2022年になったので、去年2021年のお気に入り音源を書き残します。選考基準は去年の通りで、
発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り
です。よろしくお願いします。
なお、各ミュージシャン名のあとのカッコ()は、ブログ筆者(残響)が判断した音楽ジャンルです。
●去年の
modernclothes24music.hatenablog.com
●scythe氏の各アルバム(チップチューン)
去年の秋M3でチップチューンを漁っていた時に惚れて新譜&既作を購入。チップチューンコンピレーションアルバムも購入。
それから数か月、相当にヘビーローテーションでした。爽やかで疾走するピコ音と素晴らしいメロディ。そして楽曲のテーマ性(この情景をこういうピコ音で表現するか!)が良いです。
●SFC版ウマ娘 シナリオ最終レースBGM集(レトロ・ゲームミュージック)
このスーファミ時代を何よりも意識しまくる音像のバイブスがたまらんね。そして同じくらい嬉しいのが、曲の持つ勇壮なメロディをストレートに味わえ、流行コンテンツということで及び腰になってたところに「良い曲を教えてくれてありがとう!」という、アレンジ曲への感謝の気持ちです。
●Krik/Krak「魅入られし肉体(からだ)」(物語音楽、エジプト風プログレ組曲)
鳥島氏が再び曲を書いてくれたということが本当に嬉しい。秋M3合わせで発表された新曲は、エジプト的な妖しさのある物語音楽プログレ組曲。メロディの豊かさと、めくるめくシンセサイザーの音の万華鏡。物語性のある組曲形式(プログレ!)。歌謡感のある伸びやかで目くるめくなメロディ、スイングするリズムアレンジ。
中盤以降の「語り」も持ち込んでの妖しきツインヴォーカル疾走に本気度を感じます。鳥島氏がギアを入れてぐいっと音楽を前に進ませようとするときの、あのドライヴ感、本気度がここにあります。
自分は、繭木氏が逝ってしまわれたことを、ずーっと悼み続ける。そして鳥島氏が音楽と漫画という創作を続けていかれることをずーっと喜び続ける。
『Hurty』第1話
— 鳥島千佳里 (@pyonpun84) 2020年5月17日
みんな今とは違う何かをほんの少しだけ求めてる。(全49ページ)#エアコミティア pic.twitter.com/wEHQ1IdBH9
●ayumi「憐」(シューゲイザー)
ニトロプラスのノベルゲーム「みにくいモジカの子」の主題歌。暴虐のギターノイズシンフォニーに、繊細な女性voが乗る。音の壁、音のたゆたい、音の織物(タペストリー)があります。轟音ギターと女性voが絡み合って、しかしどこかで離れていて、でも比翼連理のごとく共に空間を飛んでいます。この暴虐性と浮遊感がシューゲイザーです。紹介してくださったSIGHさんありがとうございました。
●死んだ僕の彼女「ribirth and karma」(シューゲイザー)
こちらもSIGHさんのご紹介2(ありがとうございます)。折れそうなヴォーカルと鐘が遠くで鳴っているかのようなギター、そしてもうひとつのギターのシューゲイザーノイズ。空間が広がっているけど、安易な救いはないと思える世界観。シリアス、けれどどこか良い意味での音の足腰の「軽さ」もあって、それが浮遊感にも繋がっている。
喪われたものへの鎮魂も感じる。そんな鐘の音を感じる。
●上海アリス幻樂団「駒草咲くパーペチュアルスノー」(東方虹龍洞より)(ゲーム音楽、ニューエイジ)
ふわぁーっと風景が広がるような、本当に良い曲。自分はそろそろ東方歴が20年になりそうでKOWAIのですが、そんな20年近くにもわたって、ずっと東方を、ZUN氏の世界と曲を愛してきたのは、これっぽっちも間違いじゃなかった!と強く肩を叩かれるようなものを感じてしまいます。
●KRAUS「BOUNDARY」(シューゲイザー)
カナリヤさんが「KRAUSの新譜最高だ!」と仰っているのを目にして、ようやく新譜が出ていることに気づくくらいのわたくしのシューゲイザーアンテナ(?)の錆びつきは如何ともしがたいです。
しかしこのMV(ミュージックビデオ)良いですね。音と非常にマッチしています。このMVは全身で「4K、8Kの解像度など要らぬッ!」と表明しています。明日に向かってこわれていく精神が轟音ギターノイズシンフォニーの静謐に幻視する風景こそがシューゲイザーだって何度言ったら(略
●siestaonsunday(巡音ルカ)「shoegazer on the snow」(ボーカロイド、シューゲイザー)
一片の慈悲もない60本の轟音ギターノイズシンフォニー。明日になんの希望なんてあるんだっていうんだ、っていう世界観ですね。降り積む雪は葬送に他ならず。
●ゴー・トゥ・大都会(ボーカロイド、歌謡テクノポップ)
ひどい歌詞。そしてこのMVが「4Kという解像度なぞ要らぬッ!」と全身で叫んでいる。人懐っこいメロディ、しかしこんなんが人懐っこくなってもらっても困る世界観。いや、もう……最高ですね。
●Eldamar 「The Force Of The Ancient Land」(ポストブラックメタル、シューゲイザーブラック、ブラックゲイズ)
とにかくポストブラックメタル/シューゲイザーブラックは良く聞きました2021年。こういう世界観が好きです。
この盤ですが、自分はポストブラックの中でも、ギターノイズの轟音っぷりは当然として、エピック・ファンタジックな「世界観」「空気感」を、より好んでいるようですね。ファンタジーTRPGやゲームブック読みながらこの盤かけていても全然違和感がない的な。
●人間椅子「苦楽」(70年代ハードロック、ドゥームメタル、プログレ)
2021年はこのアルバム「苦楽」の消化に時間をかけた感があるかもです。曲調・音楽性ともにバラエティ豊かな作品です。リズムアレンジもです。
コロナ禍に対する直接的なメッセージではなく。別の世界、別の化け物・妖怪に託し、この世の混迷を活写します。ただの地獄ではない、別の地獄(オルタナティヴ・ヘル?オルタナ・カオス?)がこの現世なのかもしれない。
けれど希望を視ようとすることには意味がある。夜明けは近い、黎明は近いのだ、と。それを単なるポジティヴメタルなど呼べるものか。暗くドゥームな作風な人間椅子(相変わらず)ですが、噛めば噛むほど味のある「力強さ」のアルバムです。だからこう何度も聞く。
●土曜日と人鳥とコーヒー「Re:Meer」(シューゲイザー、オルタナティヴロック)
saturday-penguin-coffee.jimdofree.com
この文章を読んでいるシューゲイザー好きの皆さん。いいから黙ってbandcamp行って音源買うなり、spotifyなどのサブスクで聞きましょう。残響というこの文章書いているひとの、2021年ベストアルバム、トップ1位です。つまりこのブログ記事で一番良いアルバム音源です。
残響が日頃、M3とかでアルバム作品を委託頒布させて頂いているお付き合いがあるからこう申すのではないのです。クリスマスに発表されたこのアルバム、あまりにもシューゲイザーとして、オルタナティヴロックとして、素晴らしいのです。
過去のEP「Meer」のリアレンジ&再録作品です。なので「Re:」。しかしこのアルバムの完成度はどうだ。このアルバムの音の深さ、轟音はどうだ!金字塔ですよ。
轟音ノイズは当然ある曲構成で、その轟音の鬼気が素晴らしい。このバンドはサウンド全体のプロデュースをベーシストのUjike氏が行い、レコーディングをサポートドラムのイサノ氏が行います。
彼らが突き詰めるのは、轟音ノイズ、耽美的な世界観、音の揺れ……そして何より、ギター&ヴォーカルのYuki氏が書く曲の世界。Yuki氏が書く曲を、バンドメンバーは愛し、世界観をアレンジと、バンド演奏と、レコーディングでどこまでも深めていくのです。
深めていくと書きましたが、閉塞的な感じはこの音源からは受け取れません。音源から感じるのは、このバンドの世界観が、音を通して、どこまでも色濃くなっていく感覚。音の響きをひとつ聞くだけで……轟音も、クリーントーンも、どちらも「世界観」をガンッとこちらに提示して、幻視させるのです。
この音源、盤には、夢がある。狂気と喪失と、追憶と静謐と。幼年期の思い出、揺れる音の世界、祈りしものの絶望と希望。そういう光を幻視する。夢があるのだ。子供たちが光の帝国で無邪気に遊んでいるのだ……そしてこの耳に聞こえてくるのは、鬼気迫るシンフォニックなノイズギタ-……!!