残響の足りない部屋

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地政学の視点から見る咲宮市地方都市論、序説ーーPretty×Cation2レビューメモ(1)

※この似非地方都市論は、hibiki works「Pretty×Cation 2」の舞台、咲宮市を、作品ファンの一人(ぼく)が勝手に妄想論考を加えたものです。この地方都市は、実在しませんってば)。で、この考察は、いずれ自分がプリティケ2のレビューするための資料であります。

 

 

Pretty×Cation2の舞台は「咲宮市」という地方都市だ。
この舞台は、およそ早い段階から「地方(非東京、非大都市圏)」であることを積極的に明記する。
このあたりのコンプレックス的な言及は、まさに地方都市の抱えるコンプレックスと同一である。……が、登場人物は、みなこの町を愛している。当然であろう。これはイチャラブゲーであって、町のKAIZEN物語ではないのであるからして。

で、このゲームは、いわゆる紙芝居形のゲームとは違い、インタラクティヴな「アイテム」だの「ステータス上昇」だのを積極的に用いてゲームを進めていく。
とはいうものの、自分は「いわゆるゲーム」ってもんが得意でなく、easyモードでもってプレイしちまった人間。だからこのゲームのステータス上昇とかアイテムとかの「攻略たのしさ」については言及できない。

ただ、「舞台=箱庭」としての咲宮市は、いささか言及したい。というのも、自分が地方都市に他所うなりとも関わっている人間だからだ。
地方都市には、地方都市のコンプレックスと、「なんだかんだで暮らしていける」強みがある。ただそれも、結果的に経年劣化で、「永遠の安寧」にかげりが見えてきているのは、全国共通だと思う。
プリティケ2の咲宮市は、平和にこれからも過ごしていく、という展望を見せているが、その展望を子細に検討していって、現実のそれと比較し、「地方都市」とはなにか、そして「地方都市での人間関係」とはなにか、をラブストーリーを参照軸にしながら語っていきたいと思う。

 

●弱みを強みにーーウォーターフロントにして、山間地域の咲宮市(1)

 

この町の地図はざっとこのような感じで。

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さて、地理的側面から話せば、この町は南に湖、北西に山がある、という地形で、いわゆる「湖畔」である。
それをデメリットから話せば、先だっての広島土砂災害のようになる。
水が近く、そして山林が近い、ということは、ひとつ山林管理を間違えば、大災害にもなってしまうということだ。
当然、水まわりの災害もである。湖畔は海ほど危険度は高くないが、それでも大雨での水位上昇は問題。

もっとも、山林管理ということでいえば、近年に至るまで「山が問題」とは言い難かったであろう……「自然産業」面では。つまり、昔からこの土地のひとびとは、山から獣や木材などの恵みを得て、湖から魚などの恵みを得て、という自然=産業の循環が、この地に住んでいるごく少数の人間には成り立っていた(ごく少数、と書くのは、この町が新興地方都市だからだ。いっぱいいたら、そりゃ古都だよ)

ただし、近年の自然破壊は、山林地域を荒らしていく。これは、この土地に地方都市を構えるにおいて、致し方ないところではあった。だが、山の景観は当然崩れ、生態系も変化していく。

湖にしたってそうだ。近年のフィッシングブームによる、ブラックバスの放流。これが生態系をくずすことは、よく知られていることだろう。従来の鮎やイワナといった淡水魚が、どれだけ減ったことか(それは二次災害として、淡水魚食文化の衰退にまでつながる)

山を治め、水を治める。これがこの地域に住む者の第一条件だった。

さらに、今でたように、この町は「地方都市」として開発された町である。新しい町だ。
首都圏から離れ、地方のひとつの市として穏やかに暮らすまち。……というか、この山に囲まれ、湖が近くして、という地理的条件(とくに山はおおきい。山だけに)により、この咲宮はいわゆる大都市中心型の商業の「中心地」としての発達は見込めない。最初から。あたりまえながら。

そのような地方都市が辿る道は、案外少ない。
1)ベッドタウンとしての道
2)産物を生かしたオリジナリティ

まず、(1)の道は閉ざされている。ベッドタウンとしての流動性が高い地域ではないからだ。それほどには、都会は咲宮は近くない。
簡単にいえば、「埼玉→東京」や「奈良→大阪」のように、電車で30分あたりそこらでサクっと都市圏にたどり着くような簡便さではない。
では(2)の産物を生かす道か? だが考えてもらいたい。咲宮は「新しく作られたまち」だ。産物があったら、もっと昔からの古都になっているだろう。そうでないからこそ……ただ面積があったからこそ、小規模都市開発がなされたケースなのだ。ようは、人を住まわせるだけの地方都市。

とはいうものの。そういう地方都市であっても、発展……商業の発展、を目指さなくては先はない。ゲットーとまでいわなくても、地方都市の内部で経済が循環せねばならぬ。雇用の促進を第一にして、その他すべてにおいて。

じゃどうするか。「アリモノ」を使うしかない。そこで、咲宮市が取り組んだのは、まずウォーターフロントの整備とブラックバスの「B級グルメ化」であった。この二点は期を等しくする。マクロとミクロの両面においての、咲宮の商業の整備と発展である。

(つづく)