残響の足りない部屋

もっと多く!かつ細やかに!世界にジョークを見出すのだ

修道院は眠らない

回廊の中を歩いている。
闇が棲みついた回廊は重力が増したかのように重い。
歩き続けるしかない。歩くか否か以外の選択肢を全然持っていない。そして、何かを求めるのならば、歩くしかない。
ずいぶんと光を見ていない。もはや闇は空気であり、何度も何度も肌をなでる。異常なほど規則正しく並んだ正方形の窓の外には、月の青白さと闇の深い暗さとが混ざりあった風景があった。
我々は、回廊の果てなどという心地よいものを感じることができない。海に浮かぶ小船がささやかな碇を下ろすかのような、そんなことはできない。思えば、本当に、光を見ていない。最後に見たのはいつだったか。

(続く)