残響の足りない部屋

レッズ・エララ神話体系のこと。漫画、模型、音楽のweb日記、日々のfavとジョーク。

取扱い説明書、カテゴリ説明

(2024/12/09更新)

このブログは「残響」という人のweb日記です。
メインの話題は「模型(おもちゃ)」と「音楽」です。

模型のこと

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音楽のこと

音楽のこと カテゴリーの記事一覧 - 残響の足りない部屋

管理人残響が日々聞いたお気に入り(fav)音源を、
「最近わたしの音の暮らしはこう」
という通しシリーズで記録しています。
また、毎年のはじめに、前の年に聞いて特にお気に入りだった音源をまとめています。
はじめての方は、まずはこちらからご覧ください。

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絵・漫画制作のこと

管理人は下手ながらオリジナル漫画を描いております。ささやかでも「絵・漫画が描けないコンプレックス」から脱却しようとしています。

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完成した漫画作品は、ホームページ(個人サイト)「レッズ・エララ神話体系」や、このブログで公開していきます。

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「fav」カテゴリ

日々のお気に入りを記録しています。

fav(日々のお気に入り) カテゴリーの記事一覧 - 残響の足りない部屋

「ジョーク」カテゴリ

がんばって拡充していきたいです。

ジョーク カテゴリーの記事一覧 - 残響の足りない部屋

SNSのこと(ブログ更新告知)&管理人への連絡方法

同人音楽サークル「8TR戦線行進曲」及び創作世界「レッズ・エララ神話体系」の告知用ついったーがあります。

twilog.org

togetter.com

このついったーアカウントでは、はてなブログの告知システムを連動させて、ブログの更新告知を行っています。ついったーのDM(ダイレクトメッセージ)は通じます。

ついったーをはじめとしたSNSのことですが、やっぱり2024年の秋になっても、残響個人のSNSアカウントはないです。そのあたりは変わらず、以下の2019年テキストに書いてあるとおりです。まれに告知ついったーで生存報告をするくらいでしょうか。
また、blueskyやマストドンなどの新型SNSへ移ることもないです。残響はだいたいこの日記ブログににいます。

www.redselrla.com

何か当ブログへのメッセージがございましたら、この日記ブログのコメント欄、上記告知用ついったーDM、もしくはメールアドレス redselrla24アットマークgmail.com へどうぞ。

 

ブログ開設:2009年7月~

その他リンク

残響の制作物や活動一覧はこちら ↓

potofu.me

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加湿器の話

自室で過ごしていて、どうも自身の調子が悪いな~、と感じることがある。頭が重い感じだったり、気分が塞ぎがちだったり、そんな自身の体調に気づく。名探偵コナン風に言えば「あれれ、おかしいぞ~?」っていうように。

それが鬱の始まりだったりする場合もある。おかしいぞ~?と感じた数分後に、心と脳がストトトーンと鬱に支配されて、ちょっとその場から動けなくなる時は、何回もあった。

そこまでいかなくても、単純に前から地味に体調が悪くて気分が塞いでいた、ということも。一日のうち、そういう些細な気づき方が数回あったりする。

 

ある日も、そうして体調がいつしか悪くなっていた。「あ、今自分は体調が悪いぞ」と。

具体的には頭が重い。それも締め付けられるような痛さも感じ出していた。冬で、気圧が急激に下がっているのかしら。あるいは、部屋で暖房をつけっぱなしにしているからか。確かにこの部屋、模型や書類が多い部屋なので空気は悪くなりがち。でもさっき換気したばかりだし…。

そんなことを鈍い頭で考えていて、ふと「乾燥してるのかな?」と思う。そういえば自身の症状はどれもドライアイ的なものだ。部屋に置いてある温度&湿度計を見たら、確かに夏~秋の測定値とは大幅に違う(※)。

なので、しばらくぶりに加湿器を動かしてみた。去年はあまり加湿器を使っていなかった。全く使わなかったわけでもないし、加湿器の掃除もしている。ともかく、今年はこれまで加湿器を使っていなかったので、動かしてみた。

しゅんしゅんと静かに動作音が聞こえてくる。多分、部屋に蒸気が少しずつ回っていっているのだろう。

そして少し部屋の整理をしていたら、なんだか体が少し楽になっている気がする。プラシーボか?と思ったが、確かに先ほどまでの頭の締め付け感は薄れている。目のバチバチ感(乾燥感)も少し減っている。

(※…部屋に温度&湿度計を置いてるにも関わらず、日々ちゃんと見て測定していない時点で愚かな私である)

 

うーん。

 

つい、自分のように鬱や神経の歪みと長年お付き合いし、飼いならしていると、自身の調子が悪くなった時、真っ先に鬱や神経、心の負担にフォーカスを当ててしまう。実際、それくらい自分で気を付けていて間違いはない。予防は大事だ。心の風邪とも言うし(これ最近、あまり良い表現とは言われないけど)。

でも単純に環境が悪かったり、空腹だったりで身体に負担がきてて気分が塞いでいるだけ、っていう場合もある。今、「だけ」と書いたけど、実際負担が来ているわけだし、実際気づかなかったわけだし。そう、環境の悪さを自分で気づいていない時点で、愚かでマズいのは事実だ。

ともあれ、今は加湿器を使っている。部屋の湿度が回復すると、暖房の回りも良い。電気代にだって寄与するはずだ。良いことだ。どうも私は、雑にパワーで進めてしまう癖がある。神経があまり良くない癖に雑ってどういうことだろう。

今回はこういうちょっとした生活改善の地味な効果の話でした。この加湿器に似た話として、夜中(深夜)暗黒想念に襲われた時、暖かいインスタント味噌汁を飲むというテクもある。

深夜・布団の中名物「過去のトラウマを思い出すことから暗黒堂々巡りへ向かってGO!」を、臓腑に沁みる暖かい味噌汁は、強制的にストップさせてくれる。私は最近は、しじみの味噌汁にハマっています。肝臓に効く(中年)。ジャンクなドカ喰いよりは確実に身体に優しい。もっとも、暗黒想念から自分を救うために深夜ドカ喰いするのは、そこまで致命的に悪くはないとも思うけど。そういう夜だってあるよ。

しゅんしゅんと加湿器の音がする夜である。

2024年に良く聞いていた音楽

あけましておめでとうございます。

この日記ブログ「残響の足りない部屋」では、例年年明けに「去年良く聞いていた音楽」を列記しています。今年も選考基準は例年の通りで、

発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り

です。順位は付けていないです。それではよろしくどうぞ。

modernclothes24music.hatenablog.com

坂本慎太郎(ソロ)


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ゆらゆら帝国のソロ作。ミドルテンポの奇妙な世界。

ゆらゆら帝国初期の轟音サイケギターではなく、その音風景は例えば、幽霊が集うキャバレーであるとか、誰もいないところでゆかいに踊る人とか、孤独に遠い星を観る人だとか、そんな感じを思い浮かべてしまうものなのです。音は難解でないのに、坂本氏の世界観はとても奇妙。でも、それにハマるととても居心地が良い。確実に「未来に向かってGO!」という世界観ではないです。私は、このミドルテンポの坂本氏の世界に浸っていたい。なお、ゆらゆら帝国はまだ中期〜後期までしか聴き込めていないので、これからとても楽しみです。

稲葉曇「私は雨」


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今年も稲葉氏は良かったです。プロセカ(ボカロゲーム「プロジェクトセカイ」)に描き下ろした本曲、雨をモチーフにして、歌詞も曲も情感たっぷり。悲しく、豊かに、しかし確かな足取りで前に進んでいきます。稲葉氏が描くのは絶望ではない。氏のこの「虚しさの描き方」に用がある。ポップさと虚しさ、諦念、電子音やリフ、覗き込むようにかすかに未来を希求する視線の彼方…そんなのが混じり合った稲葉氏+ぬくぬくにぎりめし氏の世界に用がある。

Matthew Halsall「Fletcher Moss Park」


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贔屓にし、カタログを遡って聞いているイギリスのインディー・ジャズレーベル「Gondwana Records」より今年はこちら(2012年作)。
素敵なジャケットの通り、「自然感」のあるサウンド。しかし安いニューエイジ・スピリチュアル的なのではない。(※私はニューエイジ音楽のファンですが)
ユーロ的に洒脱で知的、省察を感じさせるハルソールのトランペットを聞いていると、こちらも静かに自分自身のインナーワールドを見つめたくなります。2024年は来日公演もありました。このレーベルのファンとして嬉しいことです。

www.ele-king.net

ZAZEN BOYS「Amayadori」


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しかし新譜「らんど」は実に良かったです。ZAZENの新作をこうやって迎えることが出来てよかった。私個人、この数年でチルに対する知見がかなり溜まったので、向井、ZAZENが持つチル世界、音像を十二分に味わうことが出来ました。武道館ライヴの成功も良かったですね。

そんなわけで新譜の活動も良いですが、ZAZENのチル側面に今年はめっちゃ浸ったので、ライヴ音源の中でもとりわけチルいこの演奏を今年は聞きまくったということで。なんといってもこの演奏の主役は、カシオメンの悠久たるギターです。

おいし水(月刊湿地帯)「「ファミレスを享受せよ」BGM、他自作曲ピアノアレンジなど」


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今年の下半期、おいし水(すい)氏の曲にめちゃくちゃハマりました。ここに挙げていない音源も聞きまくっている(skeb依頼曲など)。
例によってチル路線からのハマりなのですが、シンプルでスカスカな音の作りながら、物凄く哀感と諦念のある音世界に浸るのが……もう本当……涙が……(疲れてますか?)

サークル「月刊湿地帯」は、おいし水氏が主宰するホームページ&ゲーム制作サークルです。代表作は「ファミレスを享受せよ」。

oississui.com

www.wakuwakugames.com

↑ このグラフィックからもわかるチルさ。音も上記のように騒がしいところのない、沈み込むようで、微温的で、やさしげで、時に空元気、でもやっぱり月を見上げるように哀しい世界があります。やさしげなだけに、余計哀しいような。

Eric Clapton「Meanwhile」

youtu.be

私はここ数年、エリック・クラプトンの近作を良く聞きながら仕事をしているのです。クリーム時代のように轟音ブルースギターをカマすわけでも、デレク&ドミノス時代のように米南部音楽をレイドバックでバリバリ弾くわけでもない。さらに言えばソロキャリア初期〜中期のようにも弾いていない、なんとも落ち着くゆるい音の近作です。私はそれが結構好きなんですよ。

「スローハンドのギター神(ゴッド)クラプトンをチル目的で聞くなんて!」っていう批判もあるかもしれませんが、でも私個人はクラプトンの近作をチル目的で聞きながら、午後の昼下がりの仕事をしていると大変気分が良いわけでして…(無反省)。
かつての時代のようにロックに弾いてくれよ!っていう向きの方々もいらっしゃるのはわかるんですが、私としては近作のクラプトンで充分に呑気に気持ちよくなっちゃっていまして……(苦笑)。おれは本当にオルタナロックファンか?w

まぁ、最近のクラプトンのコロナワクチンやらの発言や、このアルバムの歌詞に問題がないとは言えませんが、そこは私としてはもうノーコメントで(妥協)、ともかくゆるいカントリーギター、素朴なメロディのアルバムで、私はクラプトンの最近の音は支持しています。

スピッツ「劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro」


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北海道・帯広の旧双葉幼稚園舎で演奏された音源。セトリのマニアックさもさることながら、音響がなんとも私好みの音でした。一般的な「広がりのある音響」ではなく、中域〜ローミッドがゴリっと押し出された生々しい音像。あくまで私個人の思いですが、凄〜い好きな音でした。万人向けの音とは言えないのですが、この親密な音がとても良かった。どこまでも深みにいくような「ガーベラ」の演奏に鳥肌。

弌誠「モエチャッカファイア」


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ゲーム「ゼンレスゾーンゼロ」のキャラのイメージ曲です。低音男性vo、特徴的なロシア風フレーズ。ビターに疾走、胡散臭いキャッチーという独特の曲調が今年めっちゃ癖になりました。この曲凄い好きです。古典的ロシアンフレージングを現代的にこう鳴らす、というのに音楽的にとても興味があります(世情とか戦いとかそういうのとは関係ないですから誤解禁止)。今年はライヴもあるそうですが、この曲をセルフバンドアレンジした狂気、暗さ、炸裂感も大変良いです。↓


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MONO「OATH」


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これがポスト・ロックシューゲイザーですよ。シンフォニックに、ノイジィに、壮大に、シリアスに!オルタナですよ!こうでなくちゃ!「音に浸る」聞き方を身に着けた私は、前よりももっともっとMONOが好きになりました!

J Mascis「What Do We Do Now」


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ダイナソーJr.のフロントマンのソロ作です。轟音ギターがどかん、というものではないですが、アコギ&バンドサウンドの素朴に良いユーモラスなインディーロックで、心が和みます。やはりダイナソーもマスシスソロも「曲の良さ」が良いですね。ところで今年のこのお気に入り音源感想、「チルい」か「素朴」かしか言ってないような……w

上海アリス幻樂団「七夕坂夢幻能 〜 Taboo Japan Disentanglement.」


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なんとシリアスなアルバムか…。

8thアルバム「旧約酒場」はZUN氏自ら激しくダークなアルバムでお気に入り、と仰っていましたが、本作「七夕坂夢幻能」は「旧約酒場」とは違った風合いの、より差し迫ったシリアスな世界観を感じさせます。それでいながらZUN氏が見せる風景は、やはりどこまでも幻想の夢がある。風景を感じさせる。アルバムを通しで聞いて、いつも確実に暗さ、シリアスさがある。チルではない。和やかでもない。でも、この盤には確かにコンセプトアルバムとしての物語と世界がある。七夕の空に向けて、掴もうと手を伸ばす人間の限界性の切なさをーーー

Aiobahn feat.ヰ世界情緒「new world」


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今年はAiobahn氏の音楽世界にもハマりました。というかこの項から以降は、どこか音楽性や情景が通底しているSF感とチル感のあるテクノになります。

Aiobahn氏は「INTERNET OVERDOSE」や「INTERNET YAMERO」のようなドギツい闇鍋キャッチー曲も作ることが出来ますが、活動の本筋はゼロ年代の深夜アニメやノベルゲームのエンディングテーマ的なチル感あるブレイクビーツドラムンベースだと思っています。デジタル静謐感とでも申しましょうか。そして世界観にSF的なテイストがあります。そのSF世界観もまたゼロ年代セカイ系的でもあります。私、もともとはセカイ系を蛇蝎のごとく嫌っていたんですけど…でもAiobahn氏の世界は好きです。

そして、どうしようもなくノスタルジー音楽なんですよね。Aiobahn氏は。そこがもう、大好きです。(ゼロ年代がノスタルジー、っていうのに気づいて我に返ってちょっとした「えっ…」感もあったりしますが39歳残響さん)

90年代後期〜ゼロ年代初期プレイステーション1(PS1)あたりのゲーム音楽に影響を受けたと思しきアトモスフェリック系ブレイクビーツドラムンベース


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このMIXを聞いて頂きたいんですが、そういう「あの時代のプレステのSF的感じ」の雰囲気あるブレイクビーツドラムンベース、ジャングルを良く聞いたこの一年でした。

自分の中では、Lo-fi hiphopやsynthwaveからの旅が、ついにここまで来たか〜、って感じです。ようはこれもノスタルジーとチルの一種です。耳と魂にセットしたLo-fiフィルターが、こういう音楽を再発見して「よし」と思うようになりました。

そうなってくると90年代〜ゼロ年代のテクノ音楽、ブレイクビーツドラムンベース、ジャングルの再発掘がめっちゃ楽しくなってくるわけでしてw
また、こういう90年代後期のゲーム音楽に影響を受けた今の作曲家が、「そういう音」を今鳴らしているわけでして…(次項に続く)

コンピレーション「Jungle Fatigue」シリーズ

sawteeth.neocities.org

韓国のジャングル系ミュージシャン・Sawteeth氏が主宰しているこのコンピレーションシリーズアルバムを良く聞いています。アトモスフェリック系、つまりなんか雰囲気あるSF的な世界観、虚無感のある疾走テクノです。

この曲の世界の中で生きている人が幸せかどうかはわからないけれども、どこか見果てぬ夢であるとか、憧憬とか、ぽっかり穴が空いた宇宙であるとか、星空とか、透明な精神とかを、疾走テクノのビート乱打と虚空感あるシンセパッドに乗せて突き進んでいく、どこか寂しげなSFテクノな世界観。私はそういうのがとても好きになりました。イマジネーションが刺激される。その刺激され感はLo-fi hiphopの時も同じです。

「Space Jazz」mix


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そしてここにたどり着くわけです。SF的世界観と、チル系現代ジャズをあわせた音世界のmix。「カウボーイ・ビバップ」的というか、どう考えてもnujabesの影響下なこういうmixを、YOUTUBEでよく聞いています。

前に「SF小説を読みたい」ということをこのブログで書きました。

 

modernclothes24music.hatenablog.com

 

modernclothes24music.hatenablog.com

私のSFへの興味は、テクノロジーに対する興味と、「テックのあるふつうの日常」、そして「騒がしくない宇宙感」あたりがメインなようです。なんか、そういう世界観が好きなんですよ。

そしてそういうSF世界観に、チルいジャズがとても合う、というのは発見でした。やはりカウボーイビバップ、そしてnujabes偉大なり、なのでしょう。学生時代に視たサムライチャンプルーもとても良かったし…(去年、サムライチャンプルーのサントラカセット再発されましたね)。

なんというのでしょう、チルとかLo-fi、そしてアトモスフェリックなSF世界観…こういう喜びがある、っていうのが、今私はとても嬉しいわけです。こういう鉱脈があったのか!と。

それまで私は音楽は、美メロ+ノイズ+ポップに疾走+ハードなアレンジ、なのを好んできました。そこからLo-fi HiphopやVaporwaveにハマって以降、こういう静かで世界観があり、雰囲気のあるループ系の音楽、その音世界に「浸る」聞き方が大好きになりました。これは、私にとってはパンクやノイズに匹敵する革命でした。

それが音楽オタとしての退行かどうかは、まるで関心がなくて。なにせ、鉱脈を発見して、今まで見過ごしてきた音楽の良さを再発見するのが多すぎるのです。こういう音はずっと聞いてられるし、ずっと聞いてられる音(世界)の種類が多すぎるし。だから、あまりにも退屈していないのです。音楽に。

 

 

そんなわけで今年の「良く聞いていた音楽」でしたが、今年はこの路線をどんどん突き進めていくんでしょう。チル、アトモスフェリック系SFテクノ、Lo-fi……。
そう思っていたら、最近さらなる鉱脈を発見しました。スロウコア、あるいはサッドコア。

あんまり変拍子ポリリズムのない、極端に遅くしたラジオヘッド(このブログ限定のRadioheadのことです)のような音楽、みたいな感じでしょうか。こういうのも良い。音に浸れる。幻視できる世界観がある。

そんなわけで現在進行系でこのジャンルも追っています。また、当然ながらジャズのチル系も再発掘ですし、おいし水氏のピアノを聞いたらクラシックのピアノソナタも聞かないわけにはいかなくて。

そしてそんな路線な私なので、今日もブレイクコアのmixを聞くわけでした。今年もよろしくお願いします。


www.youtube.com

 

来年の予定&近況2024年大晦日

いつもこの日記ブログを読んでくださる皆様、今年一年お世話になりました。有難うございます。

管理人残響ですが、風邪やインフルエンザ、コロナにも罹らず、元気に過ごしております。病気が流行っておりますし、寒いですので、どうぞ皆さまお気をつけください。

年明けは、私は2日から仕事です。前々から決まっていた仕事ですので、頑張ります。

年が明けてからの、このブログや管理人の活動の予定を書きます。

「2024年に良く聞いた音楽」のup

例年年明けに行っております恒例の年間お気に入り音楽記事ですが、今回もやります。

リストアップはすでに済んでいます。
坂本慎太郎、Aiobahn、ZazenBoysのチル曲、月刊湿地帯(おいし水氏の曲)、PS1

(プレステ1)や90年代後期のSF風テクノに影響を受けたとおぼしきアトモスフェリック系ブレイクビーツドラムンベース…といったところです。

去年の記事の(3)が、結局3月になってようやくupしてしまったことを、いまだに申し訳なく思っています。なので、今年は1記事にまとめてupします。各曲コメントも短くします。好きな曲が多かったことは良いことなのですが。

 

九州コミティア9参加予定、新刊作成中

2025/3/2(日)に北九州・小倉で開催される創作同人誌即売会「九州コミティア9」にサークル「レッズ・エララ」で申し込みをしました。現在、当落待ちです。

www.q-comitia.com

まんが同人誌の新刊を出します。
レッズ・エララ神話体系をはじめて知る方向けの雑誌風同人誌「はじめてのレッズ・エララ(仮)」と、
これまでの5冊の同人誌を合本にした総集編「レッズ・エララ神話体系」第1巻、
の2冊を出す予定です。

詳しくはレッズエララのホームページ内紹介ページをご覧ください。

redselrla.com

その他

12月のはじめに、このブログのアクセス数が22万いったそうです。この数字は、旧はてなダイアリーからはてなブログに移行してのものです。それより前のプロバイダのブログの時や、はてなダイアリー時代のアクセス数は消えましたので、累計アクセス数は全然わかりません。
なお、この日記ブログは2009年に設立しました。15年を越えますね。読者のみなさん、有難うございます。
アクセス数に関する私の考えは、前に書いた時と全く変わっていません。

累計19万アクセスにおもふ(はてなブログに移行して) - 残響の足りない部屋

 

春のM3同人音楽即売会)は、今のところ参加しない予定です。秋はまだ未定ですが…。

来年も、模型と音楽について文書を書いていきます。
それから、これまで描いた漫画や絵、各まんが作品の解題みたいな文もこのブログに載せていきたいと考えています。
SNSに居ない分、もっとこの日記ブログを更新していきたいです。

 

それでは良いお年を。私はこの大晦日は、上記同人誌の原稿を描いています。
来年もよろしくお願い致します。

作業机の上

 

年の瀬(紅白は見ていない)
「残響の足りない部屋」管理人・残響

2024年に読んだ本のリスト

2024年も終わりなので、管理人が今年読んだ本(活字、漫画)を備忘録的に書きます。

だいたいこんな本を新刊&中古&電子書籍で買って読んでました。

AmazonKindleUnlimitedの履歴が二か月分くらいしか遡りきれなかったので、kindleアンリミで読んだ本はあまり書けていません。

また、図書館で借りて読んだ本を書くとこの倍になるので止めました。

そして雑誌は割愛しました。だいたいモデルグラフィックスアーマーモデリング、ミシマ社の「ちゃぶ台」を愛読しています。

●活字、画集

栗田唯「CAFE SKETCH:感じることはタカラモノ」

村上春樹「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」

「Ludique 赤倉画集」

「東方外來韋編 Strange Creators of Outer World. 2024」

熊代亨「「推し」で心はみたされる?~21世紀の心理的充足のトレンド」

同「人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造」

同「ないものとされた世代のわたしたち」

ラテン語さん「世界はラテン語でできている」

「ななみ雪ピクセルアート作品集 PIXEL ART GIRLS」

清涼院流水TOEIC(R)テスト300点から990点へ、「7つの壁」を突破するブレイクスルー英語勉強法」

坂上月扉「アポロンは東を向く」

小津夜景「いつかたこぶねになる日」

坂上香「根っからの悪人っているの?:被害と加害のあいだ」

最首悟「能力で人を分けなくなる日:いのちと価値のあいだ」

栗田隆子「ハマれないまま、生きてます:こどもとおとなのあいだ」

大津卓也、砂糖ふくろう「一枚の絵でストーリーを伝える方法 ビジュアルストーリーテリングの基礎から応用まで」

pha「パーティーが終わって、中年が始まる」

同「蟹ブ店番日記」

同「やる気のない読書日記」

町田康「しらふで生きる 大酒飲みの決断」

同「私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?」

倉下忠憲「思考を耕すノートのつくり方 自分の知的道具を手に入れる」

虎硬「絵を学ぶときに一番最初に読む本! 効果を2倍に上げるイラスト学習法」

「さいとうなおきの描くことはプレゼント」

斎藤真理子「隣の国の人々と出会う:韓国語と日本語のあいだ」

いちむらみさこ「ホームレスでいること:見えるものと見えないもののあいだ」

坂口恭平「幸福人フー 僕の妻は「しあわせ」のお手本」

済東鉄腸「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」

同「クソッタレな俺をマシにするための生活改善」

若松英輔神谷美恵子『生きがいについて』(100分de名著)」

朱喜哲「ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』(100分de名著)」

わす「PEPAKO まるで生きてるペーパーパペットの作り方」

るきち作品集「空想世界のもちもの」

埜々原作品集「ヲかしな建物」

東一夫・東多喜子「標準ロシア語入門」

樋口英夫「雲南・北ラオスの旅」

紅木春「アジアンファンタジーな女の子のキャラクターデザインブック」

マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集「東京店構え」

欧米・アジア語学センター、ファリダ・モハメッド「はじめてのマレーシア語」

ジェネット「プロ絵師に聞く!絵を描く人のためのお悩み相談室」

木村護郎クリストフ、渡辺克義(編)「媒介言語論を学ぶ人のために」

結城浩群論への第一歩 集合、写像から準同型定理まで」

村上春樹柴田元幸「本当の翻訳の話をしよう 増補版」

古田徹也「言葉なんていらない?:私と世界のあいだ」

小杉泰「イスラームとは何か その宗教・社会・文化」

岸本周平「中年英語組 ーープリンストン大学のにわか教授」

上田秀樹「すぐに使える!製造現場で役立つ英語フレーズ集」

松田和夫「日常の中国語会話辞典」

新名美次「40ヵ国語習得法 私はこうしてマスターした」

相原茂「謎解き中国語文法」

同「你好中国語 相原先生の課外講義」

佐藤次高+鈴木菫(編)「都市の文明イスラーム

ハン・ガン「ギリシャ語の時間」

Boris Pasternak「Letters to Georgian Friends」(英訳)

同「The Last Summer」(英訳)

佐々木憲徳「エスペラント語訳「歎異抄」」

メタ・バラッツ「日本生まれのインド人、メタ・バラッツのスパイスカレーユニバース」

松村上久郎「心にのこる絵の描き方 強い印象を与えるための35の方法」

同「満たされる絵の描き方」

荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」

森博嗣「つむじ風のスープ」

「無情のスキャット 人間椅子・和嶋慎治自選詩集」

はるきる「お菓子の箱だけで作るすごい空箱工作」

土屋賢二「急がば転ぶ日々」

奈倉有里「文化の脱走兵」

同「ロシア文学の教室」

雪子画集「ma chérie」

スタンダード英語講座4「英語の辞書と語源」

ウラジーミル・プロップ「魔法昔話の起源」

ドリュー・キャスパー「ハリウッド白熱教室

「世界28言語図鑑」

とろくすん(こまきときこ)「趣味語学のことなど vol.1語学と逃避」

「同 vol.3 3ヶ月で3言語と知り合う」

「植物園が好きです漫画1&2」

篠原信「思考の枠を超える」

同「ひらめかない人のためのイノベーションの技法」

同「自分の頭で考えて動く部下の育て方」

Margaret Erskine Wilson「Wild Flowers」

マテウシュ・ウルバノヴィチ「見えるものを描かず、見えないものを描く」

斎藤兆史野崎歓「英語のたくらみ、フランス語のたわむれ」

今谷和徳「中世・ルネサンスの社会と音楽」

マルコ・ラインデル「手紙・メールのドイツ語」

荒俣宏奥本大三郎「虫魚の交わり」

金子務「ガリレオたちの仕事場」

藤沢あかり「レシート探訪」

Penghin books「Russian writing today」

松村圭一郎「人類学者のレンズ」

同「はみだしの人類学 ともに生きる方法」

宮崎市定西アジア遊記」

林達夫共産主義的人間」

同「歴史の暮方」

小松左京高階秀爾「絵の言葉」

山内昌之「民族問題入門」

Alan Lomax「3000 Years of Black Poetry」

荒俣宏「図像観光 近代西洋版画を読む」

内藤正典「となりのイスラム

内藤正典&中田考イスラムが効く!」

向井聡「ルーマニア語はじめの一歩!」

依澄れいコミティア参加したいね日記」

國分功一郎「暇と退屈の倫理学

瀬戸佳子「季節の不調が必ずラク~になる本」

同「お手軽気血ごはん 1週間で必ず体がラクになる」

同「気血スープ 1週間で胃腸が必ずよみがえる」

「METRO Тошкент(ウズベキスタン地下鉄本)」

トーフビーツの難聴日記」

浜田淳「音盤時代の音楽の本の本」

今井むつみ「学びとは何か 〈探求人〉になるために」

アラビア語オンライン、クレオパトラの会「私たちの外国語物語:アラビア語の世界をのぞいてみると」

瀬山士郎「読む数学」

猪浦道夫「10か国語翻訳者の語学学習年代記〜ポリグロットのすすめ」

阿辻哲次「近くて遠い中国語」

佐々木洋「生き物ハイウェイ」

行司千絵「服のはなし 」

鈴木純「冬の植物観察日記」

坂本明「最強 世界の空母・艦載機図鑑」

園田幸朗「三浦半島フィールドノート」

舟田京子「やさしい初歩のインドネシア語

Samuel R.Delany「Nova」

ウィークリー「ことばのロマンス 英語の語源」

内田樹「修行論」

くぼたのぞみ・斎藤真理子「曇る眼鏡を拭きながら」

山田庸子「切手で旅するヨーロッパ」

田原洋樹「つながるベトナム語会話」

ハイメラン/アウリッヒ「クヮルテットのたのしみ」

伴名練(編)「日本SFの臨界点[恋愛篇]」

伊藤計劃「ハーモニー」

道草パレット「ヨーロッパ再録集vol.1&2」

同「アムステルダム散策録」

(いいよ)「ポップミュージックガイド The Rough Guide to Hippos In Tanks」

同「ポップミュージックガイド The Rough Guide to Orange Milk 2010-2019」

コトノハゲームズ「旅と魔法のソロジャーナルRPG 魔女と獣と旅するレシピ」

同「旅と魔法のナラティブRPG 魔女と獣とふたり旅」

石岡丈昇「エスノグラフィ入門」

金両基「キムチとお新香 日韓比較文化考」

岡崎久彦「隣の国で考えたこと」

 

●漫画

【2025年アニメ化】

三香見サカ「薫る花は凛と咲く」

つるまいかだ「メダリスト」

くずしろ「笑顔のたえない職場です」

渋谷圭一郎「瑠璃の宝石」

 

【創作についての漫画】

杉谷庄吾「レオナ・ロイヤル・ロード」

とよ田みのる「これ描いて死ね」

中村一般「えをかくふたり」

 

【日常の異世界

panpanya「商店街のあゆみ」「そぞろ各地探訪」

香山哲「レタイトナイト」 

あれっくす「私の魔法の先生は魔法が使えない」

双見酔「ダンジョンの中のひと」

ふかさくえみ「鬼桐さんの洗濯」

 

【バトル】

齋藤勁吾「異世界サムライ」

平野耕太ドリフターズ」(再読)

ワタル「カードゲームうさぎ エピソード・ライ太」

 

【幼馴染】

帯屋ミドリ「今日からはじめる幼なじみ」

十五夜「地元に帰ってきたら幼馴染が壊れてた」

 

【ダイエット&筋トレ】

しりでっどマン「宅トレで20kg痩せたオタクの話を聞いてくれ」

名島啓二パーソナルトレーナーニタニさん」

 

【夫婦の話】

ÖYSTER「新婚のいろはさん」

砂履シンシャ「オタ婚のススメ!」

 

【エッセイ漫画】

青木潤太朗(原作)森山慎(作画)「鍋に弾丸を受けながら」

こまきときこ「つれづれ語学日記」

AK壱乃「交換日記がおわっても」

 

【その他(芸術、17世紀中国高級娼館読み切りエロ漫画)】

草野マサムネスピッツ、詞)Junaida(漫画)「ひみつストレンジャー

1号「東の国のオクスペタルム」

香山哲「レタイトナイト」最新話(その17,18)のここがおもしろい

香山哲氏のファンタジー漫画「レタイトナイト」を私は楽しく読み、応援しています。

「レタイトナイト」はweb漫画雑誌「路草(みちくさ)」にて連載されています。現在単行本第1巻発売中。

michikusacomics.jp

kayamatetsu.com

 

私は、前(今年の5月)に感想を書いております。

modernclothes24music.hatenablog.com

「レタイトナイト」の連載はシーズン制で、数か月に一度、数話がまとめてupされます。普通の漫画連載・web連載は一話ずつです。しかし「路草」編集部・並びに作者側は「じっくり作品を読んでいってほしい」という態度で「レタイトナイト」連載を運営しています。

私は「レタイトナイト」のこのシーズン制を支持しています。どうも最近、漫画作品の発表(とりわけweb媒体)でインスタントな運営のやり方が目立つ節があったりします。どの漫画かとは言いませんが…例えばあるコメディ現代ファンタジー漫画では、いきなり最終回になって、公式のアナウンスも大してされない、みたいなことがありました。読者コメントや作者のついったーや最終単行本で「そうなのですね」って知るような感じ。こういうの、よくないですよ。作品・作者に対する薄情さを感じてしまいます。

そういうこともあって、「路草」編集部の「じっくり作品を読んでいってほしい」というシーズン制採用を、私は支持しているわけです。インスタントに「消費」されていい作品じゃないんだ、大事にしていきたいんだ、という気持ちを感じさせます。本作「レタイトナイト」は、じっくり読めば読むだけ味が出てくる漫画なのです。

 

 

1巻のラストでは、先に旅に出た叔父・マルさんに引き続き、主人公の少年・カンカンがいよいよ村を旅立つシーンが描かれます。

2024/12月現在で「路草」で連載(無料公開)されている続きの回(その15~18)では、カンカンが旅をし、宿に泊まり、タタト交易所での生活・商売を始めるあたりが描かれています。

今回のこの記事では、先日更新された「その17、その18」の回の、私・残響が気に入ったシーンやディテールを書きたいと思います。細かい感想文です。

 

カンカンはまだ若い(経験不足)

前シーズン回(その16)ラストでは、カンカンは焼き粉ものの素朴な食べ物「豆ディスク」を多く作って売っていこう!というシーンで終わりました。叔父・マルさんのタタト交易所での暮らしぶりに比して、この勢いが実に若者です。しかし先のことを綿密に計算しきれない、という経験不足・見通しの甘さも、また若者の「勢い」の側面です。

マルさんはなんだかんだ言って大人ですから、旅路にしても、町での仕事にしても生活にしても、安全側の堅実な歩みをします。でもカンカンはまだ15歳。読者(とくに大人)からしたら「ダイジョブかおい」と思ってしまいます。

結局豆ディスクがエビ的小動物(ヘヤサソリ)に食べられたり、最初はあんまり売れなかったり(味なしはやっぱキツいって…)、とありましたが、親切な周囲の人々の助けもあって、なんとかディスクは売れました。同時にカンカンは商売の難しさと、「自分には向いている事と向いていない事があるかもしれない」ということを覚えます。

そもそもカンカンはテンの村で、「自分は学校的なるものに向いていない」「魔法もやはり向いていない」「野党をやっつけられるくらいの力もない」と、いろいろ「向いていない(力がない)」ということを認識出来ています。それだけカンカンは聡い子であります。そして、カンカンはまだ若いですが、若いからこそ経験を積んで知恵を付けていきます。この「経験を積んでいく」のがカンカンの物語の骨子かもしれません。

 

マルさん物語パートとカンカン物語パート(世界重層性)

「レタイトナイト」において、カンカンはマルさんを追う形で、交易所や旅路、もっと大きな町(中轄)といった広い世界を知っていくことになるのでしょう。

そこで、大人・マルさんの物語パートと、若者(少年)カンカンの物語パートが作劇上分かれているのですが、きっと香山氏はこの手法でいろいろな町や旅路や世界の「見え方が違ってくる」、という描き方をしていくのかもしれません。それは世界の重層的な深みです。

RPGビデオゲームでも、メインのパーティが町に訪れ、その後、臨時的に別のパーティがその町を訪れる、っていう群像劇的なのがあるのですが(例えばFF6の序盤でパーティが三つに分かれるみたいに)、キャラが変われば町の見え方もまた変わるのです。味わいが異なってくる。そしてレタイトナイトのファンは、香山氏のファンは、味わって食べるほどに味わいが出てくる「世界」に用があるのです。

そういえば、ディスクはエビ(ヘヤサソリと呼ばれている)に食べられましたが、この「ヘヤ「サソリ」」っていうのがまた良いですね。虫が湧く・喰われるのではないのです。やっぱりこの世界の気候は中近東~北アフリカのように乾燥度が高い。日本のような高温多湿ではない。こういうちょっとしたディテールに異国情緒が宿っています。

 

耳栓、安宿のリアリティ

同じ安宿に泊まっている客たちのいびきで眠れない!→耳栓使ってなんとか寝る、って描写に3ページ半使うのが香山哲という漫画家です!凄い!いや冗談でなく凄い! そこに目を付けるか、と。

やはりこの作者は目の付け所が違うわけです。それがファンとしてとても嬉しいわけです!「ベルリンうわの空」だって海外日常生活の「目の付け所」の漫画でしたしね。

実際、安宿とか深夜バスってこういうのあったりします。ホコリっぽかったり、隣の人が食べているものの匂いがしたり。細かいディテールです。それが世界のリアルです。水で濡らしたハンカチで顔を拭くのが妙に気持ちよくてね。

こういうささいな、しかし味わいがとても深い描写がいっぱいあるのがレタイトナイトの素敵なところです。

 

若者の健やかさ

そして豆ディスクを売り切り、耳栓を使って翌朝「よく眠れたー!」と目覚めるカンカンの元気な姿が嬉しいですね。

今現在なう39歳な私・残響ですが、若者(少年)がちゃんと元気、っていうのは良いことだと思うようになりました。私が若いころは「深い哲学的思索や文学的屈託を持ってこそいっぱしの大人…」みたいに思っていましたが、今(39歳)になって思うと、「のびのびした健康」って大事だな、とw 哲学や屈託が不必要とは断じて言いませんが、それが堂々巡りするほどだったら、率は減らしても良いかもしれない……

実際、カンカンも少し「思考が堂々巡り」しそうなところがあります。「その18」の奇宝屋バイトを決めるときも、「だけど→だけど→だけど…」のトライアングルで堂々巡りしちゃってる描写がありますし。

でもカンカンはポジティヴにまじめに働いていこう、という健全さがあります。そこがカンカンの魅力です。おじさん(大人)たちが「お、がんばれよ!」みたいにカンカンに対して向き合ってくれているのも、そのあたりのカンカンの善性に好感を抱いているのでしょう。いや、先に述べたような哲学や屈託を抱えた少年が悪いって話じゃありやせんが、しかし「助けたくなるような人、助けようとは思えなくなっちゃう人」っていう違いって確かに世の中にあるよな…とも思うわけです。ある意味厳しいことですが。ううう、この話長くするとちょっと過去の私がダメージ受けそうな気がするのでここで切りますw

 

建物や町の路上の絵の暖かみ

凄く良い……。毎回レタイトナイトで描かれる建築物やストリートの様子や、旅路の草や石や地蔵や、動物やキャラクターのデザインが、見ていてすごく良い感じなのです。デジタル作画ですが、凄くアナログ感、魔術感があります。時代性に左右されない絵・デザインです。

今回の絵で、唐突にPS1の「ポポロクロイス物語」を思い出したんです。レタイトナイトでは時折俯瞰的構図がありますが、今回、奇宝屋の建物やそこにつながる橋とかで急に思い出しまして…。ポポロクロイス物語のあの暖かみのあるグラフィック…。レタイトナイトの絵の味わいにも、やはり「暖かみ」があります。この丁寧な作画が嬉しい。

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俯瞰というかちょっとしたクオータービューというか、どことなくPS1のポリゴン的構図というか…。そう、「箱庭的」といえば一番通りが良いでしょうか。そういうのが好きな同志の方にはとにかくレタイトナイトお薦めします。それから次にベルリンうわの空読みましょう。そして香山氏の自主制作漫画読みましょう。それから…(信者乙

 

奇宝屋、骨董、物語

さぁ、さらにファンタジーの味わいがしてまいりました。奇宝屋は、その名の通り奇妙な宝物専門のお店で、ここにある宝物の魅力的なお話を客に展開するイベントを開く。カンカンはその手伝いをする…というのが次回へのヒキです。

少しずつタタト交易所(町)での仕事・生活が上手くいってきているカンカンです。やはりカンカンに向いているのは完全な肉体労働ではなく、しかし完全に魔法方面の仕事でもない。そういう仕事で「僕、向いてない…」とキツくなっていくのを見るのも、読者として忍びない。

この奇宝屋で「なんか上手くいきそう」という感覚を覚えつつあるのかな。とりあえず仕事のアテはなんとかなりました。よかった。

さて、カンカンはこの奇宝屋での様々な骨董アイテムに魅せられるのか、それとも語り部の魅力的な「語り」の方に魅せられるのか。それとも、テンの村でのばくち場でのマルさんとの経験を活かして、上手く売り子として立ち回ったりするのか。何にせよ何かが起こりそうです。

しかし、こうして列記しましたが、どのエピソードも「普通の漫画、普通のファンタジー」でないですね。だのに、これほど読んでいて「嬉しい」のはなぜでしょう。ただディテールを細かく描写していくだけでは、こういう「嬉しさ」は出ないはずです。

 

香山哲の手にかかればどんな些細なものでさえ

なんでこんなにレタイトナイトのディテール、絵、キャラ、世界を見続けるのが嬉しいのか。

普通の漫画だと、アイテムや背景はデジタル作画でもって精密に描かれます。でも、それらはただのアイテムや背景…「情報」であり、読者がそれらの絵を見てよだれが出てくるような感じというか、舌なめずりしたくなるか、っていうとそうではないです。

レタイトナイト、香山氏の漫画はそこが違う。
読者は、キャラを見る、背景を見る。アイテムを見る、動物を見る。もう、おもちゃを弄って遊ぶ時のあの嬉しさそのものがあるわけです。「癒し」と「わくわく」が同時にある魔術的魅力。そこにマルさんの朴訥としたやさしさや、カンカンの素直で元気で聡明な若さといった物語が展開される。そうすると、風通しのよいやさしい物語が生まれます。

巨大な悪と戦い、世界を救う物語ではない。そういうとは違い、世界のディテールを見られるのがまず嬉しく…作品全体で描かれる「世界」を愛そうとしている漫画です。世界のザラつき、ホコリっぽささえ、香山氏の手にかかれば魅力と化すのです。そしてそういう世界の嬉しい感触っていうのは、ずっと読者の中に手に取って感じられるリアリティとして残ります。ベルリンうわの空で香山氏が描いたスーパーマーケットのディテール、私の中で大切なおもちゃみたいな箱庭として存在しています。セルフパン切りマシンとか!

これからも、私はレタイトナイトの最新話更新を楽しみにしています。香山さん、頑張ってください。早く来いこい第2巻!

 

追記

「レタイトナイト」、このマンガがすごい!2025」オトコ編17位ランクイン、おめでとうございます!