残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

最近わたしの音の暮らしはこう 2022年3月~4月M3春

がーっ!(叫)
M3を終えたからちょっと休憩しよう、とくに日記ブログなんて休んでも……とかって気の抜けたコーラドリンコみたいなことを頭よぎったこの瞬間から音楽ブログは死んでいくのだっていうことが、まーだわかっていないのかこのブログ管理人(残響といいます)はっ!

前回のM3告知記事で、「これから文章を書いていきたいんですよ」なんてことを書いた次の記事からこれですよ!度し難い!

ということで、むりやりにでも文章を書くべく、3月~4月(M3含む)に購入した音源を挙げていくのコーナ~。

 

DJ Shadow「Entroducing...」

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ザラついた音のHipHopインストアルバム。当時アブストラクトとも言われたこのザラついた音ですが、でも今このアルバムを聴くと、このサンプリング特有の音の質感は、アメリカの「町の雑踏」の雰囲気を脳裏に想起させることを、とても意識的に行っていたんだな、と。

それが2022年令和4年の今、Lo-Fi HipHopの文脈も合わせて考えると、余計に「雑踏のザラついた感じ」を表現するってことは、目の付け所が凄い正しかったんだな、って思います。アゲアゲな感じがなく、かといってチルに浸りきるわけでもなく。抑制されたビートと音の質感が、曲ごとに「雑踏の一日」を様々な角度で描いているように聞こえます。

Young Marble Giants「Colossal Youth(40周年記念盤)」

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この作品、歴史的経緯を知っていないと「なんだこれ?」になりそうだよなぁ……と、令和4年の今は思うわけです。80年代も遠くなりましたね。

自作リズムボックス(当時はドラムマシンもろくにありませんでした)と、妙なフレーズを放つギターとベースと、ウィスパー系の女性ヴォーカル。シンプル&ミニマリズムの極みなこのサウンド……これは、当時の「ギャギャーン!(轟音)」なパンクロックムーブメントの中にあって、「えっ、そんなシンプルなのアリなんだ」っていうコロンブスの卵めいた立ち位置にあったのです。

空間を決して埋め尽くさない。あんまりにもスカスカなバンドサウンド……バンドサウンド? これをバンドサウンドと言ってしまっていいのか。ボカロPですらもっと音を詰め込むのは当たり前です。

引き算の美学。チープであるけども、それがゆえのかわいさ、奇天烈さ、逆説的なポップさ。けったいなことをしてるわりには実験性のイヤらしさっていうのもなくて。この三人自体の存在、音の存在そのものが逆説的なポップさ、というポスト・パンクの名盤です。

そしてミニマル・ポップということでいうと、現在もインディー界隈で様々なアプローチがされていますが、ここまでハードボイルドにミニマリズムをやらかしているものも、そうそうありません。原点にして頂点、みたいなところがある……? うーん……YMGはYMGにしか出来ない音を演ったし、他の連中はそれに凄いリスペクトをしたけれど、YMGのフォロワーには、結局ならなかった。それは多分、YMGの真似をしても猿真似になるだけだし、ってことをみんな分かってたし、YMGの方法論と精神性を自分なりに解釈して自分なりの音楽を作っていくことこそが、真のYMG愛好家の精神だ、って思ってたからなんでしょうね。

●Carlos Aguirre Quinteto「Va siendo tiempo」

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アルゼンチンの静謐系フォルクローレの巨匠率いるギター五重奏団の新作です。静謐系のジャズやクラシックからの影響も濃く。本作ではアギーレはギター・ヴォーカル・アコーディオンを演奏します。「繊細」。

アギーレのメロディラインの個性は素晴らしく、「追憶をそっと窓辺に置く」かのような哀感に満ちた美しい旋律です。落ち着いて聞きたい盤ですね。

●Sinesis Duo「Hojas y rutas nuevas」

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アルゼンチンのギタリスト・キケ・シネシと長男のアウグスト・シネシのギター・デュオ。レコード屋さんのおすすめで音源を試聴してみたのですが、なんともギターの豊潤な、ゆるやかな掛け合いがたまらず。音色が麗しいのです。即購入でしたね。こちらも「静謐系」のアルゼンチン音楽です。

 

●ザ・リーサルウェポンズ「アイキッドとサイボーグジョー」

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そして我らが日本が響かせるは、やかましい80’sサウンドですよ。待ってましたメジャー初アルバム!

全曲キラーチューンとばかりのアイキッド先生のメロディの冴え、コミカルな愛嬌、ジョーのヴォーカルの朗々とした魅力。コンセプトさえしっかりしていれば、あとはそれで思いっきり殴れば良いのである、の好例です。曲数をやたらに詰め込んでいるサービス精神も素晴らしいですね。15曲ってなんだ15曲って。ありがとうございます。

 

●Ariabl'eyeS「冥鳴フィアンサイユ Act:Ⅰ」

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同人ゴシック系、V系ロックです。美メロの雄です。

きましたね、長編シリーズです。気合入っていますね。買わない理屈があるものか、って感じでもちろん購入です。

 

●くろねこほたて「港町と黒猫のケト」

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同 「Pub.House MATATABI」

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同 「白壁の家々と演奏家リリー」

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前々からアルバムジャケットがやたら素敵で(とくに「白壁の~」)気になっていたケルト系サークルさんですが、今回試聴してみて、過去作を購入しました。

ゲーム音楽風のケルト音楽」というサウンドコンセプトです。ゲーム音楽の人懐っこいポップな要素・アレンジ・アンサンブルで聞きやすく、同時にケルトフレーズも充実、という音楽性。

そしてその音楽の数々をコンセプトアルバムとして配置し、アルバムで一枚で物語を描く、という作風です。

なんというか、凄く姿勢が良いです!一枚の盤でケルト音楽と物語の風景をしっかり奏でよう、って意識が伝わってきます。聞いているだけで物語や風景がふわーっと想像できるのは良い音楽です。

また、ゲーム音楽というだけあって、アンサンブルやミックスが結構バキっとしたクリアなサウンドプロダクションなのですが、それがなんともゲーム音楽的で、でもけして「やわ」じゃなく、むしろ物語や風景、世界観に対する姿勢の良さ・生真面目さが伝わってきて、「良いものを聞いたな」と思わせてくれます。

 

●hydden from MMLHACK「FC Sound Etude Collection」

今回M3ではやっぱりチップチューンを多く購入しました。このアルバムは「ファミコン音源で作成した練習曲(エチュード)集」ということです。

そんなわけで、けして音の厚みはないのですが、むしろ個人的にはまっすぐに良い曲、メロディが伝わってくる、って感じがしました。どの曲も2分だけでシンプルな曲、まさにエチュードです。でも曲調はバラエティがあって、そこもまたエチュードですね。シンプルに良い曲集です。

ショパンの昔から、こういうエチュードの愛好家っていますが、チップチューンもそういう愛好文化が出来てきたんだなぁ、と改めて思うのでした。

●novtos「Pièce montée ~Kawaii Chiptune Collection Vol.1~」

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こちらもチップチューンアルバム。アルバムタイトルにもあるように「KAWAII」メロディ、アレンジの曲が詰まっています。やっぱり自分はメロディが良いチップチューンが好きなんだな、と。まっすぐに、てらいもなく、カワイイ音で、メロディをぶつけてくれる、っていうチップチューンの醍醐味です。

 

●POPiN RECORDS(scythe)「ReWind」

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(公式特設ページ)

scythe-chiptune.com

素晴らしい!

scythe氏の5thアルバム、メロディと情景喚起に優れたチップチューン作家さんですが、今作もまた、情景をビシビシ電子音で脳裏に紡いでくれるメロディです! 

名曲「最後のバス停」、やっぱり何度聞いても良いですね。最初のところでバスドラが入ってくるキャッチーさ。この曲に「最後のバス停」とつけるエモーショナルさ(エモさ)! そしてこの曲だけではないぞ名曲は、っていうアルバムでございます。素晴らしいですね。またヘビーローテーションです。

 

そんなわけで、この2か月の音源感想でした~。