残響の足りない部屋

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自分の35年間の音楽人生は良い時代でありました。

さっき書いた前回の記事は、まさに現在進行形の音楽シーンのことでした。ところで、自らのこれまでの音楽人生を考えたとき、「自分の時代」は良かったのか……? とふと考えてしまいました。この場合の「自分の時代」、とは、1985年生まれ~2021年の今の、現35歳のクロニクルというわけです。

……うん……、良かった、んじゃないかな。良い時代だったし、今も面白い時代だと思います。自分の個人的な史観でちょっと箇条書きにしてみます。

●90年代

・生まれたのがギリギリ昭和(60年)。親が演歌&昭和歌謡愛好家だったので、ほぼ英才教育のようなもの(それが故に長く演歌・歌謡曲アレルギーにもなってましたが)

・幼少期に民謡を習っていた、という特殊事情。これは今にまで影響を及ぼしてるなぁ。自作曲のマイナー調リフや口上なんかモロにこれ。

・いわゆるJポップ黄金期。ビーイング系も小室プロデュースもつんくプロデュースも時代の音として聞いてた。その代わりつんくハロプロ時代からアイドルを嫌うようになり、AKB=秋元康プロデュースのアイドル歌謡の時点でアイドルを聞かなくなっていた

ファミコンゲームボーイスーファミプレイステーションの時代のゲーム音楽が基礎教養になっている

吹奏楽を部活でやった。音楽に罪はないが、この部活動というものが非常に自分にとって最悪であった。よく音楽自体を嫌いにならなかったと思う

・青春パンクムーブメントと、日本語ラップのオーバーグラウンド進出の時代でもあった。特に青春パンクは最悪の音楽であった。少なくともロック音楽を嫌いになりかけていた。

・ダンスミュージックでは、ユーロビートを経て、エピックトランスからプログレトランスの美メロシンセリフユーロ系が勃興期であった。円熟期のユーロビートや、初期のトランスシーンを眺めていられてよかったと思う。

・鍵ゲー、I've Sound、そして東方(後述)

●2000年代(ゼロ年代

グランジ/オルタナティヴロックの影響を受け、日本語ロックはイースタンユース、ブラッドサースティ・ブッチャーズ、ナンバーガールを皮切りに「轟音」「鋭角」「極々」のインディー荒武者バンドたちが鋭い音を放つ。自分がロックに入門したとき、ギリギリその時に居合わせることが出来た。

・そこからシューゲイザーに影響を受けた世代の音楽や、音響系、ポストロック・ムーヴメントも始まる。インディーロックやエレクトロニカの音世界。透徹した感情の音の原風景。良い時代だった。


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・折しも時代はクラブジャズの展開期。ある意味で古典ジャズのレア・グルーヴdig再びとでも言おうか。その時期自分はまさに古典ジャズを聴きまくっていたので、クラブジャズは「横目に見ながら」ではあったが、でも「ジャズが現代に生きている!」という気持ちもあり、良い傾向だなとも思っていた。

・そことも絡んでいるのかな。レッチリ以降、グルーヴ重視の音がロック、ジャズ、シティファンク、ヒップホップ全体で追及されていった。2000年代以降のグルーヴ追及という側面を語るにおいて、JBやブラック・コンテンポラリーからの直接の影響と言うよりは、むしろその子世代……レッチリや、あるいはプリンスの再解釈的な方向、からの影響をまず考えたほうが良いように思う。簡単に言えばZazen Boysだし、RADWIMPSだって「おしゃかしゃま」ではレッチリの影響をモロに出してたでしょうな話。

●2010年代(テン年代

・自分がニコニコにようやく触れたのが2009年からなので、自分は相当遅い頃であったが、それでもボカロシーンに触れることが出来たのは良かったと思う。少なくとも、ボカロを無視する形で音楽を聴き続けることが無くて、自分にとっては良かったと思う。

・ボカロのギターロック系というか、個人的に思うのはカゲプロなんですが。物語音楽やメディアミックスという側面もある。それでもやっぱり、音で情景を描くっていうポストロック/エレクトロニカの美学がどっかで息づいているのに結構感じ入るところがあります。


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 ・TK=凛として時雨を同時代で追い続けてきて良かったと思う。

スピッツが変わらずあの音を鳴らし続けていることが本当にうれしい。

・2010年に入ってメタルを聞き始めた。はじめはデスヴォイスが聞けなかったが、一度聞けるようになると、各段に音楽趣味の幅が広がった。そこからフォーク/ペイガンメタルに行ったり、あるいは昔のハードロックに遡ったり。そして人間椅子(バンド生活30周年)との邂逅。

テン年代で完全にジャズは復権したなーと思う。本当にうれしい。このころになると自分もクラブジャズを心底楽しめるようになる。古典ジャズの拘りから抜けたというか。

・後追いでVaporwaveにハマる。Lo-Fi HipHopの美学を知る。音楽の価値観がヌルっと変わる。

同人音楽を聴くようになり、同人音楽のシーンを知る。サンホラを聞く。同人ゴシック系を聞く。同人ジャズも同人エレクトロニカも聞く。そしてまさか自分が同人音楽サークルを演るようになるとは夢にも思わなかった。

・ボカロといえば、花譜やAdo以降、「ボカロ(機械合成音声)に学ぶ若手歌手」の存在が普通になったな、と常々思うようになりました。「ボカロに学ぶ」ことで自分の歌を作っていくという今のスタイルは、自分にとっては全然OKです。むしろ周囲の人たちが、才能ある若手を潰すなよと思います。具体的に言えばラジオやTVで「うっせぇわ」以外の曲も、もっとかけてやりなさいなと思う。「レディメイド」とか「ギラギラ」とかさぁ。ぐっと低音を活かしたジャズっぽいAdo氏の歌唱は聞きものだと思うのですが。

・ようやく最近になって日本語ラップを聞くようになる。フリースタイルダンジョン以降というか、ラップバトル以降というか。こちらまだ自分は初心者なので。

・八十八カ所巡礼を最近聞くなど。楽しい時代だ。


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●それからの人生

ゼロ年代のところであえて書かなかったのは、このラストに書くためで。何よりも、自分は東方project=ZUN氏の音楽によって人生が変わりました。あいも変わらず20年前から今も東方曲を聞いています。

先日、虹龍洞をプレイしました。ああ、何も間違っていない、と思う。東方で人生が変わって、それからいろいろあって、自分でも世界観を構築し、創作をしてみて……そんな人生は、間違っていなかったと思う。


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珍しいメジャー調のメロディです。しかし今の自分にはわかる。頭ん中に30年のジュークボックス音楽ライブラリを詰め込んだ自分には。この明るいサックス音源から、80年代ジャズフュージョンの影響を感じることが出来る。また、同時代のフォーク調のメロディも想像できる。牧歌的でありながら、泣き笑いのような「哀しみよさようなら」的な清々しさというか。

そんな曲「駒草咲くパーペチュアルスノー」を聞くと、なんだかこの20年を高速で思い返してしまう。自分なりにいろいろあったのだ、と思う。何度早々に終わらせようと思ったか知れない。けど、今なんとか生きている。なんでだ……?とも思ってしまう。なんで生き延びたんだ?何で生き延びることが可能だった?死んでいてもおかしくはないと今さらながら思う。偶然、たまたま、が大きな要因だろう。それでも結局、今こうして文章を打鍵している。

不思議だなぁ。多分、これからもいろいろあるのかな。前は35歳で死ぬと思っていたけど、35歳になっちゃってますよ。2~30年先ってあるのかなぁ自分に。そのことはわかんないや。まぁそれは良い。短くても別に良い。

ともかく、この35年で、音楽生活に限ってもいろんな事があったし、これからも生きていくのだとしたら、またいろんな事(音)が起こるのでしょう。そのこと自体は全然悪くないと思う。つまり、自分の(音楽の)「時代」は、悪いものではなかったですよ。