残響の足りない部屋

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Reiche「第六鼓笛隊なのです!」

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公式サイト

Reiche

Reiche(ライヒェ) (reicherecorder) on Twitter

 

●リコーダーとわたし

 

いやー、小学生・中学生のときに習いましたね、学校で。リコーダー。一切モノになりませんでしたが(低音押さえるのムズいっちゅうねん)、それでもいまでもたまに吹きます。といっても、きちんとした音楽を吹くんではなく、アイリッシュミュージックにおけるイーリアン・パイプのまねごとみたいなもんですが。

まあそれはどうでもいいとして。

大方のひとにとって、大体リコーダーってのは、音楽の授業でかじったはいいけれど、それからの人生で、あんまり「メインの音楽体験」にはなりにくいものなのではないでしょうか。

 

とはいいつつも、実は残響さん、リコーダーというものを使った表現が好きなのです。

そのきっかけとなったのが、バッハのブランデンブルク協奏曲の第四番で。

Bach Brandenburg 4, 1.movement, Abbado - YouTube

この曲は、リコーダーが最初からフィーチャーされるのですね。その……なんとも、幸せな音の形に、ずいぶん癒されたものです(結構、学生時代キツかったんです)。

それは単なるイージーリスニングではなく、リコーダーという楽器の「ほんとうの優しさ」を伝えてくれるものでした。ちなみに盤はカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ室内管弦楽団で、指揮はペーター・シュライアー

 

バッハ:管弦楽組曲第2番&第3番

バッハ:管弦楽組曲第2番&第3番

  • アーティスト: シュライアー(ペーター),バッハ,カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ室内管弦楽団,グラフェナウアー(イレーナ),プレストン(サイモン),ローゼンブッシュ(トルステン)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2005/06/22
  • メディア: CD
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 本当に、この盤には、助けられました……暗黒時代に。

そんなわけで、リコーダーについては、ふつうのひとよりも、点が甘くなってしまうというか、特別な思いを抱いてしまうのが、わたしなのです。

 

●Reiche(ライヒェ)

 

このサークルは、ゲームやアニメの音楽を、主にリコーダーでアレンジする、ということを続けてらっしゃるサークルです。

編曲・演奏は、J・Weidinger氏がひとりで行っているようです。

じょーかー (joker_weidinger) on Twitter

氏はリコーダーだけではなく、ピアニカやアコギなども用い、リコーダーアレンジに深みと広がりを与えているマルチプレイヤーなのです。

また、リコーダーも一種類じゃなく、ソプラノからバスまで、各種の音域を使いこなします。まさにリコーダーの玄人です。

 

ちなみに、どうでもいい話をさらにすると、この盤は今年春のM3で買ったのですが、サークルブースに行ったとき、かなり残響テンぱってしまったのです。醜態をさらすとはまさにこのこと。しかし氏は、実に丁寧に対応してくださいました……それは次回、氏が参加されておられる「まるち・とらっく・りこーだー」の作品のレビューで語ってみたいと思います。

 

なんちゅうか、そんなお人柄が表れているような盤です。

 

●この盤の基本的バイオ

 

艦これアレンジです。リコーダーでの。それはジャケを見ればわかりますね。しかし、この盤、タイトルが「なのです。」なのか「なのです!」なのかいまいち判然としないというかw

たぶん「なのです!」だと思うのですが……ジャケとインフォでちょっと違っていたりするので。まあささいなことですが。

しかし、第六鼓笛隊とはよういったもので……鼓笛隊というどことなくロリ感のあるワードが、艦これ(自分あんまやってないですけど)のロリ部隊である第六駆逐隊と合わさることにより、非常に盤から健全な少女臭が漂って……(問題発言)

 

●いつものように全曲レビュー

 

1.母港

 

リコーダーの素朴な音色に、ギターとトイピアノ(あえてガチなピアノでなく、チープ感のあるおもちゃピアノを使うところが可愛らしいじゃないですか)で、淡々とバックを刻みます。

バックでロングトーンをかましながら、メインフレーズはあえて、ときどき止めるような感じで演奏するため、これが哀愁を引き立てますねえ。

そこに鍵盤ハーモニカがプラスされて、歌いあげ! これも胸をしめつけます。全体的に穏やかな曲調ですが、「癒し」の中に哀愁があります。

 

2.出撃! 海原越えて

 

低音の行進リズムから(だいたい艦これ音楽って、軍歌をもとにしてますからね。行進曲っぽいのが結構多いです)、明るい健やかな音でもって鳴らされます。

行進タッチに、そこから中域のリコーダー(アルト? テナー?)がメインメロを、飛翔的な感じで歌いあげます。

リズムセクションは、タンバリンがアクセントとなってます。そこをハモニカが勇壮に吹いていきます。

ただちょっと難点を言うとすれば、「キメ」のフレーズで、音が分離する傾向にありますが、それはそれで「エモーショナル」の表現か、と思えなくもないです。

 

3.砲雷撃戦、始め!

ピアニカがバックになって、戦慄感を煽ります。そしてそこから続くリコーダーのメインメロは、リコーダーでもこの勇壮感!

それが終わったら低音リフにいって、それがまたぐいぐい感を感じさせます。

アレンジというか、音のめくるめく交代/ユニゾンが聞きものです。だいたい艦これの音楽って、同じような音形の連続なんですが、しかしメロが優れているゆえに、勇壮さと悲しみ(戦いの?)を感じさせてやまない。

最後にいくに従って、アレンジの盛り上がりが広がっていくのがなんともいいですねえ!

 

4.勝利A

 

ゲームでのファンファーレ音楽。超短い。ほら、FFにおける「チャチャチャちゃーちゃーちゃーちゃっちゃっちゃー」みたいなあれ。

しかし和む。これをバキっと超短く切ったときは、笑ってしまいましたねw

 

5.入渠・工廠

ゆったりしたグル―ヴです。ワルツ形式で「ン、ッチャチャ」のリズム。ところどころに「シャンシャン」という音色。ボトムに合わせて、どこか憂いなメロを鳴らします。

少しうさんくさい感じですが、ディープに安らぎと、これからの戦闘をかすかに感じさせる曲です。待機の曲というか。

ピアニカが、まるでアコーディオンのように聞こえます。この曲は、全体の中でも、少々ヨーロッパテイストですね。

最後のユニゾンですが、音はバラけてるように感じますが、これもこれでひとつの室内楽のような感じでしょうか。

 

6.南方海域

不穏なリコーダーと、煽る煽るピアニカ!

そこからニ声のリコーダーが誇り高い、わくわくするようなメロを!

音形を分析すると、スタッカートで下降するところがあるのですが、それに反発するようにピアニカが咆哮するのが、非常にツボです! これは癒し音楽の領域やないでえ……そこからメインがピアニカになったときの「突撃」感といったら!

 

7.勝利S

4.と同じ「間に挟むアイキャッチ」的な。

 

8.やるきの無い南方棲鬼

イントロがうさんくせえ! 笛のほがらかさよりも、いくつもの笛をユニゾンさせてうさんくささを演出しておる!w 

しかし、そこから(あるいはイントロもその感じだったのかしら)「和」の田舎っぽさを感じさせる牧歌的な感じ。ゆったり、踊るように。

「タンタンタン」なリズムがイヤラシクなく、音は淡々と。いくらでも疾走できそうな曲なんだけど、あえてしない。「そういうアレンジ」といっちゃそれまでかもしれんが、でもこの跳ねるような、淡々とした感じは、これはこれで、と思わせる。

 

9.戦術的勝利

これもアイキャッチ。「タッタカタッタッタ!」でおしまい!w

 

10.くちくかんマーチ(軍艦行進曲)

ブラスバンドの定番曲「軍艦行進曲」。これだけは艦これアレンジじゃないです。ああ懐かしい!(残響は中学のころブラスバンドにいました)

しかし、本来は「ブワーッ!」と鳴らすようなもんなのだけど、これはリコーダーだから、なんとも和む。

リズムがブンチャッチャ系なのですが、なんとも可愛らしい。ロリ艦娘たちが精いっぱい演奏しているようです。

全然押しつけがましくない、アンサンブル。ハモリが美しい。

 

 

●まとめというか

 

ちなみに、これ、ウチのマーマン(母君)に、なんとはなしに聞かせてみたのですよ。

マーマンはゲームにも音楽理論とかにも全く詳しくないのですが、この盤を聞いて、世界の様々な情景が浮かぶ、といってました。

それだけ、Reicheのリコーダーは、オーガニックにして、ひとのこころに「ほっと一息」つかせ、かつ、心をゆったりと鼓舞するような、そんな懐の深さを持っているのでしょう。

先にも言いましたけど、これはJ・Weidinger氏の人柄でしょうね。リコーダーで超絶技巧をやるのではなく、あくまで「よき曲のエッセンスを、リコーダーのグル―ヴで再現する」ということ。

それはリコーダー愛であるゆえに……冒頭で言った、わたしのようなリコーダー好きには、非常にビンビンくるのですね。

というわけで、リコーダーで和的な音、明治~大正期っぽい音楽をやってる、というワードにピンときたひとは、おすすめします! 和み系として買ってもよいですが、しかし内なるパトスはなかなかのもんですぜ。