残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

修道院は眠らない

回廊の中に居る。我々は今もなお歩き続けている。足取りはおぼつかなくて、弱弱しい物かもしれないが、歩むのを止めてはいない。ただうずくまって、何もしていないように見えるかもしれないけれど。
遠くを見ても何も見えない。闇が広がるばかりで、吸い込まれそうだ。後ろを振り返っても、同じような闇か、得体の知れない混沌だ。それを長く見続けることはできない。どうしてこのようなことになったのか。始まりにある物は何だったか。怒りか、後悔か、憧れか、あるいは苦悩か、嘆きか? いや、きっと、それら全部を合わせた物だ。合わせたら、このような得体の知れない物ができた。
祈り続ける。救いがあるその日まで。しかしそれにすがろうとは思わない。我々は歩き続ける。すがるのは、止まることだ。だが、ときに、燭台の光すら感じなくなる。神にすがることさえできなくなる。光が遠くなる。何だか、どこか遠くの地で揺れている花のような、たたずんでいる馬のような……。それでも、留まってはいけない。我々は、留まってはいけない。大気の中に死が充満するこの回廊の中で歩き続ける。止まってしまったら、肺の中からじっくりと死に侵食される。
我々は信じる。福音を。救いが来る日はきっと来る。それを信じる。ただひたすらそれを信じ、強くあろうとする。それは停滞に見えるかもしれない。しかし、我々は我々なりに歩いている。静かに。風の音のように。少なくとも、我々はそう信じている。そう信じるのが、仮に、我々だけだとしても……。

(続く)