残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

パンクとは「何も知らない若者」のためのフォーマットである(feet.けいおん)

 

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)

 

 まえがき(今回からレビューのスタイル変えます)

 

澪「こ、こんにちわ……秋山澪です」

律「ちわっす! 田井中律です! よろしく!……で、なんで私たち、こんな場末ブログにいるの?」

残響「えー、場末音楽ブログ「残響の足りない部屋」管理人の残響です。このブログは、だいたい音楽とか漫画とかを扱ってるレビューブログなんですけど、今回から趣向を変えて、某国民的大ヒット音楽漫画「け●おん!」から、キャラをお呼びして、対話式レビューをやってみようと思うのです」

律「なるほどねー。おまえ、いつも長文をダラダラ書き散らかすからな」

澪「私もあれはどうかと思った。読みにくいし、長いし、まわりくどいし」

残響「あんたら容赦ないっすな……」

律「まーいいや、で、何の話すんの? 音楽漫画の登場人物な私たちを呼んだんだから、音楽の話だろ?」

澪「なんかアーティストっぽいな、私たちっ!(律をキラキラした目で見つめ、そわそわする)」

残響「まあ、音楽の話なんです。そうです。そこで、お二人のナウでヤングな感性を頼って、いろいろツッコミいれていただきたいな、と。どうも俺も老化が激しくてね。とくに音楽だと、ロートル的価値観で物言う場合が多くなってきて」

澪「やだな……老害だ」

残響「本気で加齢臭扱いしやがって……これだからJKは……」

律「いやいや、私たち、華のN女子大生なんだけど」

残響「ああそうだった。でも、け●おんっつったら、だいたいJKのイメージがパブリックっしょ。だいたい「けいおん!college」ってあんま評判が……」

律&澪「「シャラップ!」」

残響「まー、個人的にはけいおん!collegeに関しては、擁護派なんだけどね。ああ、いつまでたっても話が本題にいかない。ばびょっといくよ」

律「はよいけや」

 

パンクという音楽

 

残響「おふたりさん、【パンク】って音楽についてどう思う?」

澪「パンク……まあ、私たちHTT(放課後ティータイム)の音楽ジャンル、なのかな? 基本的にスリーコードで、ギターが鳴り響いて、テンポが早くて、あんまり歌がうまくなくて」

律「おいおい澪、おまえさりげに唯ディスってないか? っていうか……そんなのパンクじゃない!」

澪「え!!!???」

律「パンクってのはなぁ……反体制! 反権力! デストローイ! 既存の文化への反逆! 硬直したあれやこれやを破壊! そんなことなんだよ!」

澪「ち、違うぞ律! パンクっていうのは、音楽ジャンルで……」

律「だって、みんなパンクっていったら、ボロくてイケてる格好してて、楽器を破壊するだろー!」

残響「はいはい、おふたりさん、喧嘩しない。まあ、喧嘩してるとこも百合的には大アリなんだけど……」

律&澪「「なにこのひと……」」

残響「引くなよ! で、二人がいってることなんだけど、まず「音楽」「文芸史観の違いだよね。だいたい、パンクにおいては、この二つがごっちゃにして語られる。デストローイで反権力、それもパンク。BPM高いシンプルロケンロー、それもパンク」

律「でもさぁ、私たちHTTのやってるのも、パンクっていわれるよな。あれってどういう仕組みなん? ていうか……私もよく考えたら、パンクってなんだかわかんなくなってきた」

澪「おい」

残響「ようがす、答えましょう。パンクっていう音楽について。まずは、これ聞いてみてくらさい」


The Clash - Safe European Home - YouTube

残響「……どう思う?」

澪「……以外に」

律「……ポップ?」

残響「そう、パンク……オリジナル・パンクは、そもそも結構ポップなんです」

澪「じゃ、じゃあ、あのよく見かける怖いひとたちは?」

残響「これはこれでややこしい。原理主義的にパンクの反体制をやっているのか、それとも【ハードコア・パンク】にいっているのか」

律「ハードコアならわかるぜ! ハードでコアなんだろ?」

澪「またそんな適当な……」

残響「まあ細かいとこはいっぱいあるけど、この場合だったら、

  • 1)メロディがほとんどキャッチーじゃなくて
  • 2)ものすごくサウンドが怖い感じで
  • 3)反体制的アティチュードが強い

ってとこかな。いわゆる、今における「パンク」のイメージはこちらかも」

澪「じゃあ……いよいよ、パンクってなんなんだ? だって、メロコアとかもあったり……」

律「結構レゲエっぽいのもあったりするよな」

残響「歴史的な話をすると、パンクっていうのは、もともと

「N.Y.パンク」

「英国(ロンドン)パンク」
に分けられる。で、今よくいわれてる……英国発祥っていわれてるパンクってのは、ロンドンのほう」

澪「え、違いあるのか?」

律「っていうか、ニューヨークパンクって聞いたことないんだけど」

残響「うっそーん。パティ・スミスとか、テレヴィジョンとか……」

澪&律「しらない」

残響「まあ……このあたりは世代かな……じゃあ、これは聞いたことあるかい?」


The Ramones: Sheena Is A Punk Rocker - YouTube

律「あ、これよくバンドで合わせたりする。さわちゃんが教えてくれた」

残響「ぶっちゃけると、パンクっていうのは、ほとんど「こういう音楽形式」をさす。スリーコードで単純でエネルギッシュな攻撃的ロックンロール。反体制とかそういうのよりも、僕はこっちのほうが重要だと考える。で、この形式をはじめて、世界中のバンド志望のヘタッピヤングメンに影響を与えたのが、このラモーンズ。N.Y.が生んだバンド」

澪「パンクの元祖ってわけだ。でも……そんなに、この音楽形式って重要なんだろうか」

律「私たちがいうのも何だけど、単純だしなぁ。私たちでさえできるくらいだから」

残響「そこだ」

律&澪「「?」」

残響「ソニック・ユースのサーストン・ムーアはいった。

「どんな音楽ジャンルのバンドであれ、最初はパンクからはじめる」

と。この世にはいっぱい音楽ジャンルがある……難解なポストロックや、やかましいシューゲイザー、テクニカルなプログレメタル、中南米のエッセンスを取り入れたレゲエとかロックスタディ、ダブ……でも、みんな、バンドをやるからには、最初はパンクなんだ」

澪「私たち、HTTがそうだったように?」

残響「そう。「合わせる」ことが重要なんだ。宅録でもない限り……いや、宅録DTM)だろうと、音楽の基本のイロハを押さえるためには、骨格が単純な音楽のコピーからはじめないといけない。パンクが真に偉大なのは、反抗するアティチュードよりも……いや、それも大切なんだけど、一番大切なのは、若者たちの「その後の可能性」を羽ばたかせるための土壌としての役割なんだ」

律「でも、それじゃ、いつまでもパンクばっかりやってちゃいけないのかよー!」

残響「ギターウルフをみよう。ヒロトマーシーをみよう。彼らは「それでいい」んだ。パンクのシンプルでダイナミックさに魅せられて、今日も明日もロケンロー。「殉ずる」とはそういうことだよ。もちろん、ほかの音楽スタイルにいってもいいんだけどね。幅広がるし。そう……自由なんだ。パンクからはじめて、パンクばっかりやってもいいし、よりほかの方へといってもいい」

澪「……重要なのは、音楽を、自分の音楽をやるってことなんだな……!」

残響「その通り! だから、僕はパンクというのは、「フォーマット」だととらえたいね。このフォーマットを一度押さえれば、無限の可能性が生まれでてくる、という」

律「おお、なんか勇気でてきた! よし、音楽室いって、練習するぞー!」

澪「お、おい、待てよ律!」

 

(ふたり、退出する)


(沈黙)

残響「……これはいわなかったのだけど、その勢いでバンドをはじめた後は、死屍類類なんだよな……バンドができる。音をあわせられる。でも、そのあとは、修羅の道だ。音楽性は、バンドの中で乱れまくる。バンドの仲違いだ。ラモーンズだって、結局はそういった方向にいった。また、マンネリの問題だってある。いつまでもメロディーがどんどこ生まれるってもんでもない。初期衝動。それは、ほとんどが潰えるものだ。……それでも、それでも……やっぱり、若者の可能性は、摘むべきではない、と考える。摘んで、なにが楽しいことがあるものか。我々音楽レビュアーは、往々にして「つぶし」にかかるところがある。意識的に、無自覚に。でも、おそらく、我々がしなくても、勝手に彼らは壁にぶちあたる……HTTもその例外ではないだろう。
 ……願わくば、彼女らが、いつまでも健やかに音楽をたのしむことを。それがどれだけ困難なのかは、音楽っちゅうものに長くふれてきた俺がよく知っているから」