり「パンク」であり「メタル」であり「ロックンロール」であり「ハードロック」である、ギターそのものの音を活かした、爆発するようなツインリード/バトルでのソロである! なんの飛び道具も使ってないのに(エフェクターとか)、この推進力……これがロックである!
最後、「大好きをありがとう」と、バンドメンバーがコーラスを決める……アカン、泣けてきた。この多幸感。
「愛を込めてずっと歌うよ」
そうだ!
そうだ!
HTTのビートは、歌は鳴りやまない……この移り変わりの激しいシーンで、HTTはいつまで聞かれるだろうか。
ボカロに取って代わられるだろうか。アイドルに取って変わられるだろうか。アニメをクールごとに取って変えるようなリスナーに使い捨てにされるだろうか。
……HTTは、そんなこと、知ったことではないだろう。
ただ、今の輝きを、音楽で演るのだ……それがHTTなのだ!
気がつけばもう涙なみだである。最後のバンドサウンドで、光が差し込んでくるように思える。
●キラキラDAYS
Kira Kira days k-on FoFix キラキラDAYS - YouTube
アンコール! アンコール!
の、声が鳴りやまない。そりゃあそうだろう。あれやられたら泣くよ。アンコールするよ。「おきまり」じゃないよこれは。
そして、メンバーが「ありがとー!」ってな感じででてきて……あ、あれは、HTTTシャツ! すげえレア品……メンバーが高校生のときの最後のライヴで着ていて、学生にも配られたという、あの伝説の!
そして鳴らされたのは「キラキラDAYS」であった。
ムギのポップなシンセが、楽しげな感じを作り出す。
そこに平沢のvoが合わさると、そりゃあ無敵ですね。
しかし聞き応えがあるのは、ギターとベースとドラムが、しっかりしたサウンドを叩き出してるから。やっぱり、HTTのギターはしっかり歪んでなくちゃ!
そこからのサビが、おいおい、また泣かせる気かよ。
なんと切なくも、明るい(矛盾してるようだが、事実なのである)メロ……唯の歌いあげと、澪のコーラスが、どこまでも空に抜けていくような、風をはらんでいるような、さわやかさにして……いや単純に泣けるんだこのメロディー。
「この瞬間はずっと永遠に続くもんじゃない」
というのがメロディーに率直になってるのだとすれば、
「この瞬間をずっと永遠に続けたい」
という思いが歌詞と、歌声……「表現」になっている。
その二律背反が、まさに泣かせる……
ああ、本当にキラキラDAYSだよ!
放課後ティータイムは……永遠に、不滅だ!
2009~2010年のあのときも、
2014年の今も、絶対に10年後も、不滅だ!
●HTT妄想ライヴ感想、おしまい
●参考文献
「けいおん!College」
「けいおん!Highscool」
最後に……
けいおん5周年おめでとう!!
……大学編、わかばガールズ編、アニメでやってもいいのよ?(チラッ