残響の足りない部屋

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SF小説を読みたい

SFサイエンス・フィクション小説を、いま読みたく思っています。

私はここ数年、物語、とくに小説というものに苦手意識を持っていました。主な理由は、文章を読むことで脳内でビジュアル展開をするのがめんどくさい、というものです。それから人間ドラマもめんどくさい。

でも「小説読めたら良いよなぁ」と思ってはいました。図書館に行っても「小説・文芸」の欄…いわゆるNDC(日本十進分類法)900番台の棚のほとんどをスルーするような状況に情けなさを覚えていました。書店でも状況は同じ。

そこでふと、「興味のある分野の小説から読む」ということを思いました。

 

ところで、私は最先端の科学技術(いわゆる「テック」)に詳しくはありませんが、浅薄で雑駁ながら興味は持ち続けています。自分自身で模型などを作っていることから、工作を通じて工業技術にも興味を広げていっているような感じ。漫画でも背景のメカを描くのが好きだし。

そういう興味に、東方ほのぼの百合ギャグ同人で一部に名高いサークル「Happy Flame Time」の春夏アキト氏の商業漫画作品「ザ・テクノロジー」は応えてくれました。

www.gentosha-comics.net

「ザ・テクノロジー」の中で「SFプロトタイピング」という概念を知りました。SFの科学技術における先進的想像力を、現実の技術開発の発想面に活かそう、ということです。SFはフィクションですが、実際のサイエンス(科学)、とりわけテック(科学技術)に強烈に依拠しています。つまりSFを読むことは、テックを参照し続けることですし、テックを含んだ科学全般が社会や個人をどういう風に変化させ、いずれ来たる世界を考察することでもある…と、私は思うようになりました。

そんなわけで、「科学技術と発想力」の文学「SF」を、科学/テックネタ&社会派コラムとして読めたら良いな、と考えました。そこで今参考にしているのが、書評ブログ「基本読書」の冬木糸一氏の本です。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

この本を書誌として読んでいます。
私はこのブックガイドにおいて、SFのジャンルを系統別に知っていくというアプローチはとっていません。
それよりむしろ、各SF小説作品が持つ、

・「作品の社会状況はいかなる問題があるのか」
・「作中問題をテックはどう解決していくのか」

という二点に注目して、どのSFを読んでいこうか、と思いを巡らせています。この「SF超入門」は、その問題&解決でカテゴリが組まれているので、「この問題に関してはこのSFを読め!」という読み方に適しているのです。

 

そういう風に科学ネタ&社会派コラムとしてSFを読もうとしている私なわけですが、その一方でSF小説は「文学」でありますから。科学やテックや社会に対して人間がどう生きていくか、という文学性も当然考えるべきテーマです。

そこのところで私はfeeさんの書評ブログ「止まり木に羽根を休めて」の書評を信頼しています。

toolatetoolate.dreamlog.jp

feeさんは書評において小説そのものの「面白さ」をきちんと評価されます。テック的描写が良くても、つまんない小説だったらきちんと「つまらない」と評価されます。そこがビシっとされてる。
そしてその小説が持つ文芸性…登場人物がどう生きるか、という作品の文学上のテーマ性をしっかり見据えていらっしゃいますから、小説としての「文学性」も知りたい私には、信頼できる書評です。例えば今年は伊藤計劃作品、とくに「ハーモニー」のテーマををしっかり読み込んでいらっしゃいました。

toolatetoolate.dreamlog.jp

そんなわけで、いろんなSF読みの方々の文章を参考に、私もSFを読もうとしています。前にfeeさんとブラッドベリを読んで読書会対談をさせてもらったとき、私は上記のような観点をしっかり設定できていなかった。

blog.livedoor.jp

blog.livedoor.jp

 

 

さて、どういうSF小説を読んでいくかですが、まず最初に伊藤瑞彦「赤いオーロラの街で」に興味があります。

www.hayakawa-online.co.jp

突如起こった太陽フレアの影響で、もし全世界的に停電が長期間続いてしまったら人間たちはどうするのか?という気象災害SFです。

それだけ書くと終末SF、ポスト・アポカリプスっぽいですが、たぶんそこまではいかないんじゃないかな?という予想です。古びた鉄筋コンクリート建築が廃墟になって雪の降るなか少女終末旅行だッ、っていうのとは違うと思う。

そこまで終末論の方向ではなく、電気媒体を失った人々が、脆弱な社会の中で、か細いアナクロ技術でどうにかしていく、っていう話だと思います。舞台が北海道というのもまた。電気がないと寒いでしょうに。いや、その発想自体が惰弱。薪を燃やすのだ…と、こう考えていくと、私がキャンプをしている意味に近づいていきます。私は緊急災害時のスキルを学ぶという意味でもキャンプをしていますから。

(2020年の個人思想)世界の終末妄想、自然世界、ヒトの群れ社会、キャンプ - 残響の足りない部屋

 

もしポスト・アポカリプスの中での静謐な人間の営みを知りたかったら、やはりネヴィル・シュート「渚にてになるのでしょう。feeさんからも以前お勧めを頂きました。

www.webmysteries.jp

なんで私はポスト・アポカリプスだとかコージー・カタストロフィだとかの静謐な終末世界観がこんなに好きなのか。そうだよ我が人生最高の漫画作品「ヨコハマ買い出し紀行」だって完全にSFじゃないですか。

 

web漫画ですが、ドロニー氏による漫画作品「明け空星間旅行」シリーズが好きです。

www.pixiv.net

シリーズ作品「かき氷で星間旅行」はその名の通り、かき氷を食べ(だけ)に冥王星まで宇宙船に乗ってGO!な作品です。百合もあるよ。ゴリッゴリに練られた宇宙開発技術ネタの乱舞につく連打。枠外の解説文がめっちゃ多くて素敵です。こういうテック与太話テキストをとにかく読みたいんだッ!

 

あと円城塔も。円城塔だけはSF云々の前からちょくちょくチェックはしていたのです。というか、与太話の文脈で…。(これは円城氏に対して失礼に当たらないはず)
もうこうなったら「Self-Reference Engine」から最初から読み直せば楽しいぞ、っと。SF文脈をほとんど知らないから、これまで円城塔は思考実験的な読み物として読んでいましたが、このSF小説という文脈(上級者向け)だと、はてどれだけの科学・テックネタが読めるか、とても楽しみです。

もちろん円城塔ときたら伊藤計劃で、feeさんの「ハーモニー」評を頼りに、そこから「虐殺器官」も。それから森博嗣を読んで…。エッセイはほぼ全部読んでいますが、小説は途中からあまり…「ヴォイド・シェイパ」シリーズは楽しく読みましたが、近未来SFシリーズの「Wシリーズ」は全然なので。

あとは古典・海外SFもいきたいですし、SF漫画もまだまだ読み解いていけます。大清水さちツインシグナル」だってSF文脈から読み解けることバリバリですし、ブラッドベリの再読も。じゃあ映画は?うぉう、デカいのきましたね。アニメ、ガンダム。なるほどおれはガンプラを作り続けて30年なのだが? スペースオペラサイバーパンク? なんということだ! 過剰摂取禁止(オーバードーズ・イズ・オーバー)!

とまぁ、そんな感じで今、私はSF小説に興味を持っています。ここから小説に対しての苦手意識が上方修正されていけばよいですね。