残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

最近わたしの音の暮らしはこう 令和5年の梅雨時期

すごい!このお気に入り(fav)音源記録コーナー、書くのをサボっていたらあっという間に2ヶ月経ってしまった!

※残響さんはその間ず〜っと新作まんがを描いていました。

4月に書いた前回、(1)と続き物で書いたくせに、それから全然(2)が書けなかったでやんの。

最近わたしの音の暮らしはこう 2023年春先(1) - 残響の足りない部屋

 

その時に書いた次回予告は、

次回(2)ではトウキョウ・シャンディ・ランデヴとナートゥ・ナートゥとワタシダケユウレイ(ぼざろ)とヰ世界情緒の「鳥の詩」カバーとКИНОと신촌(新村)Bluesとtofubeats「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」について書きます。

って具合でした。今もこれらの音源について書く気はあるのです。が、結局4月から今に至るまでの2ヶ月の間で、どんどんお気に入り音源が増えていってですね〜。

もうしょうがないので、思いつくままに、音楽のある日常を文章にしてみます。

…ってあれ? お気に入り音源がいっぱいあるッ!? それって…「Happy」なことじゃないですかッ!? あー、これはこれは。シャレオツイタリック体での強調はさておき、「音楽に飽きていない」という点でいえば、こりゃありがたい話ですね。

 

・「音楽に飽きたのかい?」というの懸念にまつわる過去の話

ジャンル時流に乗るのを切っちまうのと、これまで伸びまくったジャンル世界樹が今ますます爆発する34歳の話 - 残響の足りない部屋

中年音楽マニアとLo-Fi HipHop - 残響の足りない部屋

 

スピッツ「ひみつスタジオ」

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そんなわけでスピッツの新譜アルバムですが、もう最近はスピッツばかり聞いています。

もともと残響さんが一番好きなロックバンドはスピッツなのです。上海アリス幻樂団は? ZUN氏は「一番好きな作曲家」なので…。えっ、ZUN氏1位、草野マサムネ2位? 自分で書いていてなんですが、ちょっとこのランキング贅沢すぎない?

ともあれ、「自分が愛するバンドの新譜がすてき」という状況は、音楽ファンにとってかけがえのない「幸福」だと断言します。さらに、そのバンドが長年キャリアを重ねてきて、未だに創作意欲が衰えず、バンド内の結束固く、健全な風が吹いている…という状況にもなっていると、もう本当素晴らしい。ありがたい。

まぁそれは長年のスピッツファンとしての思いですし、ミュージシャンがキャリアを積むということがいかに難しいか、という話でもあります。

しかし……仮にそういうレジェンド論、キャリア論を全部うっちゃっても、「今回のアルバムも曲がめっちゃ良いんじゃぁ」と世の音楽ファンに叫んじゃいます。

無論のことスピッツのアルバムに駄作は一枚もないんですが(信者乙)、とりわけ2016年作・15thアルバム「醒めない」、2019年作・16thアルバム「見っけ」と続けて「各曲が良すぎるんじゃぁ!」という傑作アルバム状況が続いているのです。
しかも「醒めない」も「見っけ」も、どちらがより傑作か、ではなく、「どちらにも固有の幻想(ファンタジー)の世界がある」という「どちらも良い味」状態なのです。

 

※あ、14th「小さな生き物」ですが、これも最近聞き直して「地味に染みる」と再評価していますわたくし。

 

さて今作17thアルバム。まず冒頭で動画貼った「ときめきpart1」からしてすでに曲が良い。MVだって良い。このノスタルジア! 

この音楽性を安易に「枯れた」と表現したくない。それ言うんだったらスピッツは相当昔から枯れている音楽性です!

マサムネのメロディが良いのは当然ですが、バンドメンバーが曲を相当練っているのもよく分かります。テツヤ、田村、崎ちゃん、バンドメンバーがマサムネの曲を活かすべく、様々なアイディアを持ち込んで曲を練る。練って練って、スピッツというバンドは「幻想」を形にする。

先に、「スピッツは昔から枯れている」と言いましたが、それは幻想性が退屈になっていっている、という話ではもちろんありません。そもそものスピッツの世界観はノスタルジックで枯れて達観したところが結構ある、という「世界観の傾向」の話です。

そういう世界観を演っている以上、印象として「枯れている」は当然感じ取れるのですが、末期スピッツ病患者は「その枯れにどういう幻想を見出すのかに用がある」という欲望で動いています。どうしようもないな。

だからシングル「大好物」が、例えば過去の名曲「ロビンソン」に比べて枯れてない?と言われても、「でもロビンソンって枯れた世界観の曲でしょ?」と逆正論カウンターパンチをしたら、相手しばらく黙っちゃいますよw もちろん論点ズラシの反論ですけどこれ。でもスピッツが好きっていうのは、ぜったい彼らのノスタルジック世界観や、オールドロック趣味という「枯れ」さを是とするものだと私は思っています。だから、スピッツの曲が「瑞々しい」と評価されるのは喜ばしいことですが、その一方で彼らの「枯れ」 の中に「幻想」を見出すのも、間違いではないのです。

 

スピッツは! 世界のテッペンを獲りにいこうとするバンドではないだろ! ヒバリのこころッ!

 

そんな永遠のオルタナティヴ精神、ノスタルジアに美を、幻想を見出すバンドの最新作の曲が良い!(話が戻る)

バンドメンバー4人が代わる代わるヴォーカルをとる「オバケのロックバンド」、もうこういうのですら「尊い」と感じてしまいます。我が愛する人間椅子も妖怪みてぇな奴らのバンドですが、 スピッツだってオバケです。「音楽のある日常を愛するバンドマン」のスピッツ4人が尊いのはもちろんですが、そういう音楽日常の功夫クンフー)の果てに彼ら4人はロックオバケになってしまった、というのもまた素晴らしいではないですか。

「未来未来」に民謡コーラスを導入し、田村のベースがダンサブルに動くリズムセクションのグルーヴィーさ。それが飛び道具ではなく曲として練り上げているのですからたまらない。

そしてアルバムの終わりには「讃歌」。この荘厳さと誇り高き意志、あまねく小さな生命の肯定といったらどうですか。

それから、既発表のシングル曲をアルバムで「通して」聞くと、これが化けるのですね。オバケ! もちろん「大好物」も「紫の夜を越えて」も「美しい鰭」も事前に聴き込んでいましたが、アルバムで聞くとさらに違った側面が出てきて、聴き込んだ曲なのにさらに魅了されます。あたかもクラシック音楽で、よく知られた曲でも違う指揮者が演奏すると「この曲にこんな側面があったんだ」って新鮮な感じで聞こえるあれです。オバケ!

i-O(修理のうた)の「メンテナンス」という精神性に対する熱い個人的共感や、「跳べ」の勢いの良いバンドサウンド、とかまだまだ語りたいことはありますが、もうスピッツ新譜だけで2700字も使ってるじゃねぇか。

そんなわけでとりあえず切りますが、最後に。私残響はこのアルバムをカセットテープで予約して買いました。やはりカセットは良いですね。音楽体験として、親密さがあります。好きな音、好きな形のモノで音楽を聞く。その音楽アルバムがとても良い曲で、バンドも健全に活動を続けている。そしてロックバンド・スピッツはアルバムを引っさげてツアーに出る!全国あちこちすごい数の! シマーネ農業王国には来ないけど! まぁこれはしょうがないよ!自分だって半ば納得しちゃってるのが悲しいよ!

・過去のスピッツに関する記事

スピッツ田村のベースに耳を空けられてから - 残響の足りない部屋

●MAISONdes(feet.花譜、ツミキ)「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」

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驚いちゃいました。花譜のヴォーカリストとしての表現力はこんな方向もいけるんだ!っていうので。

もともと私は花譜を、この独特の「弱い」声質と「張り詰めた」表現でオルタナ精神と中2世界観をぶちかます少女歌手だと思っていました。カンザキイオリ氏の曲、神椿スタジオのプロデュースもあって、「そういう方向」の歌手なのだと。

ところが、このシティ・ポップというか半ばシティ・ファンク的な曲でここまでの自由自在、天衣無縫な表現力を聞かせてくれるとは。ラップパートでリズムを自由に解釈したフロウの心地よさといったら。それから「ワオ!」とか「いぇす!」とか声を入れていますが、そのジャストタイミンな声の入れ方でもう耳が心地よい。

・過去の花譜に関しての記事

音楽の旅の路上にて ーー最近聞いている音楽、カナリヤさんへのお返事その2 - 残響の足りない部屋

 

●令和の音楽のレベルの話

まーしかし、レベルが高いです、今の邦楽は。

邦ロックの勢いがー、シーンの勢いがー、とかいう話もまぁありますが。洋楽も含め、ロックは別に死んじゃいないでしょうが。

しかし「いちジャンルに収まったかな」という感じは受けます。伝統芸能とまでは言わないけど、少しずつそっちに近づいている節もある。

私個人の意見?
私としては別にそれで良いのでは?と思います。
私は、ロック=「電気ギターを中心とした生演奏バンド・アンサンブル・サウンド」とロックを定義していますが(ようは複数の人間が楽器持って集まって音を出す音楽)、別にそういう音楽ジャンルは死んでないと思います。

ロックが音楽シーンの覇権を取る。さもなくばロックの死だ、っていう言説もあるにはあるんでしょうが、冷静に見たらこれってちょっと妄想が過ぎね?って思います。

重要なのは「生演奏バンドアンサンブル」に可能性を見出す人たちがいて、歪んだギターの音色が心象風景を描き出す、ってことなのです。私にとっては。そういう意味ではロックは死んでいない。

 

この「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」にしても、YOASOBI「アイドル」にしても、現代HIPHOPからの影響は強く、ジャンルの越境&混合はこの令和、いや増しているばかりか、もはや当然というレベルです。
当然、ロック=生演奏アンサンブル、の人たちも、いろいろな音楽を越境し、混合させています。
その一方で「ジャンルに殉じる」バンドもいます。人間椅子とか。

HIPHOPだから良いとかロックだから良いとか、そういうレベルの話ではなく。
大事にすべきは自由さ…「好きにやる」。その勢い。
花譜のこのヴォーカルの勢いも、そういう令和の音楽混合状況を自然に前提としてラップしているわけですし、人間椅子も古いロックを愛してやまなくて、まだまだ可能性があると思っているからこそ素晴らしいわけで。

だから今の令和の音楽シーン、そりゃ全部が全部ではないですが、まず邦楽ポップスシーンに限っても、レベルは日に日に高くなっていってると思います。総じてのレベルだけ単純に比較しても、10年前、いや5,6年前と比較しても確かな違いがある。

その中で気に入らない音やメロディやアレンジとかありますけどね。でも私としちゃ基本的にレベルが高いので、not for meな楽曲に出くわしても「そりゃそうか」って構えていられます。

少なくとも退屈はしていない。これは、今も音楽リスナーでいる上で、とても喜ばしい状況です。

きさま、「推し」がいるからそういう安穏なこと言えてるんだろ? っていう批判もありそうだなぁ。ルサンチマ〜ン! 

だったら推しを探しなさい、見つけなさい。
スピッツはどうだい?(露骨な布教勧誘) 

無難なポップスバンドだと思ってる? ふふふ、ふっふっふ…このバンドはね、30年以上も、さまざまな「幻想」の世界を各曲で展開し続けてきたバンドなんですぜ…しかも幻想のバリエーションが多すぎてな…。ヒット曲以外にも名曲がヤバいくらい多くてな…とりあえず「魚」とか聞きません?(のっけからマニアックなB面曲を出すな、スピッツファンはクソ名曲だと周知でもッ)