残響の足りない部屋

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書店・句読点「Only Reading Club(純粋読書会)」に参加、東南アジア諸語の話

私はシマーネ農業王国という地に住んでいます。近隣の大きな町は出雲市なのですが、出雲市駅前の商店街に「句読点」という本屋さんがあります。

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人文系の新刊と古本を扱う、とても雰囲気の良い書店です。私は、句読点がこの商店街に店舗を構えたはじめの頃から通うようになりました。もう数年になりますね。

人文学…つまり文学、歴史、哲学、文化人類学、美術、暮らし、などなど…といった良書を取り扱っています。ちなみに、実は私が描いた漫画同人誌もお店のZINEコーナーに置かせて頂いています。いつも有難うございます。

redselrla.com

句読点は、店長さんと副店長さんの二人で経営されている個人商店(独立系書店)です。お二人は、「生活者」としての視点を常に忘れない読書家です。書店経営だけでなく、お店で積極的に様々なイベントを開催されています。

 

本日3/17(日)、句読点で、「Only Reading Club(純粋読書会)」が開催され、私も参加しました。ORCとは、下記のような内容です。

参加者の皆様は、おのおの本を持ち寄って、黙々と1時間30分読書。終わったら、本・読書生活をテーマにした座談会が開催されます。希望者は、副店長さんが拵える軽食を食べることが出来ます。(句読点は奥のスペースで小さなカフェもやっています)

 

私は本日、趣味である外国語関連の本を持っていきました。フィリピノの教科書、マレーシア語の教科書、インドネシア語の教科書。それから東南アジア九か国の単語帳、そして家族がどっかのスーパーで買ってきたマレーシア産のクッキーの箱です。最後本じゃないやん。否っ、この箱には英語・マレーシア語(アルファベット表記&アラビア文字表記)、フランス語が併記されている、「生きた言葉」そのものです。まぁでもこれはあくまで資料であって、基本はやっぱり本です。

今回私は、ちょっと私的に学習の進みが遅いフィリピノ語をなんとかすべく、近隣・東南アジアの国々の言葉を学んでみよう、という趣旨で、マレーシア語&インドネシア語の教科書を持っていきました。いわば「ことばの東南アジア旅行」をしてみよう、という話です。

 

どうにもフィリピノ語、文法がめっちゃ難しいのですのよね…。語の活用が千変万化って感じ。語尾が変化するだけならまだしも、語頭も変化するし、語の中間部に入り込むっていうのも当たり前のようにあるし。人称も代名詞も、距離感と「私が話題の中のメンバーか否か」によって変わってくるし。語順もVSO(動詞→主語→目的語)という、ヨーロッパ系言語からしたら「What's!?」ってなものですし。このあたり、「やや能格構造に似ている」と表現されているのを読んで「ああなるほどなぁ、上手いこと言う!」と思いましたが、これ「グルジア語とかの、難しいことで知られる言語構造に似ている」って言ってるのとほぼ変わりはありませんからねギャフン。

そんなわけで、どうにも感覚が掴めないフィリピノ語(タガログ語)でして、ヒントを近隣諸国の言葉、マレーシア語やインドネシア語に求めて、本日ORCに臨んだわけです。

 

で、結局ヒントは得られたのか?
ええとまず、マレーシア語とインドネシア語は、かなり近い言葉です。少なくとも私はそのように感じました。語彙はもちろんところどころ異なりますが、語彙や表現で「同じの」を使える所は多い。

今回、どちらかと言うとマレーシア語を中心に勉強したので、そこからインドネシア語を眺めると、単語を重ねたりして表現するところとか、単語の中にいろんな言葉が「混じって」くるところとか、確かに島(地理)がフィリピンに近いだけあって、インドネシア語の方がほんの少し…ほんの少しだけフィリピノ語に参考にできるとこがあるのかなぁ?って思うくらいでした。

でも、文法構造的に言ったら、マレー語(マレーシア語、インドネシア語)とフィリピノ語(タガログ語)は全然違う! それが今回の「ことばの東南アジア旅行」で確実に知れたことです。文法学習においてのヒントはあんまり得られない。今回マレー語に親しむことは出来たのですが、フィリピノ語は依然として難しい。語順構造や、語の活用の仕方が全然違う以上、多少共通している語彙があったとしても、だからといって楽にはならないなぁ、と。

つまりフィリピノ語で私が難しいと感じたのは、日本語でいうところの「てにをは」なんです。語を繋いだり、主語述語を表現&定義したりする、あのおなじみの「てにをは」。マレー語の方にヒントがあるか、という私の目論見はここで外れたわけです。マレー語の方は、フィリピノ語的な千変万化の「てにをは」はない(もちろんマレー語独自の「てにをは」はあるのだ、というのは当然ですが、それでもフィリピノ語的ではない、ということです)。

結局、基本的なフィリピノ語の語彙をまず大量に頭にぶちこんで暗記してから、「てにをは」に挑めってな話ですな〜。これは日本語学習においても全く同じで、海外の日本語学習者に「最初に「てにをは」を学びなさい」って学習法を教えるのがナンセンスなのは誰だってわかるじゃないですか。でも今回、私はその愚をおかしてしまいました。賢しらなショートカットなんてない、って話ですね〜。頑張りましょう。

それより今回よかったのは、マレーシア語、インドネシア語を楽しく学べたことですね。語を後ろから形容していく表現方法のような文法の個性や、音の魅力といったマレー語独自の面白さ。そしてマレーシアやインドネシアにある仏教やイスラームやインドの影響など、混合海洋国家としてのマレーシアやインドネシアを知り、少しは東南アジア諸国についての知識も増えました。よかったですね。

 

 

……っと、ORCの話からだいぶ逸れました。失礼しました。そんな風にORCの1時間30分を、東南アジアのことばの学習で読書をし、終わった後の座談会で皆さんの読書トークに参加させて頂きました。

文化人類学、松村圭一郎、平野啓一郎、森田真生(数学者)、原田マハ、シベリア抑留の体験記、須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」……様々に話題が出て、話題が関連しあって。まるで星座を編むような「読書を語る」楽しみを味わうことが出来ました。

また今回参加者の中に、「今まで読書が苦手だったけれど、これからもっと読書をしていきたい」と語る方がいらっしゃいました。
本当になんと素晴らしいことだろう、と私は思いました。その方に対して私は例によって口下手でうまく語れなかったのですが、せめて「これから楽しいことがいっぱいありますよ!」って事はもっと伝えてもよかった…といま反省しています。本の楽しみ方も、本の内容も、著者の人たちも…書物の世界というものは本当に膨大なのですから。自由に楽しんでいってほしい。そう願うばかりですし、そのことをもっと熱く語りたかった。

 

でも、改めて思います。句読点さんはお店を営むことで、こういう「本を読みたい!」という方の熱い思いに応えているわけです。句読点に来て、新しい本を知ることが出来た。だから私達は通うし、書店を信頼する。

句読点のお二人が持つ、書物、そして「知」に対する尊敬と信頼……それを少しでも世界に広げていきたい。押し付けることなく……、という意志を、私は店長さん、副店長さんから感じています。

これからも句読点のお二人には、頑張っていってほしいと思います。本日のORC、店長さん、副店長さん、参加者の皆様、有難うございました。また参加したく思います。よろしくお願いします。