音楽ブロガーの皆さんが2021年になり、少しずつ去年2020年のベスト音楽記事を投稿していらっしゃいます。 例年までの自分は、
「毎日無軌道に古今東西 のいろんな音楽を聞いているから、去年の新作ベスト音源を決めようにも、【今年出た新作】という縛りだと、すごい貧相なベスト選出になってしまいそう……」
という理由で、一年のベスト音源記事というのを書いてきませんでした。自分にとってその縛りは結構キツかったのです。
で、いつも読んでいる音楽ブログ「ヨーグルトーン」や「Nothing is difficult to those who have the will」を拝見して、
2020年に聴いてよかった作品 - ヨーグルトーン
遅ればせながら、2020年(に聴いた)アルバムベスト10を発表してみる。 - Nothing is difficult to those who have the will
「そうか、発売年度を考慮せず、 とにかく【自分が去年よく聞いていた】という縛り でもいいのですねッ師父!」
という悟りを得て、1年分のyoutube 試聴履歴を眺め参考にしながら(便利な世の中ですね)、以下をのんびり書いてみる所存です。
ヨルシカ
ヨルシカ - ただ君に晴れ (MUSIC VIDEO)
今年一番の収穫はヨルシカでした。 自分もそろそろ、流行りの新しい音楽についていけなくなってきたのかなー、と、うっすら秋風にたなびく焼き芋焚き火の煙のようにふわ~っとそんな疑念がわいてきたもんですが、いやーよかった。
物語音楽なコンセプト作品を毎回のアルバムで行う気骨。
「幼年期の終わり 」&「夏風」みたいなセンチメンタル詩。
線の細いギターロックやピアノインストや穏やかなポップスの音楽性を融合させた世界。
よかった!
消費社会に対して「幼年期の純粋さを裏切ってなるものか」って反骨心をすごい感じさせるアーティスト活動をしてるのですが、わたくしそれに「そうだ!」と思いつつも、ときたま「それも戦略なんだろうけど、そこまで消費社会を意識しなくてもいいんじゃない?」と作曲者にしてブレーン、n-buna氏に対しては思うこともあります。でもそれは、こう言ってしまうのもなんですが、あと12~13年くらいしたら自然とそっちにシフトしていくだろうな、って気もしています。ずっとヨルシカは聞いていきたい。
ACIDMAN - 赤橙
最近とにかくこればっかりを聞いています。おーい今は2021年だぞ、っていう遠吠えに耳を塞いで……。久米正雄 だったかな、「いつだってチェーホフ は昨日の作家だ」って言ったのは。この曲もいつだって「過ぎ去ったあの日」 であるとか「異国での追憶」 であるとか、そんなセンチメンタリズムを感じてしまう。これまでACIDMAN を聞きこんでいるわけではなく、ファンというにはあまりに聞き込み度が足りなくて、ディスコグラフィ を時系列に聞きこんでいません、恥ずかしながら……。でもこの曲が好きだ。
bloodthirsty butchers / デストロイヤー Music Video (監督:川口潤)
上記の流れから。アナタそんな曲ばっかり好きねぇ。うるせぇこれがオルタナ なんだろうが。
toddle 2018.06.22下北沢CLUB Que
ナンバーガール 再結成ということもあったけど、去年はしばしばtoddle を聞きました。つまり田渕ひさ子 という「シンガーソングライター」 の可能性、というか。
轟音鬼ソロ&哀愁アルペジオ というナンバガ 音だけでなく、この「永遠のギターバンド少女」の可愛らしい歌声であるとか。
どことなくUSオルタナ 的な「遠い空にスコーンと抜けて飛んでいっちゃえ」感のスカスカさというか。
そういう意味では、ギチギチに詰め込んだ音楽(音圧)のまるっきり逆のもの、っていうのを去年は求めていたような気がします。
windows96
wind96 - Plume Valley
ギチギチ音圧の逆、っていう流れで、そこでvaporwave かよ、っていうツッコミをした貴方は実に正しい。ていうか去年、vaporwaveやsynthwaveやchiptune やLo-Fi HipHop のmix垂れ流し音源を聞きすぎた……本当聞きまくった……。 この胡散臭い懐かしさというか、もう絶対これが復活することはない日々を安全圏から眺めるというか。
Random chiptune mix 46
これも実によく聞いた。電子音とリフと妙な哀感のメロディと、ドット絵と。これをひたすらかけ流していると、とても癒される自分がいます。音が音だけに、ギチギチに音圧が詰め込まれることがあり得ない音楽だけに。
スピッツ 「見っけ」(アルバム全曲)
スピッツ / ありがとさん
2019年の秋 に出たこのアルバムを聞きこむのに、結局1年 かかってしまった。「時代に追いつこう」なんてことを考えていない音。そう書くと後ろ向きなベテランのマンネリアルバム?って言われそうだけど、どんなもんだい、前作「醒めない」の幻想作風とはまた違った作風の幻想(ファンタジー )がここにあります。 例えばthe Who のBaba O'rileyかよ無法の世界かよ、ってなサウンド アレンジのオマージュだったりは古いロック好きとして「やはりスピッツ はロック大陸や!」とうれしくなります。また、「快速」のイントロでCzecho No Republic のタカハシマイ(vo&ba)によるエフェクトかかったコーラスが入り、一気に幻想アクセル踏み込みまくってバンドサウンド が疾走するところなんか「世界がスピッツ に変わるわぁ!」ですし。「醒めない」とは別の幻想がここにある 、っていうのがミソですね。どちらが良い、ではなく、どちらの幻想にも別の光と色がしっかり輝いているっていう。
John Frusciante - Brand E
(トリックフィンガーはフルシアンテのテクノ音楽の名義です) ご存じレッチリ (Red hot chili peppers )のギタリストですが、もうそういう文脈ではないのですよ、この人のソロ作は。何しろ当人の意識としてはギターなんかよりもシンセサイザー とドラムマシン の可能性をこの10年掘り続けてきたのだから。レッチリ 在籍時のジョンの歌心が生かされている云々、みたいな批評はこの音の前にはほとんど無力化するでしょう。 ようするにいわゆる「テクノ」というか、ジャングル、ブレイクビーツ 、ドラムンベース といった音楽です。EDMの方向ではなく、完全にIDM (Intelligent dance music)の方向性。 とにかくこの緻密な音が良い。「音そのもの」の連打を楽しんでいる。ひとつの空間に音を響かせること(結構ずーっと聞いていられるのですよこのフルシアンテのリバーブ 感覚)。フルシアンテは、自身のミキシングエンジニアリングの腕を深化させることに充実感を見出している。なんてったって、チャド・スミス(レッチリ のドラマー)と今になってすごいコミュニケーションが取れてるって話してて。「ドラムマシンをいじることで、ドラマーと【ドラム】についての会話が出来るようになった」って言ってるくらいですから。
ザ・リーサルウェポンズ「半額タイムセール」
ザ・リーサルウェポンズ "半額タイムセール" Live at 東京キネマ倶楽部 2020.11.6
祝メジャーデビュー。めでたい。しかしこのコロナご時世で、彼らの最大の持ち味である「コール&レスポンスのライヴ」の熱狂が封じられてしまったのは痛い。痛すぎる。上記ライヴも非常に気をつかっています……。ああ、「ステージに30人くらいカモンプリーズ」なラストに一発きみマザするのはいつの日か。 ところで、このユニットもまた、vaporwaveやsynthwaveといった80'sに出自を持つカルチャーと、同期しているというか共振しているというか、根はかなり同じだと思います。だから自分も興味を持っています。 その一方でここまでのリフを作り上げるのもまた凄い。ほとんどリフ一発じゃないか、っていう音楽ですが、良いじゃないですか。シンプルに殴るのもまた音楽の魅力です。
【平沢進】白虎野の娘・Full(歌詞付き)PV
彼の世界は、今年から、これからもっともっと探求していかねばならない、と思っています。他にこんな音世界を演っている人はいない。むしろ知るのが遅かった。自分は。
人間椅子 EU ツアー(ドイツ、イギリス)
【EU TOUR 2020】NINGEN ISU/ Heartless Scat (The Underworld Camden)
涙なしには見られない。これが苦難を乗り越えたバンド生活30年の重みです。 しかし、和嶋(ワジー 、vo&Gt)がyoutuberデビューしたというのは計算外でした。それでまた、このyoutube 動画をまたわたくしも楽しみに見ているんですよ。キャンプはもちろんのこと、バイク動画も……。そりゃあ人間椅子 のファンですが、それにしたってこの趣味動画をここまで見ていると、人間椅子 だからどうこう、というよりも、やっぱりワジー という人間に自分は本当に惚れているんだろうな、と。みなさん、和嶋の自伝「屈折くん」は買いましょう。 ええ読みましょう。なにげにわたくしがこの10年で読んだ本の中でベスト3には確実に入る本です。
【ソロキャンプ】 山羊との遭遇!もうすぐ春…(4/4)【最終回】/バンドマンの日常
RAINING in NAGOYA
VIDEO www.youtube.com
※(全角文字はこの場合表記として正しいのです)
こういうLo-Fi HipHop を夜中ずーっと垂れ流して作業したり、ぼんやりしていると、非常に落ち着くのですよ。 音楽的発展性や新機軸ってものは何もない音ですが、とにかく聞いていると心地がよい。この音楽ジャンルには意味性がない。むしろそういう意味性ってものは、実際に自分がこの音に浸りながら作っていくものなのかもしれない、って思うフシもあります。そういう意味では、ひそやかに自分自身のイマジネーションを刺激される音かもしれません。普通、音楽作品では「作曲者のイマジネーションに圧倒される」ことを望んできた自分でした。ですが、こういう音の聞き方もあっても良いでしょう。
●これから、というか次回
こんな音楽を聞いてきました その1:アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸(世界音楽履歴書2020年現在) - 残響の足りない部屋
「こんな音楽を聞いてきました」シリーズ第2回(後半部)をそろそろ書かなくちゃなーと思っています。