あけましておめでとうございます。
この日記ブログ「残響の足りない部屋」では、例年年明けに「去年良く聞いていた音楽」を列記しています。今年も選考基準は例年の通りで、
発売年度を考慮せず、【自分が去年よく聞いていた】という縛り
です。順位は付けていないです。それではよろしくどうぞ。
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坂本慎太郎(ソロ)
元ゆらゆら帝国のソロ作。ミドルテンポの奇妙な世界。
ゆらゆら帝国初期の轟音サイケギターではなく、その音風景は例えば、幽霊が集うキャバレーであるとか、誰もいないところでゆかいに踊る人とか、孤独に遠い星を観る人だとか、そんな感じを思い浮かべてしまうものなのです。音は難解でないのに、坂本氏の世界観はとても奇妙。でも、それにハマるととても居心地が良い。確実に「未来に向かってGO!」という世界観ではないです。私は、このミドルテンポの坂本氏の世界に浸っていたい。なお、ゆらゆら帝国はまだ中期〜後期までしか聴き込めていないので、これからとても楽しみです。
稲葉曇「私は雨」
今年も稲葉氏は良かったです。プロセカ(ボカロゲーム「プロジェクトセカイ」)に描き下ろした本曲、雨をモチーフにして、歌詞も曲も情感たっぷり。悲しく、豊かに、しかし確かな足取りで前に進んでいきます。稲葉氏が描くのは絶望ではない。氏のこの「虚しさの描き方」に用がある。ポップさと虚しさ、諦念、電子音やリフ、覗き込むようにかすかに未来を希求する視線の彼方…そんなのが混じり合った稲葉氏+ぬくぬくにぎりめし氏の世界に用がある。
Matthew Halsall「Fletcher Moss Park」
贔屓にし、カタログを遡って聞いているイギリスのインディー・ジャズレーベル「Gondwana Records」より今年はこちら(2012年作)。
素敵なジャケットの通り、「自然感」のあるサウンド。しかし安いニューエイジ・スピリチュアル的なのではない。(※私はニューエイジ音楽のファンですが)
ユーロ的に洒脱で知的、省察を感じさせるハルソールのトランペットを聞いていると、こちらも静かに自分自身のインナーワールドを見つめたくなります。2024年は来日公演もありました。このレーベルのファンとして嬉しいことです。
ZAZEN BOYS「Amayadori」
しかし新譜「らんど」は実に良かったです。ZAZENの新作をこうやって迎えることが出来てよかった。私個人、この数年でチルに対する知見がかなり溜まったので、向井、ZAZENが持つチル世界、音像を十二分に味わうことが出来ました。武道館ライヴの成功も良かったですね。
そんなわけで新譜の活動も良いですが、ZAZENのチル側面に今年はめっちゃ浸ったので、ライヴ音源の中でもとりわけチルいこの演奏を今年は聞きまくったということで。なんといってもこの演奏の主役は、カシオメンの悠久たるギターです。
おいし水(月刊湿地帯)「「ファミレスを享受せよ」BGM、他自作曲ピアノアレンジなど」
今年の下半期、おいし水(すい)氏の曲にめちゃくちゃハマりました。ここに挙げていない音源も聞きまくっている(skeb依頼曲など)。
例によってチル路線からのハマりなのですが、シンプルでスカスカな音の作りながら、物凄く哀感と諦念のある音世界に浸るのが……もう本当……涙が……(疲れてますか?)
サークル「月刊湿地帯」は、おいし水氏が主宰するホームページ&ゲーム制作サークルです。代表作は「ファミレスを享受せよ」。
↑ このグラフィックからもわかるチルさ。音も上記のように騒がしいところのない、沈み込むようで、微温的で、やさしげで、時に空元気、でもやっぱり月を見上げるように哀しい世界があります。やさしげなだけに、余計哀しいような。
Eric Clapton「Meanwhile」
私はここ数年、エリック・クラプトンの近作を良く聞きながら仕事をしているのです。クリーム時代のように轟音ブルースギターをカマすわけでも、デレク&ドミノス時代のように米南部音楽をレイドバックでバリバリ弾くわけでもない。さらに言えばソロキャリア初期〜中期のようにも弾いていない、なんとも落ち着くゆるい音の近作です。私はそれが結構好きなんですよ。
「スローハンドのギター神(ゴッド)クラプトンをチル目的で聞くなんて!」っていう批判もあるかもしれませんが、でも私個人はクラプトンの近作をチル目的で聞きながら、午後の昼下がりの仕事をしていると大変気分が良いわけでして…(無反省)。
かつての時代のようにロックに弾いてくれよ!っていう向きの方々もいらっしゃるのはわかるんですが、私としては近作のクラプトンで充分に呑気に気持ちよくなっちゃっていまして……(苦笑)。おれは本当にオルタナロックファンか?w
まぁ、最近のクラプトンのコロナワクチンやらの発言や、このアルバムの歌詞に問題がないとは言えませんが、そこは私としてはもうノーコメントで(妥協)、ともかくゆるいカントリーギター、素朴なメロディのアルバムで、私はクラプトンの最近の音は支持しています。
スピッツ「劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro」
北海道・帯広の旧双葉幼稚園舎で演奏された音源。セトリのマニアックさもさることながら、音響がなんとも私好みの音でした。一般的な「広がりのある音響」ではなく、中域〜ローミッドがゴリっと押し出された生々しい音像。あくまで私個人の思いですが、凄〜い好きな音でした。万人向けの音とは言えないのですが、この親密な音がとても良かった。どこまでも深みにいくような「ガーベラ」の演奏に鳥肌。
弌誠「モエチャッカファイア」
ゲーム「ゼンレスゾーンゼロ」のキャラのイメージ曲です。低音男性vo、特徴的なロシア風フレーズ。ビターに疾走、胡散臭いキャッチーという独特の曲調が今年めっちゃ癖になりました。この曲凄い好きです。古典的ロシアンフレージングを現代的にこう鳴らす、というのに音楽的にとても興味があります(世情とか戦いとかそういうのとは関係ないですから誤解禁止)。今年はライヴもあるそうですが、この曲をセルフバンドアレンジした狂気、暗さ、炸裂感も大変良いです。↓
MONO「OATH」
これがポスト・ロック、シューゲイザーですよ。シンフォニックに、ノイジィに、壮大に、シリアスに!オルタナですよ!こうでなくちゃ!「音に浸る」聞き方を身に着けた私は、前よりももっともっとMONOが好きになりました!
J Mascis「What Do We Do Now」
ダイナソーJr.のフロントマンのソロ作です。轟音ギターがどかん、というものではないですが、アコギ&バンドサウンドの素朴に良いユーモラスなインディーロックで、心が和みます。やはりダイナソーもマスシスソロも「曲の良さ」が良いですね。ところで今年のこのお気に入り音源感想、「チルい」か「素朴」かしか言ってないような……w
上海アリス幻樂団「七夕坂夢幻能 〜 Taboo Japan Disentanglement.」
なんとシリアスなアルバムか…。
8thアルバム「旧約酒場」はZUN氏自ら激しくダークなアルバムでお気に入り、と仰っていましたが、本作「七夕坂夢幻能」は「旧約酒場」とは違った風合いの、より差し迫ったシリアスな世界観を感じさせます。それでいながらZUN氏が見せる風景は、やはりどこまでも幻想の夢がある。風景を感じさせる。アルバムを通しで聞いて、いつも確実に暗さ、シリアスさがある。チルではない。和やかでもない。でも、この盤には確かにコンセプトアルバムとしての物語と世界がある。七夕の空に向けて、掴もうと手を伸ばす人間の限界性の切なさをーーー
Aiobahn feat.ヰ世界情緒「new world」
今年はAiobahn氏の音楽世界にもハマりました。というかこの項から以降は、どこか音楽性や情景が通底しているSF感とチル感のあるテクノになります。
Aiobahn氏は「INTERNET OVERDOSE」や「INTERNET YAMERO」のようなドギツい闇鍋キャッチー曲も作ることが出来ますが、活動の本筋はゼロ年代の深夜アニメやノベルゲームのエンディングテーマ的なチル感あるブレイクビーツ、ドラムンベースだと思っています。デジタル静謐感とでも申しましょうか。そして世界観にSF的なテイストがあります。そのSF世界観もまたゼロ年代セカイ系的でもあります。私、もともとはセカイ系を蛇蝎のごとく嫌っていたんですけど…でもAiobahn氏の世界は好きです。
そして、どうしようもなくノスタルジー音楽なんですよね。Aiobahn氏は。そこがもう、大好きです。(ゼロ年代がノスタルジー、っていうのに気づいて我に返ってちょっとした「えっ…」感もあったりしますが39歳残響さん)
90年代後期〜ゼロ年代初期プレイステーション1(PS1)あたりのゲーム音楽に影響を受けたと思しきアトモスフェリック系ブレイクビーツ、ドラムンベース
このMIXを聞いて頂きたいんですが、そういう「あの時代のプレステのSF的感じ」の雰囲気あるブレイクビーツやドラムンベース、ジャングルを良く聞いたこの一年でした。
自分の中では、Lo-fi hiphopやsynthwaveからの旅が、ついにここまで来たか〜、って感じです。ようはこれもノスタルジーとチルの一種です。耳と魂にセットしたLo-fiフィルターが、こういう音楽を再発見して「よし」と思うようになりました。
そうなってくると90年代〜ゼロ年代のテクノ音楽、ブレイクビーツ、ドラムンベース、ジャングルの再発掘がめっちゃ楽しくなってくるわけでしてw
また、こういう90年代後期のゲーム音楽に影響を受けた今の作曲家が、「そういう音」を今鳴らしているわけでして…(次項に続く)
コンピレーション「Jungle Fatigue」シリーズ
韓国のジャングル系ミュージシャン・Sawteeth氏が主宰しているこのコンピレーションシリーズアルバムを良く聞いています。アトモスフェリック系、つまりなんか雰囲気あるSF的な世界観、虚無感のある疾走テクノです。
この曲の世界の中で生きている人が幸せかどうかはわからないけれども、どこか見果てぬ夢であるとか、憧憬とか、ぽっかり穴が空いた宇宙であるとか、星空とか、透明な精神とかを、疾走テクノのビート乱打と虚空感あるシンセパッドに乗せて突き進んでいく、どこか寂しげなSFテクノな世界観。私はそういうのがとても好きになりました。イマジネーションが刺激される。その刺激され感はLo-fi hiphopの時も同じです。
「Space Jazz」mix
そしてここにたどり着くわけです。SF的世界観と、チル系現代ジャズをあわせた音世界のmix。「カウボーイ・ビバップ」的というか、どう考えてもnujabesの影響下なこういうmixを、YOUTUBEでよく聞いています。
前に「SF小説を読みたい」ということをこのブログで書きました。
modernclothes24music.hatenablog.com
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私のSFへの興味は、テクノロジーに対する興味と、「テックのあるふつうの日常」、そして「騒がしくない宇宙感」あたりがメインなようです。なんか、そういう世界観が好きなんですよ。
そしてそういうSF世界観に、チルいジャズがとても合う、というのは発見でした。やはりカウボーイビバップ、そしてnujabes偉大なり、なのでしょう。学生時代に視たサムライチャンプルーもとても良かったし…(去年、サムライチャンプルーのサントラカセット再発されましたね)。
なんというのでしょう、チルとかLo-fi、そしてアトモスフェリックなSF世界観…こういう喜びがある、っていうのが、今私はとても嬉しいわけです。こういう鉱脈があったのか!と。
それまで私は音楽は、美メロ+ノイズ+ポップに疾走+ハードなアレンジ、なのを好んできました。そこからLo-fi HiphopやVaporwaveにハマって以降、こういう静かで世界観があり、雰囲気のあるループ系の音楽、その音世界に「浸る」聞き方が大好きになりました。これは、私にとってはパンクやノイズに匹敵する革命でした。
それが音楽オタとしての退行かどうかは、まるで関心がなくて。なにせ、鉱脈を発見して、今まで見過ごしてきた音楽の良さを再発見するのが多すぎるのです。こういう音はずっと聞いてられるし、ずっと聞いてられる音(世界)の種類が多すぎるし。だから、あまりにも退屈していないのです。音楽に。
そんなわけで今年の「良く聞いていた音楽」でしたが、今年はこの路線をどんどん突き進めていくんでしょう。チル、アトモスフェリック系SFテクノ、Lo-fi……。
そう思っていたら、最近さらなる鉱脈を発見しました。スロウコア、あるいはサッドコア。
あんまり変拍子やポリリズムのない、極端に遅くしたラジオヘッド(このブログ限定のRadioheadのことです)のような音楽、みたいな感じでしょうか。こういうのも良い。音に浸れる。幻視できる世界観がある。
そんなわけで現在進行系でこのジャンルも追っています。また、当然ながらジャズのチル系も再発掘ですし、おいし水氏のピアノを聞いたらクラシックのピアノソナタも聞かないわけにはいかなくて。
そしてそんな路線な私なので、今日もブレイクコアのmixを聞くわけでした。今年もよろしくお願いします。