残響の足りない部屋

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土曜日と人鳥とコーヒーの懐かしい個性

公式HP

土曜日と人鳥とコーヒー

 

神戸・関西を中心に、ライブ活動を中心に気を吐くシューゲイザーバンド、土曜日と人鳥(ペンギン)とコーヒー。通称はどよぺん。

よくわたしは、シューゲを語る際に「静謐と轟音」って語るのですが、このバンドの場合もそう。

しかし、彼らには確固とした個性があります。以下、一ヶ月前に旅先で聞いたときのファーストインプレと、先日聞き直したときのセカンドインプレを転載します。

 

●1stインプレ

 

●2ndインプレ

 

●懐かしくも、心地よい

 

で、今回また聞いています(氏家さん、感想が遅れに遅れてすいません!)

心のズンドコまで落ちたい(降りたい)時の音というよりは、ホントにバンド名のごとく、土曜の昼あたりにコーヒーと共にある風景(の落ち着き)みたいな感じの、穏やかで、ちょっと不思議感覚を感じさせてくれる音です。

例えば、Presenteという曲。これはライヴ音源です。


土曜日と人鳥とコーヒー 2013年10月3日 @難波Mele - YouTube

 

哀感をどことなく感じさせるコードストロークから、いきなり轟音! しかし、なぜか明るいのです。もちろんパッパラパーではないですよ。

しかし、轟音が2パートに分かれてる……クリーンな音(哀歓と郷愁を感じさせる、非ノイズ)と、猛烈なノイズ(まさにシューゲイズサウンド!)が、絶妙にミックスされている個性。そこにリズム隊が……ドラムはアンカーを打ち込むようにシンバルとスネアをぶったたき、ベースはぶいぶい上昇りにサウンドを説得力あるプレイで展開!

ただ、非ノイズパートの静寂……が、静謐じゃなくて、なんか懐かしい感じなのです。心地よい懐かしさ。それはノイズパートでも通低していて、端的に「曲のよさ」といってしまってもいいのですが、この懐かしさはなんなのだろう? と考え、今回、非常に書くのが遅くなってしまいました。

……そう、過去に自分はこのバンドの音源を始めてきいたとき、「俯瞰的に描いてる」と感じました。

つまり、直接に対面してるわけではないというか……もう終わってしまったものに対して手紙を書くような感じというか。

あるひとつの、静かな情景。君を刺すシゲキテキなTK夕景凛として時雨情景な感じじゃなくて(わかるひとだけわかってくれ)……そうですね、なんか静かな感じのする、バンドアートワークの「まさにその感じ」というか。フレンチポップスや映画音楽の影響はなはだしかった80~90sサブカルミュージック(渋谷系)の、一番良質なセンスを、どっか受け継いでるような感じもします。安易にネオアコと結び付けてもアレなんですが、その臭いはある。

そうですね……その奇妙な明るさ・懐かしさを、マイブラ(My bloddy valentine)と比較することは可能なのですが、あちらにある明るさのなかに潜むどうしようもないドラッギーさ&人口感、に対して、こっちはよりオーガニック(明るさの表現自体は似ているような気もするのですが)

心地よい音、その通りです。暴力ではない、トリップ感覚。その音は、どこか懐かしい……デジタルとかインターネットとか、そういうモノが支配していなかった時代に、ひっそりとタイムスリップさしてくれるような感覚を。

心細そうなvoと、ギターノイズが合わさる時の、「明るさ」「まどろみ」のハーモニーもよければ、リズム隊がgtのノイズ轟音に埋もれてなく、しっかりと役目を果たし、楽曲を活かしているところも良い。轟音、そして哀感が曲として、届く。それがいー感じに「ポップ」なんですな。

 

 

しかしそれにしても。

土曜日と人鳥とコーヒー。

不思議なバンド名です。いや、大抵ポストロックのバンド名っつったら、ブアイソーなのかフシギなのか、どっちかしかないですが(例:65daysofstatic

まあ土曜日とコーヒーならわかります。ああ穏やかな休日、みたいな。そこにペンギンが入る。ここがシュール。

しかし、上品さを失わない感覚がそこにあります。――ヒヤリとした、不思議さ。

それは、ビジュアルワークにも、音にも現れていて。HPご覧ください。

 

●ニーナ


土曜日と人鳥とコーヒー/ニーナ - YouTube

このバンドの曲で、特に心に残ったのが「ニーナ」です。上でアルゼンチン音響派(想定していたのは、フアナ・モリーナとかフェルナンド・カブサッキといった代表所)とかって書きましたが、より音楽史を遡ってもよく、

コクトー・ツインズ的な悲しげ/夢幻な感じ

とか、

the cureの轟音版

とか(こっちは妙な表現かもですが、しかしギターの揺れもの(コーラス)の使い方は通低してると思う)。

曲に戻りますが、最初、ギターの怪しげ、さわやか、水のしたたり、のような、不思議なコードストローク感と、繊細なvoが非常に合っている、歌ものパート。

スタンスタンとドラムが鳴り、ベースが淡々とラインを付けていく――80sと話をつけてしまえば乱暴ですが、どこか懐かしい感じがします。

ただ、ちょい苦言ですが、voの声の伸びが、途中で途切れます。これはライヴで鍛えられるのを待つべきでしょう。実際ライヴ音源では、いい感じになっていますし。

 

ノイズパート。これもよい。

ひとつは、天井・天上から降っているような……トランシー、というかなんちゅうか、高音の、非常に清らかな音が鳴り響きます。

ノイズの攻撃性よりも、「ノイズをベースにした表現」というか。

ノイズはむしろ「もう戻れない・失われた時」の表現としてベース(基底)を固め、そこにシンセ的な高音が載ることで、胸を締め付けます。

 

 

多分このバンド、刺さる人には刺さるでしょう。心の繊細な「綾」みたいな、ひどく懐かしい何事かを、柔らかく撫でてくるのです。

上手く言葉に出来なくてすいませんが……ひとつ言えるのは、バカ騒ぎ的にモッシュ&ダイヴとかするバンドじゃない(笑)

その個性と音づくりのまま、いってほしいバンドだなー、と。

 

(今回、感想記事、大変遅れてすいませんでした!<私信)