残響の足りない部屋

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最近わたしの音の暮らしはこう 2023年春先(1)

今年(2023年)に入ってからのお気に入り音源紹介コーナーです。このブログのメインコンテンツの片割れです。メイン!コンテンツ !ですってよ。照れちゃうぜ。

それじゃさっそくいきましょう。今回、Kawaii音源が多いかもです。

 

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2022年のわたしの音の暮らしはこう M3秋、Lo-Fi、ノスタルジア - 残響の足りない部屋

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最近わたしの音の暮らしはこう 2022年10月、秋1 - 残響の足りない部屋

2022年ベスト

2022年に良く聞いていた音楽 - 残響の足りない部屋

 

ずっと真夜中でいいのに。「綺羅キラー(feat. Mori Calliope)」

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お気に入りな楽曲です。この曲で一気にずとまよに対する興味が湧いたといえるかも。ACAね氏の気だるい歌とMori Calliope氏の高速ラップが、お互いを引き立てあっています。m.o.v.e以来おれはこういうのに弱い。

ずとまよのトラック(楽曲アレンジ)は情報量が多いですね。この曲だけではないですが、AメロBメロみたいに構造を分けて書き出していくと、どこのプログレ組曲か?と思うような構成です。しかもこの曲、前半部ラストのメロディを、贅沢にも1回しか使っていませんし。現代R&BもHipHopもポップスもVaporWaveも全て雑食的に咀嚼してずとまよサウンドとして表現するこのACAね氏の才能は凄いですね。まさしく次世代の邦楽を背負って立つシンガーソングライターです。

それからやはりMori Calliope氏のラップが凄い。この曲においてはメインvoのACAね氏の歌よりCalliope氏のラップの方がお気に入りだったりします。ACAね氏を「喰ってる」とまでは申しませんが、なにせ聞いていて気持ちが良いフロウなのです。速射砲のように畳み掛けながらも、けして圧迫感を覚えさせないCalliope氏のラップ。これは本気でVの方々の楽曲を聞かねばならない、と思わされます。令和の今になっても、Vの方面に疎い私なのですが、もうそんなことは言っていられないなぁ、と。

HoneyWorks「可愛くてごめんfeat.ちゅーたん」

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令和の大塚愛「さくらんぼ」かっ!?と思いましたが、比較してよく聞いてみるとけっこう違ったでござる。「さくらんぼ」はAメロで結構スカコアっぽいアレンジでした。平成後期の名曲「さくらんぼ」のこのアレンジ、当時風といえばそうかもです。

しかし令和アンセムなこの曲「可愛くてごめん」、なにせこのメインフレーズ(イントロやサビのフレーズ)を思いつき、それを「可愛くてごめん」と歌詞の譜割りをした時点ですべての勝利が確定した類の楽曲です。

私はこのブログでそういうのを「コンセプトがしっかりしていればあとはそれで殴ればよかろうなのだ式」と呼んでいますが、まさにそんな感じです。ラストにこのフレーズを転調してダメ押す所なんか「あざとさの化身」ですよね。大正義とはこのことか。

ともかく「令和」って感じの曲です。キラキラなサウンドアレンジも、コンセプトがこういう曲ですからいたって正解です。そしてそれらはすべてメインフレーズ「Chu!可愛くてごめん」の強度あってのことです。最高のリフにしてメロディです。こんな分析ちっくな感想、この曲にちっとも似つかわしくないしニーズもないでしょうが。そんな人間なのさおれは。

パソコン音楽クラブ「See-Voice」

www.youtube.com

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令和といえば、しばしば「令和に足りない音」として評されるこのアルバムですが。

去年からこのブログで楽曲をちょこっと紹介してきましたが、私個人的には、パソコン音楽クラブのこの3rdアルバムを半年くらいかけてようやっと消化した感があります。

決して押し付けがましい音楽ではないのです。でも「生活の隣にそっと寄り添う音」と安易に表現するには、かなり夢幻性の強い音です。情景喚起力が強い。

この音はかーなーり現実離れをしている。令和という時代は「もうリアルじゃなきゃダメなんだよ」という諦念が通奏低音になってるような神経時代ですが。しかしこのアルバムでのパソコン音楽クラブは、そういう令和リアリティよりも、自分自身のインナーワールドトリップをしている。

決して押し付けがましい音楽でないのです。「こういう情景があります」とこちらにあっさり提示してきます。インナーワールドトリップにしっかり浸り切って、私自身の心がこのアルバムが提示する情景をちゃんと「受け取った」と思い切るまでに、何度も何度も聞きました。それが半年という期間でしたね。

そういえば、このアルバム、とくに「登場人物」が居なかったな…と、私のインナーワールドトリップを思い返してみて、改めて気づきました。ずっと「情景」ばかりを見ていたような気がする。人がいても、ぽつんぽつんと居るとか。あるいはむしろ、もう居ない人の残留思念のようなものを強く感じていたかも。うん、その方が強いですね。

アルバム特設サイトも素敵なので見ましょう。

see-voice.pasoconongaku.club

Aiobahn feat. KOTOKO「INTERNET YAMERO」

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いやぁ、やってますね!(何を?)
病んだ令和の育成ゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」の楽曲です。前作「INTERNET OVERDOSE」があやうくこのブログの年間ベスト曲になりかけた昨年でしたが、今年MVが発表されたこの楽曲、「パワーアップ」と言うべきでしょう。そんな感じで我々のもとに襲来してまいりました。

ハードコア感とシンセウェイヴ感をさらに増量。イントロのトランシーで東方っぽいフレーズの威力も増量!そしてサビのメロディの哀愁疾走も良いです。随所に設置されたネタサウンドも強烈。滅茶苦茶な譜割りも健在。歌詞の病みも「大丈夫か?」と思う程です。まさしく全面的に「パワーアップ」です。

うれしいのは、前作にもあった哀愁美メロ疾走が今回も遺憾なく発揮されているところですね。そこのパワーが下がっていないのでとても安心。前作もあって今作もある。それぞれ2曲を味わい分け、「OVERDOSE」と「YAMERO」を反復することがやめられない!インターネットはYAMERUべきですが、音楽はやめない!オーバードーズ!(最後にもまた書きますが、この4、5月新譜ラッシュでして…)

もちうつね「おくすり飲んで寝よう」

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この曲が私が一番最近に聞いた曲なのですが、いやぁ令和は病みのレパートリーが多いなぁ(良いのか?)

もはやシューゲイザー的と言えなくもないようなアレンジというか音響。ふわっふわなkawaii音響に、愛嬌のあるメロディが乗ります。ボカロ曲ですが、物凄いウィスパーボイス調教がされています。多分シューゲイザー感を感じ取ってしまうのはこのあたりかな。作者「もちうつね」氏はこれが作曲2作目みたいなのですが、センスが凄い&末恐ろしい。

で、楽曲コンセプトは、おくすりというか、メンタルがやられてしまった人の人生来し方というか。基本的に「病み」のものですが、現在進行系で恨みを爆発させているのではなく、疲れきったからもう「おくすり飲んで寝よう」、というもの。むしろ「諦観」の趣きすらあります。そのコンセプトを踏まえてこの曲を聞くと、トゲトゲしい音を排しまくったミックスや、疲弊しきったかのようなウィスパーボイスや、夢みたいにふわっふわした音響(リバーブ)や。それら全てに確実に意味があることに気づきます。

もちろん、聞いてイヤな気持ちになる曲ではないです。イヤな気持ちだったらお気に入り音源になりませんもの。むしろ何回も聞いて非常にクセになる。ただ、楽曲のコンセプトがコンセプトなだけに、聞いて一抹の「ダイジョブかコレ」感もありますね。そこも含めてのkawaiiブラックユーモアだったりします。

King Gizzard and the Lizard Wizard 

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オーストラリアのサイケデリック・ロックバンド。一時期はツインドラムだったりしたこともあった多人数バンドで、さらに多作で知られます。なんだ去年は1年にアルバム4枚って。

何よりも「ライヴが魅力」なバンドで、基本的に「リフ一発でビヤーッといっちまう(©村上春樹)」系のバンドです。しかもリフ一発で延々と爆走、さらにメドレー形式で10分20分とノンストップで演りまくるものですから、リスナーは延々と「リフの快楽(暴力)」に付き合うことになります。あまりにも延々とリフを演りまくるものですから、途中からリズム隊疲れてないかダイジョブか、と心配になったりしますが、この人達いつもライヴしまくってるので大丈夫なのでしょう多分。

あと、改造ギターを用いて特殊なピーピー音を鳴らしたり、微分音を用いて非西欧音楽的なフレーズ(アラブ系に似ている)をかましてくるのも素敵です。アルバムはアルバムで、多作ですが金太郎飴にならず、それぞれのアルバムでリフを基本としてですが、いろんな曲調や音色を試しています。とにかく「ロックバンドの愉悦」の中で「リフの愉悦」にフォーカス当てがちな人だったら、とくに好きになるバンドだと思います。あと、こういうイキの良い元気なバンドが居てくれるという事実そのものが単純に嬉しいですね、ロック好きとしては。

 

Gondwana Records レーベル諸作

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時に宇宙感ある壮大で疾走感ある音像のジャズを演ったり、時に自然感あるサウンドスケープを展開したり、時にメロディアスでセンチメンタルな「良い曲」を演ったり。

音とメロディが磨かれているなぁ、丁寧で良い音源を次々作っているなぁ、ととても好印象なイギリスのインディ・ジャズ・レーベル「Gondwana Records」です。

このレーベルの作品は、派手にカマすっていう感じの曲調ではなく、むしろ心の中のイマジネーションを見つめる、という知的なタッチ、リリシズム(詩情)のある作品ばかりで、そこが私の趣味に合います。あ、いや、派手にカマすのも好きですけれどもね。

そのあたりの詩情とクールネス、そして情景をふっと空想してしまうようなサウンドスケープ、といったところが気に入っていますが、しかしジャズバンドとして「弱々しい、足腰が弱い」のではないのも良いです。あまり「黒さ」はないリズム感ですが、でもしっかり疾走する時は疾走しますし、何より聞いていて全然退屈しないです。また、シリアス一辺倒でもないので、聞き疲れもしません。なので、どのレーベルカタログ(作品)も期待出来る、次々聞いてしまう、という素敵さですね。

 

 

長くなったのでいったん切ります。次回(2)ではトウキョウ・シャンディ・ランデヴとナートゥ・ナートゥとワタシダケユウレイ(ぼざろ)とヰ世界情緒の「鳥の詩」カバーとКИНОと신촌(新村)Bluesとtofubeats「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」について書きます。

 

それからこの4〜5月で、私のフェイバリットバンドの新譜が惑星直列ラッシュなんですよね。

・ヨルシカ 音楽画集「幻燈」

UNISON SQUARE GARDEN「Ninth Peel」

・音系・メディアミックス同人即売会「M3」2023-春 サークル諸作

スピッツ「ひみつスタジオ」

・パソコン音楽クラブ「FINE LINE」

お、多いッ、多いッ。嬉しい悲鳴とはこのことですが、オーバードーズであるのも否定は出来ない。どの音楽家・バンドも、口当たりポップなのに、真剣に掘ればどこまでも世界観が深く広がっていくハードパンチ・ボディブロー感ある作家性なんだから〜。

(2023年春先「2」につづく…)