残響の足りない部屋

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2022年に良く聞いていた音楽

残響さんの音楽と模型の日記ブログ「残響の足りない部屋」毎年恒例の年間お気に入り音源コーナ〜。年が明けたのでレトロスペクティヴ令和4年2022年ッ!(こうして記述しておかないとすぐ和洋歴の対応を忘れる程度の頭)

選考基準は去年の通りで、

発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り

です。各ミュージシャン名のあとの( )は残響さんが勝手につけたジャンル名や視聴における文脈、そして耳馴染みの無い外国語タイトルの和訳。

それでは早速間を置かずにヒャイゴッ!

2021年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

2020年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

 

Маяк「Выше Звезд」(SovietWave、シンセポップ)

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「ヴィーシェ・ズヴェズダ」とはロシア語・ウクライナ語で「星の上」を意味します。英語で言うところのabove the starsです。ジャケットが表している宇宙感の通りです。もちろん音そのものの宇宙開発ノスタルジア、レトロSF感は何も間違いではございません。SovietWaveの要素のひとつ「宇宙開発時代」がここでは描かれています。ソヴィエトウェイヴはそこにノスタルジアを見出します。

もちろんSovietWaveの文脈で示されているのは冷戦当時の米ソ国際競争としての宇宙開発です。ですがノスタルジアの文脈で宇宙を夢想するのは、この汚れた現実の地平とは別の世界(線)をぼんやり夢見ようとすることです。汚れた現実の地平…上海アリス幻樂団・zun氏が宇宙天体感溢れるアルバム「大空魔術」ライナーノーツで述べていた「もはやこれ以上夢見るべきは宇宙においてではないですか」という発言は、このウクライナ戦争という令和の時代にソヴィエトウェイヴの宇宙イメージを重ねてみると、なんだか別種の感慨を得ます。

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同「Романтика」(ロマンチカ。ジャンルは同じ)

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そんなわけで去年はSovietWaveを聞きすぎなんです。ノスタルジア憧憬音楽。Lo-Fiからの流れで遠くまで来たもんです。しかしまだまだ始まりにすぎません。これからどんどん甘くノイズがかった懐かしさ&スラヴ語圏に浸っていきますからね2023年はッ(どうしようもない後ろ向き発言)

しかし…。このノスタルジア音楽視聴に政治性を含ませてはいないつもりですが、どうしたってこのロシア・ウクライナ戦時下において、自分がこの手の音楽をたのしく聞くということそのものが、どれだけ安楽な立場であるか…という点は、確かに考えます。そもそもこのМаяк本人がウクライナのミュージシャンなのですよ。元気でいてほしい、と願うばかりです。

戦時下に居ない日本人の私が、戦時下の国々のミュージシャンが夢想と共に奏でるノスタルジア音楽を、のんきにただ消費するだけ、という構図自体に我ながら何らかの欺瞞を感じたりもします。正直。

もちろんノスタルジア感覚が時として国境を越えてこころの中で駆動しちまう、っていうことはあります。なぜか旧ソ連ノスタルジアに奇妙な哀感や可愛さをこうして覚えてしまっている日本人の私がいます。ちと前だったら「共産趣味」って呼ばれてたのかな。そのノイズ混じりの甘い感覚を心から興味深く、心地よく感じている私はいます。

それでもその一方で、現在起こっていることを頭から除外しきることも不可能です。いや、このご時世において「昔はよかったね音楽」「懐かしさが落ち着くね音楽」をこーやって「具体的な旧ソ連イメージで夢想すること」そのこと自体に、もう「意味」ってものがすでに孕んでしまっているわけです。ここから政治的文脈で旧ソ連ナショナリズム憧憬に接続するのはあと2,3歩をすでに切っています。

だから、ソヴィエトウェイヴを愛好する時に、「OH,SovietWave...」みたいにネットミーム的なネタ混じりに発言するのは、ちょっと気をつけた方がよいのだろうな、という話です。かの国の人々にとってのノスタルジアを、別の国の人が土足でいぢり回すのも限度があるぞ、っていう。そのことは常に心に留めておく必要があります。

そうであっても…どうしても今の私は、このノスタルジアの音にひどく惹かれているのです。政治的文脈から入っているわけではありません。むしろロシアやウクライナやスラヴ文化圏、東欧の文化を愛好するという話から入っていっている…つもりです。自分にとって、この音と世界観がとても心地よい。心地良いからこそ、愛しているからこそ、私はかの国の文化や人々に対して失礼な真似をしたくないのです。…なんだかシリアスな話から始まってしまいましたね。でもソヴィエトウェイヴを愛好しているこのブログとして、これはどこかで書いておかねばならない、と思っていました。

 

scythe「ReWind」(チップチューン

上記「レトロ愛好文化に対する尊敬と節度」というのは、ドット絵やチップチューン文化にも言えることですけれど。「あえてドット絵やチップチューンを楽しむ」よりも「ドット絵やチップチューンの魅力を楽しもう」としたいですよね、という話です。説教ここまで。

さてアルバムを楽しみにしておりましたscythe氏のチップチューン。やはり「曲が良い」という感想になります。疾走するメロディは可愛らしく、強度高く。アレンジも実に丁寧で、乱れ撃つシーケンシャル電子音フレーズが可愛い。そして曲から伝わってくるのが昨今流行りの言葉で恐縮ですが「エモい」ってやつです。情景が脳裏で駆け抜けていきます。良い音楽です。

 

土曜日と人鳥とコーヒー「Parameer 04-fatras-」(シューゲイザーオルタナティヴロック)

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クリスマスに発表された実験シリーズ作品第4弾。めっちゃ音が良いのです。レコーディング担当のイサノ氏(ドラム)の努力がすごいです。そして「音を良くする意味」が凄いアルバムであります。音の一粒一粒に意味があり、磨かれた音を聞くことにより耳が気持ちよい。

再録曲のリアレンジの追い込みにより、曲の世界観が深くなる。新曲ももちろんのことです。そういった曲の数々を演奏し、彼らが追い求めるのが、怒涛の如く鳴り響くノイズシンフォニーの崇高さです。絢爛な光が見える、感じる、ノイズのうねりに気高き人間の意志がある。

 

どよぺん最新のライヴ(2023/1/9)

上海アリス幻樂団「バレットフィリア達の闇市場」BGM、「虹色のセプテントリオン」(ゲーム音楽フュージョンニューエイジ

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「バレットフィリア〜」のBGMのつんのめった切迫感が良いです。リズムアレンジもジャズ的にチャキチャキしていて忙しない。

そして年末に以前出たシングル「虹色のセプテントリオン」のDL販売・配信が行われ、改めて「七ツ石の狼、雲を取りに駆ける」を聞き込みました。もうね…好き。この情景換気力。寂莫さ。これこそですよ。

Circle S&G(チップチューン、ハード音源、ゲーム音楽

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下半期、本当に良く聞きました。無骨な曲の良さが良く、クセになります!

ライ・クーダー(アメリカ音楽、ワールドミュージック、スライド・ギター)

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前から好きなんです。自分のワールドミュージックの旅はジョー・ストラマーとこの人にいざなってもらったようなもので。2022年はタジ・マハールとの共演盤が出ました。世界という地平にはこういう穏やかで心豊かな膨らみ、人間のあたたかみのある音楽が必要なんです。

 

Windows96(VaporWave)

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毎年なにげに入選しているような気もしなくもないw
それだけ毎年毎月、定期的にyoutubeで再生しているんでしょうな。この穏やかな音の延々とした連続に用がある。

Molchat Doma 、そしてRussian Doomer MusicのMIXで紹介されているようなロシア語ポスト・パンク

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北海道のテクノポップ女子高生ユニットとして有名な(現在は大学生)LAUSBUBがこのバンドをチェックしている、とインタビューで知ったときは「さすがだ」と思いましたね。Russian Doomer Musicの文脈で有名なベラルーシポスト・パンクバンドです。

だがなーっ、Russian Doomer Musicというカテゴリこそ、この記事の最初の方で述べた「尊敬と節度」に大いに抵触するものなのですが…(汗) あとSovietWaveもRussian Doomer Musicもけして有名ではないから。1、2時間あれば日本語情報が全て拾えるくらいのムーヴメントだから。SovietWaveを日本語で調べてて検索でこの日記ブログが出てくるくらいなんだから。おーいそれはおれが書いた記事だーっ。

Molchat Domaに話を戻しますが、しかしこの暗い音が良いです。歌唱はひたすら暗いですが、サウンド全体の片隅にはいつも可愛らしさがあります。これがクセになるのです。ただのニューウェイヴ/ポスト・パンクだけではここまでハマれなかったとも思います。異国の妖しさ、情緒。そして冷気漂う暗さがあってこそです。

 

Gondwana Records(現代ジャズレーベル)

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2023年、今年はこのレーベルを聞いていくことから始めようかな、と。年末から改めてとても気になっているイギリスの新世代ジャズレーベルです。サンプリング/クラブ・ジャズ、打ち込み以降の感覚の現代ジャズです。クラブジャズ世代以降の磨かれた音を基本として、良い曲&アレンジでぐいぐい引っ張っていくGoGo Penguin(ピアノトリオ)のこの曲や、ユーロ的な洒脱さのトランペットを聞かせるレーベル主宰・マシュー・ハルソールの盤(サイドをしっかり支えるピアノも良いです)など、レーベルカタログをdigる喜びがありそうです。ジャケのデザインもどれも素敵ですしね。

 

Aiobahn(プログレッシヴトランス、エレクトロニカ

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結構あぶなかったぞ。上半期の勢いでは、この曲が年間ベスト曲になりそうでした。ソヴィエトウェイヴにハマって、ノスタルジアな甘い音への嗜好にシフトしたから、年間ベストとしてこの曲を選ばなかったものの…。

そういう意味では、この曲だけじゃなく、いまのINTERNET OVERDOSEの作曲者・Aiobahn氏のデジタル静謐感のある下記に動画貼った音楽が、現在すごく気になっているんですよね。ビジュアルイメージも相まって、ゼロ年代前期の深夜アニメのエンディングのあの感覚を意識的にやってる&愛しているというか。しかしゼロ年代をレトロというのには大変抵抗がッ。それでも2002年からもう20年ですよゲーッ。ああこうして年月は流れていくのだなぁ(詠嘆)

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おわりに

というわけで、今年もこの日記では音楽と模型について書きたいと思っています。よろしくお願いします。