残響の足りない部屋

音楽旅行と模型人生と愚にもつかないジョーク

10年ぶりに「らき☆すた」の二次創作小説を書きました

そんなこんなで10年ぶりに……。タイトルは、

「泉家とV」

●泉そうじろうはバ美肉しない

あきれるほど平和な埼玉県春日部市の住宅街の一角、
今日も泉家はインドアでありました。

Vtuberの動画を、ネット接続大型テレビで、親子で見ている泉こなたと泉そうじろう。変わらんなこいつら……。

泉こなた(以下:こ)「ねぇお父さん、バ美肉する気ないの?」
泉そうじろう(以下:そ)「技術的にはぶっちゃけ3時間あれば、今日中に【はじめまして! ヴァーチャル美少女小説家おじさん【彼方そう】ちゃん はじまります】をupることは可能なんだが……」
こ「おーいバ美肉する気満々だよこの父親……」
そ「ところが、どうもオレはVtuberに向いてないのではなー、と悟ったんだよ」
こ「えー。具体的にplz」
そ「仮の3Dモデルは持ってるし、俺のハイエンドスマホだったらモーションキャプチャーも楽にいけるし、VRヘッドセットだって良いの持ってるし……」
こ「完全に私が言える口じゃないけど、いくら使ったの?」
そ「そういうわけで、VRモデルに、いわゆる【魂】を入れることは技術的には可能なんだ。3時間あればupることは物理的に可能、っていうのはそういうこと。でもな……俺には、【魂】がないんだよ」

●魂、嫁、仮想ピグマリオン造形の失敗

こ「えーーーっ!」
あんぐり口をあけて衝撃顔で父を糾弾する娘(オタク)。
こ「お父さん、私をどう育てたか忘れたのっ!【オタクとは魂の在り方だ!】って私に冗談抜きで1歳から叩き込んだんじゃないっ!今さら何を!」

そ「まぁ聞きなさい。俺の嫁泉かなたという美少女がいるのだが」
こ「知ってるよ!私のお母さんだよっ!」
そ「こなたには見せていなかったが、VRかなた、もうあるんだよ」
こ「ええっ」

スマートフォンをぽちぽちやる父(リアル)。
そんで画面に出てきたのは、確かに、儚げなこなた瓜二つの容姿をした、在りし日の泉かなたの姿であった。
黒い3D空間に、漂うように、眠るように、VRかなたは在った。

こ「あー、お母さん……」
そ「3Dモデルはいろいろいじっていたんだよなー。オレは絵も模型(立体)も出来ないから、こーして文章(純文学小説)に行ったわけだが、3Dモデルをいろいろ改造するのは、案外出来なくもなかった。いずれヴァーチャルリアリティの時代が来るのは確実だし、装備さえ整えておけば……やれるorやれないで言ったら、やれることになるのはわかっていた。ま、それでこうしてやってるのが、ピグマリオンコンプレックス(人形偏愛症)もいいとこだが」
こ「でも、そこまで用意しておいて、何でやらないのさ、Vのお母さん」
そ「んー、上手く言えないから、わかんないとこいろいろ質問してほしいんだが」
こ「大丈夫、今の時点でツッコミ所の過積載だから」
そ「かなたのトレースは、オレにとっては【出来る】ことなんだよ」
こ「それこそ、今から3時間も要らずに?」
そ「そう。かなたが居なくなってから、どれだけ脳内で反復しまくったか、って話だ。トレースなんて簡単だ。そして俺以上に上手くトレース出来る奴なんていないさ」
こ「で、ここまで装備を整えたんだから、私の居ない間、実験はしてみたんだ。それで、【出来ない】って悟っちゃった」
そ「その通り。トレースは出来る。……だが、それ以上何になる?って瞬時に思ってしまったんだ。そりゃあ、モニタの中にVのかなたはいる。俺が完璧にトレースしたかなたがいる。だが……そこに居るかなたは、それ以上ではなかったんだ。【どこにも行かない人形】でしかなかったんだよな。ま、当たり前の話ではある。でも……この【どこにも行かない】【それ以上の可能性がない】っていう感覚は、ちょっとな……」

 

こ「でもさー」
そ「ん?」
こ「それはVのお母さんを作ろう(トレースしよう)として失敗した話でしょう? それは辛かったと思うけど、でも、趣味として美少女キャラ作ってバ美肉するって話とは違うじゃない?」
そ「あー、かなたと全く関係ないVの者を作って、アバターとしてVをやればそれで楽しいじゃん?っていう」
こ「そうそう。【オレには魂がない】なんて言うのは早いんじゃ」
そ「そうだな……オレは小説を書いてるから、まぁVをやらなくても別に……っていうのはひとつの答えではある」
こ「まぁ、何十年も第一線で小説家やってる人が、【人物造形と世界構築】の才能がないって話は毛頭ないわけだし……小説の方が自由に動かせるよね」
そ「エラソーな言い分かもしれんけど」
こ「……バ美肉、面白くなさそう、って思ってる?」
そ「あー、それが近いのかもなー。ガワを別の美少女にして受肉、そして魂はこのおじさんたるオレ、っていう風にしてVの者を作る。そしてアイドルする。まぁ、ふつうはそれで、楽しくやっていけるよな。……ただ……変な話だが、そうして出来た【彼方そう】ちゃんの傍らに、【かなた】は生きていないんだよ」
こ「不在……って感覚……?」
そ「隣に、どーしたってかなたが居てほしいというか。そりゃ無理だっていうのはそうなんだが。しかし、前に作った(トレースした)Vのかなたの……静止しきった姿がチラつく。隣にいるはずの存在の不在の感覚。そう思ってしまった以上、どうも俺はVのバ美肉に「魂」を注げない、って思ってしまった」
こ「お父さん……苦しい?」
そ「さらに変な話なんだが」
こ「うん」
そ「そんな風に思えてしまっている自分がそんなにイヤじゃない、っていうのがある。オレはずっとこういう風に妻を想い続ける奴なんだ、っていうことを再確認した。ずっと延々と、かなたのことを考え続けている。後悔じゃなく……オレは相当に想い出ってものを大切に……ヴァーチャルリアリティ以上のリアリティを感じているんだ、っていうことを……」
こ「……」
そ「これは、未亡人とピグマリオンコンプレックスのこじらせ悪魔合体もいいとこだとはわかっているが、な」

 

VRワールドで語ろう

こ「ねぇお父さん、Vのお母さんのデータ、もらってもいいかな」
そ「どう考えてもこなたにはその権利はあるし、オレが断る理由はないなぁ」

スマートフォンの通信で、こなたのスマホにVのかなたのデータを転送する父。
こなたは、眠ったような母が映る、自身のスマホを、ためつすがめつ眺めながら何かを考えている。

そ「まぁあまりドキムネワクワクする話でなくて申し訳ない。趣味人としてもなぁ」
こ「そんなことはないよ」
首をふるこなた。
こ「……ありがとう、お父さん」
そ「おう」

 

 

その後、だいぶ月日は流れ。
あきれるほど平和な埼玉県春日部市の一角。
泉家はやっぱりインドアでありました。

こ「ねーお父さん、VRChat入ってよ」
そ「おー? どこに行けばいいんだ?」
こ「自作のワールド作ったんだ」
そ「へー、じゃあかがみちゃんたち呼ぶか」
こ「それは駄目」
そ「ん?」
こ「まぁたまには親子水入らずでいいじゃない」
そ「んーー? まぁ、いいか……なんだろな」

 

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ワールド「彼方」

そ「ここは……」
こ「見覚えあるでしょ?」
そ「ああ……そりゃあな」

そのVR空間は、こなたが泉家のフォトアルバムから、ヴァーチャル再構成した空間だった。
例えば、そうじろうとかなたが避暑地の草原に行った時の写真
例えば、そうじろうとかなたが海に行った時の写真
二人の学生時代の写真
もっともっと昔の、子供の頃の二人の写真
こなたが生まれた時の写真
いろいろな写真から再構成した空間の巨大サムネイルが、たくさん空中に浮かび、ふたりを走馬灯のように囲んでいる。

こ「結構モデリングに苦労しました!w」
そ「第一声がそれかw」

そうじろうのアバターの隣にいるのは、泉こなたであり、Vのかなたであった。
目は開いている。そうじろうを見て、彼方の方角を眺めている。

こ「トレース出来てないところは、いっぱいあると思うんだよ。だから、教えてくんない? 完成度は高くしたいからね」
どこか照れくさそうな少女。
こ「さ……いろんな話を、聞こうじゃないか」
そ「そうだな……。じゃあ、まずはこの草原からいくか……」

 

どこからともなく、こなたでありかなたは、白い麦わら帽子を手に取った。
なるほどな、とそうじろうは思った。
オレひとりだけじゃ、この景色を見ることは出来なかったな……と。

 

●10年前に描いたらき☆すたSS

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らき☆すたSS - 残響の足りない部屋

 

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読書日記:『らき☆すた』8巻について - 残響の足りない部屋

 

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