2020春M3作品感想(2)まだ【リスナー(わたし)】は知らない、【御伽人形の羽ばたく先(Ideadoll)】のこと何も--Ideadoll「待雪葬」

同人音楽イベントM3に、ドチクショウコロナウィルスのせいで不参加だった地方在住通販組筆者が今回感想文を書く作品:

Ideadoll「待雪葬 - a fairy tale of A.-」

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ideadoll.web.fc2.com

前回、At the Garretの新作の充実度について語りましたが、そのAt the Garretの誇る2人の歌姫・鹿伽あかり氏と桃羽こと氏が、別働サークルとして「Ideadoll(イデアドール)」を立ち上げました。そして今回の2020春M3から、新譜を出して活動開始をしました。
前にサークルチェックの時に、シンガー・鹿伽氏が作曲活動を開始したことを物凄い喜び、期待しまくっている旨を書きました。
さあここからが本番です。ドロップされた音源を聞く。その世界を見せて頂きましょうーーーいやはや、音楽の愉悦(たのしみ)とは、まさにこの未知なる音源への期待であることは、クラシック鑑賞者もパンクロッカーも同人音楽愛好者もHip Hopヘッズも変わらないことでありますな。

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トラック#1 「待雪葬」

作詞:Ideadoll 
作曲:霧夜 純
歌唱:鹿伽あかり・桃羽こと(ツインvo)

At the Garret霧夜氏曲ですが、いわゆる「民族音楽」調。バグパイプパンフルート、小刻みな三拍子民族リズム、多重コーラス、と、民族音楽ファンをニンマリさせる要素満載でお贈りしております。メロディの強さはもう当たり前のごとく。そりゃそうだメロを誰が書いてると思ってるんだ霧夜だぞ(言い方!
At the Garretの二人の歌姫の声質はそれぞれ異なっていて、誠実な響きある中音域(アルト)が鹿伽氏、童女のような天真爛漫の高音域(ソプラノ)が桃羽氏で、その「声楽音域的棲み分け」はしっかりしています。
しかしこれじゃアレですね、まるで樫木祐人ハクメイとミコチ」第2話の、コンジュとミコチが歌うとこみたいですね。
「私のウリは、この竪琴と、艶やかな低音(アルト)でしてよ」「私のウリは高音(ソプラノ)よ」。
ハクミコ知ってる人なら、「あの感じ」そのままですよ。まじでそのままの音楽性というか民族タッチ。

さて、この曲ですが、全3曲EP(ミニアルバム)の中の立ち位置としては、「物語を俯瞰したテーマ曲的位置づけ。各シーンを断片的に、映画じみて別角度から描く」という、結構テクニカルなことをしています。
歌詞は映像的というか、映画的に、物語のいろんなエピソードをぱっぱっ、と次々に出していきます。
それらは断片的で、物語を最後まで聞いて「ああ、あれはここのことか」という風に推察させます。

同時に、ここで民族調の曲であるのが効いてくるのですね。最初に民族的世界観の音像を持ってくる事で、世界観に没入させる。

ときに、前回の記事でも書きましたが、今回の霧夜氏の音楽には、去年活動を停止した物語音楽同人サークル・Krik/Krakの影響を感じてしまいます。こちらの曲の場合には、民族要素、民謡要素、独特のシンセの響かせ方の音作り、に、Krik/Krak鳥島千佳里氏に近いものを感じます。もちろんこれは仮説の推察ですが、しかし、ふと何かが「受け継がれた」と思いを馳せるのも、けして罪ではあるますまい。音楽はそのようにして繋がっていくのですから。


歌詞の中に、この先の悲劇的なラストを彷彿させるワードをどんどんぶっ込んでいくことにより、作品全体のテンションを張り詰め、盛り上げていくのです。
そういう意味で、この作品トータルで、3曲と短いようですが、個人的には上記のように「映画的」な流れを受け取りました。まさしく物語音楽です。そのタイトルトラック・テーマ曲に霧夜氏を持ってくるのは、さすが「信頼の証」と思います。


トラック#2「ひだまりの雪道」


作詞:鹿伽あかり・桃羽こと 
作曲:鹿伽あかり
歌唱:桃羽こと

サウンドは、雪解けの太陽を思わせるような、春一番の風を思わせるような陽性のあたたかさ。世界名作劇場というか、昔のNHKの「みんなのうた」にも出せる感じです。トラック1とトラック3がシリアス曲調なので、とてもバランスが取れています。とくに次のトラック3がシベリア吹雪ダイヤモンドダストなので、この曲の暖かさが染みるって話です。

この曲が、自分が期待していた鹿伽氏の作曲です。スキップみたいに跳ねるようなリズム。桃羽氏のソプラノ天真爛漫歌唱が実に合います。
バックの音源もしっかりしています。ピアノと鉄琴音源を両方使って、明るさとどことなくの心細さ。
ベル(鈴)とスネアドラムを中心にしたリズムトラックの跳ねる感じ。でも「明るくなりきれない、むしろ「信じたいと願う」少女の明るさ、と申しましょうか。繊細ですね。
一番好きなのがサビなのですが、ABメロ&ブリッジと、サビで、メロディが「変わる」印象があります。転調こそしていないように聞こえますが、しかしその展開はドラマティックで違和感はないです。さきに、「信じたいと願う」少女の明るさ、と書きましたが、この部分こそ、そのどことなしの切なさが現れています。桃羽氏の歌唱が良い仕事をしまくっています。ほんとそのあたり、世界名作劇場的なフィーリングですね。

で、歌詞ですが、これは鹿伽氏と桃羽氏の共作の歌詞です。「戦犯は誰だ?」と問いたいですね。このサンホラ直系のダブルミーニング考察歌詞は!!
サンホラ(Sound Horizon)を知らない人は、よくわからない話ですが、ええと、例えば、今回の記事のタイトルありますね。一応、本作にオマージュをささげた形でタイトル付けてるんですが、この程度、この「ひだまりの雪道」の歌詞の前では、児戯にも等しくて。ネタバレはやめよう、っていうのがこの感想文のモットーなんですが、【  】でくくられた「意味」に、ルビでもって歌唱するのの、言葉の長さ! 意味の詰め込みすぎ! これはほんと歌詞カードを見てくださいとしか。

いや、これはネタでもdisでもなく、これくらい「攻めてる」サンホラ直系のダブルミーニング歌詞の怒涛さ、読んでいて楽しいです。ここにエグ味を持たせるとは。だから「戦犯は誰だ!?」は、賛辞と受け取ってください。ほんとどっちなんだ、この怒涛の考察構成を仕組んだのは。そしてエグ味、ケレン味というのを、この文章の作者はすごく高く評価する人間です。

 
トラック#3「葬雪サクリファイス

作詞:鹿伽あかり 
作曲:リゼ
歌唱:鹿伽あかり・桃羽こと(ツインvo)


さて、自分で言うのもなんですが、わたくしはそれなりにAriabl'eyeSのヘビーリスナーだと思うのです。まあガチ勢ほどではありませんが、1stアルバム「碧き幻想のエリジウム」4thシングル「月蝕アルカディア」から、最新作「絶凍のラビリンス」まで、ずーっとアルバム購入してヘビロテしてきています。なので発表した音源は、「かなり大体全部聞いている」って感じです。去年の「ローゼンシリーズ」再現ライヴにも、島根県からわざわざ行きました。

この「葬雪サクリファイス」は、Ariabl'eyeSの最新作「絶凍のラビリンス」が「氷の世界の蒼」なアルバムで、その名の通り、非常に凍てついた世界を描いたものでした(※桃羽氏が、ナレーションで参加しています)。なので、その流れでの曲調と言うことも出来るのですが、しかし「ダイヤモンドダスト吹雪度」ということでいえば、「絶凍のラビリンス」収録曲よりももっと高い「ゴーーーッ!(風の吹き付ける音)」という「吹雪度」マシマシのように聞こえます。要するに、リゼ氏お得意のヴァイオリンとバンドサウンドを中心にした壮麗耽美シンフォニックロックサウンドを、BPM高めに剛速球で投げつけて、疾走しているわけです。我々がリゼ氏に求めているものはマジでこれです。期待を裏切らない!

意外にもAriabl'eyeSは、同人ゴシック系のなかでも「あまり【語り】を使わない傾向にある」サークルなのですが、この曲ではのっけから鹿伽氏による語りを解禁しています。最初から疾走している曲で、そこにカッケェ語りが入ってくるので、テンションが上がります。あたかもまるでイタロディスコの煽りラップのように

もうとにかく美麗メロで疾走、疾走!鳴り響けヴァイオリン、シンフォニックに!Ariabl'eyeS自体がツインヴォーカルなので、Ideadollに提供しているツインヴォーカルアレンジも実にツボを突いたもので、素晴らしい。
と言いながら、しかしAriabl'eyeSの音楽の質感とはやはり違うように感じます。もちろんそれはIdeadollの2人の歌姫の実力であります。Aメロ後半部のコード展開・上昇の音符をレガート歌唱で歌い上げるところ、意外とAriabl'eyeSでは見られない音でした(オタク解説。
しかしそれって凄くないですか。完全にIdeadollの2人が「自分たちの表現」としてメロディを歌いこなしているってことです。


このEPはこの曲で終わるのですが、「ここで終わるしかないなぁ」と思わせる構成力です。どこまでも螺旋を描くかのように美麗メロをツインヴォーカルでテンションを上げながら疾走をどこまでも! しかも最後の最後でメロを変えて鹿伽氏と桃羽氏の掛け合い!それが終わったらリフに乗って今度は桃羽氏の語りが入る! 悲劇の終焉に向かって羽ばたくかのような疾走感です。


ある意味、物語は悲劇的に断ち切れるわけですが、それがあまりにかっこ良いのでw 短編映画ライクでありますが、最後やたらとテンションが上がる、っていう。それはEP(ミニアルバム)として、音楽的にもガッツポーズで終わるしかない、っていうことでもあります。3曲だけなんですが、充実度が高い。

 

つまりどの曲も粒揃い。
ただ、トラックとトラックの間に、インタールード(間奏曲)的な「語り+BGM」な小さい音源もあっても良い、と思うこともないわけでもないんですが…………しかし、一介の「楽曲重視」派音楽リスナーとしての傲慢な発言をすれば、このように練り上げられた美メロ3連発を1,2,3と、ドン、ドン、ドン!とお出しされた時点で「満足じゃぁ!」でありますのですよ。アルバムとして「ダレる」ことがなさ過ぎるという、良きEPです。


そのあたり、「物語音楽的にちょっとインタールードを」と言う向きもあるかもしれません。そちらもそれで、むしろ物語に惚れた物語音楽愛好者の正直な意見だと、筋の通りを感じます。ただ単に自分は、楽曲重視音楽リスナーな出自なだけですハイ。

 

ですが、このあたりの「エピソード補完」は、公式HPで「Episode 0」としてBGM付き小説で為されてるのですね。素晴らしい。

ideadoll.web.fc2.com

(上記storyページ下部参照)

というのも、特にトラック2「ひだまりの雪道」で、このCD中では登場していないキャラや設定があることが示されているのですが、さすがに全3曲でそれらを登場・展開するのは無理がある。長尺プログレじゃないんだから(問題発言


そのあたりをHPで「エピソード小説」として補完して表現していくのは、同人音楽として王道ですね。だからこそこのやり方はOKなのです。そう考えれば、本編に無理にインタールード小曲を入れなくても良い、ということも言えます。少なくとも自分は納得します。

 

そういうわけで、次作が早くも気になります。a fairy tale of Sをやってもいいんやで。
このIdeadollが、At the Garret本隊が動いていない時のプロジェクトという話でありますが(ツイキャスお茶会配信での発言)、少なくともこの待雪葬のアリソンとスノウの話だけでも、設定が練られているだけに、活動がこれこっきりということは先生許さんぞ、っていう話です(言い方!


とくに、これだけ陽性の心あたたまるメロディを書ける鹿伽氏と、怒涛の複合意味性解釈歌詞を書ける桃羽氏。これを捨てる話などあるわけがねぇ。
At the Garretは霧夜純氏を核(エンジン)としての密室芸であるのは論を待ちません。なのでAt the Garretはこのままで行ってもらって、鹿伽氏作曲・桃羽氏作詞、というIdeadollが「そちらはそちら」で自由に妄想豊かに動いてもらう。
そうして我々は三ツ星☆リストランテの野宮塔子氏の歌詞・文学圧を受けての霧夜メロディを味わいながら、At the Garretの屋根裏密室とIdeadollのメルヒェンが、幻想の小宇宙を構成する様を味わうわけです。贅沢な話ですねぇ。同人音楽って素晴らしいなぁ。

 

Ideadollが今回のように「小さなミニアルバム」を構築力豊かに構成できることがわかりました。ですがそこからすぐに「じゃあフルアルバムを!」っていうのはどうなのかな、と思う自分がいます。そりゃ、出たら出たで大喝采ですが、それはAt the Garretの進行を止めてまで行うことなのか。そういう無理なサークル活動をしていくのはよろしくないなぁと思います。あくまでゆっくり、しかし小さな世界のメルヒェン(幻想御伽話)をこれからも作っていってほしいところです。雛鳥は羽ばたきはじめました。鷹や鷲になる義務はないけれど、しかしこれからも自由に美しく歌っていってほしいと願います。小さな世界の構築を大事にしてもらいたい、そう願うばかりです。