残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

作家別・残響さんが好きな漫画家・これまで読んできた漫画家紹介(1、殿堂入り編)

前書き

「そういえば自分、漫画(漫画家)について、総論的に語ってなかったな……」と思いました。それは「オタクとしての恥だ」と痛感した31歳の春。

この度から、何記事かに分けて、「作家別」で、漫画家紹介をやってみることにします。

第一回の、各作家は順不同です。ですが、どの漫画家も、自分にエラい影響を及ぼした漫画家です。

 

古賀亮一

ちょっとそこの股間から生えたポワワ銃に白い天使(ブリーフ)をかぶせたまえ! 奴がブサイクスレイヤー(布団叩き)を持ってやってくる! 何?君は俺のお嫁さんになることが基本的人権を尊重することだっつーのっ!

適当に言葉を並べましたが、だいたいこんな感じの、あまりにも独自の言語感覚&テンション。自分がブログやえろすけ(エロゲー批評空間)で、妙な英語や下ネタ交じりの文体になるのはこのひとの影響。

主に成年漫画において「ゲノム」という下ネタギャグ漫画を。電撃で「ニニンがシノブ伝」「電撃テンジカーズ」などの下ネタギャグ漫画を執筆。

お勧めは「まずゲノムとシノブ伝から」というのがファンの共通見解ですし、自分もそう。というか古賀センセは芸風というものが完全に確立していて、とにかく「古賀ワードと緑のハンサム(黄色い美少年)のやらかすこと」を楽しむのがダゴイミです。


八房龍之助

現在はスーパーロボット大戦のコミカライズをやってますが、とにかくこのひとの

「J&Jシリーズ」
宵闇眩燈草紙
というオリジナル二作(相互に関連しあっている)はあまりにもツボすぎました。ケレン味のありまくる言葉、アクション。人生に対する皮肉。グロ描写におけるユーモアと、端正さ(これは矛盾でなく)。
「ヒトがヒトを区別するのに、「自分」と「他人」以外に何か必要なものかね?」

 

夜麻みゆき

長きにわたる闘病生活のはてに、現在少しずつ復活をとげていますが、ともかくも全盛期の彼女……黄金時代のガンガンにおいて、確固たるファンタジー作風で我々を幻想の魅了に叩き込んだひとです。

オッツ・キィム三部作と呼ばれる、「レヴァリアース」「幻想大陸」「刻の大地」は未だに圧倒的……!コミカルな要素を絡めつつの、哲学的洞察を、一歩も引かず、寂莫たる筆致で描く、詩情。

 

内藤泰弘

トライガン」(続編・「トライガン・マキシマム」)、「血界戦線」(続編・血界戦線 Back 2  Back)

この人のは、長編「トライガン」、連作短編「血界」どちらも必読です。漫画の最前線を90年代から今なおひた走りつづける! 圧倒的ダイナミクスと細部へのこだわりを見せる絵に、人間の誇りから一歩も引かない矜持の言葉。そして……銃! オリジナル兵器! クリーチャーデザイン!

 

平野耕太

ヘルシング」「ドリフターズ」「以下略」

ケレン味といったらこの人を欠かせまいよ。有名な「少佐演説」は一部にすぎない。そして絵もまたケレン味! デッサンの狂いを味にまで昇華させるのはこの人のお家芸。そしてベタの黒は美でありながら、狂いの美。ベタだけで魅せる……! アナログ的な漫画表現のすべてを駆使して、こちらに叩き込んでくるのは、歴史ネタを持ち込みながらの「狂える格好良さ」!

「言葉の妙」を楽しむ作家といえましょう。絵が人物の哲学(狂い)を語り、言葉が意味を暴走させ、どんどん加速していく! そしてその言葉の「調べ」はもはや音楽であります。

 

竹本泉

。天使。もはや自分が「こうありたい」と思わせる作家。

癒し……というか、「変な話」の作家。キャリアはもうン十年と相当長いのだけど、可愛い絵(線がやたらと太い)、あっけらかんとした画風、コマ使いで、あまりにも「変」な話を繰り広げる。

もう100冊以上単行本が出ていて、一時期そのほとんどを自分も持っていましたが(さすがに「だしなおし」までは追いきれない)、代表作は……というか、どれもこのひとのは「短編」なんですよね。なので、「どれをとっても竹本先生」ですし、どれをとっても、先生いうとこの「いつもの」です。

しかし……この「変」さは、いつまでたっても竹本泉先生!自分が唯一「先生」をつける漫画家です。崇拝してます。

 

小島あきら

まほらば

もはやこの人を「ポストラブひな」で語る馬鹿はおるまいよ。初期こそそのフォーマットを使いながらも、あまりにも独自の「やさしさ」を表現した、「単なるラブコメよりも深いところを描いていった作家」であります。

オタクでなくてもこの人の作品は楽しめる(実例アリ)。オタラブコメの先の先にまで、静かに行った人。その作風は、漫画的ギミックを多用しながらも、箱庭でキャラを動かして、調和的世界を描く。だけれども、その調和的世界は、浅いようでとても深い。ある意味で虚無性とも近いけれども、この人の描くものは、とても優しい。人間性を、絶対に裏切らない作家。

 

桜玉吉

……鬱!そしてユーモア!

ギャグでもって迫る。その人生の鬱を。「自分が自分であるってだけで鬱になる」というどん詰まり。「ああー……そりゃー、もう……、漫画描いてる自分、でえっきれえ!」

離婚、精神病、鬱、人生の暗黒を経験して、それを私小説的に描く。なんで自分はこうなんだろう、という自虐を、しかしいつも独自の言語感覚のユーモアでもって描くから、読者は「いつも玉吉が心配になる……」というふうに、放っておけないw この「放っておけない」度合いでの愛され方というのが、玉吉ファンの特質でもありますw

「〇〇漫玉日記」はどれも好きですが、一番は「幽玄漫玉日記」かな。ポップさが際立ってた頃です。

 

山名沢湖

メルヘン……!

コミカルで繊細な日常に潜む「詩情」を描くひと。長編「つぶらら」も面白いコメディでしたが、より本質に迫っていくのは、短編集「白いふわふわ」や「スミレステッチ」でしょう。もちろん連作短編「レモネードBOOKS」は全活字趣味者必携。

どこまでも繊細。それでいてユーモア。玉吉と違って、人生の闇は触れないけど、人生のちょっとした面白さに対するセンシティヴィティは失わない。最近はより対象を、以前の「少女性」から、「大人性(アダルト)のなかの少女性」にフォーカスを移したかな。いつになってもメルヘンな作家であります。

 

双見酔

短編純文学コメディカル作家。画面が白い。しかしその白さは手抜きではなく、圧倒的な虚無を描くための白。いつもコメディと毒でもってこちらに迫るけど、読後感は「やってくれたなふたみん……!」という圧倒と、寂莫とした虚無感覚。でも、ラブコメを描くと、繊細な心情の心の震えをしっかり描くので、タッチは柔らかだけど、重量感はヘヴィ。

漫画とはかけた労力の「努力賞」ではなくて、センスとコマ割りなのだな、という好例。個人的にはジャイブから出てる「好き もよい」「恋ときどき」がベスト。もちろんニート漫画「空の下 部屋の中」、脱構築勇者もの長編「セカイ魔王」も素晴らしく。

 

熊倉裕一

王ドロボウJING」(KING OF BANDIT JING

はじめはボンボンで、そして掲載雑誌をうつして「King~」を。とにかく……この人の絵は、芸術であります。もはや書き込みは異次元。そしてその書き込みすべてに意味があり、言葉に意味がある。我々はそれらから、主人公ジンと一緒に「謎解き」をするのです。

圧倒的発想力、過去の元ネタを大胆に読み解き再構築、世界のどこにもない独創世界を当たり前のようにこちらにひょい、と渡してきて、その圧倒的芸術の箱庭にこちらは幻惑されます。

頼むーっ!生きていてくれーっ!どこかでいいんで生存報告してくれーっ!

 

小宮裕太

癒しのいちゃラブの神。

この人の特質は、とにかく「キャラ」を大事にするところ。基本的に短編よりも中編のひとだと目していますぼくは。

そのキャラクター造詣は、若干の薄暗がりを含みつつも、それがエロへと繋がり、はてはそのエロも含めた独特の「小宮ヒロインズの静かな輝き」に昇華されます。

絵ももちろん繊細。

殿堂入りは、もう……「沢渡さんシリーズ」。自分はこのキャラ(と主人公のカプ)で、5年間、毎日妄想しきりました。冗談抜きに5年間、毎日です。現在進行中です。神。

 

冨樫義博

レベルE」が好きです。そして「HUNTER×HUNTER」の32巻が好きです。この巻は手抜きなんかじゃない。

ロジカルにどこまでもキャラと言葉を精査する完璧主義者。これだけ「富樫病」がわかっていながら我々が読んでしまうのは、キャラの哲学、世界観の精妙、設定の面白さ、そして「言葉」に宿るどこまでも富樫節があるからです。

背後にあるのは……やはり、ある種の虚無性です。ワンピースの世界は広大ですが、虚無はない(それゆえの豊饒さですが)。富樫のこの大陸は……暗黒大陸を含めたこの世界は、死のにおいがどうしたってする。そして人間と、人間以外の虚無が、ずっとある。虚無のにおいが、どこかにある。だから怖く、だから目を離せない。

 

 

とりあえず、まず第一回はこんなところです。また追記します。

(この作家別紹介は、「止まり木に羽根を休めて」の「作家別読書紹介」に影響を受けて書き出しました。スタイルを見比べれば、自分がfeeさんのをパクってることは明白ですね。当該ブログ管理人・feeさんには、そのあたりの許可をとってあります。feeさんには、重ねて、御礼申し上げます)

止まり木に羽根を休めて : 作家別読書紹介(古い海外小説編)

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